67 / 123
その後1
しおりを挟む
生家に戻ったヴィオラは、シュトラント公爵に手厚く迎え入れられ……
「さすがは私の娘だ!
望まぬ結婚を自らの手腕で、望み以上の結果に変えたのだからっ。
しかも何のお咎めもなく、これほどの恩恵を受けるとは……
いや本当に大したものだ!」
そう賛辞と歓喜の言葉を浴びせられた。
しかしヴィオラの心は、ずっと塞ぎ込んだままで……
別れを受け入れた日から、毎日部屋で泣き伏せ。
王宮から去る日は、馬車の中で泣きじゃくり。
戻ってからも、涙を流さない日はなかった。
ーーああ、サイフォス様に会いたい。
会いたくて、会いたくてたまらないっ……
時が解決してくれると思っていたが、想いは募る一方で……
王宮を去るまでは、サイフォスに罪悪感を感じさせないように。
生家に戻ってからは、周りに心配をかけないように。
なるべく平静を装ったり、頑張って食べてはいたものの。
サイフォスがいない人生など、何の意味もないと……
辛くてもう、何もする気力が起きず。
食事もほとんど、喉を通らなくなっていた。
一方ラピズは……
ヴィオラから事の顛末を聞かされた時は、焦りや混乱をきたしたものの。
サイフォスに呼び出されて謝罪をした際は、逆に爵位や莫大な慰謝料の授与を言い渡されたため。
己を恥じ、深く謝意を抱き。
本来の姿に戻ってからは、ヴィオラに求婚するための準備を進めていた。
というのも、それらの恩恵を授かる際……
「これで俺の代わりに、ヴィオラを幸せにしてやってくれ」
そうサイフォスに頼まれからでもあり。
それにより、土地を購入して屋敷を建てたり、環境や身の上を整えたりしていたのだった。
もちろんシュトラント公爵からも、事前に婚姻の許可を得ていたが……
公爵の方は、日に日にやつれていくヴィオラを前に、早まったと焦りを感じていた。
というのも公爵は、与えられた南部公領に、本拠地を移す事にしていたため。
現在のシュトラント家は、ヴィオラとラピズに管理を任せようと考えていたのだ。
しかし2人が結婚しなかった場合。
今のヴィオラは任せられる状態ではない上に、そんな娘を残して移転するわけにもいかず……
現状を改善しようと、憂慮していた事を投げかけた。
「今朝も、食事を摂らなかったそうだな。
こうも望み通りになったというのに、どうしてそんなに塞ぎ込んでいるのだ」
「……王宮生活の疲れが出ているだけだと、言ったはずです。
なのでお父様は、引き続き移転の準備を進めてください」
「そうしたいところだが……
本当にそれだけか?
塞ぎ込んでいる理由は、他にあるのではないか?」
「どういう意味ですか?」
「……お前は殿下を、愛してしまったのではないか?」
その言葉に誘発されて。
必死に諦めようとして押し殺してきたその気持ちが、ぶわりと涙になって溢れ出す。
「やはりそうか……
だったらどうして、見限られるほど悪妃に扮したのだ」
「……後悔、しています」
とだけ答えるヴィオラ。
いくら父親でも、暗殺や伝説魔法の事などを言うわけにはいかなかったからだ。
ましてや、酔って口を滑らせるような相手には尚更の事。
「だが後悔したところで、今さらどうにもならんだろう!
それにお前には、ラピズがいるではないか」
「私の心にはもう、サイフォス様しかいませんっ」
「だが所詮!他の女に心変わりするような男ではないかっ。
その点ラピズは、お前が他の男に嫁いでもなお、一途に愛してくれてるのだぞっ?」
「でもサイフォス様だけなんですっ!
私はあんなにも、大切にしてもらったのにっ……」
と言って、泣き崩れるヴィオラ。
「さすがは私の娘だ!
望まぬ結婚を自らの手腕で、望み以上の結果に変えたのだからっ。
しかも何のお咎めもなく、これほどの恩恵を受けるとは……
いや本当に大したものだ!」
そう賛辞と歓喜の言葉を浴びせられた。
しかしヴィオラの心は、ずっと塞ぎ込んだままで……
別れを受け入れた日から、毎日部屋で泣き伏せ。
王宮から去る日は、馬車の中で泣きじゃくり。
戻ってからも、涙を流さない日はなかった。
ーーああ、サイフォス様に会いたい。
会いたくて、会いたくてたまらないっ……
時が解決してくれると思っていたが、想いは募る一方で……
王宮を去るまでは、サイフォスに罪悪感を感じさせないように。
生家に戻ってからは、周りに心配をかけないように。
なるべく平静を装ったり、頑張って食べてはいたものの。
サイフォスがいない人生など、何の意味もないと……
辛くてもう、何もする気力が起きず。
食事もほとんど、喉を通らなくなっていた。
一方ラピズは……
ヴィオラから事の顛末を聞かされた時は、焦りや混乱をきたしたものの。
サイフォスに呼び出されて謝罪をした際は、逆に爵位や莫大な慰謝料の授与を言い渡されたため。
己を恥じ、深く謝意を抱き。
本来の姿に戻ってからは、ヴィオラに求婚するための準備を進めていた。
というのも、それらの恩恵を授かる際……
「これで俺の代わりに、ヴィオラを幸せにしてやってくれ」
そうサイフォスに頼まれからでもあり。
それにより、土地を購入して屋敷を建てたり、環境や身の上を整えたりしていたのだった。
もちろんシュトラント公爵からも、事前に婚姻の許可を得ていたが……
公爵の方は、日に日にやつれていくヴィオラを前に、早まったと焦りを感じていた。
というのも公爵は、与えられた南部公領に、本拠地を移す事にしていたため。
現在のシュトラント家は、ヴィオラとラピズに管理を任せようと考えていたのだ。
しかし2人が結婚しなかった場合。
今のヴィオラは任せられる状態ではない上に、そんな娘を残して移転するわけにもいかず……
現状を改善しようと、憂慮していた事を投げかけた。
「今朝も、食事を摂らなかったそうだな。
こうも望み通りになったというのに、どうしてそんなに塞ぎ込んでいるのだ」
「……王宮生活の疲れが出ているだけだと、言ったはずです。
なのでお父様は、引き続き移転の準備を進めてください」
「そうしたいところだが……
本当にそれだけか?
塞ぎ込んでいる理由は、他にあるのではないか?」
「どういう意味ですか?」
「……お前は殿下を、愛してしまったのではないか?」
その言葉に誘発されて。
必死に諦めようとして押し殺してきたその気持ちが、ぶわりと涙になって溢れ出す。
「やはりそうか……
だったらどうして、見限られるほど悪妃に扮したのだ」
「……後悔、しています」
とだけ答えるヴィオラ。
いくら父親でも、暗殺や伝説魔法の事などを言うわけにはいかなかったからだ。
ましてや、酔って口を滑らせるような相手には尚更の事。
「だが後悔したところで、今さらどうにもならんだろう!
それにお前には、ラピズがいるではないか」
「私の心にはもう、サイフォス様しかいませんっ」
「だが所詮!他の女に心変わりするような男ではないかっ。
その点ラピズは、お前が他の男に嫁いでもなお、一途に愛してくれてるのだぞっ?」
「でもサイフォス様だけなんですっ!
私はあんなにも、大切にしてもらったのにっ……」
と言って、泣き崩れるヴィオラ。
22
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
[完結連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ/ちゃんこまめ・エブリスタ投
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
【完結】本当の悪役令嬢とは
仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。
甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。
『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も
公爵家の本気というものを。
※HOT最高1位!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる