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追及1

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「……それで、相談っていうのは?」

「っそんなの口実だって事くらい、わかってるだろう!?
どうして何の説明もしてくれないんだよっ」

「っ、ごめんなさい……
だけどラピズだって、公務で忙しかった事はわかってるでしょう?」

「わかってるけど!
そもそもどうして公務を引き受けたんだよっ。
いくら王太子妃の公務でも、悪妃ならやらないはずだ!
そうすれば舞踏会での不敬と合わさって、離婚出来たかもしれないのにっ……」
片手で頭を抱えるラピズ。

「……やらなくても離婚にはならないわ。
舞踏会での一件も、殿下は微塵も怒ってなかったし。
公務だって、殿下がずっと肩代わりしてくださってて……
私がやると言い張っても、なかなか譲ってくれなかったくらいだもの」

「……それで殿下に、心を奪われたってわけか」

「っ、違うわ!」

「じゃあどうして自ら志願したんだよっ」

「それはっ……
これ以上借りを作るのが、
私の力になってるって思われてるのが、
嫌だったからよっ」

 その言い訳は、避けてる間に考えたもので……
守りたい存在に対して、他の男の方が力になっているとなれば、ラピズの方が嫌がるだろうと。
それなら納得してくれると思ったからだ。

「……だからって。
あそこまで頑張る必要があるのかっ?
離婚を狙ってる状況で、そのために悪妃を演じてる状況でっ、する行動じゃないだろう!」

「でも私が慈善活動に熱心なのは、知ってるでしょうっ?
それに個人的にしていた事と、公的にする内容は、違いが大きかったから。
すごく勉強になってたし、夢中になるのも当然でしょうっ?」

 そう、サイフォスのために頑張ったなどとは、言えるはずもなかったが……
その言い分も事実だった。
しかし。

「俺がヴィオラのために命を削ってる時にっ、ヴィオラは関係ない奴らのために夢中になるのかっ?
俺は事はもうどうでもいいのかっ!?」

「そんなわけないじゃない!
けど私が何をしたところで、払ってしまった代価はどうにもならないしっ……
その延長に関しても、絶対にしないでとお願いしたはずよっ?」

 つまりその願いを聞き入れずに延長するのなら……
それはヴィオラのためではなく、自身の目的のためでしかなく。
やりたくてやっているにすぎないのだ。

「っ第一。
そうならないように、あんなにも悪妃に徹して来たじゃない!」

ーーむしろラピズこそっ……
そうした事で私が苦しんだり、多くの貴族を敵に回したり、散々非難されてきたといのに……
それはどうでもいいのっ?

「じゃあ逆にっ、なんで今は悪妃を演じないんだよ!
殿下を好きになったからじゃないのかっ?」

 その追及に、ヴィオラはドキリ!と胸を突かれるも。

「っっ、違うわっ……
今は公務の引き継ぎを優先しなきゃだし……
それに夢中になってたからよっ」
そう思い当たる理由を並べた。

「……じゃあどうして。
公務の引き継ぎを受けるようになってから、そんなふうに粧し込んだり。
その引き継ぎで、殿下と2人きりになったりっ。
ここ最近に至ってはっ、心ここに在らずな状態なんだよ!」

「っっ、それは……
心ここに在らずになってたのは、公務で疲れてたからでっ……
引き継ぎで2人きりになってたのは、早く覚えるために集中したかったからでっ。
粧し込んでたのも、気分転換したかっただけよっ」

 もっともな理由で取り繕いながらも……
ヴィオラ自身、追及された行動の理由が分からず。
戸惑っていた。

 当然ラピズは、そんなヴィオラの反応に納得出来るはずもなく……

「……絶対に好きじゃないと、言い切れるんだな?」

 そう念を押されると、不安になるもので……
断言出来なくなるヴィオラ。

 そこでふと。
いっそ好きだと告げた方が、ラピズのためではないかとぎった。

 この先どれだけ悪妃に扮しても……
あの優しいサイフォスが、簡単に離婚に踏み切るとは思えず。
だとしたらこれ以上、下手に期待を持たせない方が。
なりより、もう代価を使う必要がなくなった方が。
いいと思ったからだ。

「……その。
仮にもし、好きになったら……
どうするつもり?」
まずはそう布石を打つと。

 ラピズはそれを察したかのように、目を見開いて。
堪らなそうに顔を歪めて、頭を抱えた。

「っっっ……
……そうだな。
たぶん、その時は……」
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