放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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071話

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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「あ、お帰りなさーい!」
「お帰りマスター」
「お帰りなさいませ」

「…ただいまぁ」

ミレーユさん達の話を終えた後、チカ達の元へと戻る。テーブルに腰を下ろすとチカが水を持って来てくれた。

「話は何だったんですか?」

「…イベントが起きたみたいだ」

「イベント?…それってあたしの専用イベントみたいなやつ?」

俺の言葉にローリィが素早く反応した。

「そんな感じといえばそんな感じだけど………俺専用イベントみたいなやつかなぁ?」

ミレーユさんの話を思い出しながら怠そうに答える。しかし、チカ達の反応は違ったようだ。

「マスターのイベントか!?」
「えっ!?ご主人様専用!?」
「ほ、本当ですか??それって初めてですよね?!」

チカ達はガバッと俺に詰め寄ると次々に喋り始める。

「アルス様のイベントとは!?」
「マスターはこれ以上強くなるのか!?」
「専用イベントって事は相手は強いんだよね!?」

「あー……みんな落ち着け。ちゃんと話すからさ」

チカ達を椅子に座らせ、ミレーユさんから聞かされた話を全て話す。『俺が勇者かも知れない』という事も含めてだ。

「---って話だったんだけどよ…どうやら王都に行かねーといけねーんだわ」

ミレーユさん曰く、俺が勇者の生まれ変わりの可能性である事はあの場にいた3人しか知らない。しかし、まだ可能性の段階なので実績を積んで欲しいとの事だった。そういう政治的な意図は分からないのでニリキナに詳しく教えてもらった所、以下の点が分かった。

1、王国最難関を踏破する事によって俺の知名度が格段に上がる。
2、俺は平民なのでダンジョンを踏破する事によって地位が貰える。
3、地位を持つ事で各派閥から声が掛けられると思うが、蝙蝠の役をしてもらう。
4、なんやかんやで民達から指示を集めて、王派閥である事を宣言する。

という雑な内容であった。それを聞いた俺は『はぁ?だからそんなドロドロした所は嫌だって言ってんだろうが!』と文句を言った。

まぁ、1は俺もゲーマーだから一番最初に踏破したいとは思うよ?どんな宝物があるのかも楽しみだからね。2については正直要らない。地位なんて必要ねぇんだよ!!3は以ての外だ。絶対に面倒だろそんなの!!…4は、なんやかんやがよく分からんが、ミレーユさん達的にはそうして欲しいそうだ。出来るだけ早く。

まぁ俺は優しい性格だし、お願いされたら『しょうがねぇなぁ?』とは思うよ?やるとは言わないけどさ。けど、そういうドロドロ系は本当に遠慮したいんだよなぁ…。ぶっちゃけ勇者って言われても良い印象は無いんだわ。だって良いように使われてポイーだろ?お姫様が魔物に囚われててそれを救い出してはい結婚!!とかだったら考えるけどさ…。ミレーユさんとソニアは囚われてないし、腹黒共に現状良いように使われてるからな…。バッドエンドしか思い浮かばんよ。

そんなマイナスな事を考えていると、ローリィが口を開いた。

「それってご主人様だけー?」

「いや?チカ達も行ってもらうつもりだよ?…1人とか寂しいじゃん?」

まぁ駄目って言われても連れて行くけどね。それくらい我儘言っても良いよね?

「「「……………」」」

「ん?」

返事がない事に疑問を抱くとチカがナナ達に目配せをした後口を開いた。

「あのぅ………私達が行くのは構わないのですが…ここの運営はどうしましょう?」

「あっ………」

チカの質問に俺は言葉を詰まらせる。確かに俺達が居なくなればここを誰が回すのだろうか?今のところ給金を支払っているとは言え、俺達がいる事で飯の準備をしたりと色々な作業をしている。誰かに頼んでも良いのだが……コンラッドやラティに頼むのは気が引ける。

「…1人だけ残るってのも嫌だろ?」

「「「嫌です!」」」

「ですよねぇ…………。うーん……どうすっかなぁ…」

「アルス様、王都に行く期日は決まっているんですか?」

「……いや。期日なんかは聞いてないな」

「なら早急にここの責任者を育てましょう。私達が何日掛かるかは分かりませんが、信頼のおける方を探した方が良いと思います」

「……チカ。ヘレナはどうだろうか?」

「ヘレナさんはお腹に子供が居るから駄目」

「じゃあフィンはー??」

「フィンも兵士の仕事があるでしょ?…だから求人を出すか、コンラッドさんやラティさんのツテを使って探した方が良いと思うの」

「…あ、そうだ。先生とかはどうだ?先生ならここで生活して貰っても良いんじゃねぇか?」

「先生ですか………。人格者ではありますが、食事とかの面が心配ですわ…」

「…そこは街の人達に手伝ってもらおうよ。それか、食事当番として雇うかのどっちかだな」

「…私達がどれくらいの期間離れるか分からないので、雇用となれば高く付くかと…」

「うーん……まぁそれは諸経費としてラティにお願いしてみよう。ダメだったら俺が支払えば良いさ」

「…その方向で動きますか。では私は早速ギルドに申請してきますわ」

「それじゃあたしはラティにお願いしてくるー!」

「…ボクは先生だね」

まだ確定では無いのだが、チカ達はすぐに行動を開始した。3人ともそそくさと出て行ったので残された俺は何か無いかと色々と考えていた。

「アルスお兄ちゃん、チカお姉ちゃん達どこに行ったの?」

「ん?……ああ、俺達が王都に行く間にここを任せれる人を探しに行ったよ」

「王都に行く間?……え?お兄ちゃん達は引っ越ししちゃうの?」

「ち、違うぞレイン?ただ、王都に行く用事が出来たからさ。…それがいつなのか、いつ終わるのかがまだ分からねぇんだけどな…」

「僕はどうなるの?」

「ん?……あー、レインはどうすっかなぁ?俺達と王都に行くか、ここに残ってお留守番しとくかどっちが良い?」

「着いて行くに決まってるでしょ!……ったく、すぐそうやって私を除け者にするんだから!」

「……すまんレイン。出来ればどっちのレインなのかをハッキリしてから喋ってくれ…」

「………今は近くに誰も居ないから大丈夫。それで?その用事ってのは何なの?」

「えぇーとだな………

レインがちょこちょことした動きで椅子へと座る。見た目は子供だが中身は大人なので、ミレーユさんから聞いた話を再度レインに聞かせる。ただし、俺が勇者の可能性がある事は伏せておいた。

「…ってな話だな」

「ふぅん?……ま、それならそれで良いんじゃない?」

「適当だなぁ……」

「適当じゃないわよ?ちゃーんと根拠があるもの」

「根拠?何の根拠だ?」

「ここで働くのってサガンの主婦からはかなり人気なのよ?」

「え?そうなの?」

「ええ。ちゃんと給金も払われるし、自分に子供がいたって連れて来ても良いからね。それにここは復旧が済むまでサガンの皆の憩いの場でもあるし。………知らなかったの?」

「全然知らなかった……」

「襲撃の時もここは無事だったからね。手伝いをしてくれる人達は皆そう言ってたわよ?」

「…じゃあ別に責任者とか探さなくても大丈夫なのかな?」

「まぁアルス達が居ないってなると心細く感じるだろうけど……大丈夫だと思うわ?」

「一応、責任者として先生に頼みに行ってるんだけど…」

「先生なら大丈夫じゃない?街の人達からも信頼は厚いし。………問題は食事よね」

「そうなんだよ……。だから今チカがギルドに申請しに行ったんだよ」

「何人ぐらい募集するの?」

「…分からん。そこら辺はチカが判断するだろ」

「…アルスったら本当に頼りないわねぇ。ま、今は職が無いから多く集まると思うわ?その中から選ぶのは大変よー?」

「…そんなに来るかぁ?」

「だから人気だって言ってるじゃない。……最悪、街全体でここの管理を任すってのもアリよ?」

「……なるほどなぁ!それは確かに良い案だな」

「ま、お金は掛かるけどね?」

「足りなかったら俺が支払えば良いだろ。………つーか、その情報何処から仕入れたのさ?」

「フフッ……子供って便利なのよー?聞かなくても近くで話してくれるんだから」

レインのアドバイスにより大体の流れを構築できた。チカ達が戻って来た時にその話をしてみよう。そしてチカ達の報告と照らし合わせて流れに肉付けするだけだな。

(……にしてもやる事が多いな。ま、今更愚痴はいたって後の祭りだけどよ…)

ミレーユからの話を思い出しながら、アルスは小さく溜め息を吐くのであった。
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