ぬこ様と僕

荒谷創

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商業ギルドと僕

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「面会希望?」
午後になって、急な面会希望が押し掛けてきたと聞いて、思わず表情が歪む。
「すみませんねぇ、ピールさん」
一応、頭を下げてはくるが、ニヤニヤ笑っているのが隠しきれていないぞ、グブア。
「まったく……いいでしょう。すぐに片付けます」
差し出された申請書にざっと目を通す。
面会内容は輸入品の照会?
……ギルド章ナンバーが添えられているから行商人準会員では無い……このナンバーだと、他領の、かなり離れた土地の者だな。
何しに来てるんだ?
少し警戒した方が良いかもしれん。
今現在、この町で扱っている品物の内、輸入品とされる物の資料をまとめて面会室に向かう。
「遅くなってしまい、しつれ……失礼しました」
「こちらこそ、急な面会を受けてくださいまして、感謝します」
ぽやん、と座って待っていたのは見るからに育ちの良い、どう見ても貴族の坊っちゃんだ!
その待遇を見て、思わず先程の部下バカ野郎の首を絞めたくなった。
この面会室は格の低い相手用の部屋で、相手側の椅子は硬いし、こちらの椅子は豪華という、いわば虚仮脅し用のものだ。
しかも、だいぶ待たせてしまった上に、お茶ティーの一つも出していないなんて!
「これは、大変な無礼を。すぐに別の部屋へご案内を……」
「ああ、いえ、大丈夫ですよ。以前は貴族の末席に居ましたが、今は違いますから」

本人は遠慮するが、どちらにしてもホワイトシェル宝貝のギルド章保有者に用意するべき部屋でも待遇でも無いので、部屋を移っていただく。
なんとか仕切り直して話を始めてみれば、ある店の取り扱い品の照会をしたいという、些か不可解な内容。
「資料をお見せは出来ませんよ?」
「はい、それは大丈夫です。単に取り扱い品の詳細が、僕の知っている内容かどうかが知りたいだけですので」

意味が判らないが、それから彼はつらつらと品物の詳細を口にする。
ルドラからの輸入品。
鉄製のアミュレット、黒曜石が二つ嵌め込まれている。
ルドラ式硬革ハードレザーの小盾。魚の意匠。
ルドラのナイフ。柄に魚の意匠。
ルドラの化粧品、主原料はルドラ産の鉱石。
その他……
「別に違反は無い様ですが……?」
「いえ、判りました。あの店で扱われているのは全て偽物です」
「何ですと!?」
語られたのは言語の違いによる本物と偽物の見分け方。
魚じゃなくて蛯蟹?
黒曜石じゃなくて黒瑪瑙?
ナイフの形状も両刃じゃなくて片刃?
鉱石原料じゃなくて、貝の粉で出来ている?
「以前、ドクランテス領でも出回った偽物と同じものです」
「なんと……」
「問い合わせればあちらに資料がありますよ。後……」
あちらでは店の認可を出した職員が買収されていた?
……許可したのは……
馬鹿野郎グブア……
フフフフフ
「お会いできて良かった。どうか、今後ともよろしく」
「お役に立てたなら、何よりです」

良かった。ここの担当の人、ピールさんなら、すぐ対処してくれるね♪
やっぱり詐欺は駄目だよ、詐欺は。
ねえ?


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