毒華王女伝

荒谷創

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毒華の噂

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王家の毒華姫といえば、庶民の反感を一身に受ける性悪姫だ。
革命軍が吊るしてきた悪徳貴族や役人達より、ともすれば無能王と揶揄される国王よりも嫌われている。

曰く、一度袖を通したドレスは二度と着ない
曰く、一度履いた靴も二度と履かない
曰く、夜空の星の如く煌びやかな宝石を集め、王女宮の庭に敷き詰めている
曰く、夜毎日毎に壮大なパーティーを開き、見目の良い男を取っ替え引っ替えしている
曰く、民から搾り取った税金を湯水の如く使い、贅沢の限りを尽くしている
曰く、苦言を呈した女官をむち打ちにして、虐め殺す
曰く、小麦の値が高騰したおり、パンが食べられないならお菓子を食べれば良いと言い放った

「随分ですわね。まあドレスも靴も宝石もある程度の数はありますわよ」
同じドレスを、そのまま二回続けてパーティーに着て行ったりはしていない。靴も同様。勿論、宝石を敷き詰めたりはしていない。
「パーティーに関しては国の行事としてなら毎回、個人の開くものは政治的に意味がある場合は出ますわね」
王族に取っては、これも仕事の内だ。
「王女ですもの。権力目当てですり寄ってくる貴族は幾らでも居ますわ。特に自分の顔に自信のある令息は煩わしい限りですわね」
わたくしの使うお金は王女宮に振り分けられた予算ですわ。年間だと380万フィオレね。王女宮で働く全ての人間の給料、王女宮の維持費、食費、ランプの油代まで込み込みですわ」
しかも余ればその分は翌年の予算が減らされる。
「累代の使用人が、わたくしの為に苦言を呈したなら感謝こそすれ、虐めたり、まして殺したりする訳がないですわね」
「小麦の件でしたら一等小麦が高騰した時に、二等小麦の値を下げる様に御前会議で決まった事ですわ。そもそも発言者がわたくしじゃありませんし」

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