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いってきます
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寝て起きたら、夜だった。
既に魔方陣は出来上がっているようで、軽く食事をした後、ライラから魔力操作のレクチャーを受ける。
場所は団長室。俺以外で部屋の中にいるのはジュード、セス、ライラ、バリー。
異世界へ行き来可能な門を作るのは、国にも知られたくないやばい案件なのだそうだ。ライラとバリーは、何があっても口外しないという『誓約魔法』を受け入れた上で協力してくれている。
「こんな面白そうなこと見逃せないよ~!なんでも言って!!」
「ありがたいですけど…ライラさん大丈夫ですか?少しでも休みました?」
ライラは元気いっぱいだが目の下の隈がすごい。一睡もしてないんじゃないか、と思って尋ねると、「ソーヤちゃんは優しいね~!二徹三徹くらいヘーキヘーキ!」と笑う。この人も社畜か。
その時、わしゃわしゃと頭を撫でてくるライラから緑の光が見えた。しぱしぱと瞬きをする。見える。目をこすってみる。見える。
「ライラさんの魔力って、緑…?」
「おお!ソーヤちゃん開眼!!ご開帳~!」
ご開帳は違うでしょ。
俺は苦笑しながら、3人で門の保持について話し合っているジュードたちの方を見た。
ジュードとセスの魔力は、魔吸石で見た通り。石越しより輝きが強くて、胸が締め付けられるようにきれいだった。バリーは茶色。耕したばかりの畑みたいな、濃い大地の色だ。
自分の色も見える。転移した時の白い光は、俺の魔力と同じ色だと今更ながら気がついた。
「じゃあ開いた魔眼を閉じる練習もしようね。これも魔力操作だから」とにっこり笑われ、時間にして2時間ほど、ライラから教えを受けた。
ライラは性格は大雑把なのに、緻密な魔力操作を要する魔法が得意らしい。人に教えるのも上手い。バリーの方は書類仕事は神経質にこなすのに、魔力制御は大雑把で、ろくに魔法が使えないそうだ。人は見かけによらないんだな。
「準備はいいか」
そうこうしているうちに、元の世界に帰る支度が整った。
ジュードは自分も渡れるように調整したそうだけど、今回行くのは俺ひとり。
実際使ってみた後の門の固定や保持の為と、俺がこっちに戻る時、一番の目印になるのはジュードの魔力だからと残ることになった。
「ソーヤ、私の代わりに、これを」
セスが手のひらに納まる小さな小瓶を差し出す。
セスも同行したがったが、セスの魔力は召喚魔法と相性が悪いらしく、魔法陣との調整が間に合わなかった。
「それは?」
「あなたの伯母を名乗る女を始末するための魔法、ですよ」
は?始末?
いやいやいやいや、いくらなんでも始末とか考えた事もないから!そもそも魔法っていうか毒?!
セス!笑顔!笑顔がキレイすぎだよ!いっそ悪魔的で怖いよ!
「あほか、蒼夜の手を汚させんなよ」
「ならはやく私も行けるようにして下さい。だいたいソーヤを1人で行かせるなんて…」
「はいはーい、過保護さんたち、いい加減にして下さ~い」
言いながら、セスと俺の間にライラが立ちはだかった。
「絶対なしくずしセックスになるからお触り厳禁です!えっちなソーヤちゃんは二人のこと拒めないんだからね!自重してください!」
ちょ!
待!!
俺は口をパクパクさせながら、何一つ反論できずに赤面した。
「そうですよ、お二人とも」と、バリーにまで窘められたジュードとセスは、珍しく呆気に取られている。
「ソーヤちゃん、心配してくれている人がいるのなら、早く顔を見せてあげて。そんでちゃんと、お嫁に行くって伝えるんだよ?」
「……えっと、あの、ハイ…?」
思いのほか真剣なまなざしのライラに見据えられ、勢いに押されて頷いた。
俺がこっちの世界に来て、もう一週間が経っている。
本当に俺を気にかけて探してくれている人がいるなら、どれほど心配をかけていることだろう。
「…まあ、ライラの言う通りだな。向こう側の、お前を求める波動が弱まる前に渡ったほうがいい」
「……3日間です、ソーヤ。3日であなたが戻らなければ、迎えに行きますからね」
俺の中に燻る少しの不安を、ジュードとセスがそれぞれの言葉と思いで、そっと包んでくれる。
だから、信じよう。
俺を待ってくれている人がいること。
俺には帰る場所が、あること。
「…いって、きます」
頷く4人の顔を確かめてから、俺は一歩踏み出した。
元の世界に繋がる、虹色の魔方陣の中へと。
既に魔方陣は出来上がっているようで、軽く食事をした後、ライラから魔力操作のレクチャーを受ける。
場所は団長室。俺以外で部屋の中にいるのはジュード、セス、ライラ、バリー。
異世界へ行き来可能な門を作るのは、国にも知られたくないやばい案件なのだそうだ。ライラとバリーは、何があっても口外しないという『誓約魔法』を受け入れた上で協力してくれている。
「こんな面白そうなこと見逃せないよ~!なんでも言って!!」
「ありがたいですけど…ライラさん大丈夫ですか?少しでも休みました?」
ライラは元気いっぱいだが目の下の隈がすごい。一睡もしてないんじゃないか、と思って尋ねると、「ソーヤちゃんは優しいね~!二徹三徹くらいヘーキヘーキ!」と笑う。この人も社畜か。
その時、わしゃわしゃと頭を撫でてくるライラから緑の光が見えた。しぱしぱと瞬きをする。見える。目をこすってみる。見える。
「ライラさんの魔力って、緑…?」
「おお!ソーヤちゃん開眼!!ご開帳~!」
ご開帳は違うでしょ。
俺は苦笑しながら、3人で門の保持について話し合っているジュードたちの方を見た。
ジュードとセスの魔力は、魔吸石で見た通り。石越しより輝きが強くて、胸が締め付けられるようにきれいだった。バリーは茶色。耕したばかりの畑みたいな、濃い大地の色だ。
自分の色も見える。転移した時の白い光は、俺の魔力と同じ色だと今更ながら気がついた。
「じゃあ開いた魔眼を閉じる練習もしようね。これも魔力操作だから」とにっこり笑われ、時間にして2時間ほど、ライラから教えを受けた。
ライラは性格は大雑把なのに、緻密な魔力操作を要する魔法が得意らしい。人に教えるのも上手い。バリーの方は書類仕事は神経質にこなすのに、魔力制御は大雑把で、ろくに魔法が使えないそうだ。人は見かけによらないんだな。
「準備はいいか」
そうこうしているうちに、元の世界に帰る支度が整った。
ジュードは自分も渡れるように調整したそうだけど、今回行くのは俺ひとり。
実際使ってみた後の門の固定や保持の為と、俺がこっちに戻る時、一番の目印になるのはジュードの魔力だからと残ることになった。
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セスも同行したがったが、セスの魔力は召喚魔法と相性が悪いらしく、魔法陣との調整が間に合わなかった。
「それは?」
「あなたの伯母を名乗る女を始末するための魔法、ですよ」
は?始末?
いやいやいやいや、いくらなんでも始末とか考えた事もないから!そもそも魔法っていうか毒?!
セス!笑顔!笑顔がキレイすぎだよ!いっそ悪魔的で怖いよ!
「あほか、蒼夜の手を汚させんなよ」
「ならはやく私も行けるようにして下さい。だいたいソーヤを1人で行かせるなんて…」
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待!!
俺は口をパクパクさせながら、何一つ反論できずに赤面した。
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「ソーヤちゃん、心配してくれている人がいるのなら、早く顔を見せてあげて。そんでちゃんと、お嫁に行くって伝えるんだよ?」
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