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096話 -いざ、ジュエリア王国へ 5-
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♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
誰か---
誰か私の娘を---
「アルス様ー!お時間ですよー?」
「………………んぁ?」
身体が揺れるのを感じ、俺はゆっくりと目を開ける。
「アルスの寝顔って意外に不細工なのね」
「……うるせぇ」
ベッドから起き上がるとチカとレインが横に立っていた。寝起き様に悪口を言われるのは初めてだったが、気にしない事にした。
「悪りぃ悪りぃ……」
「もう皆下で待ってますわ」
「ん。すぐ行く」
「あ、そうだ。アルス、私に会う服を持ってない?」
レインから唐突に着替えを催促される。
「チカから借りなかったの?」
「好みのが無かったのよね…」
「じゃあローリィのは?」
「………体格が違うから着れないんですけど」
「………………あ、そっか」
「そっかって何よ!!」
「すまんすまん…。でも俺、男物しか持ってねーぞ?」
「……最悪それでいいかな。どんなのがあるの?」
「えーっと………」
そう言いながらアイテムリストを開く。
「んー……執事服かサラリーマンスーツ。成金スタイルとカジュアルな服がチラホラかな」
「…………やっぱり辞めとく。チカお姉ちゃんに借りる」
「そうしろ。……でも、そのままでいいんじゃねーの?それも似合ってると思うけど…」
「女の子は外に出る時はちゃんとしたのに着替えるのよ?アルスみたいに年がら年中鎧を着とくってのは無理!」
「そんな事思ってたのかよ……」
「まぁまぁ2人とも。とりあえず下に降りましょう。アルス様、私はレインを着替えさせてから下に降りますわね?」
「はーい」
チカ達が出た後、俺も服を着替える。『鎧ばっか』という言葉がずっと残り、アイテムリストを見ながら選ぶ。
「……これで良いよな?」
そう思って選んだのは『漆黒セット』というコスチュームだ。これは課金ガチャのハズレ枠--基本的に男物の服は無い--で、チカ達のコスチュームガチャを回した時に大量に出てきたものだ。…まぁ、一応見た目装備枠にはピッタリなんで限界突破させては居たけど……役に立つとは思わなかった。
「……何か真っ黒!とか言われそうだ」
黒のジーンズに、黒色のシャツ。黒色の靴に黒色の靴下ともう黒尽くめだ。……ネタコスチュームとして『黒づくめの全身タイツ』という物があるが、それは某探偵漫画の犯人姿そのものである。流石にそれは着れないけどね…。
着替えを済ませたあと下へと降りる。するとそこには何故か着飾ったローリィとナナがオニキス夫妻と立っていた。
「え………何その格好?」
「え?似合わない??」
「いや………似合ってるけど………それって『夜の蝶』シリーズだよね?」
ナナとローリィはグルグル巻の貝みたいな髪型で、タイトなワンピースを着ていた。ナナの格好は髪色に合わせた淡い青色のフレア系のワンピースで、白い太ももが男心をくすぐる。ローリィの格好はスタイルを全面的に出したオフショルダーの真紅のワンピースだ。もう目のやり場が無くてマジで困る。
「マスター。チカとレインは?」
「今着替え中みたいだぞ。………つか、何でその格好?」
「舐められない為。カイジャから来たからと言って、ボク達は田舎者じゃ無いから」
「どこからそんな知識持ってきたんだよ…」
オニキスさんをチラリと見れば俺と同じ様な表情を浮かべていた。しかし、コーラルさんは幸せそうな表情を浮かべていた。
「アナタ……私もあんな格好をした方が良いかしら?」
「しなくてもコーラルは充分綺麗だよ」
「アラアラ、アナタったら…」
(……仲睦まじくて良い事ですなぁ)
「お待たせしましたわ」
「ごめんねー?」
階段上からチカ達の声が聞こえ、その方向に目を向けるとこれまた同じ様な格好をしていた。チカは淡い緑のロングドレス。スリットが入っておりチカの美脚がより一層際立っていた。レインはというと、多分『夜の蝶』シリーズでは無く『晩餐会』シリーズだと思われる。肌の露出は少なく、ローリィの様に華美な色合いをしてない。少しだけ明るく見える黒色のワンピースを着ているが、逆に淑女な雰囲気を感じる。……まぁチカ達が派手過ぎるからなんだけどね。
(『晩餐会シリーズ』はハズレだと思ってたけど………現物見るとアリだな)
「……アルス。卑猥な視線を感じるんだけど?」
「そそそそんな事かんがえてないぞ!!」
「ご主人様のエッチー」
「マスターはムッツリ」
「……スケベッ!」
「…だからどこでそんな言葉覚えたんだよ!」
チカ達の様な美女にそんな事言われるのは悪くないと、変な感情が芽生えつつも宿屋を出る。出たらやはりというか、野郎からの視線が鬼の様に突き刺さる。中には下衆な笑い声を上げている野郎もいるが、まぁそれはしょうがない。その気持ちは分からなくも無いからね。
「…で?どこに行くんだ?」
「オニキスさんが行きたいお店があるんだってさ」
俺の問いにレインが答え、オニキスさんが店へと案内してくれる。道中、話を聞くと、その店はオニキス夫妻が若い頃から存在しているらしく、デートでよく利用したお店だとか。……ちなみにドレスコードなどは存在してない。ドレスコードがある店は有るみたいだけど……そんな堅苦しい店は嫌だ。
「着きましたよアルスさん。ここが『レガロ』というお店です」
オニキスさんが案内してくれたお店は一風民家かと思うくらいの普通の家だった。しかし、出入口には看板が出ており、『気分に合わせた料理を提供致します』と書かれていた。
「……なんか高そうな雰囲気っつーか…」
「ご安心を。この店はとても安いんですよ。味も文句無しだと私達は思ってます」
「夫との記念日はよくここで食事をしたんです。……何十年振りですけどね?」
「まぁ!そんな素敵なお店に私達を連れて来てくださるなんて!」
「あたし達お邪魔じゃない??思い出を壊しちゃったりしない??」
「ウフフッ。そんな事は無いわローリィちゃん。私達とローリィちゃん達が出会った記念日という事でこのお店を選んだの」
「……嬉しいっ!ありがとうコーラルさん!」
レインがコーラルさんへと抱き付く。しれっとナナもコーラルさんに抱き付いていたのにはビックリしたが、2人の気持ちには俺も笑みを隠せなかった。
(全然何にもしてないんだけど………こんな言葉を言える人間になりてぇな)
「さぁさ、皆さん。早速中へと入りましょう」
オニキスさん先頭に『レガロ』と言うお店に俺達は入店するのであった。
誰か---
誰か私の娘を---
「アルス様ー!お時間ですよー?」
「………………んぁ?」
身体が揺れるのを感じ、俺はゆっくりと目を開ける。
「アルスの寝顔って意外に不細工なのね」
「……うるせぇ」
ベッドから起き上がるとチカとレインが横に立っていた。寝起き様に悪口を言われるのは初めてだったが、気にしない事にした。
「悪りぃ悪りぃ……」
「もう皆下で待ってますわ」
「ん。すぐ行く」
「あ、そうだ。アルス、私に会う服を持ってない?」
レインから唐突に着替えを催促される。
「チカから借りなかったの?」
「好みのが無かったのよね…」
「じゃあローリィのは?」
「………体格が違うから着れないんですけど」
「………………あ、そっか」
「そっかって何よ!!」
「すまんすまん…。でも俺、男物しか持ってねーぞ?」
「……最悪それでいいかな。どんなのがあるの?」
「えーっと………」
そう言いながらアイテムリストを開く。
「んー……執事服かサラリーマンスーツ。成金スタイルとカジュアルな服がチラホラかな」
「…………やっぱり辞めとく。チカお姉ちゃんに借りる」
「そうしろ。……でも、そのままでいいんじゃねーの?それも似合ってると思うけど…」
「女の子は外に出る時はちゃんとしたのに着替えるのよ?アルスみたいに年がら年中鎧を着とくってのは無理!」
「そんな事思ってたのかよ……」
「まぁまぁ2人とも。とりあえず下に降りましょう。アルス様、私はレインを着替えさせてから下に降りますわね?」
「はーい」
チカ達が出た後、俺も服を着替える。『鎧ばっか』という言葉がずっと残り、アイテムリストを見ながら選ぶ。
「……これで良いよな?」
そう思って選んだのは『漆黒セット』というコスチュームだ。これは課金ガチャのハズレ枠--基本的に男物の服は無い--で、チカ達のコスチュームガチャを回した時に大量に出てきたものだ。…まぁ、一応見た目装備枠にはピッタリなんで限界突破させては居たけど……役に立つとは思わなかった。
「……何か真っ黒!とか言われそうだ」
黒のジーンズに、黒色のシャツ。黒色の靴に黒色の靴下ともう黒尽くめだ。……ネタコスチュームとして『黒づくめの全身タイツ』という物があるが、それは某探偵漫画の犯人姿そのものである。流石にそれは着れないけどね…。
着替えを済ませたあと下へと降りる。するとそこには何故か着飾ったローリィとナナがオニキス夫妻と立っていた。
「え………何その格好?」
「え?似合わない??」
「いや………似合ってるけど………それって『夜の蝶』シリーズだよね?」
ナナとローリィはグルグル巻の貝みたいな髪型で、タイトなワンピースを着ていた。ナナの格好は髪色に合わせた淡い青色のフレア系のワンピースで、白い太ももが男心をくすぐる。ローリィの格好はスタイルを全面的に出したオフショルダーの真紅のワンピースだ。もう目のやり場が無くてマジで困る。
「マスター。チカとレインは?」
「今着替え中みたいだぞ。………つか、何でその格好?」
「舐められない為。カイジャから来たからと言って、ボク達は田舎者じゃ無いから」
「どこからそんな知識持ってきたんだよ…」
オニキスさんをチラリと見れば俺と同じ様な表情を浮かべていた。しかし、コーラルさんは幸せそうな表情を浮かべていた。
「アナタ……私もあんな格好をした方が良いかしら?」
「しなくてもコーラルは充分綺麗だよ」
「アラアラ、アナタったら…」
(……仲睦まじくて良い事ですなぁ)
「お待たせしましたわ」
「ごめんねー?」
階段上からチカ達の声が聞こえ、その方向に目を向けるとこれまた同じ様な格好をしていた。チカは淡い緑のロングドレス。スリットが入っておりチカの美脚がより一層際立っていた。レインはというと、多分『夜の蝶』シリーズでは無く『晩餐会』シリーズだと思われる。肌の露出は少なく、ローリィの様に華美な色合いをしてない。少しだけ明るく見える黒色のワンピースを着ているが、逆に淑女な雰囲気を感じる。……まぁチカ達が派手過ぎるからなんだけどね。
(『晩餐会シリーズ』はハズレだと思ってたけど………現物見るとアリだな)
「……アルス。卑猥な視線を感じるんだけど?」
「そそそそんな事かんがえてないぞ!!」
「ご主人様のエッチー」
「マスターはムッツリ」
「……スケベッ!」
「…だからどこでそんな言葉覚えたんだよ!」
チカ達の様な美女にそんな事言われるのは悪くないと、変な感情が芽生えつつも宿屋を出る。出たらやはりというか、野郎からの視線が鬼の様に突き刺さる。中には下衆な笑い声を上げている野郎もいるが、まぁそれはしょうがない。その気持ちは分からなくも無いからね。
「…で?どこに行くんだ?」
「オニキスさんが行きたいお店があるんだってさ」
俺の問いにレインが答え、オニキスさんが店へと案内してくれる。道中、話を聞くと、その店はオニキス夫妻が若い頃から存在しているらしく、デートでよく利用したお店だとか。……ちなみにドレスコードなどは存在してない。ドレスコードがある店は有るみたいだけど……そんな堅苦しい店は嫌だ。
「着きましたよアルスさん。ここが『レガロ』というお店です」
オニキスさんが案内してくれたお店は一風民家かと思うくらいの普通の家だった。しかし、出入口には看板が出ており、『気分に合わせた料理を提供致します』と書かれていた。
「……なんか高そうな雰囲気っつーか…」
「ご安心を。この店はとても安いんですよ。味も文句無しだと私達は思ってます」
「夫との記念日はよくここで食事をしたんです。……何十年振りですけどね?」
「まぁ!そんな素敵なお店に私達を連れて来てくださるなんて!」
「あたし達お邪魔じゃない??思い出を壊しちゃったりしない??」
「ウフフッ。そんな事は無いわローリィちゃん。私達とローリィちゃん達が出会った記念日という事でこのお店を選んだの」
「……嬉しいっ!ありがとうコーラルさん!」
レインがコーラルさんへと抱き付く。しれっとナナもコーラルさんに抱き付いていたのにはビックリしたが、2人の気持ちには俺も笑みを隠せなかった。
(全然何にもしてないんだけど………こんな言葉を言える人間になりてぇな)
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