放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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072話

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♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「あ、おはようチカちゃん」

「レニー。この依頼書を掲示して貰えるかしら?」

「依頼書?」

ギルドの受付にて、レニーはチカから渡された依頼書へと目を通す。

「…ああ、孤児院の募集ね?」

「ええ。5名くらい募集しようと思ってるんだけど……どう思うかしら?」

「んー………」

レニーは依頼書を目に通しながら口を挟む。

「…期日があやふや過ぎるかな。期日には決まりはないの?」

「それがまだ見通せないのよね。すぐに帰ってくるのか、それとも長い間向こうにいるのか…」

「だとしたら期間指定はしない方が良いね。…私の意見だけど、チカちゃん達は冒険者上居なくなる場合も踏まえて、ずっと働ける人を募集した方がいいと思う」

「それだとお金がかかってしまうわ」

「それは仕方ない事だよ。けど、長い目で見れば手間も取らないし、金額的にも安くなるとは思うよ?」

「安くなるって?」

「固定させればある程度の金額は分かるでしょ?もし人数が足りないと感じたらその固定の金額で試算すれば良いわけだし……」

「なるほどね。…じゃあ5名程度で良いかしら?」

「うーん………あの広さだともうちょっと多い方が良いかな?コレにも書いてあるけど調理する人も必要なんでしょ?」

「そうね」

「流石に料理も仕事に含ませると大変だと思うから10人ぐらいが良いんじゃないかな?それぐらい居れば楽に回せると思うよ」

「じゃあそれで」

「じゃあ10名で固定ね?……賃金はどうするの?」

「賃金は……申し訳ないけど相場を教えてくれるかしら?」

「えぇー?難しいなぁ……。ちょっと待ってね?」

レニーはそう言うと後ろの書棚へと移動し、目的の冊子を見つけると戻ってくる。

「一応求人の情報はここにまとめてあるんだけど………」

「見ても大丈夫かしら?」

「チカちゃん達なら大丈夫だよ」

レニーから冊子を渡されたチカは驚くべき速さで冊子をめくっていく。そして最後のページを見終えると冊子を閉じた。

「………なるほどね。担当別に給与は違うみたいね。けど、それだと計算が細かくなってしまうわね」

「…もう理解したの?」

「? そうよ?」

「……凄い」

「別に凄くはないわ?ナナ達だってこれくらい余裕よ。………レニー、参考までに読んだけど、私達の場合はちょっと違うわね。…だから給与は全て同じにするわ」

「…それ結構掛かるよ?」

「ええ。だから業務内容も同様にするの。料理も清掃も子供のお守りもね」

「…それだとサボる人も居るかも知れないよ?」

「帰ってきた時に面談するわ?それで働いてない人が居たら首を切るだけ。…それまでは、サガンの人達を信頼しておくわ」

「中々に博打だね…」

「初の試みだからね。失敗はある程度は覚悟しているわ?」

「…肝っ玉だなぁ。じゃあ給与は?」

「一月180,000G。休みは月に10日で」

「…チカちゃん。それだと希望者が大勢来るよ…」

「そうかしら?」

「…そうだよ。100,000Gぐらいがいいと思う…」

「ちなみにレニーはいくら貰ってるの?」

「私もそれぐらいだよ…。そんな高収入だったら私が働きたいぐらいだよ…」

「あら?ならレニーが働かない?」

「急だなぁ…」

「私達は信頼出来る人を募集してるからね。レニーなら大歓迎よ?」

「………この依頼書を出したらギルドから人がゴッソリ抜けそう。だから80,000Gに変更していい?」

「……安くないかしら?」

「これでも高収入よ?サガンの物価を考えたら一月余裕で過ごせる…………ねぇチカちゃん。1つ聞いても良い?」

「何かしら?」

「その……賃金って何処から出るのかしら?」

レニーは自分の意見を言いながらも疑問に思った事を口にする。月収8万Gはザガンでは破格の金額だ。それを10名も雇うとなると80万は必要となる。そこでレニーが思ったことはその支出は何処から出るのかという事だった。

「今ローリィがラティへと話をしに行っているわ」

「じゃあ領地の税収からって事かな?」

「全部って事は無いでしょうけど…足りない部分はアルス様が出す予定よ?」

「…それだと俄然厳しいよね。手持ちが幾ら有るのかは分からないけど、支払いを稼ぐってなったら高ランクの依頼を頻繁に受ける事になるね」

「…そうなるとサガンの依頼だけじゃ厳しいわね」

「うん……。ちょっと金額を下げた方が良いかも…」

「でもこれ以上下げて一月暮らせるのかしら?」

「あー……1つ聞きたいんだけど、この募集はどういう意図なの?」

「意図って?」

「4人家族が一月暮らせるレベルなのか、それとも副収入的な位置なのか……ってこと」

「……それは分からないわね」

「参考までに言うけど、月8万Gあれば4人家族で贅沢しなければ暮らせる。副収入であれば5万Gが妥当ね。その代わり週何日っていう労働実数にした方が良い。そうすれば安くなるしギルドみたいにシフト制が出来るわ?」

「…でもそれじゃ何かが起こった時に大変じゃないかしら?」

「それはそうだけど、ある程度の事なら対処出来るでしょ。サガンの人達も甘ちゃんじゃ無いからね」

「……………一度アルス様と相談しても良いかしら?」

「うん、良いよ。じゃあコレは私が預かっておくね」

「ありがとレニー。…それじゃまた来るわ」

「あー、一応新しい依頼書を持っていって。そっちの方が楽だと思うから」

レニーは新しい依頼書をチカに渡す。話し合いで決まった事を依頼書に書けばスムーズに処理が出来るからだ。

「それもそうね。…じゃまたね」

レニーから依頼書を貰ったチカは別れを告げてから出て行く。その背中を見ながらレニーは呟く。

「それにしても18万って……。破格過ぎるよ…」

チカの依頼書の内容を見ながら『私を雇って貰えば良かったかなぁ?』と思うのであった。
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