放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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101話 -いざ、ジュエリア王国へ 10-

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「うわぁーっ!!すっごいひろぉーい!」

「アルス様!早く入りましょう!」

「……………………うん」

「? どうしたの?入りたくないの?」

「………いや。そう言うんじゃ無くてさ……」

温泉に隣接してある脱衣所で小声で呟く。チカ達はそそくさと衣服を脱ぎ始め身体にはタオルを巻いている。

「…………」

その男なら誰でも羨ましがる光景を視界の端に入れつつも、俺は脱衣所入り口に立て掛けてある看板を再度見る。

『只今のお時間は清掃の為混浴』

運良く…いや、運悪くこの時間帯は混浴らしく、更に入浴者は俺達しか居なかった。脱衣所は100人ぐらいは余裕で着替えれそうな程広く、その規模からして温泉も広いと思う。俺も前世では温泉とか好きだったから楽しみにしていたんだが……混浴となれば話は変わる。

(……どうするべきか)

正直、考える必要は無い。何故ならば脱衣所から奥へと入れば桃源郷が広がっているからだ。男は俺一人で、あとは全員女性。しかもどれもこれもナイススタイルときたもんだ。『ここで引いたら男が廃る』と本能では理解しているが、理性は『やめとけ』と訴える。

(……………)

そう。正直な所、混浴というものを楽しみたいのは事実だ。しかし、それを本能が反応してしまうことに危惧しているのだ。

エロゲマスターな俺でさえも実際に見るのには羞恥が付き纏う。しかもそれがエロゲの世界の住人みたいな奴らなんだぜ?暴発してしまう可能性は否定出来ない。刺激が多方面から攻めてくるんだぜ?………やべ。想像しただけでテントが…。

看板周りで葛藤していると、俺の不審さにローリィが反応した。

「? ご主人様ぁー?何してるのー?」

「…………!?!?」

胸の半分からタオルを巻いたローリィが首を傾げながら近付いてきた。こぼれ落ちそうな果実が上下左右に揺れている。んなもん見せられたらバッキバキのガッチガチよ!!

「? お腹痛いの?」

「い、いや……大丈夫……」

「変なご主人様ぁー。あたし、先に入ってるねー?」

ローリィが踵を返すと、俺の本能はローリィの臀部を凝視する。見えそうで見えないタオルの境界線と、艶っぽい太ももがハッキリと見え、高速で脳に保存する。

「マスター、早く着替えて。ボク早く入りたい」

「さ、先に入ってくれ」

ナナとチカが俺を見ながら催促する。だが、その行為は今の俺にとっては過激な描写でしかない。ナナはローリィやチカとは違い、ナイスバディとは言えないが、逆にそれはアンバランスなエロさを感じる。チカはチカでナイスバディなのでタオル一枚剥ぎ取れば……という妄想に駆られる。

「……アルス。目がいやらしいんだけど?」

「そそそそんな事は無いぞ!」

いつの間にか俺の隣に居たレインがジト目で喋りかけてくる。焦りつつも否定しレインと目が合うと、本能と理性が意見を一致させる。

「………………」

俺の目がレインの目から鼻、口、首へと瞬時に降りて行き、肩、胸、タオル、太ももを滑らかに見下ろした。

「……変態」

「すいません…」

変態とか言われようが仕方ないだろ!だって手の届く距離に美女がタオル一枚で居るんだぜ?抗えるわけねぇよ!抗えたとしたらもうそれは男じゃねぇ!!

レインが最後だったらしく、温泉へと入っていくと静かな脱衣所となる。チカ達が着替えていた場所から離れた所、かつタオルなんかが取りやすい位置を陣取り脱衣を行う。スッポンポンになったあとタオルを腰に巻き、収縮するのを待ってから中へと入る。

「うぉー……………」

中は蒸気で見え辛くなっていたが、かなり広いのが声の反響でわかる。

「………あれ?席が無いな」

端の方へ移動するが、イメージしている席は存在しなかった。ここで当たり前の事を思い出した。

「あ、そっか……ここ異世界だわ」

温泉って言うとシャワーとか椅子とかがあるはずなんだけど、それは前世での当たり前であって、ここにはそんな物は存在しなかった。その代わり、入り口近くに腰ほどの高さの湯船みたいなのがあり、そこから掛け湯みたいな事をする。……これが正解なのかは分からないけどね。

「さぁーて………どんなのがあるのかな?」

手で湯を拭ってからしっかりとタオルを腰に巻き歩き始める。前世であれば、水風呂、サウナ、露天風、滝湯などがあったが、ここは異世界だ。俺の知らない湯船があることだろう。

少しワクワクしながら歩いていると、第一湯船を発見した。

「………噴水みたいだぁ」

大きめの円の中央に何やら石像が4つあり、その石像の手にある壺から湯が流れ出ていた。熱くないかを確認してから湯船へと入り、石像へと近付く。

「………ははぁー…なるほどなるほど。これは天使をモチーフにした石像かな?」

石像は女性の顔立ちをしており、背中からは羽が生えていた。伏し目がちながらも微笑んでおり、まるで宙を浮かんでいるような石像だ。

「熱ッ!!」

壺へと近付くとめちゃくちゃ熱かった。おそるおそる壺から流れている湯を触れてみると、どうやら流れ出ているのは源泉らしく、そのまま耳たぶを触った。

「あー……なるほど。段差になっている所に腰掛けるのか。んで、半身浴か全身を浸かるかを選ぶんだな」

湯船の外回りには段差があり、丁度腰掛けると腹まで浸かる事が出来た。ここは丸くなっている湯船なので湯に浸かりながらお喋りしたりするのだろう。

「…壺周辺はクソ熱いから少し離れた所に座るか」

足で丁度良い温度の場所を探しながらそこに腰を下ろす。俺は基本的に全身を浸かるタイプだ。半身浴も色々と良いと聞くが、肩まで浸からないと風呂に入った気がしないタイプなのだ。

「………んぁー………気持ちいい……」

浸かる前に腰巻きにしているタオルを畳み、頭に乗せる。温泉という響きと開放的な空間の所為か、おっさんくさい声色を出す。

「……効能とかねぇのかな?」

前世であれば何処かに看板があった。『リウマチに効く』とか『打身や捻挫に効く』とかの看板ね?……あれ、いつも思うんだけど、毎日入らないとダメだよね?一回じゃ効かないよね??しかもさー、何か飲んでも良いヤツとかあるじゃん?内臓にも効果あるみたいな感じだけど、アレって本当なんかな?

「ふふんふふふん……ふふんふふふ……」

『良い湯だな』と続くメロディを口ずさみながらゆったりと寛ぐ。誰も居ないので足を伸ばしても迷惑が掛からない。流石に泳ぐ事はしないが、したくなる衝動に駆られるのは誰でも一緒だろうな…。

「ちょっとローリィ!!お湯が目に入るじゃない!」

「あははーっ!ごめんねチカちゃん!」

反響した声が聞こえ、『ローリィも同じ気持ちだったんだな…』と頷く。チカ達がどこに居るのかは分からないが、バチャバチャと水の音が聞こえるので広い湯船に浸かっているのだろう。

「もうちょっとしたら他探すかなぁ…」

鼻まで浸かり、ブクブクと空気の泡を出しながらリラックスするのであった。
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