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105話 -いざ、ジュエリア王国へ 14-
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「兄ちゃん。このまま進んでたら三又に分かれた植物があるんだが、そこを右に回ってくれないか?」
「分かりました」
---お願い。私の娘を--
「? 何か言いました?」
「? いや?何も言ってねぇぞ?」
何か話しかけられた様な気がしてマルクスさんへと話しかけたが、何も言ってないと言う。しばらく真っ直ぐに進むと、マルクスさんが言った通り三又に分かれたサボテンみたいなのが見えた。
「チカ、右回りに移動するから---
「アルス様!!」
チカに伝えようとした時、焦った様な声が聞こえた。
「どうした?」
「レインの様子が変なんです!」
振り向くとチカを後ろから抱きつき、肩を震わせているレインの姿があった。慌てて下馬し、チカの元へと駆け寄る。
「レイン!大丈夫か!?」
続々と皆もチカの馬へと近寄り、レインへと声を掛ける。特にオニキス夫妻は震えているレインに心配そうに着ている服を掛けていた。それを見てチカとナナは『寒過ぎたのか?』と思った様で、魔法を解除し、俺達周辺には砂漠独特の湿気のある熱さが襲い掛かる。
「ち、ちょっと待ってろよ!確か俺特製のドリンクを持ってきてるからよ!」
マルクスさんは皮袋に手を突っ込むとガサゴソと目的の物を探す。その時にレインがゆっくりと手を伸ばし俺の手を握ってから話し掛ける。
「アルス……」
「何だ?何かあったのか?」
レインの手をしっかりと握り返し返事をする。すると血色の悪い表情のレインが俺と目を合わせた。
「……このまま真っ直ぐ進んで」
「へ?」
「お願い……私を………あさん……所……」
「レインッ?!」
レインはか細い声で何かを俺に伝えると、そのまま力が抜けた様に崩れ落ちそうになる。俺は地面へと落ちるレインを抱き抱えお姫様だっこをする。チカがすぐに下馬し、地面に大きめの布を置くとその上にレインを寝かせる。
「………熱は無いみたいね」
コーラルさんがすぐレインの額に手を当て熱を測る。
「これを飲ませてくれ!」
マルクスさんが瓶をコーラルさんへと渡し、一緒に付いていたコップの様なモノに少し注ぐとレインの口元へと運ぶ。レインは力無く口を動かしながらその飲み物をゆっくりと飲む。
「コーラル。レインちゃんの様子は?」
「………熱は無いけど、唇が真っ青。そして脈も早い。……砂漠病では無いわね」
「…そうか」
オニキスさんとコーラルさんは真剣な眼差しでレインを診ていた。チカもナナもローリィも、レインの様子に慌てている様だった。
「チカ。回復魔法は?」
「掛けたわ?でも……全然効果が無いの」
「あたしの気功も効果が無いみたい……」
「え?それマジ?」
チカ達の話を盗み聞きしていた俺は考える。魔法や気功が効かないということは肉体的なモノでは無いということだ。ならば、精神的なモノか別の要因なのではと考え、コーラルさん達に色々と質問をする。だが、コーラルさん達にもレインの容体が分からないという。………困ったな。
「…………ん?」
色々と考えていると、レインが最後に呟いた事を思い出す。
(そういや真っ直ぐ進んでとか言ってたな……。この先に何かあるのか?)
「マルクスさん。ちょっと………」
「ん?何だ!?」
「えっと………この先って何かあったりします?直線に進んで行ったら……の話なんすけど」
マルクスさんにそう尋ねると、少し苦虫を噛んだ様な表情で答えてくれた。
「………15分程真っ直ぐ進んだら1つの村がある。だがそこは、かなり前に魔物の襲撃で壊滅しちまったんだ」
「…それって王都の時の襲撃で?」
「いや。それよりも前の話だ。……確か獣人族が暮らしていたはずだ」
「ッ!!!?」
マルクスさんの発言に俺はレインを保護した時を思い出す。そして、レインの種族……レインは獣人だったはず!ケットシーって獣人だったよな??
(…つーことは精神的なモノということか?)
何も根拠は無いが、もしかしたらその壊滅した村の近くに来たからレインは気分を悪くなったのかも知れない!
「………マルクスさん。その村に向かっても良いですか?」
「は?……いやいや、兄ちゃん。あそこに行ったって何もねぇし、襲撃の後をそんままにしてるから疫病が蔓延してるかもしんねぇんだぞ!?」
「………レインが倒れる前に真っ直ぐ進んでって言ってたんですよ」
「はぁ??」
「マスター。それは本当か?」
「ああ。……もしかしたらレインに関係する村なのかもしれない」
「…なら進みましょう。どの道レインを休ませねばなりませんし」
「いやいや!!だから疫病の可能性が----
「大丈夫!その時はあたし達が浄化するから!ねっ?チカちゃん!」
「ええ。任せて」
その村に行くことが決定し、俺はレインを背負う。チカの布の端を俺の身体に巻きつけ、ゼロに乗馬する。
「よし、急いで向かうぞ」
ゼロもレインの事を心配しているのかあまり揺れないようにしつつ、駆け足で真っ直ぐ進んで行くのであった。
「分かりました」
---お願い。私の娘を--
「? 何か言いました?」
「? いや?何も言ってねぇぞ?」
何か話しかけられた様な気がしてマルクスさんへと話しかけたが、何も言ってないと言う。しばらく真っ直ぐに進むと、マルクスさんが言った通り三又に分かれたサボテンみたいなのが見えた。
「チカ、右回りに移動するから---
「アルス様!!」
チカに伝えようとした時、焦った様な声が聞こえた。
「どうした?」
「レインの様子が変なんです!」
振り向くとチカを後ろから抱きつき、肩を震わせているレインの姿があった。慌てて下馬し、チカの元へと駆け寄る。
「レイン!大丈夫か!?」
続々と皆もチカの馬へと近寄り、レインへと声を掛ける。特にオニキス夫妻は震えているレインに心配そうに着ている服を掛けていた。それを見てチカとナナは『寒過ぎたのか?』と思った様で、魔法を解除し、俺達周辺には砂漠独特の湿気のある熱さが襲い掛かる。
「ち、ちょっと待ってろよ!確か俺特製のドリンクを持ってきてるからよ!」
マルクスさんは皮袋に手を突っ込むとガサゴソと目的の物を探す。その時にレインがゆっくりと手を伸ばし俺の手を握ってから話し掛ける。
「アルス……」
「何だ?何かあったのか?」
レインの手をしっかりと握り返し返事をする。すると血色の悪い表情のレインが俺と目を合わせた。
「……このまま真っ直ぐ進んで」
「へ?」
「お願い……私を………あさん……所……」
「レインッ?!」
レインはか細い声で何かを俺に伝えると、そのまま力が抜けた様に崩れ落ちそうになる。俺は地面へと落ちるレインを抱き抱えお姫様だっこをする。チカがすぐに下馬し、地面に大きめの布を置くとその上にレインを寝かせる。
「………熱は無いみたいね」
コーラルさんがすぐレインの額に手を当て熱を測る。
「これを飲ませてくれ!」
マルクスさんが瓶をコーラルさんへと渡し、一緒に付いていたコップの様なモノに少し注ぐとレインの口元へと運ぶ。レインは力無く口を動かしながらその飲み物をゆっくりと飲む。
「コーラル。レインちゃんの様子は?」
「………熱は無いけど、唇が真っ青。そして脈も早い。……砂漠病では無いわね」
「…そうか」
オニキスさんとコーラルさんは真剣な眼差しでレインを診ていた。チカもナナもローリィも、レインの様子に慌てている様だった。
「チカ。回復魔法は?」
「掛けたわ?でも……全然効果が無いの」
「あたしの気功も効果が無いみたい……」
「え?それマジ?」
チカ達の話を盗み聞きしていた俺は考える。魔法や気功が効かないということは肉体的なモノでは無いということだ。ならば、精神的なモノか別の要因なのではと考え、コーラルさん達に色々と質問をする。だが、コーラルさん達にもレインの容体が分からないという。………困ったな。
「…………ん?」
色々と考えていると、レインが最後に呟いた事を思い出す。
(そういや真っ直ぐ進んでとか言ってたな……。この先に何かあるのか?)
「マルクスさん。ちょっと………」
「ん?何だ!?」
「えっと………この先って何かあったりします?直線に進んで行ったら……の話なんすけど」
マルクスさんにそう尋ねると、少し苦虫を噛んだ様な表情で答えてくれた。
「………15分程真っ直ぐ進んだら1つの村がある。だがそこは、かなり前に魔物の襲撃で壊滅しちまったんだ」
「…それって王都の時の襲撃で?」
「いや。それよりも前の話だ。……確か獣人族が暮らしていたはずだ」
「ッ!!!?」
マルクスさんの発言に俺はレインを保護した時を思い出す。そして、レインの種族……レインは獣人だったはず!ケットシーって獣人だったよな??
(…つーことは精神的なモノということか?)
何も根拠は無いが、もしかしたらその壊滅した村の近くに来たからレインは気分を悪くなったのかも知れない!
「………マルクスさん。その村に向かっても良いですか?」
「は?……いやいや、兄ちゃん。あそこに行ったって何もねぇし、襲撃の後をそんままにしてるから疫病が蔓延してるかもしんねぇんだぞ!?」
「………レインが倒れる前に真っ直ぐ進んでって言ってたんですよ」
「はぁ??」
「マスター。それは本当か?」
「ああ。……もしかしたらレインに関係する村なのかもしれない」
「…なら進みましょう。どの道レインを休ませねばなりませんし」
「いやいや!!だから疫病の可能性が----
「大丈夫!その時はあたし達が浄化するから!ねっ?チカちゃん!」
「ええ。任せて」
その村に行くことが決定し、俺はレインを背負う。チカの布の端を俺の身体に巻きつけ、ゼロに乗馬する。
「よし、急いで向かうぞ」
ゼロもレインの事を心配しているのかあまり揺れないようにしつつ、駆け足で真っ直ぐ進んで行くのであった。
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