放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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091話 -ジュエリア王国 3-

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「……ソニア。いつ気が付いたの?」

トリフェーンの部屋からソニアの部屋へと戻る途中、ミレーユはソニアへと尋ねる。トリフェーンの部屋には妨害の魔法が掛けてあるが、それに反応は無かった。

「そりゃ気付くでしょ。物音したじゃん」

「…私は気付かなかったわ」

「オレもですね…」

「そう?……あたしも多分前までだったら気が付かなかったと思うんだよねー…」

「前までだったら?…どういう事?」

「いやね?アルスとダンジョンで生活したって言ったじゃん?」

「ええ」

「その時から物音には敏感になったんだよね」

「? 何でですか?」

「いや……普通に考えたら当たり前でしょ?開けた場所でもないし、周囲には魔物が居るんだよ?そりゃ安心して寝れる訳無いじゃん」

「でもアルス様が魔法をかけてたんでしょ?」

「そうだとしても警戒はするよ。……『もし』って言葉を考えたらね」

「……そうですね。ソニア様の言う通りです」

戦闘に関してはミレーユはあまり自信が無い。自分より秀でているソニアとニリキナがそう言うのであればそうなのだろうと納得する。

ソニアの部屋へと着き、再びミレーユは質問をする。

「ソニア、さっきお父様に『口約束』って言ってたけど、アレも騙すためなのね?」

「うん。『書類がある』って聞かれたら盗られるかも知れないからね。………まぁ無理矢理話題を変えたから怪しまれるだろうけど」

「あと、なんでアルス様に爵位を?」

「それは簡単だよ。潜り込んでいるヤツは確実にあたし達の味方では無い。なら、アルスの情報を欲しがるはず。だったらアルスがどんな性格なのかを言った方が都合の良い展開に持っていける」

「都合の良い展開とは?」

「ニリキナはあたしよりも頭良いから分かるだろ?……アルスをモノで釣れる男だって嘘の情報を流したんだよ」

「? なんで嘘の情報を?」

「……なるほどね?だから下の爵位を…って言ったのね?」

「???」

「流石姉さん。理解が早いね」

「…どういうことですか?」

「…簡潔に言えば、貴族派閥はアルスに対して立派な領地と地位を与える…って事よ」

「???」

「…あたしよりも頭良いはずだよね?」

「いや…言っている意味は分かるんですけど、意図が分からないんですよ」

「んなもん簡単だろ?貴族派閥には『アルスはモノで釣れる』って情報を流しただけだ」

「………それでアルスさんが釣れたらどうするんですか?」

「いや、それは無いね。ニリキナだって分かるだろ?アルスがモノで釣られるような男じゃないって事は」

「…そりゃそうですけど…」

「ニリキナ。ソニアが言った事を簡潔にすると、『貴族派閥は交渉の条件をこちらより上を提示する』という事よ。だからソニアはわざわざどうするかを説明したの」

「……………………あぁ!そういう事ですか」

「アルスはそういうの嫌だろうし、絶対に断る。これは断言できる」

「…………正直、オレはソニア様の暴走だと思ってましたよ…」

「………………失礼だなぁ。あたしだってちゃんと考える時だってあるんだよ?」

「いや……だって……ねぇ?」

「ま、まぁニリキナの気持ちも分からなくも無いわ?…………でも1つ聞いて良いかしら?」

「なぁに?」

「どこから演技だったの?」

「…………んー、最初は本気だったけど姉さんが報告していた辺りから気付いた。だからどーしよっかなぁーって」

「…言ってくれれば良かったのに」

「なぁに。あたしがどんな目で見られているかは知ってるし、そこを利用しない手はないでしょ?」

「………知恵が回るようになったのね」

ミレーユはソニアの機転に驚く。アルスに会うまでのソニアからは想像のつかない成長振りだった。姉として妹が成長する事はとても嬉しいものだった。

「………さてと。滅多に使わない頭を使ったら疲れちゃった。ニリキナ、稽古に参加するって団長に伝えてくれない?」

ソニアは大きく背伸びをするとニリキナへと伝える。

「分かりました。それじゃ模擬刀を準備しときます」

「それじゃ私は部屋に戻って仕事を済ませようかしら」

その様子を見たミレーユも自室へと戻ろうと思い、ニリキナと共にソニアの部屋から出る。

「……ソニア様がこんなにも……」

外に出るとニリキナが何とも言い難い表情でミレーユへと呟く。

「……まぁその気持ちはすごく分かるけど」

ミレーユもニリキナと同じ様な表情を浮かべたが、良い事には変わりない。ニリキナと別れた後、ミレーユは少しだけご機嫌な足取りで部屋へと戻っていくのだった。

「……………フフフッ!」

ミレーユ達が居なくなった部屋でソニアが小さく笑う。アルスがくれた服を着ながら『ここまで上手く事が運ぶとは…』と。

「……あたしってば演技派ねぇー」

ソニアの呟きは誰にも聞かれる事なく、部屋に響き渡るのであった。
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