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6月ー1
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そしてまた1年の月日が流れた。
「この指輪は、私の愛と真心と変わらぬ貞節の誓いであり、しるしです」
その言葉と共に、指輪が薬指に通される。
そして誓いのキスを交わした、幸せそうな2人を映して……
俺まで胸が熱くなる。
ジューンブライドに因んだ、6月の今日。
巧と章乃ちゃんの結婚式が執り行なわれて、自分の事みたいに喜びを感じてた。
だけど少し切なさも。
7年前の今頃、俺と結歌も結婚を描いてたのにな……
それは、ふとした瞬間に。
*
*
*
風呂上がりに結歌特製のブルーベリーシャーベットを食べて、ソファでまったりしてると……
ウトウトし始めたキミ。
「そろそろ眠る?」
「んん、おかしーな……
ブルーベリーは眠気を覚ますはずなのに」
「え、夜なのに眠気覚ますつもりだった?
しかもブルーベリーって、目の疲れに効くんじゃなかったっけ?」
「どっちもでーす……
ブルーベリーはすごいんだよ?他にもいっぱい……」
「じゃあその凄さは今度聞くから、今日はもう眠ろっか」
そう促して、俺の体に寄りかかってるキミを抱きかかえようとすると。
「まだ寝ませーん!まだずーっと……
明日休みだよ?
それにこのまったりしたカンジ、なんか好き……」
ジタバタ抵抗した後に、また俺に体を預けた。
愛しさが込み上げすぎて、まったりを壊してしまいそうな自分を必死に抑えながら。
そっとキミの頭を撫でた。
「じゃあ結歌の気が済むまで、ずっとこうしてよっか」
そう言うと結歌から、嬉しそうなクスクス声が漏れる。
「ずっとだよ?ずーっと。
気が済むまでとーぶん。
それでねぇ……
ずっとずうっと、道哉と一緒に居たいなぁ。
あ、こっちは永久に気が済む事はありませんよっ?」
まるで逆プロポーズみたいな言葉を、笑いながら零すキミに。
胸が弾けて言葉に詰まった。
「……え、無反応!?
もしかして引いちゃってるっ?」
慌ててキミが体を起こす。
「っ、引いてるよ。
むしろ呆れてる。
居たいじゃなくて、居てくれなきゃ困る。
俺は、ずっと一緒に居るのが当たり前だと思ってたけど、違った?」
キミの言葉に負けじと、強気な気持ちを返してみると。
始めはショックそうな表情を覗かせてたキミが……
キョトンと固まって、すぐにその顔を歪ませた。
「違わないっ……
違わないけど紛らわしーよっ!」
そう抱きついてきて、俺の胸に顔を埋める。
「ごめんごめんっ。
改めて、ずっと一緒に居ような?」
俺もぎゅっと抱き返しながら。
プロポーズもどきの気持ちが嬉しくて堪らなくて。
夢とは別の、もう1つの未来に勇気が湧いてた。
正直その未来と向き合うのは、何よりも怖かった。
だけど……
ーどんな道でも、キミと一緒に歩みたいー
ずっと抱えてた確かな気持ちを、確かな現実に変えようと思えた。
その内ちゃんと、俺からプロポーズしよう。
そう心に決めて。
浮かんだキミのドレス姿に、頬が緩んだ。
*
*
*
「章乃、綺麗だなぁ……」
「文乃もそろそろ結婚したくなった?」
二次会の会場になってる俺の職場で、料理を出しながら……
仕事尽くしの彼女に問い掛けた。
「まぁ、ね。
私もいいかげん、前に進まなきゃね……」
「へぇ、いい人が居るんだ?」
ひとまず料理を出し終えた様子に、そこでそのまま話を続けると。
睨み顔が向けられる。
「そーゆう意味じゃないわよっ。
章乃にはね、前から言われてたの。
道哉には心に決めた人が居るから、どうにもならないよって。
お姉ちゃんはお姉ちゃんの運命の人を探しなよ、って」
思ってもないカミングアウトに、暫し硬直。
「……っ、えっ?」
「えっ、じゃないわよ。
どんだけその子しか見えてないワケ?
こんなに長い間、ココの担当で居続けたのも。
その為に他のオイシイ仕事を蹴ってきたのも。
それなりにモテて来たのに独り身で居たのも。
想いを仕事尽くしで誤魔化して、道哉の友人で居続けたのもっ……
全っ部道哉の事が忘れられなかったからでしょ!?
こんの鈍感オトコっ!」
実を言うと、そう感ずいてた時期もあった。
だけどさすがに何年もそれはないと、とっくにその考えは消えていた。
「っっ……
ごめん、俺っ……」
あまりに健気で一途な想いに、言葉が詰まる。
「謝らないで!わかってるんだからっ。
余計惨めでしょっ?」
「そうじゃなくてっ……」
文乃の気持ちは、狂おしいほどよく解る。
手に入らないかもしれない相手を何年も想い続ける……
切なくて、もどかしくて、やり切れない気持ち。
しかも文乃は、俺の心に揺るぎない存在が居るのを解ってて。
それを側で見守りながら、ずっと……
「何で俺なんだよっ」
思わず片手で顔を覆った。
「……私だって自分を問い詰めたいわよ。
あと道哉の事も。
何でその子なのよ、って」
その言葉で、ハッと文乃に顔を向けて……
ため息が零れた。
そうだよな……
想いは理屈じゃない。
女を憎んでた俺が、結歌に溺れたように。
ずっと会えなくても、愛が募るように。
そして文乃の気持ちが解るからこそ。
「気付けなくて、ごめん。
付き合ってた時も、友人でいた時も……
大事に出来なくて、ごめんっ。
だけど……
ずっとずっと、ありがとうっ」
感極まった想いを伝えると。
文乃の瞳に眩い雫が膨らんで……
大きく崩れた。
「っっ……
あとで後悔したって、遅いからね?
結局ずっと独りぼっちで、寂しい人生送ってもっ、知らないからねっ?」
「ん……
覚悟してるよ」
「下半期は異動に踏み切るしっ、もう滅多に会えないんだからねっ?
だけどそれでもっ……
道哉の新しい道は、ずっと応援してるからねっ!」
「んっ……
俺も文乃の新しい道、応援するよ。
そんで負けないくらい、俺も頑張るよ」
ずっと働いて来たこの店で、来月からはバイトになる。
時間的融通が利くようになる分、それを開業準備に充てて……
俺もとうとう、自分の夢へ踏み出そうとしてた。
「あとっ!
あと……
その子との未来を掴めるように、祈ってるからねっ」
そう泣き笑う文乃が凄く綺麗で、愛しく思えて……
思わず抱きしめたくなったけど。
向けた視線に投影して、感謝の思いで頷いた。
ありがとう、文乃……
俺、何としてでも望む未来を掴まえるよ。
「この指輪は、私の愛と真心と変わらぬ貞節の誓いであり、しるしです」
その言葉と共に、指輪が薬指に通される。
そして誓いのキスを交わした、幸せそうな2人を映して……
俺まで胸が熱くなる。
ジューンブライドに因んだ、6月の今日。
巧と章乃ちゃんの結婚式が執り行なわれて、自分の事みたいに喜びを感じてた。
だけど少し切なさも。
7年前の今頃、俺と結歌も結婚を描いてたのにな……
それは、ふとした瞬間に。
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風呂上がりに結歌特製のブルーベリーシャーベットを食べて、ソファでまったりしてると……
ウトウトし始めたキミ。
「そろそろ眠る?」
「んん、おかしーな……
ブルーベリーは眠気を覚ますはずなのに」
「え、夜なのに眠気覚ますつもりだった?
しかもブルーベリーって、目の疲れに効くんじゃなかったっけ?」
「どっちもでーす……
ブルーベリーはすごいんだよ?他にもいっぱい……」
「じゃあその凄さは今度聞くから、今日はもう眠ろっか」
そう促して、俺の体に寄りかかってるキミを抱きかかえようとすると。
「まだ寝ませーん!まだずーっと……
明日休みだよ?
それにこのまったりしたカンジ、なんか好き……」
ジタバタ抵抗した後に、また俺に体を預けた。
愛しさが込み上げすぎて、まったりを壊してしまいそうな自分を必死に抑えながら。
そっとキミの頭を撫でた。
「じゃあ結歌の気が済むまで、ずっとこうしてよっか」
そう言うと結歌から、嬉しそうなクスクス声が漏れる。
「ずっとだよ?ずーっと。
気が済むまでとーぶん。
それでねぇ……
ずっとずうっと、道哉と一緒に居たいなぁ。
あ、こっちは永久に気が済む事はありませんよっ?」
まるで逆プロポーズみたいな言葉を、笑いながら零すキミに。
胸が弾けて言葉に詰まった。
「……え、無反応!?
もしかして引いちゃってるっ?」
慌ててキミが体を起こす。
「っ、引いてるよ。
むしろ呆れてる。
居たいじゃなくて、居てくれなきゃ困る。
俺は、ずっと一緒に居るのが当たり前だと思ってたけど、違った?」
キミの言葉に負けじと、強気な気持ちを返してみると。
始めはショックそうな表情を覗かせてたキミが……
キョトンと固まって、すぐにその顔を歪ませた。
「違わないっ……
違わないけど紛らわしーよっ!」
そう抱きついてきて、俺の胸に顔を埋める。
「ごめんごめんっ。
改めて、ずっと一緒に居ような?」
俺もぎゅっと抱き返しながら。
プロポーズもどきの気持ちが嬉しくて堪らなくて。
夢とは別の、もう1つの未来に勇気が湧いてた。
正直その未来と向き合うのは、何よりも怖かった。
だけど……
ーどんな道でも、キミと一緒に歩みたいー
ずっと抱えてた確かな気持ちを、確かな現実に変えようと思えた。
その内ちゃんと、俺からプロポーズしよう。
そう心に決めて。
浮かんだキミのドレス姿に、頬が緩んだ。
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「章乃、綺麗だなぁ……」
「文乃もそろそろ結婚したくなった?」
二次会の会場になってる俺の職場で、料理を出しながら……
仕事尽くしの彼女に問い掛けた。
「まぁ、ね。
私もいいかげん、前に進まなきゃね……」
「へぇ、いい人が居るんだ?」
ひとまず料理を出し終えた様子に、そこでそのまま話を続けると。
睨み顔が向けられる。
「そーゆう意味じゃないわよっ。
章乃にはね、前から言われてたの。
道哉には心に決めた人が居るから、どうにもならないよって。
お姉ちゃんはお姉ちゃんの運命の人を探しなよ、って」
思ってもないカミングアウトに、暫し硬直。
「……っ、えっ?」
「えっ、じゃないわよ。
どんだけその子しか見えてないワケ?
こんなに長い間、ココの担当で居続けたのも。
その為に他のオイシイ仕事を蹴ってきたのも。
それなりにモテて来たのに独り身で居たのも。
想いを仕事尽くしで誤魔化して、道哉の友人で居続けたのもっ……
全っ部道哉の事が忘れられなかったからでしょ!?
こんの鈍感オトコっ!」
実を言うと、そう感ずいてた時期もあった。
だけどさすがに何年もそれはないと、とっくにその考えは消えていた。
「っっ……
ごめん、俺っ……」
あまりに健気で一途な想いに、言葉が詰まる。
「謝らないで!わかってるんだからっ。
余計惨めでしょっ?」
「そうじゃなくてっ……」
文乃の気持ちは、狂おしいほどよく解る。
手に入らないかもしれない相手を何年も想い続ける……
切なくて、もどかしくて、やり切れない気持ち。
しかも文乃は、俺の心に揺るぎない存在が居るのを解ってて。
それを側で見守りながら、ずっと……
「何で俺なんだよっ」
思わず片手で顔を覆った。
「……私だって自分を問い詰めたいわよ。
あと道哉の事も。
何でその子なのよ、って」
その言葉で、ハッと文乃に顔を向けて……
ため息が零れた。
そうだよな……
想いは理屈じゃない。
女を憎んでた俺が、結歌に溺れたように。
ずっと会えなくても、愛が募るように。
そして文乃の気持ちが解るからこそ。
「気付けなくて、ごめん。
付き合ってた時も、友人でいた時も……
大事に出来なくて、ごめんっ。
だけど……
ずっとずっと、ありがとうっ」
感極まった想いを伝えると。
文乃の瞳に眩い雫が膨らんで……
大きく崩れた。
「っっ……
あとで後悔したって、遅いからね?
結局ずっと独りぼっちで、寂しい人生送ってもっ、知らないからねっ?」
「ん……
覚悟してるよ」
「下半期は異動に踏み切るしっ、もう滅多に会えないんだからねっ?
だけどそれでもっ……
道哉の新しい道は、ずっと応援してるからねっ!」
「んっ……
俺も文乃の新しい道、応援するよ。
そんで負けないくらい、俺も頑張るよ」
ずっと働いて来たこの店で、来月からはバイトになる。
時間的融通が利くようになる分、それを開業準備に充てて……
俺もとうとう、自分の夢へ踏み出そうとしてた。
「あとっ!
あと……
その子との未来を掴めるように、祈ってるからねっ」
そう泣き笑う文乃が凄く綺麗で、愛しく思えて……
思わず抱きしめたくなったけど。
向けた視線に投影して、感謝の思いで頷いた。
ありがとう、文乃……
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