17 / 123
真相3
しおりを挟む
*
*
*
「ヴィオラに恋人はいるのかと訊かれた時は、思わずいないと嘘をついてしまったゆえ。
どうなる事かと思ったが、いや本当に良かった!」
「っっ!
そんな経緯が……
それはさぞかし、生きた心地がしなかったでしょうっ……」
そう、王太子を騙して結婚に漕ぎ着けるなど、結婚詐欺も同然で……
犯した罪の大きさを知らしめるように、ラピズがそう嫌味をこぼすも。
結果的に上手く事が運んだため、シュトラント公爵は武勇伝のように続けた。
「しかもそれだけじゃないっ。
事前に調査もしていたようで、ラピズが恋人じゃないかと疑われたが……
娘は心優しい性質ゆえ、家臣でも対等に接しているのだと。
ラピズとは幼い頃からそうしていたため、兄妹のような関係だと。
生きた心地がしない心境下で、さらなる疑念を晴らしただけじゃなく、娘の売り込みまでやってのけたんだっ。
自力でここまで成り上がって来た、この精神力があってこそ!出来た事だろうっ」
意気揚々と語る公爵に。
ラピズは込み上げてくる怒りを必死に抑えながら、苦笑いを返した。
「まぁお前には悪い事をしたが、その分優遇してやるし。
お前も公爵家の騎士に昇格出来たわけだから。
その上その器量なら、さらなる良縁を掴めるだろう」
*
*
*
つまりサイフォスは……
ヴィオラの状況も考えず、一方的に求婚したわけではなく。
事前にちゃんと、交際相手がいないか調査を入れ。
それにより、ラピズが恋人ではないかと見当をつけたものの。
2人の関係は秘密にされていたため、シュトラント公爵に真相を尋ね。
その結果、正式に求婚したことになる。
ーー嘘でしょ……
じゃあ殿下は、微塵も悪くないじゃない!
なのに私は、あれほど非礼な態度をとって……
あんなに傷付けてっ……
胸が潰れそうになるヴィオラ。
その様子を見たラピズは、父親のした事に傷付いているのだと勘違いして。
話した事を後悔する。
「……ごめん。
やっぱり言わなきゃよかった」
「ううんっ。
こんな言いにくい事を、話してくれてありがとう……
でもね?
この真相を知ったからには、もう護衛騎士をしてもらうわけにはいかないわ」
「っ、どうして!」
「危険だからよっ!
王族に詐欺みたいな真似をするなんて、バレたら処刑は免れないわっ」
そう、騙したシュトラント公爵はもちろん。
結果的に結婚したヴィオラも、実行犯として同罪になってしまうのだ。
その点ラピズは、被害者のひとりでしかないが……
偽りの姿や素性で王族を欺いて、王宮に潜入し。
実行犯にあたる元恋人の側にいるとなれば、グルだと証明しているようなものだった。
そのためヴィオラは、罪のないラピズだけでも助けたかったのだ。
そしてもうひとつ。
これ以上サイフォスを傷付けたくなかったからだ。
ただでさえ、騙した上に散々傷付けてしまったというのに……
秘密裏に元恋人と一緒にいるなど、裏切ってるも同然だからだ。
「けどどうやってバレるって言うんだよっ」
ラピズがそう思うのはもっともで。
この真相を知っている3人が、自ら処刑されるような事を暴露するはずなどなかった。
「またお父様が、誰かに口を滑らせるかもしれないでしょう!?」
ヴィオラがそう思うのも当然で。
この真相を知って1番恨む相手に口を滑らせた事を考えると、その可能性は充分にあった。
「っ、だとしても……
俺は身を引いて失踪した事になってるから、結果的には問題ないだろっ」
「でももしラピズが、ランド・スピアーズだってバレたらどうするのっ?
恋人だと疑われてた状況で、伝説魔法を使ってまで一緒にいたら。
やっぱりそういう関係だって、立証してるようなものじゃないっ」
そう、やましい関係でなければ……
リモネのように、正式に迎え入れるはずなのだ。
「だから魔法でバレないって!」
「本当にっ?
そう言い切れる根拠があるのっ?」
「あるよっ。
ニケに……あ、この伝説魔法をかけてくれた魔術士に、教えてもらったんだ。
王宮には、全ての魔法を無効化させる部屋があるって。
けどその魔術士の魔法は、無効化されないらしくて。
実際それらしき部屋に通されけど、結果的にバレてないだろ?」
*
*
「ヴィオラに恋人はいるのかと訊かれた時は、思わずいないと嘘をついてしまったゆえ。
どうなる事かと思ったが、いや本当に良かった!」
「っっ!
そんな経緯が……
それはさぞかし、生きた心地がしなかったでしょうっ……」
そう、王太子を騙して結婚に漕ぎ着けるなど、結婚詐欺も同然で……
犯した罪の大きさを知らしめるように、ラピズがそう嫌味をこぼすも。
結果的に上手く事が運んだため、シュトラント公爵は武勇伝のように続けた。
「しかもそれだけじゃないっ。
事前に調査もしていたようで、ラピズが恋人じゃないかと疑われたが……
娘は心優しい性質ゆえ、家臣でも対等に接しているのだと。
ラピズとは幼い頃からそうしていたため、兄妹のような関係だと。
生きた心地がしない心境下で、さらなる疑念を晴らしただけじゃなく、娘の売り込みまでやってのけたんだっ。
自力でここまで成り上がって来た、この精神力があってこそ!出来た事だろうっ」
意気揚々と語る公爵に。
ラピズは込み上げてくる怒りを必死に抑えながら、苦笑いを返した。
「まぁお前には悪い事をしたが、その分優遇してやるし。
お前も公爵家の騎士に昇格出来たわけだから。
その上その器量なら、さらなる良縁を掴めるだろう」
*
*
*
つまりサイフォスは……
ヴィオラの状況も考えず、一方的に求婚したわけではなく。
事前にちゃんと、交際相手がいないか調査を入れ。
それにより、ラピズが恋人ではないかと見当をつけたものの。
2人の関係は秘密にされていたため、シュトラント公爵に真相を尋ね。
その結果、正式に求婚したことになる。
ーー嘘でしょ……
じゃあ殿下は、微塵も悪くないじゃない!
なのに私は、あれほど非礼な態度をとって……
あんなに傷付けてっ……
胸が潰れそうになるヴィオラ。
その様子を見たラピズは、父親のした事に傷付いているのだと勘違いして。
話した事を後悔する。
「……ごめん。
やっぱり言わなきゃよかった」
「ううんっ。
こんな言いにくい事を、話してくれてありがとう……
でもね?
この真相を知ったからには、もう護衛騎士をしてもらうわけにはいかないわ」
「っ、どうして!」
「危険だからよっ!
王族に詐欺みたいな真似をするなんて、バレたら処刑は免れないわっ」
そう、騙したシュトラント公爵はもちろん。
結果的に結婚したヴィオラも、実行犯として同罪になってしまうのだ。
その点ラピズは、被害者のひとりでしかないが……
偽りの姿や素性で王族を欺いて、王宮に潜入し。
実行犯にあたる元恋人の側にいるとなれば、グルだと証明しているようなものだった。
そのためヴィオラは、罪のないラピズだけでも助けたかったのだ。
そしてもうひとつ。
これ以上サイフォスを傷付けたくなかったからだ。
ただでさえ、騙した上に散々傷付けてしまったというのに……
秘密裏に元恋人と一緒にいるなど、裏切ってるも同然だからだ。
「けどどうやってバレるって言うんだよっ」
ラピズがそう思うのはもっともで。
この真相を知っている3人が、自ら処刑されるような事を暴露するはずなどなかった。
「またお父様が、誰かに口を滑らせるかもしれないでしょう!?」
ヴィオラがそう思うのも当然で。
この真相を知って1番恨む相手に口を滑らせた事を考えると、その可能性は充分にあった。
「っ、だとしても……
俺は身を引いて失踪した事になってるから、結果的には問題ないだろっ」
「でももしラピズが、ランド・スピアーズだってバレたらどうするのっ?
恋人だと疑われてた状況で、伝説魔法を使ってまで一緒にいたら。
やっぱりそういう関係だって、立証してるようなものじゃないっ」
そう、やましい関係でなければ……
リモネのように、正式に迎え入れるはずなのだ。
「だから魔法でバレないって!」
「本当にっ?
そう言い切れる根拠があるのっ?」
「あるよっ。
ニケに……あ、この伝説魔法をかけてくれた魔術士に、教えてもらったんだ。
王宮には、全ての魔法を無効化させる部屋があるって。
けどその魔術士の魔法は、無効化されないらしくて。
実際それらしき部屋に通されけど、結果的にバレてないだろ?」
10
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる