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111話 -悪夢 3-
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再び視界が暗転しコテージへと戻ってくる。目の前には大量に汗を掻き苦しんでいるレインの姿があった。
「ア………ルス……」
レインの手を握りながら呼び掛けに応える。その間、俺は心配しつつも先程の事を思い返していた。
(………どうなってるんだ?)
冷静に思い返し計画を練る。とりあえず、場所は把握したし全速力で駆ければさっきの場面には間に合うはずだ。
「アルス………」
レインが再び俺の眼を覗き込む。レインと眼を合わせると再び吸い込まれる様な感覚がし、瞬きをすればまた同じ場所に立っていた。
「ぬおおおお!!」
全力で村へと駆け出し頭の中で最後の場面を思い出す。レインそっくりの子供が外堀に居たのでそこを目指して走る。村に近付くと、待っていたかの様に火の手が上がり悲鳴が響き渡る。
「居たッ!!」
遠くの外堀に隠れようとする子供の姿が目に入った。となると、先程の女性はあそこの反対方向になる。まだ声は聞こえないし、間に合った!
「『レインは逃げなさい!!早くっ!!』」
「ッ?!」
間に合ったと思っていたら途中からの会話が耳に飛び込んできた。ちょっとだけ減速しかけていた俺は慌てて外堀を越え、あの場面へと向かう。
「安心しろ---何者だ?」
「うるせぇ!」
この件はさっき聞いたからキャンセルだ。俺は黒色の奴との距離を詰めると正拳突きで殺し、倒れている女性へと声を掛ける。
「大丈夫か!?」
「だ………大丈夫です……」
女性を起こしお姫様抱っこをすぐにした後、さっきの子供の方へと駆け出す。もちろん、周辺の警戒は怠らない。
「おがぁざんっ!!!!」
「レインッ!!」
女性はレインを見つけると優しいながらも強く抱きしめる。
(よしよし!これでレインを救えたぞ!)
「さぁ!急いで逃げよう!追手が来ちまう!」
「は、はい!!」
女性はレインの手を取り外へと駆け出す。…………しかし。
「え!?何よこれ!?」
女性がいきなり立ち止まり声を荒げる。
「何止まってんだ!急げ!!」
「進めないの!!」
『何トンチンカンな事言ってんだコイツ?』と思い先頭を変わる。
「……いや、進めるじゃん」
進めないとか言いながらも俺はすんなりと進めた。しかし、後ろを見ると不思議な光景が映った。
「いや!急げや!!」
「無理!!何よこれ!!」
女性は宙を強く叩き、ペタペタと宙を触っていた。それはまるでパントマイムの様で、その余裕にちょっとイラッとした。
「遊んでる暇ないから!!ほら早く!!」
ちょっとどころでは無く、結構苛ついていた俺は女性の手を握り引っ張ろうとする。
「ふへっ?!」
その時、女性を引っ張ったはずの俺は重い荷物を引っ張ったかの様な感覚を受け、脚を滑らせてしまった。
「おがぁざんっ!!!!」
子供の泣き声が聞こえ慌てて起き上がると、女性の背後に先程殺したはずの黒い奴が近付いていた。
「なっ?!」
『さっき殺したはずなのに!!』と焦ったが、『ならもう一度だ!』と切り替えた俺は女性の背後へと跳躍し割り込もうとする。
「イデッ!!!」
だが、不思議な事に女性が進めないと叫んだ位置で見えない壁の様なモノに遮られ俺は地面に落ちる。
「レイン!早く逃げなさい!」
「嫌だ!!お母さんと一緒に居る!!」
「………ふん。親子共々仲良く送ってやる」
聞いたことのある様なセリフが聞こえ、慌てて起き上がり今度はタックル姿勢で進む。……しかし。
「ゴハッ!!」
除夜の鐘を突いた様な鈍い音が響き、頭に痛みが広がる。
「なんだこれは!?」
女性が進めないと言っていたが、今度は俺が戻れない。見えない壁に何度か拳を突き立てるが鈍い音しか響かなかった。
「……どうか……娘を……」
「!? 待て!!やめろ!!!」
見えない壁に悪戦苦闘していると声が届く。黒い奴が剣を振りかざしており、女性が俺に手を伸ばしているのが映った。………そして、振りかざした剣が女性の背中へと刺さると血を吹き出して地面へと倒れていった。
「おがぁざぁーーーん!!」
子供の叫び声が聞こえる中、俺はどうにか向こう側へ行こうと殴り続ける。子供は村へと逃げて行くのを見ながら俺は静止の声を上げる。だが、その声は届かなかったのか子供の姿が見えなくなり、見えない壁向こうで黒い奴が俺を見てニヤリと笑ったのが見えた。
「ぶっ殺す!!」
怒りを込めた拳が壁に当たると鈍く砕けた音が耳元で聞こえた。そしてほんのちょっと遅れて激痛が走った。
「クソが!!!」
「……フム。お前が---か」
「あぁん!?」
黒い奴が何か俺に話しかけるが、何と言ったのかは聞こえなかった。そして、黒い奴は剣を女性から抜くと村へと向かおうとした。
「待てや!!こっち来いこの野郎!!逃げんな!!」
「……フハハッ」
黒い奴の笑い声が聞こえると同時に、俺の眼に映っていた一切の光が掻き消える。『あぁ……また暗転か』と思った俺だったが、瞬きを何度してもコテージに戻らない事に気付いた。
「へ?な、なんで!?」
眼をギュッと瞑ったりもしたが、暗闇からは抜けてなかった。眼を開けている感覚はあるので、眼は正常なはず。
『使命を思い出せ。お前の使命を………』
「ッ?!誰だ!?」
反響した様な声が聞こえ、俺はキョロキョロと見渡す。しかし、声以外には黒しか映らなかった。
「使命?……間に合ってただろ…」
返事をポツリと呟く。あの見えない壁さえ無ければあの二人を救えていたはずだ。
『いや。全てを救わなければ意味は無い』
「?!」
まさかの返事が返ってきた事に生唾を飲み込む。
『良いか?お前の使命は全てを救う事だ。それを努努忘れるな』
「どういう---ウワッ?!」
謎の声に質問をしようとした時、眩しい光が目に飛び込んできて俺は顔を覆う。そして覆った腕の隙間から覗こうとした時、またもや視界が暗転するのであった。
「ア………ルス……」
レインの手を握りながら呼び掛けに応える。その間、俺は心配しつつも先程の事を思い返していた。
(………どうなってるんだ?)
冷静に思い返し計画を練る。とりあえず、場所は把握したし全速力で駆ければさっきの場面には間に合うはずだ。
「アルス………」
レインが再び俺の眼を覗き込む。レインと眼を合わせると再び吸い込まれる様な感覚がし、瞬きをすればまた同じ場所に立っていた。
「ぬおおおお!!」
全力で村へと駆け出し頭の中で最後の場面を思い出す。レインそっくりの子供が外堀に居たのでそこを目指して走る。村に近付くと、待っていたかの様に火の手が上がり悲鳴が響き渡る。
「居たッ!!」
遠くの外堀に隠れようとする子供の姿が目に入った。となると、先程の女性はあそこの反対方向になる。まだ声は聞こえないし、間に合った!
「『レインは逃げなさい!!早くっ!!』」
「ッ?!」
間に合ったと思っていたら途中からの会話が耳に飛び込んできた。ちょっとだけ減速しかけていた俺は慌てて外堀を越え、あの場面へと向かう。
「安心しろ---何者だ?」
「うるせぇ!」
この件はさっき聞いたからキャンセルだ。俺は黒色の奴との距離を詰めると正拳突きで殺し、倒れている女性へと声を掛ける。
「大丈夫か!?」
「だ………大丈夫です……」
女性を起こしお姫様抱っこをすぐにした後、さっきの子供の方へと駆け出す。もちろん、周辺の警戒は怠らない。
「おがぁざんっ!!!!」
「レインッ!!」
女性はレインを見つけると優しいながらも強く抱きしめる。
(よしよし!これでレインを救えたぞ!)
「さぁ!急いで逃げよう!追手が来ちまう!」
「は、はい!!」
女性はレインの手を取り外へと駆け出す。…………しかし。
「え!?何よこれ!?」
女性がいきなり立ち止まり声を荒げる。
「何止まってんだ!急げ!!」
「進めないの!!」
『何トンチンカンな事言ってんだコイツ?』と思い先頭を変わる。
「……いや、進めるじゃん」
進めないとか言いながらも俺はすんなりと進めた。しかし、後ろを見ると不思議な光景が映った。
「いや!急げや!!」
「無理!!何よこれ!!」
女性は宙を強く叩き、ペタペタと宙を触っていた。それはまるでパントマイムの様で、その余裕にちょっとイラッとした。
「遊んでる暇ないから!!ほら早く!!」
ちょっとどころでは無く、結構苛ついていた俺は女性の手を握り引っ張ろうとする。
「ふへっ?!」
その時、女性を引っ張ったはずの俺は重い荷物を引っ張ったかの様な感覚を受け、脚を滑らせてしまった。
「おがぁざんっ!!!!」
子供の泣き声が聞こえ慌てて起き上がると、女性の背後に先程殺したはずの黒い奴が近付いていた。
「なっ?!」
『さっき殺したはずなのに!!』と焦ったが、『ならもう一度だ!』と切り替えた俺は女性の背後へと跳躍し割り込もうとする。
「イデッ!!!」
だが、不思議な事に女性が進めないと叫んだ位置で見えない壁の様なモノに遮られ俺は地面に落ちる。
「レイン!早く逃げなさい!」
「嫌だ!!お母さんと一緒に居る!!」
「………ふん。親子共々仲良く送ってやる」
聞いたことのある様なセリフが聞こえ、慌てて起き上がり今度はタックル姿勢で進む。……しかし。
「ゴハッ!!」
除夜の鐘を突いた様な鈍い音が響き、頭に痛みが広がる。
「なんだこれは!?」
女性が進めないと言っていたが、今度は俺が戻れない。見えない壁に何度か拳を突き立てるが鈍い音しか響かなかった。
「……どうか……娘を……」
「!? 待て!!やめろ!!!」
見えない壁に悪戦苦闘していると声が届く。黒い奴が剣を振りかざしており、女性が俺に手を伸ばしているのが映った。………そして、振りかざした剣が女性の背中へと刺さると血を吹き出して地面へと倒れていった。
「おがぁざぁーーーん!!」
子供の叫び声が聞こえる中、俺はどうにか向こう側へ行こうと殴り続ける。子供は村へと逃げて行くのを見ながら俺は静止の声を上げる。だが、その声は届かなかったのか子供の姿が見えなくなり、見えない壁向こうで黒い奴が俺を見てニヤリと笑ったのが見えた。
「ぶっ殺す!!」
怒りを込めた拳が壁に当たると鈍く砕けた音が耳元で聞こえた。そしてほんのちょっと遅れて激痛が走った。
「クソが!!!」
「……フム。お前が---か」
「あぁん!?」
黒い奴が何か俺に話しかけるが、何と言ったのかは聞こえなかった。そして、黒い奴は剣を女性から抜くと村へと向かおうとした。
「待てや!!こっち来いこの野郎!!逃げんな!!」
「……フハハッ」
黒い奴の笑い声が聞こえると同時に、俺の眼に映っていた一切の光が掻き消える。『あぁ……また暗転か』と思った俺だったが、瞬きを何度してもコテージに戻らない事に気付いた。
「へ?な、なんで!?」
眼をギュッと瞑ったりもしたが、暗闇からは抜けてなかった。眼を開けている感覚はあるので、眼は正常なはず。
『使命を思い出せ。お前の使命を………』
「ッ?!誰だ!?」
反響した様な声が聞こえ、俺はキョロキョロと見渡す。しかし、声以外には黒しか映らなかった。
「使命?……間に合ってただろ…」
返事をポツリと呟く。あの見えない壁さえ無ければあの二人を救えていたはずだ。
『いや。全てを救わなければ意味は無い』
「?!」
まさかの返事が返ってきた事に生唾を飲み込む。
『良いか?お前の使命は全てを救う事だ。それを努努忘れるな』
「どういう---ウワッ?!」
謎の声に質問をしようとした時、眩しい光が目に飛び込んできて俺は顔を覆う。そして覆った腕の隙間から覗こうとした時、またもや視界が暗転するのであった。
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