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真相4
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「……どうしてその魔術士の魔法は、無効化されないの?」
「さぁ、それは教えてもらえなかったけど……
とにかく俺は、ランド・スピアーズとして。
ここでヴィオラを守るから」
「……気持ちは嬉しいけど、」
一緒にいれば、何らかの拍子にボロが出るかもしれないと。
ラピズの安全やサイフォスの気持ちを考えて、断ろうとした矢先。
「大丈夫だって!
バレる前に、離婚を成功させればいいんだし」
「っ!どうしてそれをっ……」
作戦を見透かされて、動揺する。
「……ん、宮廷教育を受けてる期間にさ。
ヴィオラの悪評を、たくさん耳にしたんだ。
最初は信じられなくて……
そのうち、ヴィオラみたいないい子が、なんでそんな事をしたんだろって。
だっていくらこの結婚が不満でも、ヴィオラが関係ない人にまで迷惑をかけるとは思えなくて……
それで気付いたんだ。
悪妃を演じて、離婚を狙ってるんじゃないかって」
「っ、さすが……
長年の付き合いの目は、欺けないわね。
だけどその作戦は、今のところ成功しそうにないの」
「何でそう思うんだ?」
「殿下はとても優しくて、心が広い人だから……
何をやっても、逆効果で終わってしまうの」
そう切なげに目を細めるヴィオラの姿が。
ラピズの胸に、ズキリと突き刺さる。
「……いや、それはヴィオラの勘違いだよ。
王太子殿下は、表向き取り繕ってるだけで。
腹の底では報復を企んでる」
「……ラピズこそ、どうしてそう思うの?」
「宮廷侍女たちが、そう言ってた。
だから、見限られるのも時間の問題だって」
「うそ、本当にっ?」
「うん。
今まで護衛騎士が付けられてなかったのが、その証拠だって。
言われてみれば、王太子妃に護衛騎士がいなかったなんて、おかしいだろ?
今回は俺の望みだったから聞き入れただけで。
離婚するつもりだから、付ける必要がなかったんだよ」
その噂は理にかなっていたが……
実のところ、サイフォスは護衛騎士を準備していた。
しかしヴィオラを大切に思うがゆえ、その適任を厳しく見極めるのに時間を要していたのだ。
そしてようやく手筈が整ったところだったが……
ランド・スピアーズの申し出と。
ラピズが妃殿下専属を希望する口実として、一匹狼と虚言したため。
ひとまずランド・スピアーズのみで様子を見る事にしたのだった。
とはいえ、侍女たちがそれを知るはずもなく。
「つまりヴィオラの作戦は、ちゃんと上手くいってたんだよ」
それを聞いたヴィオラは……
嬉しいはずなのに、胸が痛んで。
複雑な気持ちになっていた。
「それに、これからは俺も協力するから」
「っ!待って、それはダメっ」
「何で?
悪妃を演じてたのは、俺のためでもあるんだろ?」
それは、否定出来なかった。
事実ヴィオラは、悪妃を演じるのが辛くなった時。
ラピズのためにやり遂げようとしていたし。
離婚が叶えば、ラピズとやり直せるかもしれないからだ。
口籠るヴィオラを前に、イエスと判断するラピズ。
「だったら尚更、ヴィオラだけ悪者に出来ないよ」
「私はいいのっ。
それに、護衛騎士の立場で下手な事をしたら、処罰されかねないわっ」
「俺が嫌なの!
それに、ちゃんと処罰されない方法で協力するから」
「ダメよ!お願いっ」
ラピズを巻き込みたくないのは、もちろんのこと。
単独で離婚を狙うのと、元恋人と結託して離婚を狙うのは、訳が違う。
それは完全な裏切り行為に変わりなくて……
ーー殿下を、あんないい人を、裏切る事なんて出来ないっ。
しかしラピズは、そんな気持ちを知る由もなく。
「大丈夫だよ。
心配しなくても、きっとすぐに離婚出来るよ」と意欲的で。
ヴィオラの頼みを聞き入れてくれなかったのだった。
ーーああこんな事になるのなら、悪妃になんてならなきゃよかった!
「さぁ、それは教えてもらえなかったけど……
とにかく俺は、ランド・スピアーズとして。
ここでヴィオラを守るから」
「……気持ちは嬉しいけど、」
一緒にいれば、何らかの拍子にボロが出るかもしれないと。
ラピズの安全やサイフォスの気持ちを考えて、断ろうとした矢先。
「大丈夫だって!
バレる前に、離婚を成功させればいいんだし」
「っ!どうしてそれをっ……」
作戦を見透かされて、動揺する。
「……ん、宮廷教育を受けてる期間にさ。
ヴィオラの悪評を、たくさん耳にしたんだ。
最初は信じられなくて……
そのうち、ヴィオラみたいないい子が、なんでそんな事をしたんだろって。
だっていくらこの結婚が不満でも、ヴィオラが関係ない人にまで迷惑をかけるとは思えなくて……
それで気付いたんだ。
悪妃を演じて、離婚を狙ってるんじゃないかって」
「っ、さすが……
長年の付き合いの目は、欺けないわね。
だけどその作戦は、今のところ成功しそうにないの」
「何でそう思うんだ?」
「殿下はとても優しくて、心が広い人だから……
何をやっても、逆効果で終わってしまうの」
そう切なげに目を細めるヴィオラの姿が。
ラピズの胸に、ズキリと突き刺さる。
「……いや、それはヴィオラの勘違いだよ。
王太子殿下は、表向き取り繕ってるだけで。
腹の底では報復を企んでる」
「……ラピズこそ、どうしてそう思うの?」
「宮廷侍女たちが、そう言ってた。
だから、見限られるのも時間の問題だって」
「うそ、本当にっ?」
「うん。
今まで護衛騎士が付けられてなかったのが、その証拠だって。
言われてみれば、王太子妃に護衛騎士がいなかったなんて、おかしいだろ?
今回は俺の望みだったから聞き入れただけで。
離婚するつもりだから、付ける必要がなかったんだよ」
その噂は理にかなっていたが……
実のところ、サイフォスは護衛騎士を準備していた。
しかしヴィオラを大切に思うがゆえ、その適任を厳しく見極めるのに時間を要していたのだ。
そしてようやく手筈が整ったところだったが……
ランド・スピアーズの申し出と。
ラピズが妃殿下専属を希望する口実として、一匹狼と虚言したため。
ひとまずランド・スピアーズのみで様子を見る事にしたのだった。
とはいえ、侍女たちがそれを知るはずもなく。
「つまりヴィオラの作戦は、ちゃんと上手くいってたんだよ」
それを聞いたヴィオラは……
嬉しいはずなのに、胸が痛んで。
複雑な気持ちになっていた。
「それに、これからは俺も協力するから」
「っ!待って、それはダメっ」
「何で?
悪妃を演じてたのは、俺のためでもあるんだろ?」
それは、否定出来なかった。
事実ヴィオラは、悪妃を演じるのが辛くなった時。
ラピズのためにやり遂げようとしていたし。
離婚が叶えば、ラピズとやり直せるかもしれないからだ。
口籠るヴィオラを前に、イエスと判断するラピズ。
「だったら尚更、ヴィオラだけ悪者に出来ないよ」
「私はいいのっ。
それに、護衛騎士の立場で下手な事をしたら、処罰されかねないわっ」
「俺が嫌なの!
それに、ちゃんと処罰されない方法で協力するから」
「ダメよ!お願いっ」
ラピズを巻き込みたくないのは、もちろんのこと。
単独で離婚を狙うのと、元恋人と結託して離婚を狙うのは、訳が違う。
それは完全な裏切り行為に変わりなくて……
ーー殿下を、あんないい人を、裏切る事なんて出来ないっ。
しかしラピズは、そんな気持ちを知る由もなく。
「大丈夫だよ。
心配しなくても、きっとすぐに離婚出来るよ」と意欲的で。
ヴィオラの頼みを聞き入れてくれなかったのだった。
ーーああこんな事になるのなら、悪妃になんてならなきゃよかった!
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