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110話 -悪夢 2-
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再びコテージへと画面が変わる。だが、前回とは違い、レインは俺の手を握ったまま荒い呼吸をしていた。
「レイン!!」
呼吸の荒いレインからは大量の汗が流れていた。顔は驚く程青白く、唇は真っ青だった。
「『天使の滴』」
効果が無いと分かっていても、俺はレインに治癒魔法を掛ける。この魔法はHPと状態異常を全快させる魔法だ。
「レイン……ッ!」
緑のエフェクトが掛かると、レインの汗は止まった。だが、顔は青白く呼吸は荒いままだった。
「レイン!しっかり!!」
「ア………ルス……」
レインが苦しそうに俺の名を呼ぶ。
「ここに居るぞ!!」
「お願い………助けて……」
レインは小さく助けを求める。その言葉でさっきの不思議な出来事が繋がった。
「アレはレインのなのか!?」
「お願い………」
俺の言葉にレインは返事をしない。だが、握っている手に力が加わったのは分かった。
「ああ!任せろ!」
根拠は無いが、俺はあの夢みたいな出来事はレインの物だと感じた。となると、あの助けを呼ぶ声はレインと言うことになる。
俺が返事をすると視界が暗転する。そして、まばたきをすると再び砂漠へと降り立った。
「っしゃあ!!行くぞ!!」
風景が変わったと理解出来た瞬間に俺は村へと全速力で駆け出す。事態は一刻を争うのだ。村へと近付くと火の手が上がり、人々の叫び声が響き渡る。
「……あっちだ!!」
村の外で先ほど殺したヒトがおり、女性が地面へと倒れ込んでいた。
(…このヒトはレインじゃなかったよな)
だが流石に見過ごす訳にもいかないので全力で近付き、頭を潰してから俺は村の中へと入る。
(見分けがつかねぇ!!)
村には火の手が上がっており道が分からない。あの時はひたすら直進していたので感覚的な方向しか覚えて無かった。
『誰か…誰か助けて……』
あの場所を目指して走っていると声が届いた。
「ぬおおおっ!!」
火の手が上がる家屋を破壊しながら俺は進む。あの声がしたという事はヤバイ状況だという事だ。
「『無駄だ。素直に死を受け入れろ』」
「ッ!!」
耳に届く声と外から聞こえる声が同時に聞こえた。つまり、前回の場所に近いという事だろう。
「こっちか!」
右耳から聞こえたような気がしたので右に進路を取り、家屋を盛大に破壊する。
「『お母さんっ!!』」
「『来ちゃダメ!!』」
「どこだあああああ!!!」
声のする方へ走りながら声を上げる。俺の声に返事をして貰えないかと考えながら。
「-インは逃げなさい!!早くっ!!」
今度はハッキリと声が聞こえた。目の前にある家に飛び込み壁を壊して進むと前回の光景に遭遇した。
「安心しろ-----何者だ?」
「へへっ!!どうやら間に合ったようだな!」
前回のセリフと違った言葉が耳に届く。倒れ込んでいるレインからはまだ血は出ておらず、黒色のヤツは俺を睨んでいた。
「助けに来たぞ!!」
俺はレインへと声をかける。黒色のヤツは俺を一瞬で品定めすると魔法を放ってきた。
「残念でしたっ!!」
不意打ちの魔法ならまだしも、正対している魔法なんざ余裕で反応出来る。ヤツから放たれた火球を野球よろしく蹴りで弾き飛ばす。
「ムッ!!」
ヤツは俺の行動に驚いたのか一瞬だけ硬直した。俺はその隙を逃さず一気に距離を詰め黄金の右手でアッパーを喰らわせる。勢いを殺さず、それを利用したアッパーがヤツの顎に当たると簡単に首が千切れた。…千切れたというよりすっぽ抜けたという表現が正しいかもしれない。
首を飛ばした黒っぽいヤツは噴水のように血を吹き出すと胴体は地面へと落ちていった。この時、俺は『よし!!助けたぞ!』という気持ちになっていた。………しかし。
「おかぁさーーーーーーーーーーんっ!!!!」
「は!?」
叫び声が聞こえ慌てて振り返ると、明らかに魔物だと思われる奴が倒れ込んでいるレインへと剣を刺していた。レインからは大量の血が流れ手がピクピクと痙攣していた。
「なにしとんじゃぁ!!」
俺は考える間も無くその魔物に回し蹴りを入れる。
「ブモッ!!」
回し蹴りを喰らった魔物がドパッという炸裂音を出しながら血を吹き出す。身体はくの字に曲がり背中からは骨と肉が覗いていた。
「レイン!!!」
俺は横たわるレインへと近付き魔法を詠唱する。だが、緑のエフェクトは出てこなかった。
「クソがっ!!!」
アイテムリストを覗こうとするが画面は表示されない。その間にもレインからは血が流れ出ている。
「止血しなきゃ!」
頭の片隅では間に合わないと理解しつつも俺は剣が突き刺さっている箇所に手で圧迫する。
「死ぬな!!死ぬな!レイン!!」
俺の必死の呼びかけにレインは横顔を俺の方へと向ける。
「………どうか、娘を」
「……へ?」
その時初めて気付いたのだが、この倒れ込んでいる女性はレインと全く違う顔をしていた。そして謎の言葉を俺に言った事で俺の頭は『?』で埋め尽くされた。
「おがぁざぁーーーん!!」
遠くから子供の叫び声が聞こえその方向を向く。
「ッ?!!レイン!?」
村の外堀にレインそっくりな子供がこちらを見ていた。そして、ゆっくりと立ち上がると外へと駆け出していった。
「ちょっ!!」
訳が分からずもあの子供を呼び止めようとした時、再び世界が暗転するのであった。
「レイン!!」
呼吸の荒いレインからは大量の汗が流れていた。顔は驚く程青白く、唇は真っ青だった。
「『天使の滴』」
効果が無いと分かっていても、俺はレインに治癒魔法を掛ける。この魔法はHPと状態異常を全快させる魔法だ。
「レイン……ッ!」
緑のエフェクトが掛かると、レインの汗は止まった。だが、顔は青白く呼吸は荒いままだった。
「レイン!しっかり!!」
「ア………ルス……」
レインが苦しそうに俺の名を呼ぶ。
「ここに居るぞ!!」
「お願い………助けて……」
レインは小さく助けを求める。その言葉でさっきの不思議な出来事が繋がった。
「アレはレインのなのか!?」
「お願い………」
俺の言葉にレインは返事をしない。だが、握っている手に力が加わったのは分かった。
「ああ!任せろ!」
根拠は無いが、俺はあの夢みたいな出来事はレインの物だと感じた。となると、あの助けを呼ぶ声はレインと言うことになる。
俺が返事をすると視界が暗転する。そして、まばたきをすると再び砂漠へと降り立った。
「っしゃあ!!行くぞ!!」
風景が変わったと理解出来た瞬間に俺は村へと全速力で駆け出す。事態は一刻を争うのだ。村へと近付くと火の手が上がり、人々の叫び声が響き渡る。
「……あっちだ!!」
村の外で先ほど殺したヒトがおり、女性が地面へと倒れ込んでいた。
(…このヒトはレインじゃなかったよな)
だが流石に見過ごす訳にもいかないので全力で近付き、頭を潰してから俺は村の中へと入る。
(見分けがつかねぇ!!)
村には火の手が上がっており道が分からない。あの時はひたすら直進していたので感覚的な方向しか覚えて無かった。
『誰か…誰か助けて……』
あの場所を目指して走っていると声が届いた。
「ぬおおおっ!!」
火の手が上がる家屋を破壊しながら俺は進む。あの声がしたという事はヤバイ状況だという事だ。
「『無駄だ。素直に死を受け入れろ』」
「ッ!!」
耳に届く声と外から聞こえる声が同時に聞こえた。つまり、前回の場所に近いという事だろう。
「こっちか!」
右耳から聞こえたような気がしたので右に進路を取り、家屋を盛大に破壊する。
「『お母さんっ!!』」
「『来ちゃダメ!!』」
「どこだあああああ!!!」
声のする方へ走りながら声を上げる。俺の声に返事をして貰えないかと考えながら。
「-インは逃げなさい!!早くっ!!」
今度はハッキリと声が聞こえた。目の前にある家に飛び込み壁を壊して進むと前回の光景に遭遇した。
「安心しろ-----何者だ?」
「へへっ!!どうやら間に合ったようだな!」
前回のセリフと違った言葉が耳に届く。倒れ込んでいるレインからはまだ血は出ておらず、黒色のヤツは俺を睨んでいた。
「助けに来たぞ!!」
俺はレインへと声をかける。黒色のヤツは俺を一瞬で品定めすると魔法を放ってきた。
「残念でしたっ!!」
不意打ちの魔法ならまだしも、正対している魔法なんざ余裕で反応出来る。ヤツから放たれた火球を野球よろしく蹴りで弾き飛ばす。
「ムッ!!」
ヤツは俺の行動に驚いたのか一瞬だけ硬直した。俺はその隙を逃さず一気に距離を詰め黄金の右手でアッパーを喰らわせる。勢いを殺さず、それを利用したアッパーがヤツの顎に当たると簡単に首が千切れた。…千切れたというよりすっぽ抜けたという表現が正しいかもしれない。
首を飛ばした黒っぽいヤツは噴水のように血を吹き出すと胴体は地面へと落ちていった。この時、俺は『よし!!助けたぞ!』という気持ちになっていた。………しかし。
「おかぁさーーーーーーーーーーんっ!!!!」
「は!?」
叫び声が聞こえ慌てて振り返ると、明らかに魔物だと思われる奴が倒れ込んでいるレインへと剣を刺していた。レインからは大量の血が流れ手がピクピクと痙攣していた。
「なにしとんじゃぁ!!」
俺は考える間も無くその魔物に回し蹴りを入れる。
「ブモッ!!」
回し蹴りを喰らった魔物がドパッという炸裂音を出しながら血を吹き出す。身体はくの字に曲がり背中からは骨と肉が覗いていた。
「レイン!!!」
俺は横たわるレインへと近付き魔法を詠唱する。だが、緑のエフェクトは出てこなかった。
「クソがっ!!!」
アイテムリストを覗こうとするが画面は表示されない。その間にもレインからは血が流れ出ている。
「止血しなきゃ!」
頭の片隅では間に合わないと理解しつつも俺は剣が突き刺さっている箇所に手で圧迫する。
「死ぬな!!死ぬな!レイン!!」
俺の必死の呼びかけにレインは横顔を俺の方へと向ける。
「………どうか、娘を」
「……へ?」
その時初めて気付いたのだが、この倒れ込んでいる女性はレインと全く違う顔をしていた。そして謎の言葉を俺に言った事で俺の頭は『?』で埋め尽くされた。
「おがぁざぁーーーん!!」
遠くから子供の叫び声が聞こえその方向を向く。
「ッ?!!レイン!?」
村の外堀にレインそっくりな子供がこちらを見ていた。そして、ゆっくりと立ち上がると外へと駆け出していった。
「ちょっ!!」
訳が分からずもあの子供を呼び止めようとした時、再び世界が暗転するのであった。
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