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自覚1

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 それからのヴィオラは……
引き続き公務に夢中になり、完璧にこなしながらも。
新たな公務の引き継ぎを、催促出来ずにいた。

 どんなに自戒していても……
サイフォスと会えば、また心が惑わされてしまいそうで、怖かったからだ。

 しかも、2人っきりになれば……
また求め合ってしまいそうだと。
もうサイフォスを傷つけたくないため、拒む事など出来ないと。
懸念していたからだ。

 かといって。
然るべき理由もなく、2人っきりを避けるとなると。
さらにはラピズに指摘された途端、行動を改めたとなると。
不自然なうえに、後ろめたさを物語っているようで……
はなからサイフォスと関わらないようにする事で、それらの問題を回避していた。

 しかしそれが、かえってヴィオラの気持ちを自覚させる事となる。

ーー殿下は今、どうしてるだろう……
また無理をしているんじゃ?
王妃陛下の事で、辛い思いをしているんじゃ?

 そう、王妃の容態は大魔導師でも治せなかったようで……
あれから程なくして、床に臥した事が報じられたのだった。

 それによりヴィオラは、しきりにサイフォスの事を思い浮かべては……
その辛い現状に、心配でならない思いと。
慰めたくてもどかしい気持ちを、募らせていった。

 と同時に、無自覚に恋しさも募らせており……

ーーあぁ、殿下に会いたい。
会いたくてたまらない!
とうとう、その気持ちが噴出してしまう。

ーーそもそも殿下の方は、気持ちを自戒してるわけでもないのに……
どうして会いに来てくださらないのっ?
今は王妃陛下の事で、私の事どころじゃないのはわかるけど……
また慰めて欲しいとは、思ってくださらないのっ?

~「こうしてその顔を見れるだけで。
俺はいくらでも力が湧いてきて、なんだって乗り越えられるんだ」~
ーーそうおっしゃってくださったのに……
散々傷付けて来た私では、もう何の力にもなれないのっ?

 悔しくて、やるせなくて、胸が張り裂けそうになるヴィオラ。

ーー確かに、今は殿下と関わるわけにはいかないけど……
私はこんなにも会いたいのに!
会いたくて恋しくて、殿下の事ばかり考えてるのにっ……
殿下は少しもそう思ってくださらないのっ?
そう思ったところで、ハッとする。

ーー待って私、何考えてるの?
これじゃあまるで……
嘘でしょ、そんなっ……
ああなんて事!
……ラピズの言う通りだ。
すでに私は、殿下の事が好きなんだ……

 どう否定しても、誤魔化し切れないその気持ちを。
ヴィオラはもう、認めざるを得なかった。

ーーいったい、いつからっ?
初めてキスした時から?
それとも、立ち聞きで真相を知ってから?
……いいえきっと、それらは気持ちのタガが外れたきっかけにすぎなくて。
たぶん、もっと前から……

 そう、サイフォスの優しさや誠実さに触れるたび。
敬服せずにはいられない、その人間性を知るたび。
そして深くひたむきな愛を注がれるたび、想いが募っていったのだと……
これまでの事を思い返すヴィオラ。

 けれどラピズへの罪悪感から、その想いを無意識に誤魔化していたのだと悟り……

ーーこれからもこの想いは、絶対に隠さなければいけない!
そう意を決するヴィオラ。

 それは言うまでもなく、サイフォスを守るためであり。
ラピズに罪を犯させないためでもあった。

 他の男と結婚した元恋人を追って、全てを捨てたラピズなら。
そんな元恋人を守るために、伝説魔法を探し当てたラピズなら。
そのために、自らの命までも犠牲にしているラピズなら。

 なりより。
長年一緒に居たヴィオラが、慄いて背筋を凍らせるほどの、言動を見せていたラピズなら。
本当にサイフォスを殺しかねないと、危惧していたからだ。

 しかし逆に、気持ちを自覚した今となっては……
もう自戒しなくてもいいため、関わらないようにする必要もなく。
好きだとバレないようにすれば、いくらでも会えると、気持ちがはやるヴィオラ。

 とはいえ。
~「なんで今は悪妃を演じないんだよ!
殿下を好きになったからじゃないのかっ?」~
そう疑われた事や。
それを裏付ける行動を、散々取ってしまった事から……
これ以上見破られないようにするため、なんらかの手を打つ必要はあった。

 そこでヴィオラは、指摘を受けた悪妃を再び演じようと思い立つ。
といっても、もうサイフォスを傷付けたくはないため。
傷付けない方法を模索したのだった。




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