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虹色アゲハ2
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そして望は、鷹巨の愛を無駄にしないためにも……
その信じたいという気持ちを実践してみようと思った。
勝負のために盛られたという話も。
目を合わさなかった時の話も。
ー「俺も望が全てだよ。
あの頃からずっと」ー
思い出すたび、胸を掴むその言葉も。
全部信じてみようと……
信じたいと思ったのだ。
ねぇ仁希……
誰よりも普通の人生に焦がれてた仁希は、それが一番幸せだと思って。
私にはそんな人生を歩ませようと、罪を消してくれたのよね?
だから連れてってもらえなかったのよね?
なにより、それらは罪悪感からではなく愛によるものだと……
そう信じたいと。
だからしっかり生きなきゃと、望は心を奮い立たせたのだった。
◇
半年後。
望は夜勤の仕事で働いていて。
昼間は倫太郎と過ごす日々を送っていた。
ある雨の日、病室に向かっていると。
その後ろ姿を見ていた看護婦が、思わず呟く。
「毎日毎日、健気ね……
あのコもう、無理だろうに」
「しっ、聞こえるわよ」
聞こえていたのか、いないのか……
望は倫太郎の寝顔を眺めると。
その手をぎゅっとして、項垂れた。
でもすぐに。
「あ、爪伸びてきたわね。
すぐ切ってあげる」
そんな生きてる証を愛しそうに見つめながら、パチンパチンと処置を始めた。
ところが手を滑らせて、倫太郎の手がぼとりとベッドに落ちてしまい。
その瞬間、あの日の恐怖が……
倫太郎がいなくなると思った恐怖が甦る。
「ねぇ起きてよ、倫太郎……
あんたはこんなとこで大人しくしてる男じゃないでしょ?
ねぇっ、また退院させろって暴れてよっ。
また暇人?って減らず口叩いてよ!」
ぼろぼろ涙が溢れ出して……
どれだけ頭を下げる羽目になっても。
どんなに手を焼いたとしても。
元気ならそれだけでよかったのにと、痛感する。
涙で爪切りが出来なくなった望は、そのままベッドに泣き伏せて……
いつしか眠りに落ちていった。
そうして、ぼんやりと目を覚ました望は……
*「いつまで寝てんだよ、ナマケモノ?」
その声に、バッと顔を向けると。
そこには……
ずっと見たかった、倫太郎の無邪気な笑顔があって。
ぐわりと涙が込み上げる。
「こっちのセリフよっ」
嬉しくて嬉しすぎて、堪らずそう抱きつくと。
その温もりに、大粒の涙を後から後から溢れさせた。
**それにより、鷹臣の罪は軽くなり。
***壮絶なリハビリを乗り越えた倫太郎は、劇的な回復を遂げ。
****望は、切なさに胸を痛めながらも……
それ以上に倫太郎の幸せを願って、その後押しをすると。
自由になった倫太郎は、本当に守りたかった人の所へ行き。
*****出所した鷹臣も、ようやく愛し合える存在と巡り会う。
******そんな、とある冬の日。
凍てつく寒さの中、望が仕事から帰っていると……
「待たせてごめん」
目の前には……
猫みたいな目を細めて、くしゃっと笑う笑顔があって。
その瞬間、ぶわりと涙が堰を切る。
*******それから数日後。
2人の笑い声を乗せた電車が……
あの日叶えられなかった希望に向かって、街を飛び出していった。
そう、きっとそんな日が来ると……
望は今日も、生きる希望で心を飾る。
まるで、虹色のアゲハと戯《たわむ》れるように……
それは、倫太郎が生きてるからこそ持てる希望で。
ー「1人にしないで!」ー
意識を失う間際にかけた、その言葉は……
望の本音でもあったが、必死に繋ぎ止めようとした言葉であり。
ほっとけないと思ったかのように……
倫太郎はその命の限り、望の心を守っていたのだった。
「じゃあ倫太郎、また明日ね」
夕方になり、病院を出ると……
いつのまにか、雨は止んでいて。
空には大きな虹が架かっていた。
その時。
ふわりと光風に乗って、大好きな甘い匂いが望の鼻を掠めた。
すぐに辺りを見回すと。
湿った空気で、匂いがより強くなったのか……
病院の庭隅に、ブッドレアが繁っているのを見つける。
思わず引き寄せられた望は……
そこに張られた蜘蛛の巣に、アゲハ蝶が捕まっているのを目にして。
切ない思いで逃がしてあげると……
近くを迷走していたアゲハ蝶と、戯れ合うように飛んでいった。
想いを馳せて眺めていると、2匹はやがて見えなくなり……
あたかもそれは、虹の向こうに連れ立ったかのようだった。
ー「いつか俺が虹の向こうに連れてくよ」ー
結
その信じたいという気持ちを実践してみようと思った。
勝負のために盛られたという話も。
目を合わさなかった時の話も。
ー「俺も望が全てだよ。
あの頃からずっと」ー
思い出すたび、胸を掴むその言葉も。
全部信じてみようと……
信じたいと思ったのだ。
ねぇ仁希……
誰よりも普通の人生に焦がれてた仁希は、それが一番幸せだと思って。
私にはそんな人生を歩ませようと、罪を消してくれたのよね?
だから連れてってもらえなかったのよね?
なにより、それらは罪悪感からではなく愛によるものだと……
そう信じたいと。
だからしっかり生きなきゃと、望は心を奮い立たせたのだった。
◇
半年後。
望は夜勤の仕事で働いていて。
昼間は倫太郎と過ごす日々を送っていた。
ある雨の日、病室に向かっていると。
その後ろ姿を見ていた看護婦が、思わず呟く。
「毎日毎日、健気ね……
あのコもう、無理だろうに」
「しっ、聞こえるわよ」
聞こえていたのか、いないのか……
望は倫太郎の寝顔を眺めると。
その手をぎゅっとして、項垂れた。
でもすぐに。
「あ、爪伸びてきたわね。
すぐ切ってあげる」
そんな生きてる証を愛しそうに見つめながら、パチンパチンと処置を始めた。
ところが手を滑らせて、倫太郎の手がぼとりとベッドに落ちてしまい。
その瞬間、あの日の恐怖が……
倫太郎がいなくなると思った恐怖が甦る。
「ねぇ起きてよ、倫太郎……
あんたはこんなとこで大人しくしてる男じゃないでしょ?
ねぇっ、また退院させろって暴れてよっ。
また暇人?って減らず口叩いてよ!」
ぼろぼろ涙が溢れ出して……
どれだけ頭を下げる羽目になっても。
どんなに手を焼いたとしても。
元気ならそれだけでよかったのにと、痛感する。
涙で爪切りが出来なくなった望は、そのままベッドに泣き伏せて……
いつしか眠りに落ちていった。
そうして、ぼんやりと目を覚ました望は……
*「いつまで寝てんだよ、ナマケモノ?」
その声に、バッと顔を向けると。
そこには……
ずっと見たかった、倫太郎の無邪気な笑顔があって。
ぐわりと涙が込み上げる。
「こっちのセリフよっ」
嬉しくて嬉しすぎて、堪らずそう抱きつくと。
その温もりに、大粒の涙を後から後から溢れさせた。
**それにより、鷹臣の罪は軽くなり。
***壮絶なリハビリを乗り越えた倫太郎は、劇的な回復を遂げ。
****望は、切なさに胸を痛めながらも……
それ以上に倫太郎の幸せを願って、その後押しをすると。
自由になった倫太郎は、本当に守りたかった人の所へ行き。
*****出所した鷹臣も、ようやく愛し合える存在と巡り会う。
******そんな、とある冬の日。
凍てつく寒さの中、望が仕事から帰っていると……
「待たせてごめん」
目の前には……
猫みたいな目を細めて、くしゃっと笑う笑顔があって。
その瞬間、ぶわりと涙が堰を切る。
*******それから数日後。
2人の笑い声を乗せた電車が……
あの日叶えられなかった希望に向かって、街を飛び出していった。
そう、きっとそんな日が来ると……
望は今日も、生きる希望で心を飾る。
まるで、虹色のアゲハと戯《たわむ》れるように……
それは、倫太郎が生きてるからこそ持てる希望で。
ー「1人にしないで!」ー
意識を失う間際にかけた、その言葉は……
望の本音でもあったが、必死に繋ぎ止めようとした言葉であり。
ほっとけないと思ったかのように……
倫太郎はその命の限り、望の心を守っていたのだった。
「じゃあ倫太郎、また明日ね」
夕方になり、病院を出ると……
いつのまにか、雨は止んでいて。
空には大きな虹が架かっていた。
その時。
ふわりと光風に乗って、大好きな甘い匂いが望の鼻を掠めた。
すぐに辺りを見回すと。
湿った空気で、匂いがより強くなったのか……
病院の庭隅に、ブッドレアが繁っているのを見つける。
思わず引き寄せられた望は……
そこに張られた蜘蛛の巣に、アゲハ蝶が捕まっているのを目にして。
切ない思いで逃がしてあげると……
近くを迷走していたアゲハ蝶と、戯れ合うように飛んでいった。
想いを馳せて眺めていると、2匹はやがて見えなくなり……
あたかもそれは、虹の向こうに連れ立ったかのようだった。
ー「いつか俺が虹の向こうに連れてくよ」ー
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