放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

文字の大きさ
上 下
92 / 135

090話 -ジュエリア王国 2-

しおりを挟む
「---以上が彼についての報告になります」

「ふむ………」

王城の王の自室にて、ミレーユ達はジュエリア王国、国王トリフェーンへとアルスの事についての報告をしていた。

「あと、彼はこちら側に協力してくれるとのことです」

「それは嬉しいな。しかし、見返りは何を要求された?」

「見返りは何も。ただ、彼はあまりこういったモノは好ましくは無さそうです」

「……不思議な男だな」

「アルス様は自由がお好きみたいです。この話をした時も良い反応は見せなかったですし…」

「ニリキナ。他に何か言ってたりはしていたか?」

「…………『ドロドロとした争いは嫌い』と言ってましたね」

「ドロドロか………。フッ、面白い表現だ」

「お父様。それともう一つ、重要なお話があります」

「ほう?それは何だ?」

「……まだ確定はしておりませんが、もしかしたら彼はゆう---
「親父、あたしアルスと結婚するから」

「「「……………………は?」」」

ミレーユが声を潜めながらトリフェーンへと耳打ちしようとした時、今まで無言を貫いていたソニアが突飛な発言を告げた。

あまりにも唐突過ぎたので、ミレーユ達は王族らしからぬ間抜けな表情でソニアを見つめる。ニリキナに至っては手を額に当て『うわぁー……』といった表情を浮かべていた。

「ち、ちょっと待てソニア!」

トリフェーンがソニアが口を開こうとするのを止めて、こめかみを抑えながらミレーユの話を思い出す。だが、ミレーユからの報告には『結婚する』という理由は1つも見当たらなかった。あるとすれば彼とソニアが行動した10日間--とは言っても、ミレーユからの報告では一瞬のことだったと聞いている--だろう。

「あー………ソニア?一先ず理由を聞いても良いか?」

「理由は簡単。アルスがカッコよくて強いから」

「…………10代の女の子じゃないんだからさぁ……」

トリフェーンは頭を抱え小さく呟く。ミレーユやニリキナもソニアの言葉に対し頭を抱えていた。

「あたし、その話をするもんだと思ってた」

「思ってたって………あぁ、だから準備がどうのこうの言ってたわけね」

ミレーユはソニアの行動を思い出し理解する。どうやらソニアはアルスについての報告を報告だと先走っていたのだと。

「……いや。流石にそれは無理ですってソニア様」

「何でだ?ニリキナもアルスの強さは知っているだろ?」

「知ってますけど、身分ってのがあります!……アルスさんがいくら強かろうが、平民ですよ?!」

「なら爵位をやれば良い。そうすれば婚約はすぐに出来るだろう?」

「……ソニア。ちょっとその件については後で話しましょう。まずは報告し終えてからね?」

「今決めよう。その報告よりもこっちが優先でしょ?」

「「「…………………」」」

ソニアの我儘にミレーユ達は絶句する。ミレーユは素早くトリフェーンへと目配せし、事態の収拾を図ろうとする。

「……わかった。すぐ報告を終わらせるからちょっと待って---
「姉さん。それよりもの方が大事だ。姉さんもあたしの恋路を邪魔するつもりは無いでしょ?」

「…それは……まぁ………」

男2人はソニアの言葉に呆れている。トリフェーンに至っては耳掃除をする始末だ。しかし、その様子にソニアは腹を立てることなく、話を続ける。

「姉さん。さっきの報告だが1つ訂正がある。アルスはこちら側に協力してくれるとは言ったが、すら交わしてない。ただの口約束だろ?」

「……ハァ?何を言--

ミレーユがソニアの言葉を否定しようとした時、ソニアが指を口に当てる仕草をした。

「………だからまずは親父が挨拶をして、その話に持って行った方が良いと思う。流石のアルスでも国王相手には逃げようとはしないだろ?」

「? ソニア、報告と違う--
「そうだったわね。私とした事が勘違いしてたわ」

トリフェーンはミレーユの報告を思い出しながら質問しようとする。しかし、その質問はミレーユの声によって遮られる。

「だろ?……まぁ、あたし的にこっち側に引き入れるなら爵位を上げても良いと思うんだよ。それならあたしと結婚する事だって出来るだろ?」

「……いや。ですからソニア様--
「こっちに引き入れる代わりに爵位をあげるってことね?………アルス様のサガンでの功績を考えれば、一番低い爵位をあげても良いかも」

再びミレーユがニリキナの声を遮り、ソニアの話に乗る。ニリキナは『は?訳わかんねぇ…』と疑問を抱く。だが、ミレーユのある仕草で理解する。

「ッ?!」

ミレーユが小さく天井を指差し、そのまま自分の目を指すその仕草でニリキナとトリフェーンは『間者に聞かれている』と悟った。

「……なるほどな。ソニアの言う通りだ。その考えは良いと思う」

「だろ?……まぁ爵位をあげるにはまだ実績やらなんやらが厳しいとは思うが………まぁあたしを救った事実をダシにして下の爵位をあげても良いだろう。……思うにオアシスとかだな」

「? なんでオアシスなんですか?」

「あそこは貿易路になるだろ?ラティの管轄となると距離があるし、かといってわざわざ貴族を見繕って領地に当てるのも時間がかかる。何せ湖以外何も無いからな」

「そうねぇ………特産品も無いし、作物を育てるのも大変だからね」

「サガンに孤児院を持つアルスがオアシスの領主となれば、サガンとの連携も取れるしな」

「………確かに旨い内容だが、領主にするのは厳しいのでは無いか?」

「だからそこは名ばかりの領主にすればいいんだよ。こっちが税金やらなんやらは貰うとして、アルスには管理をさせれば話は解決だ。………貴族派閥も今のところ旨味のないオアシスには反対しないだろ?」

「……意外と考えてるな」

「まぁな」

「それで、アルスはその提案を呑むと思うか?」

「呑ませれば良いんだよ。その時はあたしが直接話をする」

「……それもそうね。でもソニアだけだと不安だから私とニリキナも一緒にするわ?それくらい良いでしょ?」

「そうして貰えると助かる」

「……よしわかった。ならば私がする事はアルスを呼び、仲間に入れるという事だな」

「ああ。そうしてくれ。出来るだけ早くな」

「…それじゃお父様、私達はこれで失礼します」

「ああ。私も出来るだけ早く動くからな」

ミレーユ達は会話を終え、部屋から出ていく。ソニアが間者がいるという事に気付いた事を、トリフェーンは『成長したなぁ…』と感慨深く思うのであった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

学年揃って異世界召喚?執行猶予30年貰っても良いですか?

ばふぉりん
ファンタジー
とある卒業式当日の中学生達。それぞれの教室でワイワイ騒いでると突然床が光だし・・・これはまさか!? そして壇上に綺麗な女性が現れて「これからみなさんには同じスキルをひとつだけ持って、異世界に行ってもらいます。拒否はできません。ただし、一つだけ願いを叶えましょう」と、若干頓珍漢な事を言い、前から順番にクラスメイトの願いを叶えたり却下したりと、ドンドン光に変えていき、遂に僕の番になったので、こう言ってみた。 「30年待ってもらえませんか?」と・・・ →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→  初めて文章を書くので、色々教えていただければ幸いです!  また、メンタルは絹豆腐並みに柔らかいので、やさしくしてください。  更新はランダムで、別にプロットとかも無いので、その日その場で書いて更新するとおもうのであ、生暖かく見守ってください。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...