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124話 -式典-
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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「ジュエリア王国を救った英雄アルスよ。前へ!」
「ハッ!」
ミレーユ達のと会談が終わってから3日後。大掛かりな式典が開かれる。本来なら王城内の国王の間にて行われるはずだが、ミレーユの計画によって王城入口に特設のステージを造り行われた。今回は特別に王城入り口まで民衆の入城を許可されており、国王陛下及び英雄を一目見ようと沢山の民衆が押し寄せていた。
また、この式典においてミレーユの策が組み込まれていた。普通ならばジュエリア国王は高く離れた場所に居り、授与者が国王の足元まで向かうべきなのだが、国王直々に授与者に歩み寄るという仕組みになっていた。
これは民衆に国王陛下を間近で見られる様にという配慮と、救国の英雄に最大限の感謝を伝えるという意味が込められている。それと国王自ら歩み寄るというパフォーマンスは貴族派閥にも影響があった。その影響とは---
「---これからも我がアルゼリアル王国の為に忠義を尽くしてくれ!!」
「有り難く頂戴致します!」
国王直々に金品と爵位が授与される。民衆はその一挙一動に歓声を上げ拍手を贈る。民衆にとってこの様な式典を観るというのは初めてだった。そして、従来から式典に参加している貴族達にとっては新しいものであるが為に、少々戸惑いが生じていた。
知恵の回る者ならばこの式典の意図を理解していた。ジュエリア国王にとってアルスという人物は最重要人物であるという事。そして、派閥のことを知らない民衆から見れば、爵位や金品、尚且つ王の領地まで与えられたという事は寵愛を受けたのと同義であった。『派閥に取り込む』という計画はこの式典で後回しにされる。今、アルスを貴族派閥に取り込もうとすれば民衆からの文句を受けるだろう。『英雄をまた争いに巻き込むとはどういう事だ!』とでもいう風に。
ミレーユの計画は成功で終わる。わざわざ式典を新しくした事は民衆にも貴族側にも影響があった。国王が言葉を述べている間、天使の様な微笑みでミレーユは貴族達の表情を探っていた。
(フフフッ…。聡明な方ならばアルス様がもうこちらの陣営だと理解しているでしょうね)
天使の微笑みの裏側で小悪魔の様な笑みを浮かべるミレーユ。しかし、ミレーユもここからどう出るかを悩んでいた。
(浅はかな貴族の処理は大丈夫ですが……相手は海千山千な方々。動向を注視しなければなりませんね…)
この式典で外堀は埋めた。だが、どう事が動くかはミレーユにも理解する事は出来なかった。暫くの間は大人しくしているだろうが、こちら側が何か失敗をした時にここぞとばかりに打って出てくるだろう。その為にも情報収集は欠かしてはならないと判断する。
(……アルス様には申し訳ないけど、挨拶回りをしてもらおうかしら?クロトワ家だけ特別扱いは出来ないものね…)
妹が頼み込むとアルスは反対するだろうが、自分が言えば渋々ながらも承諾するだろう。少しだけ妹との差に気落ちするが、アルスも両方から熱烈にアピールされれば困るだろう。したたかに、且つ正確に落とす為にもまずはアルスとの距離を地道に縮めていくしか無い。
(フフフッ……私は意外と小狡いですのよ?アルス様)
式典とは全く関係のない事で静かに闘志を燃やすミレーユ。相手が可愛い妹だろうが、ソレに関しては敵同士だ。
(………うぅ。なんか悪寒がするんだけど……気のせいかなぁ?)
国王の前で首を垂れながらアルスは身震いする。
(……あ。きっと貴族派閥の目だな?なぁに企んでやがる…)
ミレーユから説明を受けているアルスは、舐め尽くす様な目線は貴族派閥からだと理解する。そして、その目線に気付いたのはアルスだけでは無かった。
(……どうやらミレーユ様も参戦されるようですわね)
(…ボクの策略に引っかからない新手が出てきた)
(ミレーユちゃんもご主人様狙ってるのかぁー。敵が多いのは嫌だなぁ…)
色留袖を着用し、アルス同様に首を下げているチカ達は瞬時に視線の主を見破った。新たな強敵、しかも感情型のソニアとは正反対の新手が参入した事により、チカ達の『忠誠心』にとあるアップデートが行われる。それは果たしてどちらの感情なのだろうか?それは誰にも分からない。
(………? なんか視線が増えた気がするんだけど……)
アルスの知らないところで静かに火が灯されるのであった。
「ジュエリア王国を救った英雄アルスよ。前へ!」
「ハッ!」
ミレーユ達のと会談が終わってから3日後。大掛かりな式典が開かれる。本来なら王城内の国王の間にて行われるはずだが、ミレーユの計画によって王城入口に特設のステージを造り行われた。今回は特別に王城入り口まで民衆の入城を許可されており、国王陛下及び英雄を一目見ようと沢山の民衆が押し寄せていた。
また、この式典においてミレーユの策が組み込まれていた。普通ならばジュエリア国王は高く離れた場所に居り、授与者が国王の足元まで向かうべきなのだが、国王直々に授与者に歩み寄るという仕組みになっていた。
これは民衆に国王陛下を間近で見られる様にという配慮と、救国の英雄に最大限の感謝を伝えるという意味が込められている。それと国王自ら歩み寄るというパフォーマンスは貴族派閥にも影響があった。その影響とは---
「---これからも我がアルゼリアル王国の為に忠義を尽くしてくれ!!」
「有り難く頂戴致します!」
国王直々に金品と爵位が授与される。民衆はその一挙一動に歓声を上げ拍手を贈る。民衆にとってこの様な式典を観るというのは初めてだった。そして、従来から式典に参加している貴族達にとっては新しいものであるが為に、少々戸惑いが生じていた。
知恵の回る者ならばこの式典の意図を理解していた。ジュエリア国王にとってアルスという人物は最重要人物であるという事。そして、派閥のことを知らない民衆から見れば、爵位や金品、尚且つ王の領地まで与えられたという事は寵愛を受けたのと同義であった。『派閥に取り込む』という計画はこの式典で後回しにされる。今、アルスを貴族派閥に取り込もうとすれば民衆からの文句を受けるだろう。『英雄をまた争いに巻き込むとはどういう事だ!』とでもいう風に。
ミレーユの計画は成功で終わる。わざわざ式典を新しくした事は民衆にも貴族側にも影響があった。国王が言葉を述べている間、天使の様な微笑みでミレーユは貴族達の表情を探っていた。
(フフフッ…。聡明な方ならばアルス様がもうこちらの陣営だと理解しているでしょうね)
天使の微笑みの裏側で小悪魔の様な笑みを浮かべるミレーユ。しかし、ミレーユもここからどう出るかを悩んでいた。
(浅はかな貴族の処理は大丈夫ですが……相手は海千山千な方々。動向を注視しなければなりませんね…)
この式典で外堀は埋めた。だが、どう事が動くかはミレーユにも理解する事は出来なかった。暫くの間は大人しくしているだろうが、こちら側が何か失敗をした時にここぞとばかりに打って出てくるだろう。その為にも情報収集は欠かしてはならないと判断する。
(……アルス様には申し訳ないけど、挨拶回りをしてもらおうかしら?クロトワ家だけ特別扱いは出来ないものね…)
妹が頼み込むとアルスは反対するだろうが、自分が言えば渋々ながらも承諾するだろう。少しだけ妹との差に気落ちするが、アルスも両方から熱烈にアピールされれば困るだろう。したたかに、且つ正確に落とす為にもまずはアルスとの距離を地道に縮めていくしか無い。
(フフフッ……私は意外と小狡いですのよ?アルス様)
式典とは全く関係のない事で静かに闘志を燃やすミレーユ。相手が可愛い妹だろうが、ソレに関しては敵同士だ。
(………うぅ。なんか悪寒がするんだけど……気のせいかなぁ?)
国王の前で首を垂れながらアルスは身震いする。
(……あ。きっと貴族派閥の目だな?なぁに企んでやがる…)
ミレーユから説明を受けているアルスは、舐め尽くす様な目線は貴族派閥からだと理解する。そして、その目線に気付いたのはアルスだけでは無かった。
(……どうやらミレーユ様も参戦されるようですわね)
(…ボクの策略に引っかからない新手が出てきた)
(ミレーユちゃんもご主人様狙ってるのかぁー。敵が多いのは嫌だなぁ…)
色留袖を着用し、アルス同様に首を下げているチカ達は瞬時に視線の主を見破った。新たな強敵、しかも感情型のソニアとは正反対の新手が参入した事により、チカ達の『忠誠心』にとあるアップデートが行われる。それは果たしてどちらの感情なのだろうか?それは誰にも分からない。
(………? なんか視線が増えた気がするんだけど……)
アルスの知らないところで静かに火が灯されるのであった。
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