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特質武器と僕
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「……これ、なんですけど……」
「ほう……こりゃ、凄いな」
刃渡り50㌢に及ぶ両刃のナイフ。
真っ白い鞘に納まったソレは、あの猟牙虎のドロップ品だ。
普通、猟牙虎に限らずドロップ品っていうのは元になった禍物由来の素材でしかない。
でも、あの猟牙虎は違ったんだ。
猟牙虎の牙
琥珀色の爪
縞模様の大皮
泪石
そして、四本目の禍物核水晶と、このナイフ
禍物から、加工された武器そのものがドロップするなんて、どんな本にも書かれていなかった。
ぬこ様なら知ってるかもだけど、一度調べてみてからの方が良い。
なんでも頼りっきりは良くないからね。
と、いう事でサリアさんにギルドと提携している武器専門店を教えて貰ったんだけど……
「…………」
「………………」
「……………………」
黙っちゃった。
販売と鍛冶両方やってるお店だし、目の前でナイフを穴が開くほど見ている人……『親方』のレドックさんは、なんと金等級冒険者の使う剣を打った事もある名工さんだ。
「…………………………」
「…あ、あの~」
恐る々声を掛けてみる。だって動かないんだもん。
あと、目が恐い。
魅入られる……っていう感じで。
「お!? す、すまん」
良かった、正気に戻ってくれたみたい。
「こりゃ、オレの手には負えねえ。こんな凄ぇ刃は初めて見たぜ」
「そうなんですか……」
「ちっと、手を見せてくんな」
「あ、はい」
レドックさんは僕の手をしげしげとみて、軽く握ったりする。
我ながら薄くて、小さい手。
レドックさんの様な固くてゴツゴツした、働く人の手とあまりに違う、軟弱な手。
僕だって、剣を振るう訓練はしてる。普通ならマメが出来て、次第に固くなる筈なのに、いつまで経っても変わらないんだよなぁ……
「このナイフを握ったかい?」
「あ、いえ。まだちゃんと持った事は無いです」
売る気は無いけど、何て言うか……僕が持ってても宝の持ち腐れな気もするし……
「そうか。だが、これは間違いなくあんただけの武器だ。ちゃんと握って、抜いてやれば判るぜ」
「……って、言われたんです」
『そりゃ腕の良い鍛冶だにゃ。特質武器の本質を見てるのにゃ』
したり顔で、うにゃうにゃと頷くぬこ様。
結局よく判らなかったので、ぬこ様に詣でる事に。
『この核も、結実のしかたが違うにゃ。あの禍物はよほどアレクに感謝したんだにゃ』
核水晶を翳して見ながら、ぬこ様は満足そうだ。
結局、僕はあの猟牙虎を禍物従属したけど、何の命令もしなかった。
テイムした途端に傷が消え、何て言うか、穏やかになったあの禍物を人間の我が儘で戦わせたりしちゃいけない気がしたんだ。
傷を治すのに禍気を消費したからか、程無く禍気に還っていった猟牙虎を見送ったんだけど。
「感謝……ですか?」
『そうにゃ。禍物は禍気が結合した疑似生命体だにゃ。ちゃんと感情だってあるのにゃ』
そっか。そりゃそうだよね。
『それを素直に受け止めるアレクは、やっぱりエライにゃ』
なんでか、少し誇らしげなぬこ様に、僕はこれからも頑張って生きようって、そう思ったんだ。
「ほう……こりゃ、凄いな」
刃渡り50㌢に及ぶ両刃のナイフ。
真っ白い鞘に納まったソレは、あの猟牙虎のドロップ品だ。
普通、猟牙虎に限らずドロップ品っていうのは元になった禍物由来の素材でしかない。
でも、あの猟牙虎は違ったんだ。
猟牙虎の牙
琥珀色の爪
縞模様の大皮
泪石
そして、四本目の禍物核水晶と、このナイフ
禍物から、加工された武器そのものがドロップするなんて、どんな本にも書かれていなかった。
ぬこ様なら知ってるかもだけど、一度調べてみてからの方が良い。
なんでも頼りっきりは良くないからね。
と、いう事でサリアさんにギルドと提携している武器専門店を教えて貰ったんだけど……
「…………」
「………………」
「……………………」
黙っちゃった。
販売と鍛冶両方やってるお店だし、目の前でナイフを穴が開くほど見ている人……『親方』のレドックさんは、なんと金等級冒険者の使う剣を打った事もある名工さんだ。
「…………………………」
「…あ、あの~」
恐る々声を掛けてみる。だって動かないんだもん。
あと、目が恐い。
魅入られる……っていう感じで。
「お!? す、すまん」
良かった、正気に戻ってくれたみたい。
「こりゃ、オレの手には負えねえ。こんな凄ぇ刃は初めて見たぜ」
「そうなんですか……」
「ちっと、手を見せてくんな」
「あ、はい」
レドックさんは僕の手をしげしげとみて、軽く握ったりする。
我ながら薄くて、小さい手。
レドックさんの様な固くてゴツゴツした、働く人の手とあまりに違う、軟弱な手。
僕だって、剣を振るう訓練はしてる。普通ならマメが出来て、次第に固くなる筈なのに、いつまで経っても変わらないんだよなぁ……
「このナイフを握ったかい?」
「あ、いえ。まだちゃんと持った事は無いです」
売る気は無いけど、何て言うか……僕が持ってても宝の持ち腐れな気もするし……
「そうか。だが、これは間違いなくあんただけの武器だ。ちゃんと握って、抜いてやれば判るぜ」
「……って、言われたんです」
『そりゃ腕の良い鍛冶だにゃ。特質武器の本質を見てるのにゃ』
したり顔で、うにゃうにゃと頷くぬこ様。
結局よく判らなかったので、ぬこ様に詣でる事に。
『この核も、結実のしかたが違うにゃ。あの禍物はよほどアレクに感謝したんだにゃ』
核水晶を翳して見ながら、ぬこ様は満足そうだ。
結局、僕はあの猟牙虎を禍物従属したけど、何の命令もしなかった。
テイムした途端に傷が消え、何て言うか、穏やかになったあの禍物を人間の我が儘で戦わせたりしちゃいけない気がしたんだ。
傷を治すのに禍気を消費したからか、程無く禍気に還っていった猟牙虎を見送ったんだけど。
「感謝……ですか?」
『そうにゃ。禍物は禍気が結合した疑似生命体だにゃ。ちゃんと感情だってあるのにゃ』
そっか。そりゃそうだよね。
『それを素直に受け止めるアレクは、やっぱりエライにゃ』
なんでか、少し誇らしげなぬこ様に、僕はこれからも頑張って生きようって、そう思ったんだ。
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