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063話
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「あのなぁ…ハーレムってのはモテモテで更にモテモテな状態の事を言うんだぞ?」
「…え?モテてるじゃないですか…」
「あー…チカ達は俺の事を主人と認めてはいるけど、恋愛要素は皆無だぞ?」
「…え?…いや、嘘だろ…?この人鈍感なのか…?」
ニリキナは俺の返事を聞いて1人の世界へと旅立った。
「おーい?どうかしたのか?」
「え?あ、いや、何でもないです。………アルスさん、ちょっと聞きたい事有るんですけどいいですか?」
「ん?なんだ?」
「……アルスさん、好きな人とか居ないんですか?」
「好きな人??いないいない!」
「…気になる女性とかは?」
「……気になる女性ねぇ…。……あ、そうそう。それで思い出したんだけど、この国の女性ってなんで全員綺麗なの?」
「え……?どうしてですか?」
「今の所さ、王都とサガンしか旅してないけど若い女性ってどれも全員美人なんだよ」
「…そうですか?」
「いやいやいや、そうですかじゃねーよ!俺からしてみればどれもこれもレベル高いと思うぜー?」
「…うーん、俺的にはそうは思わないんですけど…」
「えー?目が肥えすぎてるんじゃねーか?……じゃあ、今いる女性陣で誰が1番美人だと思う?」
「えぇ…。全員同じくらい美人じゃないですか?」
「ならニリキナ的には誰がタイプよ?結婚してぇーって思うのは誰?あ、立場とかは抜きにしてね!」
「うーん………………やっぱミレーユ様ですかね」
「あ、わかる。良妻賢母って感じするよね」
「アルスさんは?誰と結婚したいと思うんですか?」
「俺?俺は……うーん……この中だったら全員かな?」
「ちょっ……。それズルくないですか?」
「だってどれもレベル高ぇーもん!ミレーユは言わずもがなだし、ソニアは性格さえ目を瞑ればイケる。チカとナナ、ローリィは性格も良いしスタイルも最高だろ?選べっていう方が難しくない?」
「そんな言うんだったら俺も全員と結婚したいですよ!ソニア様はちょーっとガサツですけど…。チカさん達もすげーレベル高いじゃないですか!」
「だろー??……ま、そんな事は絶対に無いだろうけど」
「まー男なら一度は妄想しますもんね。…いやぁ、そう考えると今の状況って最高ですね」
「そうそう………」
ついニリキナと熱く語っていると、ソニア達が此方を冷たい目で見ているのに気付いた。
「…ニリキナ、ちょっと外出ようぜ」
「…え?どうした--…はい、急いで出ましょう」
俺達は素早く外へ出ようとしたが、ソニアの声で動きが止まってしまった。
「おっと、2人とも楽しそうな話をしているじゃないか?ん??是非ともアタシ達も混ぜて欲しいんだけどな?」
「そうですよ2人とも。是非私達も混ぜてくださいませんこと?」
「アルス様、一体何の話をしていたのでしょうか?」
「もう一度、初めから聞きたい」
「はーい、2人ともこちらへどーぞー!!」
「…っ!アルスさん、もう手遅れみたいです…」
そういうニリキナはローリィに腕を掴まれて動けない状態だった。
「…すまん、ニリキナ」
「---『影縫』」
「ゲッ!!」
ニリキナを見捨てて逃げようとしたのだが、ドアに手が届く前に何者かのスキルが発動し、動きを止められる。
「チカ!何で俺を攻撃するんだ!」
「逃げようとしたからですよ?…なんで逃げようとしたんですか?」
「…確かに。別に何も悪い事してないな」
「ですよね?……さぁ、先程何を話していたのか私達に聞かせてくださいませんか?」
「そうだな。アタシの性格がどーのこーのという件は是非とも詳しく聞きたい所だな」
「ウフフフフ。さぁ、2人ともこちらへどうぞ」
結局、コテージから逃げ出す事は出来ず、ソニア達に拘束され先程話していた内容を根掘り葉掘り質問責めに合い、その日は終わるのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
-----夢を見た。何かと戦って、瀕死の状態になって、その何かと相打ちになった夢。何故か血の匂いがしたのを覚えてる。地面に伏しながら、声が聞こえる。
………誰だろう。聞き覚えのある声だ。泣きじゃくってるのが聞こえる。
真っ黒で顔も分からない何かの頭を撫でながら、そのまま夢の中で俺の意識は遠のいていった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「---アルス様っ!アルス様ッ!!」
眼が覚めると心配そうに覗き込むチカの姿があった。
「…ん?…どうした?」
起き上がると、チカだけでなく、ローリィ達やミレーユ達もこちらを心配そうに見つめていた。
「アルス様ッ!--ああ、良かった」
「え?…どうしたんだ??」
チカが俺をギュッと抱きしめる。微かに舌打ちが聞こえたが、それよりもどういう状況か気になった。
「ちょっ、誰か説明して…」
「お前、酷く魘されていたぞ?何か悪い夢でも見ていたのか?」
「…そんなに魘されていたのか?」
「寝言っていうか…叫んでましたよ?」
ソニアとニリキナが何があったのかを教えてくれた。どうやら俺は、いきなり叫び出しその場で悶えていたそうだ。
「…全然覚えてない」
「狂気の沙汰でしたよ。……いや、本当に」
「そういえばアルス、お前が魘されている時腰をずっと抑えていたのだが…」
「腰…?」
腰を触ってみるが、特に異常はない。赤くなっているかと思い、下着をずらして確認してみる。
「アレっ??何だこの痣?」
「ん?どうしたんだ??」
ソニアが普通に覗き込もうとしたので、慌てて距離を取る。
「ばっ!バカヤロウ!お前変態か!」
「別に減るものでもなかろう?……ああ、なるほど。自信が無いということか」
「ソニア様、自信が無いとはどういう事ですか?」
「なぁに、簡単な事だよチカ。アルスはな、自身の肉--
「うるせぇ!!そんな事ねぇよ!!つか、チカに変な事教えんな!!」
「ならば、見ても構わなくは無いか?」
「いや……お前少しは恥じらいを持てよ…」
「羞恥など、とうの昔に捨てたわ。…どれ、見せてみろ」
「なんでそんなに興味津々なんだよ…。…わかったよ」
パンツを手繰り上げて痣が見える状態にする。俺のアルスがギュッと締め付けられているのを感じる。
「ほら、この痣だよ。…どこで付いたんだろう?」
「「「……………………」」」
「? 不思議な痣ですわね。…鳥…でしょうか?」
「痣というより火傷の痕に似ている。少し盛り上がっているように見える」
「痛い?ご主人様ー、触ると痛い?」
「んにゃ、痒さとか痛みは無いな」
「治癒魔法をかけましょうか?」
「そうだな…。よろしく頼むよチカ」
チカが患部に触れ治癒魔法をかけてくれるが、痣は消えることは無かった。
「…消えない…ですね」
「気功とかはどうかな??」
「お願いローリィ」
今度はローリィにしてもらうが、変化は見られなかった。
「……軟膏とかはどうだろう」
「……はい」
ナナに薬を塗ってもらうが、熱を感じたり効いている感覚は得られなかった。
「うーん…まぁ、軟膏だから時間は掛かるだろうなぁ。………ん?3人とも変な顔してどうした?」
「あっ!……えーと、すいません、ちょっとソニア達と外に出てきますね!」
「え?あ…うん」
ミレーユ達はギクシャクしながら、外へと出て行った。
「…どうしたんだろ?」
「ハッ!!まさかアルス様の痣が不治の病とか!?」
「それはいけない。すぐさま対処を考えるべき」
「え!?ご主人様死んじゃうの!?」
「なんでそうなるの!!…まぁ、不治の病とかは分かんないけど、今の所なんとも無いし大丈夫だろ?」
「本当ですか?……少しでも異変を感じたら仰ってくださいね??」
「うん、そうするよ。ま、とりあえず今は大丈夫だよ」
しばらく、着替えやら今日の予定やらをチカ達と相談していたのだが、ミレーユ達は一向に戻って来なかった。
「あいつら遅過ぎないか?」
「そうですね…。そろそろ朝食の準備をしようと思っているのですが…」
「気配は外から一歩も動いてない。ドアの外にいる」
「ローリィ、ミレーユ達に朝食の準備していいか聞いてきてくれない?」
「はーい!!」
ローリィは元気良く外へ出て行く。何か声が聞こえると、ミレーユ達は何故かおどおどしながら戻ってきた。
「遅かったな。今から朝食の準備するけど、リクエストあるか?」
「い、いや!アタシは何でもいいぞ!」
「お、俺もです!」
「私は軽めの朝食が良いですわ」
「オッケー。なら、サンドイッチでも作るか」
「ご主人様ー!あたしカツサンドがいー!」
「カツは難しいなぁ。油が無いし…肉焼いて挟むだけでも良いか?」
「うん!それでいー!」
外に出て、火を起こし調理を始める。チカとナナは隣でサラダを作っている。ちゃちゃっと終わり、良い匂いをさせながらコテージに入ると、真面目な表情をしたミレーユ達が待っていた。
「え?何この雰囲気?」
「知らなーい!ずっとあたしばっかり話してたー!」
「どうしたんだよお前ら?さっきからずーっと変だぞ?」
ミレーユ達に問いかけるが返事は無い。ちょっとだけイラッとしたが、表には出さずそのまま朝食を食べる事にした。
「チカちゃん!このタレすごく美味しい!」
「本当?初めて試したのだけれど、気に入ってもらえて良かったわ」
「酸味が良い。これはどうやって作った?」
「これね、ヘレナさんから教えてもらったのよ。ナナも聞けばすぐ作れると思うわ」
「ぶー……あたしも料理上手になりたいなぁ…」
「だったら手伝うべき。場数を踏まなければ上手くなれない、とヘレナが言っていた」
「あたしが作ると変なのになっちゃうんだよなぁ…」
チカ達はミレーユ達を気にすることなく、楽しそうにお喋りをしている。俺はというと、無表情でモソモソと食べるミレーユ達を見つめながら食べていた。
「--ご馳走さまっ!!さぁて、今日も一日張り切っちゃいましょー!」
「こら!ローリィ、食べ終わったら後片付けしなさい!」
「歯磨きもするべき。虫歯が多いと嫌われる」
「…チカちゃん達だって、歯磨きしてないじゃん!」
「あら?私は露天通りで買ったわよ?狼の毛を使った歯ブラシをね?」
「チカも?ボクも買った。ただ、柔らかすぎる」
「あたしにも買ってよー…。帰ったら買いに行こーっと!」
「「「……ご馳走さまでした」」」
ミレーユ達は静かに手を合わせる。今の今まで話さないという事は、重要な事なのだろう。アルスは少し焦れったい様に思ったが、話すまでは我慢しようと自分を納得させた。
「よし、皆食べ終わった様だし今日の予定について話そうか。オアシスからサガンまでの最短距離をマーキングしながら歩くで良かったか?」
「……はい。地図は一応準備してます。地形の高低が激しい所は迂回して行こうと思います」
「オッケー。チカ、ゼロ達をここに連れて来てくれ。ナナとローリィはこのボトルにオアシスの水を汲んでくれ」
「「「わかりました」」」
各自、出発の支度に取り掛かる。ゼロ達は遊んでいた様で、チカが指笛を吹くと急いで寄ってきていた。ナナ達は空のボトルに水を汲んでいる。数は10以上あるが、収納袋に入れれば重さは関係ない。
「アルス様、連れて来ました」
「こっちも終わったよー!」
全員がコテージから出た後、テントと同様に仕舞うことが出来るか試してみると、その場から消えボックスに移動したのを確認出来た。
「こっちも終わったよ。んじゃ、ニリキナと俺は徒歩で。ミレーユ達はゼロ達に乗ってくれ」
チカとミレーユが一緒に乗り、ソニアはゼロに乗る。ゼロは嫌がる事なくソニアを普通に乗せていた。
「さぁて、行きますかね」
「…ん?ちょっと待て。足掛けの隙間に何かあるぞ?」
ソニアが不審そうにゴソゴソする。すると、足掛けから星型の何かを取り出した。
「…何だこれは?」
「どれどれ?ちょっと見せてくれ」
「ほれ。これだ」
ソニアから星型の物を受け取ると、空にかざし注視する。
「…宝石かな??」
その時脳裏に閃くものがあった。先の発言を否定する事になるが、慌ててボックスから取りだす。
「アルス、それは?」
「大蜘蛛の魔核っていうやつなんだけど、初めてサガンに向かってる途中で倒した奴からドロップしたアイテムなんだ」
「大蜘蛛…。それは確かサガン周辺の砂漠の主ではないか?」
「それは分かんねーけど…これに似てるなーって思ってさ」
形状は違えど、煌きは似ている。怪しくも艶美な輝きがアルスとソニアを照らす。
その時であった。似ているだけで特に何もないと思ったアルスがボックスに入れようとした時、2つが軽くぶつかる。その瞬間、星型の物は眩い光を発し始めた。
「---うぉっ?!」
「--な、なんだ?!」
少し離れていたニリキナ達はあまりの眩しさに目を覆う。ゼロ達も驚き、怯える様に嘶く。
---そして、ニリキナ達が再び視線を戻すとそこにはアルスとソニア、両名の姿は無かったのであった。
「…え?モテてるじゃないですか…」
「あー…チカ達は俺の事を主人と認めてはいるけど、恋愛要素は皆無だぞ?」
「…え?…いや、嘘だろ…?この人鈍感なのか…?」
ニリキナは俺の返事を聞いて1人の世界へと旅立った。
「おーい?どうかしたのか?」
「え?あ、いや、何でもないです。………アルスさん、ちょっと聞きたい事有るんですけどいいですか?」
「ん?なんだ?」
「……アルスさん、好きな人とか居ないんですか?」
「好きな人??いないいない!」
「…気になる女性とかは?」
「……気になる女性ねぇ…。……あ、そうそう。それで思い出したんだけど、この国の女性ってなんで全員綺麗なの?」
「え……?どうしてですか?」
「今の所さ、王都とサガンしか旅してないけど若い女性ってどれも全員美人なんだよ」
「…そうですか?」
「いやいやいや、そうですかじゃねーよ!俺からしてみればどれもこれもレベル高いと思うぜー?」
「…うーん、俺的にはそうは思わないんですけど…」
「えー?目が肥えすぎてるんじゃねーか?……じゃあ、今いる女性陣で誰が1番美人だと思う?」
「えぇ…。全員同じくらい美人じゃないですか?」
「ならニリキナ的には誰がタイプよ?結婚してぇーって思うのは誰?あ、立場とかは抜きにしてね!」
「うーん………………やっぱミレーユ様ですかね」
「あ、わかる。良妻賢母って感じするよね」
「アルスさんは?誰と結婚したいと思うんですか?」
「俺?俺は……うーん……この中だったら全員かな?」
「ちょっ……。それズルくないですか?」
「だってどれもレベル高ぇーもん!ミレーユは言わずもがなだし、ソニアは性格さえ目を瞑ればイケる。チカとナナ、ローリィは性格も良いしスタイルも最高だろ?選べっていう方が難しくない?」
「そんな言うんだったら俺も全員と結婚したいですよ!ソニア様はちょーっとガサツですけど…。チカさん達もすげーレベル高いじゃないですか!」
「だろー??……ま、そんな事は絶対に無いだろうけど」
「まー男なら一度は妄想しますもんね。…いやぁ、そう考えると今の状況って最高ですね」
「そうそう………」
ついニリキナと熱く語っていると、ソニア達が此方を冷たい目で見ているのに気付いた。
「…ニリキナ、ちょっと外出ようぜ」
「…え?どうした--…はい、急いで出ましょう」
俺達は素早く外へ出ようとしたが、ソニアの声で動きが止まってしまった。
「おっと、2人とも楽しそうな話をしているじゃないか?ん??是非ともアタシ達も混ぜて欲しいんだけどな?」
「そうですよ2人とも。是非私達も混ぜてくださいませんこと?」
「アルス様、一体何の話をしていたのでしょうか?」
「もう一度、初めから聞きたい」
「はーい、2人ともこちらへどーぞー!!」
「…っ!アルスさん、もう手遅れみたいです…」
そういうニリキナはローリィに腕を掴まれて動けない状態だった。
「…すまん、ニリキナ」
「---『影縫』」
「ゲッ!!」
ニリキナを見捨てて逃げようとしたのだが、ドアに手が届く前に何者かのスキルが発動し、動きを止められる。
「チカ!何で俺を攻撃するんだ!」
「逃げようとしたからですよ?…なんで逃げようとしたんですか?」
「…確かに。別に何も悪い事してないな」
「ですよね?……さぁ、先程何を話していたのか私達に聞かせてくださいませんか?」
「そうだな。アタシの性格がどーのこーのという件は是非とも詳しく聞きたい所だな」
「ウフフフフ。さぁ、2人ともこちらへどうぞ」
結局、コテージから逃げ出す事は出来ず、ソニア達に拘束され先程話していた内容を根掘り葉掘り質問責めに合い、その日は終わるのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
-----夢を見た。何かと戦って、瀕死の状態になって、その何かと相打ちになった夢。何故か血の匂いがしたのを覚えてる。地面に伏しながら、声が聞こえる。
………誰だろう。聞き覚えのある声だ。泣きじゃくってるのが聞こえる。
真っ黒で顔も分からない何かの頭を撫でながら、そのまま夢の中で俺の意識は遠のいていった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「---アルス様っ!アルス様ッ!!」
眼が覚めると心配そうに覗き込むチカの姿があった。
「…ん?…どうした?」
起き上がると、チカだけでなく、ローリィ達やミレーユ達もこちらを心配そうに見つめていた。
「アルス様ッ!--ああ、良かった」
「え?…どうしたんだ??」
チカが俺をギュッと抱きしめる。微かに舌打ちが聞こえたが、それよりもどういう状況か気になった。
「ちょっ、誰か説明して…」
「お前、酷く魘されていたぞ?何か悪い夢でも見ていたのか?」
「…そんなに魘されていたのか?」
「寝言っていうか…叫んでましたよ?」
ソニアとニリキナが何があったのかを教えてくれた。どうやら俺は、いきなり叫び出しその場で悶えていたそうだ。
「…全然覚えてない」
「狂気の沙汰でしたよ。……いや、本当に」
「そういえばアルス、お前が魘されている時腰をずっと抑えていたのだが…」
「腰…?」
腰を触ってみるが、特に異常はない。赤くなっているかと思い、下着をずらして確認してみる。
「アレっ??何だこの痣?」
「ん?どうしたんだ??」
ソニアが普通に覗き込もうとしたので、慌てて距離を取る。
「ばっ!バカヤロウ!お前変態か!」
「別に減るものでもなかろう?……ああ、なるほど。自信が無いということか」
「ソニア様、自信が無いとはどういう事ですか?」
「なぁに、簡単な事だよチカ。アルスはな、自身の肉--
「うるせぇ!!そんな事ねぇよ!!つか、チカに変な事教えんな!!」
「ならば、見ても構わなくは無いか?」
「いや……お前少しは恥じらいを持てよ…」
「羞恥など、とうの昔に捨てたわ。…どれ、見せてみろ」
「なんでそんなに興味津々なんだよ…。…わかったよ」
パンツを手繰り上げて痣が見える状態にする。俺のアルスがギュッと締め付けられているのを感じる。
「ほら、この痣だよ。…どこで付いたんだろう?」
「「「……………………」」」
「? 不思議な痣ですわね。…鳥…でしょうか?」
「痣というより火傷の痕に似ている。少し盛り上がっているように見える」
「痛い?ご主人様ー、触ると痛い?」
「んにゃ、痒さとか痛みは無いな」
「治癒魔法をかけましょうか?」
「そうだな…。よろしく頼むよチカ」
チカが患部に触れ治癒魔法をかけてくれるが、痣は消えることは無かった。
「…消えない…ですね」
「気功とかはどうかな??」
「お願いローリィ」
今度はローリィにしてもらうが、変化は見られなかった。
「……軟膏とかはどうだろう」
「……はい」
ナナに薬を塗ってもらうが、熱を感じたり効いている感覚は得られなかった。
「うーん…まぁ、軟膏だから時間は掛かるだろうなぁ。………ん?3人とも変な顔してどうした?」
「あっ!……えーと、すいません、ちょっとソニア達と外に出てきますね!」
「え?あ…うん」
ミレーユ達はギクシャクしながら、外へと出て行った。
「…どうしたんだろ?」
「ハッ!!まさかアルス様の痣が不治の病とか!?」
「それはいけない。すぐさま対処を考えるべき」
「え!?ご主人様死んじゃうの!?」
「なんでそうなるの!!…まぁ、不治の病とかは分かんないけど、今の所なんとも無いし大丈夫だろ?」
「本当ですか?……少しでも異変を感じたら仰ってくださいね??」
「うん、そうするよ。ま、とりあえず今は大丈夫だよ」
しばらく、着替えやら今日の予定やらをチカ達と相談していたのだが、ミレーユ達は一向に戻って来なかった。
「あいつら遅過ぎないか?」
「そうですね…。そろそろ朝食の準備をしようと思っているのですが…」
「気配は外から一歩も動いてない。ドアの外にいる」
「ローリィ、ミレーユ達に朝食の準備していいか聞いてきてくれない?」
「はーい!!」
ローリィは元気良く外へ出て行く。何か声が聞こえると、ミレーユ達は何故かおどおどしながら戻ってきた。
「遅かったな。今から朝食の準備するけど、リクエストあるか?」
「い、いや!アタシは何でもいいぞ!」
「お、俺もです!」
「私は軽めの朝食が良いですわ」
「オッケー。なら、サンドイッチでも作るか」
「ご主人様ー!あたしカツサンドがいー!」
「カツは難しいなぁ。油が無いし…肉焼いて挟むだけでも良いか?」
「うん!それでいー!」
外に出て、火を起こし調理を始める。チカとナナは隣でサラダを作っている。ちゃちゃっと終わり、良い匂いをさせながらコテージに入ると、真面目な表情をしたミレーユ達が待っていた。
「え?何この雰囲気?」
「知らなーい!ずっとあたしばっかり話してたー!」
「どうしたんだよお前ら?さっきからずーっと変だぞ?」
ミレーユ達に問いかけるが返事は無い。ちょっとだけイラッとしたが、表には出さずそのまま朝食を食べる事にした。
「チカちゃん!このタレすごく美味しい!」
「本当?初めて試したのだけれど、気に入ってもらえて良かったわ」
「酸味が良い。これはどうやって作った?」
「これね、ヘレナさんから教えてもらったのよ。ナナも聞けばすぐ作れると思うわ」
「ぶー……あたしも料理上手になりたいなぁ…」
「だったら手伝うべき。場数を踏まなければ上手くなれない、とヘレナが言っていた」
「あたしが作ると変なのになっちゃうんだよなぁ…」
チカ達はミレーユ達を気にすることなく、楽しそうにお喋りをしている。俺はというと、無表情でモソモソと食べるミレーユ達を見つめながら食べていた。
「--ご馳走さまっ!!さぁて、今日も一日張り切っちゃいましょー!」
「こら!ローリィ、食べ終わったら後片付けしなさい!」
「歯磨きもするべき。虫歯が多いと嫌われる」
「…チカちゃん達だって、歯磨きしてないじゃん!」
「あら?私は露天通りで買ったわよ?狼の毛を使った歯ブラシをね?」
「チカも?ボクも買った。ただ、柔らかすぎる」
「あたしにも買ってよー…。帰ったら買いに行こーっと!」
「「「……ご馳走さまでした」」」
ミレーユ達は静かに手を合わせる。今の今まで話さないという事は、重要な事なのだろう。アルスは少し焦れったい様に思ったが、話すまでは我慢しようと自分を納得させた。
「よし、皆食べ終わった様だし今日の予定について話そうか。オアシスからサガンまでの最短距離をマーキングしながら歩くで良かったか?」
「……はい。地図は一応準備してます。地形の高低が激しい所は迂回して行こうと思います」
「オッケー。チカ、ゼロ達をここに連れて来てくれ。ナナとローリィはこのボトルにオアシスの水を汲んでくれ」
「「「わかりました」」」
各自、出発の支度に取り掛かる。ゼロ達は遊んでいた様で、チカが指笛を吹くと急いで寄ってきていた。ナナ達は空のボトルに水を汲んでいる。数は10以上あるが、収納袋に入れれば重さは関係ない。
「アルス様、連れて来ました」
「こっちも終わったよー!」
全員がコテージから出た後、テントと同様に仕舞うことが出来るか試してみると、その場から消えボックスに移動したのを確認出来た。
「こっちも終わったよ。んじゃ、ニリキナと俺は徒歩で。ミレーユ達はゼロ達に乗ってくれ」
チカとミレーユが一緒に乗り、ソニアはゼロに乗る。ゼロは嫌がる事なくソニアを普通に乗せていた。
「さぁて、行きますかね」
「…ん?ちょっと待て。足掛けの隙間に何かあるぞ?」
ソニアが不審そうにゴソゴソする。すると、足掛けから星型の何かを取り出した。
「…何だこれは?」
「どれどれ?ちょっと見せてくれ」
「ほれ。これだ」
ソニアから星型の物を受け取ると、空にかざし注視する。
「…宝石かな??」
その時脳裏に閃くものがあった。先の発言を否定する事になるが、慌ててボックスから取りだす。
「アルス、それは?」
「大蜘蛛の魔核っていうやつなんだけど、初めてサガンに向かってる途中で倒した奴からドロップしたアイテムなんだ」
「大蜘蛛…。それは確かサガン周辺の砂漠の主ではないか?」
「それは分かんねーけど…これに似てるなーって思ってさ」
形状は違えど、煌きは似ている。怪しくも艶美な輝きがアルスとソニアを照らす。
その時であった。似ているだけで特に何もないと思ったアルスがボックスに入れようとした時、2つが軽くぶつかる。その瞬間、星型の物は眩い光を発し始めた。
「---うぉっ?!」
「--な、なんだ?!」
少し離れていたニリキナ達はあまりの眩しさに目を覆う。ゼロ達も驚き、怯える様に嘶く。
---そして、ニリキナ達が再び視線を戻すとそこにはアルスとソニア、両名の姿は無かったのであった。
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リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
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