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交渉2
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「モエにございます。
殿下がお倒れになったと聞き、お見舞いに伺いました」
ヴィオラはまず、王宮魔術士にそう声掛けさせた。
ウォルター卿に嫌われている自分では、門前払いされたり。
倒れたという事実を否定されたり、話すら聞いてもらえない可能性があるからだ。
その点、彼女なら……
サイフォスが当初、治療を依頼しようとしていた事から。
倒れた事を知っていても問題なく、隠される事もないと判断したのだ。
すると案の定。
「モエ殿!
ご訪問、感謝いたしますっ」
すぐに出てきたウォルター卿。
先程の酷く焦っていた声に反して、その表情には安堵が浮かんでおり……
ウォルター卿もヴィオラと同じように、サイフォスの事が心配で、不安でたまらなかった事がうかがえた。
「殿下の事は医者からお聞きにな、」
そう尋ねかけたところで。
開けていない方の扉前にいた、ヴィオラに気付くウォルター卿。
「妃殿下!
なぜこちらにっ!?」
「私も殿下のお見舞いですが?」
「妃殿下がっ!?」
思わぬ答えに、つい本音が出てしまうも。
「いえ、そのっ……
ですが殿下は別に、ご病気ではございません。
倒れたといっても、睡眠不足で寝込んでいるにすぎません」
臥せっているのを隠すため、即座にそう誤魔化した。
さらには。
「よって。
モエ殿は魔術士ですので、安眠のサポートをお願いしますが。
妃殿下は、殿下が目覚めるまでご遠慮ください」
と、もっともな理由でヴィオラを敬遠した。
それなら療養に数日要しても、安眠サポートによるものだと誤魔化す事が出来るうえに。
その間ヴィオラを遠ざける事も出来るからだ。
というのも、ウォルター卿は……
ヴィオラの見舞いは建前で。
弱っているサイフォスに付け込んで、ここぞとばかりに追い討ちをかける気だろうと踏んだのだ。
しかし、当然ながら。
「お断りします。
王宮魔術士を連れて来たのも、殿下が倒れた事を教えたのも、私なのですから」
「妃殿下がっ!?」
再び驚くと同時。
「では妃殿下は、誰からお聞きになったのですかっ?」
もうすでに殿下が倒れた事が広まっているのかと、狼狽えるウォルター卿。
「あなたからです」
「はっ?」
「ですから、あなたからです。
先程殿下に、私のせいで無理をする羽目になって倒れたと、仰っていたではありませんか」
「……まさか、その場にいらっしゃったのですか?」
一気に青ざめるウォルター卿。
「ええ、殿下に用事があったので。
それにしても……
殿下が勝手になさった事を、私のせいにするなんて。
責任転嫁も甚だしいのでは?
しかも、そのように陰口を叩くなど……
やっている事が、解雇された私の侍女たちと同じではありませんかっ。
殿下も殿下で。
私の侍女たちはそのように処分しておきながら、自分の部下の不敬は容認なさるなんて。
あまりに理不尽ですっ。
とても許せません!」
「申し訳ございません!」
納得のいかない部分はありながらも、その言い分は言い得て妙で。
なによりサイフォスまでもが、自分のせいで非難される羽目になったため。
慌てて頭を下げるウォルター卿。
「謝って済むとお思いですか?
だとしたら、私を侮辱しぎすです」
「……では、どうしろと」
「そうですね……
まずは殿下に、私とウォルター卿のどちらを取るか、決断してもらいましょうか」
「どちらを取るか?」
「ええ。
私の侍女たちと同じように、ウォルター卿を解雇するか。
それとも私と離婚をするか」
「そんなっ!」
こんな事で解雇される訳にはいかないうえに。
離婚は殿下にとって、身を裂かれるより辛い選択だと。
狼狽えるウォルター卿。
「っっ、妃殿下、どうかご容赦ください……
相応の償いをいたしますのでっ」
「結構です。
赦して欲しいのなら、すぐに殿下に会わせてください。
そうすれば、私を信用したとみなし。
これまでの事は水に流します」
というのも、それは……
サイフォスに害をなす悪い存在ではないと、認めた事を意味しており。
この申し出を断るとなると……
ヴィオラのせいにした事を、つまりはヴィオラを悪者扱いした考えを、悔い改めてない事になり。
先程の謝罪が、上辺だけのものとなってしまうのだ。
となると、断るわけにはいかず……
ヴィオラの厳しい追及は、当然ながら本心ではなく。
サイフォスとの面会に漕ぎ着ける、交渉の手段だったのだ。
「……っっ、わかりました。
その代わり。
殿下の容態が思わしくないと判断した場合は、即刻お引き取り願います」
その時は、処罰される事になってもヴィオラを追い払おうと。
ウォルター卿は腹を括った。
「その心配には及びません。
何のために、魔術士を連行して来たとお思いですか?」
その言葉は……
魔術士を命令で無理やり従わせている事を示しており。
魔法でサイフォスの治療をするつもりだという事も示していた。
「……ですが、殿下はもう魔法治療をするつもりはございません。
あの場にいらっしゃったのなら、その事はご存知なのではないでしょうか」
「ええもちろん。
ですが、生贄を利用させればいいのでしょう?
私がそれを説得します」
なるほど!といった感情を、露わにするウォルター卿。
いくらそれを嫌うサイフォスでも、ヴィオラの頼みなら聞き入れてくれる可能性が高いからだ。
というのもサイフォスは、急を要する状態とまではいかなくても、実際はかなりの重症で……
本人がそれを表に出さない性質のため、中等症の診断が下されていたのだ。
しかしウォルター卿は、誰よりもその性質を理解しているため。
本当は不安でたまらない、といった思いと……
出来る事なら生贄治療をして欲しい、という気持ちを抱えていたからだ。
とはいえ。
「……なぜ説得してまで、魔法治療を望まれるのですか?」
今日までのヴィオラの言動から、何か裏があるように思うウォルター卿。
そしてそう思われると判っていたヴィオラも、一貫して悪妃に徹する。
「殿下に用事があると言ったでしょう?
さっさとそれを片付けたいからです」
「……かしこまりました」
こんな時でも自分の事しか考えてない、ことごとく勝手なお方だと。
本当に冷酷なのは、殿下ではなく妃殿下の方だと。
内心憤慨しながらも……
殿下が元気になるのならと、承諾するウォルター卿。
「それと。
用事の内容を知られたくないので、あなたは席を外してください」
「はいっ?
それは出来かねますっ」
ヴィオラを信用出来るはずもなく。
側にいなければ、もしもの時にサイフォスを守れないからだ。
一方ヴィオラも。
ウォルター卿の前で、代価治療の交渉が出来るはずもなく。
「私が付いておりますので、ご安心ください」
打ち合わせ通り、王宮魔術士にそう口添えしてもらった事で。
渋々了承を得たのだった。
殿下がお倒れになったと聞き、お見舞いに伺いました」
ヴィオラはまず、王宮魔術士にそう声掛けさせた。
ウォルター卿に嫌われている自分では、門前払いされたり。
倒れたという事実を否定されたり、話すら聞いてもらえない可能性があるからだ。
その点、彼女なら……
サイフォスが当初、治療を依頼しようとしていた事から。
倒れた事を知っていても問題なく、隠される事もないと判断したのだ。
すると案の定。
「モエ殿!
ご訪問、感謝いたしますっ」
すぐに出てきたウォルター卿。
先程の酷く焦っていた声に反して、その表情には安堵が浮かんでおり……
ウォルター卿もヴィオラと同じように、サイフォスの事が心配で、不安でたまらなかった事がうかがえた。
「殿下の事は医者からお聞きにな、」
そう尋ねかけたところで。
開けていない方の扉前にいた、ヴィオラに気付くウォルター卿。
「妃殿下!
なぜこちらにっ!?」
「私も殿下のお見舞いですが?」
「妃殿下がっ!?」
思わぬ答えに、つい本音が出てしまうも。
「いえ、そのっ……
ですが殿下は別に、ご病気ではございません。
倒れたといっても、睡眠不足で寝込んでいるにすぎません」
臥せっているのを隠すため、即座にそう誤魔化した。
さらには。
「よって。
モエ殿は魔術士ですので、安眠のサポートをお願いしますが。
妃殿下は、殿下が目覚めるまでご遠慮ください」
と、もっともな理由でヴィオラを敬遠した。
それなら療養に数日要しても、安眠サポートによるものだと誤魔化す事が出来るうえに。
その間ヴィオラを遠ざける事も出来るからだ。
というのも、ウォルター卿は……
ヴィオラの見舞いは建前で。
弱っているサイフォスに付け込んで、ここぞとばかりに追い討ちをかける気だろうと踏んだのだ。
しかし、当然ながら。
「お断りします。
王宮魔術士を連れて来たのも、殿下が倒れた事を教えたのも、私なのですから」
「妃殿下がっ!?」
再び驚くと同時。
「では妃殿下は、誰からお聞きになったのですかっ?」
もうすでに殿下が倒れた事が広まっているのかと、狼狽えるウォルター卿。
「あなたからです」
「はっ?」
「ですから、あなたからです。
先程殿下に、私のせいで無理をする羽目になって倒れたと、仰っていたではありませんか」
「……まさか、その場にいらっしゃったのですか?」
一気に青ざめるウォルター卿。
「ええ、殿下に用事があったので。
それにしても……
殿下が勝手になさった事を、私のせいにするなんて。
責任転嫁も甚だしいのでは?
しかも、そのように陰口を叩くなど……
やっている事が、解雇された私の侍女たちと同じではありませんかっ。
殿下も殿下で。
私の侍女たちはそのように処分しておきながら、自分の部下の不敬は容認なさるなんて。
あまりに理不尽ですっ。
とても許せません!」
「申し訳ございません!」
納得のいかない部分はありながらも、その言い分は言い得て妙で。
なによりサイフォスまでもが、自分のせいで非難される羽目になったため。
慌てて頭を下げるウォルター卿。
「謝って済むとお思いですか?
だとしたら、私を侮辱しぎすです」
「……では、どうしろと」
「そうですね……
まずは殿下に、私とウォルター卿のどちらを取るか、決断してもらいましょうか」
「どちらを取るか?」
「ええ。
私の侍女たちと同じように、ウォルター卿を解雇するか。
それとも私と離婚をするか」
「そんなっ!」
こんな事で解雇される訳にはいかないうえに。
離婚は殿下にとって、身を裂かれるより辛い選択だと。
狼狽えるウォルター卿。
「っっ、妃殿下、どうかご容赦ください……
相応の償いをいたしますのでっ」
「結構です。
赦して欲しいのなら、すぐに殿下に会わせてください。
そうすれば、私を信用したとみなし。
これまでの事は水に流します」
というのも、それは……
サイフォスに害をなす悪い存在ではないと、認めた事を意味しており。
この申し出を断るとなると……
ヴィオラのせいにした事を、つまりはヴィオラを悪者扱いした考えを、悔い改めてない事になり。
先程の謝罪が、上辺だけのものとなってしまうのだ。
となると、断るわけにはいかず……
ヴィオラの厳しい追及は、当然ながら本心ではなく。
サイフォスとの面会に漕ぎ着ける、交渉の手段だったのだ。
「……っっ、わかりました。
その代わり。
殿下の容態が思わしくないと判断した場合は、即刻お引き取り願います」
その時は、処罰される事になってもヴィオラを追い払おうと。
ウォルター卿は腹を括った。
「その心配には及びません。
何のために、魔術士を連行して来たとお思いですか?」
その言葉は……
魔術士を命令で無理やり従わせている事を示しており。
魔法でサイフォスの治療をするつもりだという事も示していた。
「……ですが、殿下はもう魔法治療をするつもりはございません。
あの場にいらっしゃったのなら、その事はご存知なのではないでしょうか」
「ええもちろん。
ですが、生贄を利用させればいいのでしょう?
私がそれを説得します」
なるほど!といった感情を、露わにするウォルター卿。
いくらそれを嫌うサイフォスでも、ヴィオラの頼みなら聞き入れてくれる可能性が高いからだ。
というのもサイフォスは、急を要する状態とまではいかなくても、実際はかなりの重症で……
本人がそれを表に出さない性質のため、中等症の診断が下されていたのだ。
しかしウォルター卿は、誰よりもその性質を理解しているため。
本当は不安でたまらない、といった思いと……
出来る事なら生贄治療をして欲しい、という気持ちを抱えていたからだ。
とはいえ。
「……なぜ説得してまで、魔法治療を望まれるのですか?」
今日までのヴィオラの言動から、何か裏があるように思うウォルター卿。
そしてそう思われると判っていたヴィオラも、一貫して悪妃に徹する。
「殿下に用事があると言ったでしょう?
さっさとそれを片付けたいからです」
「……かしこまりました」
こんな時でも自分の事しか考えてない、ことごとく勝手なお方だと。
本当に冷酷なのは、殿下ではなく妃殿下の方だと。
内心憤慨しながらも……
殿下が元気になるのならと、承諾するウォルター卿。
「それと。
用事の内容を知られたくないので、あなたは席を外してください」
「はいっ?
それは出来かねますっ」
ヴィオラを信用出来るはずもなく。
側にいなければ、もしもの時にサイフォスを守れないからだ。
一方ヴィオラも。
ウォルター卿の前で、代価治療の交渉が出来るはずもなく。
「私が付いておりますので、ご安心ください」
打ち合わせ通り、王宮魔術士にそう口添えしてもらった事で。
渋々了承を得たのだった。
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