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後悔3
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「もちろんお前への慰謝料も、今の生活を生涯維持出来るほど用意する」
「っ、そんなもの要りません!」
堪らず反論するヴィオラ。
身の上を案じていたわけではないのもそうだが……
ーー私はただ、サイフォス様の側に居たいだけなのにっ……
それ以外は何も要らないのに!
そう強く、今にも口から出そうなほど強く思ったからだ。
にもかかわらず……
「離婚を切り出したのは俺だ。
俺の気が済まないから、全て受け取ってもらう」
すぐさま、そう切り返されてしまう。
そしてそもそも、こうなってしまっては……
散々傷付けた自分には、もう側に居たいと言える資格すらないのだと。
本来の形で幸せになろうとしている2人を、これ以上邪魔するわけにはいかないと。
さらには気が済まないといった理由で、それほどの恩恵を与えられる事から……
気持ちを伝えてしまえば、優しいサイフォスはもっと罪悪感を感じてしまうだろうと思い。
再び込み上げて来た涙と一緒に、その強い思いも、ぐっとぐうっと抑え込むヴィオラ。
それでもなお、承諾出来ずにいると……
「……それと、早急に離婚に応じるのなら。
ラピズにも同額の慰謝料と、特別に伯爵位も与えてやる」
そうありえない交換条件を持ち掛けられて、ヴィオラは耳を疑った。
王族に暗殺を企てれば、当然処刑は免れないが……
それは隠蔽したとしても。
王族を欺いて王宮に潜入したり、裏切っているも同然の状況だけでも、充分処刑案件だというのに。
2人して何のお咎めもないどころか、さらなる恩恵を与えられるなど……
どう考えても不合理だからだ。
するとサイフォスから、その理由が告げられた。
「本来なら処刑するところだが……
お前たちの仲を引き裂いて、先に奪ったのは俺だからな。
その侘びだ。
なにより、気持ちが冷めた今となっては、お前たちの事などどうでもいい。
地位や財産で、早くケリをつけたいだけだ。
だからラピズのためにも、さっさと離婚に応じてくれっ」
そう苛立つサイフォスに、ヴィオラの胸はズタズタに八つ裂かれる。
ーーもうサイフォス様の心に、私は微塵もいないのですねっ……
抑え込んでいた涙が、今にも溢れ出しそうになり。
耐えきれずに、じわりと滲んでしまうも。
ーーダメ!お願い収まってっ……
これ以上サイフォス様を困らせたくないっ!
そう思って、死に物狂いで押し殺す。
そしてサイフォスのために……
早く承諾しなければと、決意を固めるヴィオラ。
そう、ラピズは説得出来たようではあったが……
今後の身の振り方に対しての答えは、未だに出されておらず。
その現状から考えると、引き続き側にいる事を望む可能性が高かった。
しかし素性がバレてしまった今となっては……
王宮から追放されるのは言うまでもなく。
最悪の場合、国外追放の可能性すらあっただろう。
となると、ヴィオラが離婚しない限り……
また闇魔術士の力を借りて、追放の身でありながら王宮に潜入する可能性や。
追放したサイフォスに、報復を企てる可能性があると思い。
サイフォスを守るためには、どのみち離婚するしかないと思ったのだ。
そうすれば、ヴィオラとラピズが引き離される状況にはならない上に。
慰謝料や伯爵位を与えられたとなれば、その寛大すぎる措置に心を打たれて……
憎しみも薄れ、サイフォスに危害を加える気にもならないと踏んだからだ。
つまりはサイフォスを守るために。
愛する人の幸せのために。
ヴィオラはやっとの思いで涙をこらえて。
嫌だと暴れ狂う心に鞭打って。
断腸の思いで、別れを決断すると……
「……っっ、離婚を、受け入れますっ」
震える声で、なんとかその一言を絞り出したのだった。
そしてそれ以降、サイフォスとは一度も会えぬまま……
ヴィオラは追い出されるように、王宮を去ったのだった。
「っ、そんなもの要りません!」
堪らず反論するヴィオラ。
身の上を案じていたわけではないのもそうだが……
ーー私はただ、サイフォス様の側に居たいだけなのにっ……
それ以外は何も要らないのに!
そう強く、今にも口から出そうなほど強く思ったからだ。
にもかかわらず……
「離婚を切り出したのは俺だ。
俺の気が済まないから、全て受け取ってもらう」
すぐさま、そう切り返されてしまう。
そしてそもそも、こうなってしまっては……
散々傷付けた自分には、もう側に居たいと言える資格すらないのだと。
本来の形で幸せになろうとしている2人を、これ以上邪魔するわけにはいかないと。
さらには気が済まないといった理由で、それほどの恩恵を与えられる事から……
気持ちを伝えてしまえば、優しいサイフォスはもっと罪悪感を感じてしまうだろうと思い。
再び込み上げて来た涙と一緒に、その強い思いも、ぐっとぐうっと抑え込むヴィオラ。
それでもなお、承諾出来ずにいると……
「……それと、早急に離婚に応じるのなら。
ラピズにも同額の慰謝料と、特別に伯爵位も与えてやる」
そうありえない交換条件を持ち掛けられて、ヴィオラは耳を疑った。
王族に暗殺を企てれば、当然処刑は免れないが……
それは隠蔽したとしても。
王族を欺いて王宮に潜入したり、裏切っているも同然の状況だけでも、充分処刑案件だというのに。
2人して何のお咎めもないどころか、さらなる恩恵を与えられるなど……
どう考えても不合理だからだ。
するとサイフォスから、その理由が告げられた。
「本来なら処刑するところだが……
お前たちの仲を引き裂いて、先に奪ったのは俺だからな。
その侘びだ。
なにより、気持ちが冷めた今となっては、お前たちの事などどうでもいい。
地位や財産で、早くケリをつけたいだけだ。
だからラピズのためにも、さっさと離婚に応じてくれっ」
そう苛立つサイフォスに、ヴィオラの胸はズタズタに八つ裂かれる。
ーーもうサイフォス様の心に、私は微塵もいないのですねっ……
抑え込んでいた涙が、今にも溢れ出しそうになり。
耐えきれずに、じわりと滲んでしまうも。
ーーダメ!お願い収まってっ……
これ以上サイフォス様を困らせたくないっ!
そう思って、死に物狂いで押し殺す。
そしてサイフォスのために……
早く承諾しなければと、決意を固めるヴィオラ。
そう、ラピズは説得出来たようではあったが……
今後の身の振り方に対しての答えは、未だに出されておらず。
その現状から考えると、引き続き側にいる事を望む可能性が高かった。
しかし素性がバレてしまった今となっては……
王宮から追放されるのは言うまでもなく。
最悪の場合、国外追放の可能性すらあっただろう。
となると、ヴィオラが離婚しない限り……
また闇魔術士の力を借りて、追放の身でありながら王宮に潜入する可能性や。
追放したサイフォスに、報復を企てる可能性があると思い。
サイフォスを守るためには、どのみち離婚するしかないと思ったのだ。
そうすれば、ヴィオラとラピズが引き離される状況にはならない上に。
慰謝料や伯爵位を与えられたとなれば、その寛大すぎる措置に心を打たれて……
憎しみも薄れ、サイフォスに危害を加える気にもならないと踏んだからだ。
つまりはサイフォスを守るために。
愛する人の幸せのために。
ヴィオラはやっとの思いで涙をこらえて。
嫌だと暴れ狂う心に鞭打って。
断腸の思いで、別れを決断すると……
「……っっ、離婚を、受け入れますっ」
震える声で、なんとかその一言を絞り出したのだった。
そしてそれ以降、サイフォスとは一度も会えぬまま……
ヴィオラは追い出されるように、王宮を去ったのだった。
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