放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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074話

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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「……あら?凄い偶然ね」

「あ、チカちゃんだー!」

「チカも今戻ったのか?」

孤児院の前の通りにて、チカ達3人はバッタリと出会った。

「ええ。……2人はどうだった?」

チカは一緒に歩いているナナ達へと話しかける。

「ボクはOKを貰った」
「あたしもー!それに凄い内容も聞いたんだよー!なんとねーラティ--

「あら、それは吉報ね」

「チカはどうだったのか?」

「…一度アルス様に聞かないと決められない事だったわ。でも必要な情報も集めれたわ」

「そう。ならボク達の話とすり合わせてから決めた方が良い」

「そのつもりよ」

「あれー??誰もあたしの話に興味無い感じ??」

チカ達は孤児院へと戻るとキッチンへと移動する。アルスを呼びに行こうと思ったのだが、キッチンの方からアルスの声が聞こえた為だ。

「アルス様、ただ今戻りましたわ」
「ただいまマスター」
「ただいまぁー!!」

「お?お帰り!…意外と早かったな」

「あ、お姉ちゃん達お帰り!」

レインとアルスが3人を迎え入れると、そのまま椅子へと腰を下ろし、アルスへと報告をする。

「アルス様、募集の件なのですが…」

「うん、どうだった?」

「レニーに色々と相談したのですが、給与が高いとの事でした」

「どれくらいの給与を言ったの?」

「18万Gほどにしたのですが…レニー曰く高収入過ぎると」

「…ちなみに相場はどれくらいとか聞いた?」

「はい。レニーが働いているギルドの給与は10万Gほどだそうです」

「…だとするとちょっと高過ぎるな」

「それでレニーが『この募集は副収入での募集なのか?』と聞いてきましたわ」

「副収入?……どういうこと?」

「レニーが言うには、副収入として働かせるならば5万G程が妥当で、正規職として働かせるならば8万Gが良いと言ってました」

「……なるほどなぁ。その8万Gってのは一月暮らせるのかな?」

「贅沢をしなければ4人家族が暮らせるらしいです」

「………そっか。募集人数は?」

「10名程と伝えてます」

「………となると30万Gの差が出来る訳か。この差は結構デカイな……」

「レニーが話し合ってから依頼を出してと言っていたので、まだ募集は出しておりませんわ」

「…うん。それが正解だね。ありがとねチカ」

「いえ。…出来れば自分で決めたかったのですが…」

「いやいや。見切り発車だったから仕方ないよ。チカもレニーさんに相談して、一度持ち帰った方が良いって考えたんでしょ?」

「はい…」

「それは正解だと思うよ?それにナナやローリィの話も一度聞いてからの方がまとめやすいと思うからさ。だから、チカが取った行動は正しいって事さ」

「…ありがとうございます」

「んじゃ次はローリィかな?ラティは許可出してくれた?」

「それがねー!聞いてよご主人様ぁー!!」

「……もしかして断られた?」

「違うよっ!ラティにね、お金出してーって言ったんだけど、ラティはうんともすんとも言わなかったの!」

「………それ断られてるんじゃ」

「でもねでもねー?あたしの巧みな話術で、ラティから凄い話を引き出したの!」

「凄い話?……なんだ?」

「ラティがねー、『孤児院の権利を全てアルスさんに譲る』って言ったの!」

「…………………はぁ?!」

ローリィからの言葉にアルスは目を丸くする。給与の支払いを頼みに行ったはずなのに、何故か譲渡されるという話に変わっていたからだ。

「好きなようにしてもいいけど、土地を拡張する時はちゃんと土地代を払ってねって言ってたよー!」

「ち、ちょっと待ってくれローリィ!………それ本当にラティが言ったの?」

「そうだよー?ちゃーんと言質は取った!!」

「…何処からそんな言葉覚えてきたんだよ……」

アルスは戸惑いながらもローリィの話を整理する。ローリィの話が本当であれば孤児院の運営についての権利はアルスが持つということになる。という事は、人件費やその他の費用などは全てアルス持ちということだ。

(……もしかしてラティは支払うのが嫌だったから権利を譲ったとかじゃねぇだろうな?)

ラティの性格からしてそう考えている可能性が高いと思ったアルスは少し溜め息を吐く。

(まぁ襲撃の復興費用とかで足りないのかもしれねぇな。街自体も広くねぇし、潤っているって訳でもねぇし……)

すぐさま思い付く理由はこれだけであったが、アルスはポジティブに考えることにした。

(まぁ金の問題はどの世界でも共通ってことだ。それは仕方ないとして………前向きに捉えれば金がある限り俺の考え通りにしていいって事だ。何人雇おうが、いくら支払おうが俺の自由って事だな。………一応、後で聞きに行くか。ローリィを疑う訳じゃねぇけど、違ったら困るからな)

「……よしわかった!なら、俺達の希望通りに依頼を出してみよう。ローリィもお疲れさん」

「えへへーっ!もっと褒めて褒めてー!」

「んじゃ次はナナだけど…………」

「先生からは承諾を得た。ボクの独断で住み込みという形にしたが………良かったか?」

「……住み込み?」

「孤児院に先生を常駐させていた方が良いと思ったから。何かあった時に一々呼びに行くのは手間だと考えた。よってその提案を条件にした」

「……なるほどね。確かにナナの言う通りだわ」

「自炊も出来るとの事。あと先生の立場は運営者では無く管理者と伝えている」

「管理者……確かにその名称の方がしっくりくるな」

「ボクの巧み過ぎる話術でその提案を飲ませた」

「……飲ませたって無理矢理に聞こえるんだけど?」

「無理矢理では無い。先生も快く引き受けた」

「……そっか。なら管理者は先生で大丈夫そうだな」

「マスター」

「ん?」

「交渉の評価は?」

「…あぁ、特に不備もないっぽいし満点だな」

「そうか」

「……!! よく頑張ったな、偉いぞー!」

「エヘヘッ………」

ナナの頭を撫でてやると、チカとローリィの目がとても冷たかった。2人にも同じ様にしてやると嬉しそうにしていたので、『贔屓してはいけない。平等にしなければ』と心に書き留めておく。

「んじゃ皆の報告が終わったところで、俺からも良いか?」

「? 何かありましたか?」

「チカ達が出て行った後にレインと話したんだけどさ。………結構ここの評判って高いみたいなんだよ」

「ええ。知ってますわ?」
「知ってる」
「皆言ってるよねー!」

「………えっ?!し、知ってたのか!?」

「はい…。お喋りしている時に聞いてますわ」

「…俺だけ知らなかったのか」

「アルスは男としか喋ってないからねー。…………ハッ!!もしかしてアルスって男好きなの!?」

「ち、ちげぇわ!!」

レインの勘違い発言を大声で否定する。言っておくが俺はノーマルだ。……本当だよ?

「アハハッ!冗談だよ冗談!……まぁ募集をかけたら大勢集まるよーって話をしてたの」

「……そう。ならば給与は低くした方が良さそうね」

「んー……チカお姉ちゃん達の話を聞いてたけど、副収入的な募集で良いと思うな。仮にサガンの人達全員がここで働きたいって募集してきたら断るのも大変でしょ?」

「……まぁ断り辛いな…」

「だから給与はかなり低くして、大勢雇えば良いんじゃないかな?そうすれば街の人達の家計も助かると思うし」

「…レインの言う通りね。レニーも言ってたけど多ければシフト制ってモノが出来るみたいね」

「あー…なるほどね。シフト制ってのは良いな」

「知ってるの?ご主人様ぁー?」

「ああ。労働条件をこちらから提示する事さ。午前中だけとか、朝から夕方までとかだな」

「…理解した。そのシフト制とやらを上手く使えば街の人達もボク達も助かると言う訳だ」

「……全然わかんなぁーい」

「シフト制とはそう言う意味だったのですね…。流石アルス様ですわ!」

「…別に凄くとも何とも無いんだけどね?」

「流石マスター!尊敬する!」
「あっ!2人とも抜け駆けはダメーーッ!!」

何はともあれ全員の意見を整理した事により、募集条件はスイスイと決まっていった。給与自体はかなり低めに設定し、募集人数が少なかった場合は給与を増やそうと思う。…まぁレインの話通りならばの話だが。

本当は時給とか日給にしようなとも考えていたが、ややこしい計算をするのは面倒だったので早めに諦めた。何せ時給の相場とか分からないし、まずその概念が伝わるかどうかが怪しいしね。無駄に知識があると0から説明するのは難しいと実感した。

「この内容で大丈夫ですか?」

チカが依頼書にまとめた内容を全員で確認する。当初は募集人数を10名程度としていたが、そこは削除しておいた。厳選するのも面倒だし、来るもの拒まずの精神で行こうと考えた。まぁレインの後押しもあったんだけどね。『選別するのは可哀想だから受け入れるだけ受け入れなさいよ。そうすれば給与も少なくする事が出来るわ』と。………総額が高くなるとは思うが、まぁ今の所はまだ金持ってるしね。微々たるものだろ。

チカに依頼書を出してくるようにお願いし、最終確認として俺はラティの屋敷へと向かう。ナナ達には帰り次第昼食を食べると伝えているので、作ってくれてるだろう。レインは庭で子供達と遊びに出掛けたし、とりあえず問題は解決かな?

「…有能が集まると物事って早く終わるんだなぁ…」

チカ達の事を絶賛しながらラティの屋敷の門をくぐるのであった。
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