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清潔

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セスの自室は香木のような、落ち着くいい香りがした。
灯りがともるとグリーンを基調とした内装が見え、手の込んだ家具や調度品が品よく配置されている。

間違いなくここはセスのテリトリーだ、そう感じて、肩に入っていた力が抜けた。

振り向くと部屋付きのメイドさんらしき人がセスのローブを手にして立っていて、じっと俺を見つめている。
俺もケープ脱ぐのかな?脱いで渡すのか脱がしてもらった方がいいのか迷っていると、彼女は「後は下がっていいですよ」とセスに言われ、一礼した後で去って行った。

「そのケープは人任せにしない方がいいですから」

セスは俺の肩に手をかけ、清潔の魔法を発動した。俺たちを包んだ光は藤色だ。馬車でいちゃいちゃしてたせいか、いつのまにか混じり合っていたんだな。

「魔法って不思議ですね…服がふんわりして、体も軽くなる気がします」

「…そうですね。体の中もきれいにしてますから」

へえ、体の中もか。
それはすご、い…?

「か、体の中…?」

「ふふ、ここの、奥…とか…ね?」

肩にあったセスの手が、腕から背中をゆっくりと撫で下ろしていく。
ここ、と言って触れたのは、最近は受入用の器官となっている、本来排泄器官たる場所だった。

まさか魔法で腸内洗浄されて…?!今までも?!
どうりで中出しされまくった割に、起き上がれなくなってもおなか壊した事ないわ!
おなか壊すっていうのも噂に聞くだけで、実体験なかったから、実際はそうでもないのかなって…激しい勘違い。恥ずかしい。

「ソーヤも自分でできるよう、覚えておいた方がいいですね…どうしました?」

おそらく赤くなったり青くなったりしながら、口をパクパクさせている俺を、セスは不思議そうに見下ろした。

「…ま、魔法の凄さに、衝撃を受けました」

「ソーヤのいた世界では、どのように?」

「ど、どうって…っ!俺、経験ないから、なんとなく、しかっ」

慌てて言葉を濁す俺とは裏腹にセスは真剣な顔で「とても大事なことですよ」と、子供に諭すように言う。確かにそうだけど、日本はあまり性教育が盛んではない、と思う。正しい知識がないまま本やネットに溢れた情報に晒されている。

「…たぶん、あの、おなかを下す薬を飲んだり、し、下から水を入れて……その…」

もごもごと、俺の声はだんだん小さくなっていった。
いずれの方法にしろ、俺のいた世界で腸の中をきれいにするには、中の物を出すしかない。魔法で何の苦も無くきらきら~っと消滅したりはしないのだ。

ちら、と俯いたままセスをうかがうと、驚愕に目を見開いていた。

「今時……いえ、そういった趣味嗜好の者もいるとは聞きますが、やはり病気の問題もありますからね」

趣味嗜好とか考えたくもない。
セスの話によると、清潔魔法は少しでも魔力があれば覚えることができるらしい。ただ程度や上手い下手の差はあり、腸内や男女の性器のお掃除までできる人なら、それだけで生計を立てられるそうだ。宿泊施設や診療所に勤務したり、専門の店舗もあるとの事。
性に関してリベラルな分、ケアする意識も進んでいるということだろう。俺の初体験ジュードでよかったとつくづく思う。衛生的な準備もなく、センパイに生でヤられたりしなくて良かった。下手したら傷ついて雑菌入って更におなか壊してとかゾッとする。痔主さまになってしまうわ。

日本では性教育照れくさいとか、コンドーム買うの恥ずかしいとかって風潮だったけど、大切な人を守ろうと思ったらそんなこと言ってられないんだ。こっちの人が性に開けっぴろげなのは、ちゃんと自分も相手も大事にしている結果なのかな。
まだ羞恥心が先に立ってライラみたいにはなれないけど、今まで知ろうとしなかった事も学んでいこう。その、いろんなテクニック、みたいなのとか。俺、どう取り繕ってもされるがままのマグロだし。

「ソーヤの百面相は愛らしいですが、そろそろ私のことも見てほしいですね」

顔を上げると、微苦笑しているセスと目が合う。
3日ぶりなのについお尻の性教育について考えてしまったことを反省し、俺はそっと自分からセスの滑らかな唇に口づけた。いつもしてもらうばかりなので、ちょっと気恥ずかしい。

セスはちょっと目を見開いた後

「このまま私に口づけながら、脱がしてくださいますか?」

と、にっこり微笑んだ。


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すみません。滞っております。
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