11 / 18
平行線5
しおりを挟む
そして、その日がやって来た。
「わざわざすみませんっ」
「いやいやっ、俺が誘ったんだし!
それに、どのみち家まで案内しないとなっ」
待ち合わせした場所まで迎えに来てくれた遥さんと、挨拶を交わす。
「あ、彼女の奈々です」
「初めましてっ、清松奈々です。
今日は誘って下さって、ありがとうございますっ」
「こちらこそっ、来てくれてありがとう!
俺は須藤遥、気軽に遥って~」とまた、お互いの名前呼びが提案される。
車中の会話では……
遥さんが大手一流企業の主任をしてると知って、さっそく敗北感とゆう痛手をくらう。
そりゃあ僕の会社もそこそこだけど、立場はしがない営業マン。
この先起こるであろう、さらなる痛手に不安を抱えつつ……
鍋パ会場こと、立派なマンションの1人暮らしには広そうな遥さんの家へ到着。
はい、第2の痛手。
どーせ僕は大学時代から住んでるしがないアパートだもんねっ!
なんてヤケクソ……
「ただいま~!戻ったよ~」
「おかえり~!」
遥さんの声掛けに対して、奥から聞こえた元カノの声に……
けっこーな痛手をくらう。
いや、ここでその4文字は聞きたくなかった。
僕がそのダメージにやられてる隙に。
「いらっしゃ~い!」と出て来たその人に、奈々が率先して挨拶をすると。
「初めましてっ、本庄司沙ですっ!
ぜんぜん気とか使わなくっていーから、仲良く司沙って呼んでっ?」から始まって。
遥さん同様、お互いの名前呼びが提案される。
キミら似たものカップルなの?
リビングに入ると。
「これ、司沙さんがひとりでっ?」
完璧なまでに準備された具材やテーブルセッティングを映して、奈々が申し訳なさそうに尋ねる。
「まぁ途中まで遥も手伝ってくれたし?
それにこの人鍋好きだからさぁ!
最近じゃいつもの事ってゆーか?」
ふーん。
鍋とはいえ、遥さんには手料理作ってあげてるんだ?
ふーん……
や、別に全然いんだけどさ!
「え~、それじゃあ!
親睦を図って、愛すべき鍋を楽しもうっ。
乾杯~!」
会の始めに、そう音頭をとった遥さん。
もうひとつの目的だったはずの、看病のお礼については触れられず。
奈々に今回のいきさつを話してなかった僕としては、ありがたかった。
きっとそれは遥さんなりの配慮で……
鉢合わせしたあの時、もしかしたら今も不安だから。
同じ立ち位置の奈々もそうならないように、気遣ってくれたんじゃないかと思った。
だとしたら、なんていい人なんだろう。
しかも、「しっかりフォローする」の宣言通り……
「奈々ちゃん、ホタテ食えるっ?」
「はいっ、大好きですっ」
「よっしゃ!たーんと食いなっ?
あとほらっ、塩バター鍋と言ったらポテト!
あっ、椎茸も旨いぞ~」
「ああっ、入れすぎですっ。
でも、ありがとうございますっ!」
山盛り状態を前に、笑い出す奈々。
どって事ない気遣いだとしても。
遥さん特有の気さくな雰囲気と、そのフレンドリーさが功を奏して……
奈々は楽しそうだ。
やっぱりこの鍋パは、山口さんの胸を痛めつけるパーティーだ。
いっそ嫌な人だったらよかったのに……
「それにしてもイケメンだな~!
いや改めてっ」
そう僕に視線を向ける遥さん。
いきなりな誉め殺しに、鍋から取ってるアスパラを思わず落としそうになる。
「奈々ちゃんもめっちゃくちゃ可愛いし!
ほんと、お似合いのカップルだよなぁ~。
それに引きかえ……
司沙ぁ、俺なんかで良かったのか~?」
「な~に言ってんのっ、遥も十分男前だって。
それに蓮斗の場合は……残念なイケメン?
もぉっ、奈々ちゃんみたいなステキなコ、蓮斗にはもったいないって!」
言ってくれるね本庄さん!
てゆうか失笑してるその人は論外として、奈々までそこ笑っちゃう!?
思わず不満のオーラが込み上げると。
ふと目が合ったその人は、とたん言いすぎたと言わんばかりに、しゅんとした顔を覗かせる。
ああもう、なんてめんどくさい!
「でもそんな所もっ」
そこで奈々が、笑いを収めて話し出す。
「ダメな所も嫌な所も。
好きな人の事は、全部含めて受け止めたいです」
それは、僕の胸を射抜くには十分すぎる言葉で……
そっか。
奈々が笑ったのはきっと、本庄さんへの配慮で。
そんな事も含めて、なんていいコなんだろう……
改めて、このコを大事にしたいと思った。
「わかるっ!」
すると今度は遥さんが、溜め込んで放つように口開いた。
「俺もそう!俺なんかのめり込んじゃう方だから尚更っ。
なにがあったって愛し抜くしっ。
もう浮気する奴とかの気がしれないよ!」
すいません、それは僕です……
最後のセリフに、なによりも痛手をくらう。
そもそもそれは、敗北感以前の問題で……
僕が致命的に論外な所。
もう情けなくて、申し訳なくて……
元カノのキミを視界に入れるのも怖くなる。
いや飲もう!
とりあえず今は、飲んで忘れてせっかくだから楽しもう!
そうなんとか無理やり切り替える。
いいタイミングで話題も他へ切り替わって。
しばらく鍋を堪能しながら、飲み進めてると……
ビールが進まなくなった奈々に気づく。
「わざわざすみませんっ」
「いやいやっ、俺が誘ったんだし!
それに、どのみち家まで案内しないとなっ」
待ち合わせした場所まで迎えに来てくれた遥さんと、挨拶を交わす。
「あ、彼女の奈々です」
「初めましてっ、清松奈々です。
今日は誘って下さって、ありがとうございますっ」
「こちらこそっ、来てくれてありがとう!
俺は須藤遥、気軽に遥って~」とまた、お互いの名前呼びが提案される。
車中の会話では……
遥さんが大手一流企業の主任をしてると知って、さっそく敗北感とゆう痛手をくらう。
そりゃあ僕の会社もそこそこだけど、立場はしがない営業マン。
この先起こるであろう、さらなる痛手に不安を抱えつつ……
鍋パ会場こと、立派なマンションの1人暮らしには広そうな遥さんの家へ到着。
はい、第2の痛手。
どーせ僕は大学時代から住んでるしがないアパートだもんねっ!
なんてヤケクソ……
「ただいま~!戻ったよ~」
「おかえり~!」
遥さんの声掛けに対して、奥から聞こえた元カノの声に……
けっこーな痛手をくらう。
いや、ここでその4文字は聞きたくなかった。
僕がそのダメージにやられてる隙に。
「いらっしゃ~い!」と出て来たその人に、奈々が率先して挨拶をすると。
「初めましてっ、本庄司沙ですっ!
ぜんぜん気とか使わなくっていーから、仲良く司沙って呼んでっ?」から始まって。
遥さん同様、お互いの名前呼びが提案される。
キミら似たものカップルなの?
リビングに入ると。
「これ、司沙さんがひとりでっ?」
完璧なまでに準備された具材やテーブルセッティングを映して、奈々が申し訳なさそうに尋ねる。
「まぁ途中まで遥も手伝ってくれたし?
それにこの人鍋好きだからさぁ!
最近じゃいつもの事ってゆーか?」
ふーん。
鍋とはいえ、遥さんには手料理作ってあげてるんだ?
ふーん……
や、別に全然いんだけどさ!
「え~、それじゃあ!
親睦を図って、愛すべき鍋を楽しもうっ。
乾杯~!」
会の始めに、そう音頭をとった遥さん。
もうひとつの目的だったはずの、看病のお礼については触れられず。
奈々に今回のいきさつを話してなかった僕としては、ありがたかった。
きっとそれは遥さんなりの配慮で……
鉢合わせしたあの時、もしかしたら今も不安だから。
同じ立ち位置の奈々もそうならないように、気遣ってくれたんじゃないかと思った。
だとしたら、なんていい人なんだろう。
しかも、「しっかりフォローする」の宣言通り……
「奈々ちゃん、ホタテ食えるっ?」
「はいっ、大好きですっ」
「よっしゃ!たーんと食いなっ?
あとほらっ、塩バター鍋と言ったらポテト!
あっ、椎茸も旨いぞ~」
「ああっ、入れすぎですっ。
でも、ありがとうございますっ!」
山盛り状態を前に、笑い出す奈々。
どって事ない気遣いだとしても。
遥さん特有の気さくな雰囲気と、そのフレンドリーさが功を奏して……
奈々は楽しそうだ。
やっぱりこの鍋パは、山口さんの胸を痛めつけるパーティーだ。
いっそ嫌な人だったらよかったのに……
「それにしてもイケメンだな~!
いや改めてっ」
そう僕に視線を向ける遥さん。
いきなりな誉め殺しに、鍋から取ってるアスパラを思わず落としそうになる。
「奈々ちゃんもめっちゃくちゃ可愛いし!
ほんと、お似合いのカップルだよなぁ~。
それに引きかえ……
司沙ぁ、俺なんかで良かったのか~?」
「な~に言ってんのっ、遥も十分男前だって。
それに蓮斗の場合は……残念なイケメン?
もぉっ、奈々ちゃんみたいなステキなコ、蓮斗にはもったいないって!」
言ってくれるね本庄さん!
てゆうか失笑してるその人は論外として、奈々までそこ笑っちゃう!?
思わず不満のオーラが込み上げると。
ふと目が合ったその人は、とたん言いすぎたと言わんばかりに、しゅんとした顔を覗かせる。
ああもう、なんてめんどくさい!
「でもそんな所もっ」
そこで奈々が、笑いを収めて話し出す。
「ダメな所も嫌な所も。
好きな人の事は、全部含めて受け止めたいです」
それは、僕の胸を射抜くには十分すぎる言葉で……
そっか。
奈々が笑ったのはきっと、本庄さんへの配慮で。
そんな事も含めて、なんていいコなんだろう……
改めて、このコを大事にしたいと思った。
「わかるっ!」
すると今度は遥さんが、溜め込んで放つように口開いた。
「俺もそう!俺なんかのめり込んじゃう方だから尚更っ。
なにがあったって愛し抜くしっ。
もう浮気する奴とかの気がしれないよ!」
すいません、それは僕です……
最後のセリフに、なによりも痛手をくらう。
そもそもそれは、敗北感以前の問題で……
僕が致命的に論外な所。
もう情けなくて、申し訳なくて……
元カノのキミを視界に入れるのも怖くなる。
いや飲もう!
とりあえず今は、飲んで忘れてせっかくだから楽しもう!
そうなんとか無理やり切り替える。
いいタイミングで話題も他へ切り替わって。
しばらく鍋を堪能しながら、飲み進めてると……
ビールが進まなくなった奈々に気づく。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
恋愛図書館
よつば猫
ライト文芸
女性不信の道哉は、鮮やかな笑顔の結歌に、初めての恋をするも。
結婚話のトラブルから別れてしまう。
しかしもう一度やり直したいと、こじれた恋愛の思い出を辿り……
月日は流れ、残酷な現実と直面する。
表紙はミカスケ様のフリーイラストをお借りしています!
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
しんおに。~新説・鬼遊戯~
幹谷セイ
ライト文芸
オカルト好きな女子高生・談子の通う学校には、鬼が封印されているという伝説がある。
その謎を解き明かそうと、幼女の姿をした謎の生徒会長・綺羅姫と行動を共にするうちに、本当に封印された鬼を蘇らせてしまった。
学校は結界によって閉鎖され、中に閉じ込められた生徒たちは次々と魂を食われてゆく。
唯一、鬼を再び封印できる可能性を秘めた談子は、鬼を監視するために選び抜かれた、特殊能力を持つ生徒会役員たちと力を合わせてリアル鬼ごっこを繰り広げる!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる