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出会い3
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「何って、嬢ちゃんには関係ねぇだろ?
それとも、俺らと一緒に遊びたいのかい?」
「ふざけないで!
子供相手に寄って集って、恥ずかしくないのっ!?」
「やれやれ、この嬢ちゃんも命知らずかよ」
男がそう呆れるも。
「おいおい、こんないい女殺すには惜しいだろ。
どうせなら、みんなでたっぷり可愛がってやろうぜ?」
仲間たちは、そういやらしい笑みを浮かべて。
ヴィオラの身体に、舐めるような視線を這わせた。
「それもそうだな。
どうやら、恥ずかしい思いをするのは嬢ちゃんの方みてぇだな」
ヴィオラはゾッと慄くも……
「だがその前に、このガキを始末しちまおう」
その言葉で。
「っ、そんな事はさせないわ!」
とっさにサイフォスの前に出て、庇うように両手を広げた。
一方サイフォスは……
貴族の令嬢が平民の他人を助けるために、1人でこんな危険な場面に乗り込んで来た事に驚嘆するも。
守らなければならない対象が出来てしまった事で、いっそう危機的状況に追い込まれため、頭を抱える思いでいた。
しかし。
自らの危険を顧みず、震えながらも逆に守ろうとしている姿を前に……
心を思い切り揺さぶられたのだった。
とはいえ、事態はそれどころではなく……
「へ~え、嬢ちゃんに何が出来るってんだ?」
「はっ、話し合いをしましょう?」
そう言って、時間を稼ごうとするヴィオラ。
「ハッ!とんだお笑い草だな。
残念だが、俺らを言いくるめようとしたって無駄だぜ?」
「違うわっ、交渉を要求してるの。
いくら払えば、この子を見逃してくれる?」
「なるほど、金で解決しようってワケか。
そうだな……
じゃあまずは、あんたの身体で払ってもらおうか!」
そう言って男は、ヴィオラの腕をグイと引っ張った。
「きゃあ!」
その悲鳴と同時に、サイフォスは短剣に手を掛けるも……
タイミングを見極めなければ、集団から守り抜くのは難しいため。
一旦ぐっと踏み留まる。
ところがそこで、ヴィオラを掴む手が切り落とされた。
「うわああああ!!」
「ラピズ!」
そう、切ったのはラピズと呼ばれた男で……
いきなり現れたその男は、切られた男の仲間も次々と斬りつけて、あっという間に撃退したのだった。
ーーなんだこいつ、かなりの凄腕だ……
トップクラスの王宮騎士に勝るとも劣らない腕前に、目を見張るサイフォス。
するとラピズは剣を納めて、呆れた様子で口開いた。
「まったく、急にいなくなるからびっくりしたよ」
「ごめんなさい。
この子が物騒な男たちに囲まれてたから、連れ去られるんじゃないかと思って……」
「だからって。
人助けもいいけど、その前に自分の安全を考えてくれよ。
俺が来るのが遅かったら、どうなってた事か……」
そう頭を抱えるラピズ。
と、心の中で大きく頷くサイフォス。
「本当にごめんなさい……
でもラピズが絶対、助けに来てくれると思ったから」
そう、ヴィオラはそれまでの時間稼ぎをしていたのだ。
「だから、安心して人助けが出来るのよ?」
「……そうやって信頼してくれるのは嬉しいけど、こっちは心臓がいくつあっても足りないよ。
ヴィオラがノロマなおかげで、なんとか探し出せてようなもんだし」
「ひどいっ」
だが事実、足が早ければ広範囲を探し回らなければならないが。
ヴィオラの移動範囲なら、比較的容易に見つけ出せるのだった。
「それより、大丈夫?
怪我はない?」
同じ目線まで屈んで、心配そうに覗き込むヴィオラに、ドキリとするサイフォス。
「っああ、大丈夫だ」
「良かった。
でもどうしてこんな所で、あんな男たちに囲まれてたの?」
「それは……
道に迷ってウロウロしてたら、あいつらの窃盗現場を目撃したからだ」
子供が悪漢を追いかけて来たなど不自然なため、そう誤魔化す。
結局、盗難品は持ち去られてしまったものの。
一味はかなりの深手を負っていたため、しばらく身動きが取れないうえに。
その怪我や外見情報を得た事から、捕まえるのは時間の問題だった。
するとふいに。
「そう、それは怖い思いをしたわね……」
そう優しく抱き包まれて。
サイフォスの心臓は大きく跳ね上がる。
そして思わず。
「っ、ドレスが汚れるぞ」
そう言ってヴィオラを、片手でぐいと押しのけてしまった。
もちろん、屈んで引きずっている裾を気にかけたからでもあったが……
王太子である自分を、そんなふうに抱き包む者などいなかったため。
さらには柔らかな胸が顔に当たっていたため、照れ臭かったからでもあった。
それとも、俺らと一緒に遊びたいのかい?」
「ふざけないで!
子供相手に寄って集って、恥ずかしくないのっ!?」
「やれやれ、この嬢ちゃんも命知らずかよ」
男がそう呆れるも。
「おいおい、こんないい女殺すには惜しいだろ。
どうせなら、みんなでたっぷり可愛がってやろうぜ?」
仲間たちは、そういやらしい笑みを浮かべて。
ヴィオラの身体に、舐めるような視線を這わせた。
「それもそうだな。
どうやら、恥ずかしい思いをするのは嬢ちゃんの方みてぇだな」
ヴィオラはゾッと慄くも……
「だがその前に、このガキを始末しちまおう」
その言葉で。
「っ、そんな事はさせないわ!」
とっさにサイフォスの前に出て、庇うように両手を広げた。
一方サイフォスは……
貴族の令嬢が平民の他人を助けるために、1人でこんな危険な場面に乗り込んで来た事に驚嘆するも。
守らなければならない対象が出来てしまった事で、いっそう危機的状況に追い込まれため、頭を抱える思いでいた。
しかし。
自らの危険を顧みず、震えながらも逆に守ろうとしている姿を前に……
心を思い切り揺さぶられたのだった。
とはいえ、事態はそれどころではなく……
「へ~え、嬢ちゃんに何が出来るってんだ?」
「はっ、話し合いをしましょう?」
そう言って、時間を稼ごうとするヴィオラ。
「ハッ!とんだお笑い草だな。
残念だが、俺らを言いくるめようとしたって無駄だぜ?」
「違うわっ、交渉を要求してるの。
いくら払えば、この子を見逃してくれる?」
「なるほど、金で解決しようってワケか。
そうだな……
じゃあまずは、あんたの身体で払ってもらおうか!」
そう言って男は、ヴィオラの腕をグイと引っ張った。
「きゃあ!」
その悲鳴と同時に、サイフォスは短剣に手を掛けるも……
タイミングを見極めなければ、集団から守り抜くのは難しいため。
一旦ぐっと踏み留まる。
ところがそこで、ヴィオラを掴む手が切り落とされた。
「うわああああ!!」
「ラピズ!」
そう、切ったのはラピズと呼ばれた男で……
いきなり現れたその男は、切られた男の仲間も次々と斬りつけて、あっという間に撃退したのだった。
ーーなんだこいつ、かなりの凄腕だ……
トップクラスの王宮騎士に勝るとも劣らない腕前に、目を見張るサイフォス。
するとラピズは剣を納めて、呆れた様子で口開いた。
「まったく、急にいなくなるからびっくりしたよ」
「ごめんなさい。
この子が物騒な男たちに囲まれてたから、連れ去られるんじゃないかと思って……」
「だからって。
人助けもいいけど、その前に自分の安全を考えてくれよ。
俺が来るのが遅かったら、どうなってた事か……」
そう頭を抱えるラピズ。
と、心の中で大きく頷くサイフォス。
「本当にごめんなさい……
でもラピズが絶対、助けに来てくれると思ったから」
そう、ヴィオラはそれまでの時間稼ぎをしていたのだ。
「だから、安心して人助けが出来るのよ?」
「……そうやって信頼してくれるのは嬉しいけど、こっちは心臓がいくつあっても足りないよ。
ヴィオラがノロマなおかげで、なんとか探し出せてようなもんだし」
「ひどいっ」
だが事実、足が早ければ広範囲を探し回らなければならないが。
ヴィオラの移動範囲なら、比較的容易に見つけ出せるのだった。
「それより、大丈夫?
怪我はない?」
同じ目線まで屈んで、心配そうに覗き込むヴィオラに、ドキリとするサイフォス。
「っああ、大丈夫だ」
「良かった。
でもどうしてこんな所で、あんな男たちに囲まれてたの?」
「それは……
道に迷ってウロウロしてたら、あいつらの窃盗現場を目撃したからだ」
子供が悪漢を追いかけて来たなど不自然なため、そう誤魔化す。
結局、盗難品は持ち去られてしまったものの。
一味はかなりの深手を負っていたため、しばらく身動きが取れないうえに。
その怪我や外見情報を得た事から、捕まえるのは時間の問題だった。
するとふいに。
「そう、それは怖い思いをしたわね……」
そう優しく抱き包まれて。
サイフォスの心臓は大きく跳ね上がる。
そして思わず。
「っ、ドレスが汚れるぞ」
そう言ってヴィオラを、片手でぐいと押しのけてしまった。
もちろん、屈んで引きずっている裾を気にかけたからでもあったが……
王太子である自分を、そんなふうに抱き包む者などいなかったため。
さらには柔らかな胸が顔に当たっていたため、照れ臭かったからでもあった。
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