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王太子の心情2
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サイフォスは、そう当時を顧みながら……
その悪妃と評される行いの数々は、全てラピズのためだったかと。
つまりはそこまでラピズを愛していたのかと、再び胸を抉られると同時。
足の治療に向かう際の、想いを寄せ合う恋人のような姿や。
息がぴったりな2人のダンスや。
その時目にした、愛してやまない恋人同士のような姿が脳裏に浮かんで……
本当に恋仲だったんだなと、改めて思い知らされていた。
それにより、バルコニーでの凄まじい殺気や剣術大会での殺気などに対しても。
当然だなと、腑に落ちると同時。
知らなかったとはいえ、2人の仲を引き裂いてしまった事を、申し訳なく思ったのだった。
しかし。
はっきり思い出したラピズの顔と、ランド・スピアーズの顔は、やはり別人で……
ーーどういう事だ?
と混乱する。
伝説魔法を利用しているサイフォスは、それで別人になりすましているのではないかと考えたわけだが……
全ての魔法を無効化させる部屋で調べたため、その考えは打ち消されてしまったからだ。
また、当初は念の為に見張りもつけていたが……
プライベートな事には介入しなかったため、その真相も分からなかったのだ。
となると、1つの仮説が浮かび上がるのだが……
その時のサイフォスは、当然それどころではなく。
ーーそんな事より、これからどうすればっ……
と、身が引き裂かれそうなほど苦悩したのだった。
そう、2人の関係を知ってしまった以上。
このまま、奪ったままでいるわけにはいかず。
かといって、ヴィオラを手放す事など出来るはずもなく。
なによりサイフォスは……
今のヴィオラは、少しは自分を受け入れてくれているんじゃないかと期待していたからだ。
というのもヴィオラが……
サイフォスに無理をさせたくない一心で、涙ながらに公務を懇願したり、それを必死に頑張ったり。
王妃が倒れた際も……
とても心配して、懸命に力になろうとしてくれたり。
サイフォスの心に寄り添って、愛しむように慰めたりしてくれたからだ。
~「私を伴侶だとお思いなら、ひとりで抱え込まないでください」~
ーーその言葉も、どれほど心強かった事か……
しかも俺がずっと見たかった、笑顔まで見せてくれるようになったというのにっ……
それはまるで、毛を逆立てていたシャム猫が、徐々に懐いてくれたようで……
可愛くてたまらないのもさる事ながら。
そういった変化や言動が、偽りだとは思えなかったのだ。
しかしたとえヴィオラが、少しは受け入れてくれたのだとしても……
~「自身の立場と周りの気持ちの板挟みで、ずっと苦しんで来たのにっ……
自分の気持ちばかり押し付けて、私の気持ちはどうでもよかったのっ!?」~
そんなヴィオラに、自分まで気持ちを押し付けるわけにはいかず。
さらにはこれ以上、板挟みで苦しめるわけにはいかず。
サイフォスは断腸の思いで、身を引くしかないという決断に至ったのだった。
そうつまり、離婚を突き付けたのは……
ヴィオラ大切に思うからこそ、深く愛しているからこそだったのだ。
「お前みたいな悪妃はもううんざりだ」などと、厳しく糾弾したのも。
ヴィオラが離婚に漕ぎつけるために、悪妃に扮していた事から……
その計画通りに動いた方が無難だろうと、考えての事だった。
その悪妃と評される行いの数々は、全てラピズのためだったかと。
つまりはそこまでラピズを愛していたのかと、再び胸を抉られると同時。
足の治療に向かう際の、想いを寄せ合う恋人のような姿や。
息がぴったりな2人のダンスや。
その時目にした、愛してやまない恋人同士のような姿が脳裏に浮かんで……
本当に恋仲だったんだなと、改めて思い知らされていた。
それにより、バルコニーでの凄まじい殺気や剣術大会での殺気などに対しても。
当然だなと、腑に落ちると同時。
知らなかったとはいえ、2人の仲を引き裂いてしまった事を、申し訳なく思ったのだった。
しかし。
はっきり思い出したラピズの顔と、ランド・スピアーズの顔は、やはり別人で……
ーーどういう事だ?
と混乱する。
伝説魔法を利用しているサイフォスは、それで別人になりすましているのではないかと考えたわけだが……
全ての魔法を無効化させる部屋で調べたため、その考えは打ち消されてしまったからだ。
また、当初は念の為に見張りもつけていたが……
プライベートな事には介入しなかったため、その真相も分からなかったのだ。
となると、1つの仮説が浮かび上がるのだが……
その時のサイフォスは、当然それどころではなく。
ーーそんな事より、これからどうすればっ……
と、身が引き裂かれそうなほど苦悩したのだった。
そう、2人の関係を知ってしまった以上。
このまま、奪ったままでいるわけにはいかず。
かといって、ヴィオラを手放す事など出来るはずもなく。
なによりサイフォスは……
今のヴィオラは、少しは自分を受け入れてくれているんじゃないかと期待していたからだ。
というのもヴィオラが……
サイフォスに無理をさせたくない一心で、涙ながらに公務を懇願したり、それを必死に頑張ったり。
王妃が倒れた際も……
とても心配して、懸命に力になろうとしてくれたり。
サイフォスの心に寄り添って、愛しむように慰めたりしてくれたからだ。
~「私を伴侶だとお思いなら、ひとりで抱え込まないでください」~
ーーその言葉も、どれほど心強かった事か……
しかも俺がずっと見たかった、笑顔まで見せてくれるようになったというのにっ……
それはまるで、毛を逆立てていたシャム猫が、徐々に懐いてくれたようで……
可愛くてたまらないのもさる事ながら。
そういった変化や言動が、偽りだとは思えなかったのだ。
しかしたとえヴィオラが、少しは受け入れてくれたのだとしても……
~「自身の立場と周りの気持ちの板挟みで、ずっと苦しんで来たのにっ……
自分の気持ちばかり押し付けて、私の気持ちはどうでもよかったのっ!?」~
そんなヴィオラに、自分まで気持ちを押し付けるわけにはいかず。
さらにはこれ以上、板挟みで苦しめるわけにはいかず。
サイフォスは断腸の思いで、身を引くしかないという決断に至ったのだった。
そうつまり、離婚を突き付けたのは……
ヴィオラ大切に思うからこそ、深く愛しているからこそだったのだ。
「お前みたいな悪妃はもううんざりだ」などと、厳しく糾弾したのも。
ヴィオラが離婚に漕ぎつけるために、悪妃に扮していた事から……
その計画通りに動いた方が無難だろうと、考えての事だった。
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