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暴言1

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 そんな後日、ヴィオラが朝を迎えると……

「王太子妃殿下に、ご挨拶申し上げます。
今日よりわたくしどもが、お世話をさせていただきます。
何なりとお申し付けくださいませ」
見慣れない侍女たちが、一斉に頭を下げてきた。

「……どういう事?」
側にいたリモネに尋ねると。

「それが……」

 なんと、今までヴィオラに仕えていた宮廷侍女たちは、昨日で解雇されたらしく。
正式な任命はまだだが、リモネを侍女長とし。
選び抜かれた優秀な侍女たちに、一新されたのだという。

 そしてその理由は……
ラピズとの共同作戦により、後宮の秩序や雰囲気が悪くなったため。
それを知ったサイフォスが、その理由を調べたところ。
侍女たちの企みやヴィオラへの陰口、不敬な態度や怠慢等が判明し。
その対策として、今回の総入れ替えに至ったとの事だった。

ーーちょっと待って!
その対策として私が見限られるはずだったのに、どうして侍女たちの方が見限られるのっ?
しかもこんな急に……

 そう、急に解雇された侍女たちは、当然路頭に迷うわけで……
かといって復帰させれば、ヴィオラは感謝される羽目になってしまい。
悪妃に徹するためには、つまりラピズの命を守るためには、どうする事も出来ず。
むしろ自ら手を下してなくとも、悪妃に打って付けの出来事だった。

 とはいえ。
すべては横暴に振る舞った私が悪いのに!と、ヴィオラは酷く心を痛め……
陰ながら援助する方法を考える事にした。

 そしてふと気付く。
サイフォスが理由を調べたという事や。
それにより、かなり詳しい内容まで判明している事から……
自分も秘かに調べられていて、ラピズとのやり取りもバレているんじゃないかと。

ーーうそ、どうしようっ……
どこまで把握してるのっ?
一瞬青ざめるも。
ラピズとの関係がバレていれば、見逃されるはずがないと思い直す。

 だとしても…… 
どこまで調べたのか探るため。
そして今後調べられるのを防ぐため。
なにより、もう侍女たちを犠牲にしないため。
ヴィオラはサイフォスのもとに押しかけた。



「妃殿下、何度も申し上げますが、公務中はお控えくださいっ」

 例のごとく、サイフォスの命で部屋に通したものの。
そう諫言するウォルター卿。

 と言っても、今のサイフォスは常に公務中だったが……
そう言ってヴィオラの邪魔を、常に防ぎたかったのだ。

 反してサイフォスは、ヴィオラの来訪に胸を弾ませ。
ウォルター卿に、余計な事を!と思っていたが……

「でしたら、私を怒らせる事はおやめください」

「……侍女たちの事か?
気に入らなかったのかっ?
何か、不手際でもあったのか?」
一気に深刻な気持ちになり、思い当たる事を並べた。

「そうではありません!
確かに侍女たちの事ですが……
いくら王太子殿下でも、私の侍女を勝手に解雇させるなど、あまりに横暴が過ぎませんか?」

「だがあの者たちは、王太子妃に反逆(嫌がらせ)を企て、不敬な態度をとっていた。
解雇されて当然だ」

「だとしても急すぎます!
そんな酷い処分をしては、私が恨まれるではありませんかっ」

 そう言って、侍女たちへの心配を誤魔化し。
解雇手当てなど、処分の改善を狙ったつもりだったが……

「逆だ。
愛する妃が、そんな仕打ちを受けたとなれば。
俺としては、処刑してやりたいところだったが……
ヴィオラが心を痛めると思い、このような甘い処分にしたのだ。
そしてその事は言い聞かせたゆえ、ヴィオラが恨まれる事はないだろう」

ーーでもそれじゃあ殿下が恨まれるじゃない!

 とはいえ、ヴィオラは……
サイフォスが冷酷な王太子と言われる所以が、わかった気がした。
守るべき存在を害した相手や、見限った相手には、容赦がないからだ。

 そう、いくら見た目や雰囲気が恐ろしくても……
その優しさに触れれば、そんな批判や噂は流れないだろう。
しかしほとんどの者が、それに触れる機会などなく。
逆に容赦なきところを目の当たりにすれば……
その印象の恐ろしさと相まって、冷酷なイメージが固定してしまうのだ。

「それに猶予を与えれば、その間に報復される危険性もある。
むしろ急どころか、対応が遅れてすまなかった」

「っいいえ!私は気にもしていなかったのに……
このような対応を取られては、臆したようで不愉快です!
2度と、勝手な真似はしないでくださいませっ」

「……すまなかった。
今後はちゃんと相談する」

 と言っても、相談する時間すらなかったわけだが……
そんな多忙を極めている最中にもかかわらず。
ヴィオラのために尽力した事が、ことごとく裏目に出ている状況に。
ウォルター卿は、ハァと頭を抱えずにはいられなかった。
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