放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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044話

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「……魔族だと思う証拠は?」

「そこにいる小僧と一緒で証拠は無いぞ?じゃが、状況的にはあると思うがのぅ」

そう言い終わるとジルさんは紅茶に口を付ける。何とも言えない顔をしながらゴードンは俺を見ている。

「………ふぅ。疑われている事に関しては何も言いません。証拠が無ければただの言い訳ですから」

「そうじゃな。聡い小僧にはワシのお気に入りのクッキーをやろうかのぅ」

「…後で1枚貰いますよ。…それで?俺を信用するにあたっての条件は何でしょう?」

「カッカッカッ。そこまで理解出来ているなら答えは1つしかなかろうて」

ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、ジルさんはクッキーに手を伸ばす。チカとナナも話を理解出来たのか紅茶に口を付けていた。

「俺を兵士団に組み込む、って事ですね?サガンと同じように」

「おぉーう。さすがじゃ!どこぞの脳筋にも、アルスの爪の垢を煎じて飲ませたいぐらいじゃな」

「ん?どういう事だ?脳筋??」

「…んー、簡単に言うと『俺』という人間に首輪を付けたいって事だ」

「はぁ??お前、そういう趣味だったのか!?」


「……アリね」
「…可愛い」
「? お兄ちゃんはお犬さんなの?」
「…あたし達のペット…」


「んんっ…ちげーよ。あのな?ジルさんは俺を管理下に置きたいんだよ。王都が襲撃された時とかに俺ぐらい強い奴が居れば助かるだろ?」

「それは否定しねぇけどよぉ…。何でそんな回りくどい事をするんだ?」

「それは俺が『得体の知れないヤツ』だからだよ。…ま、そうやって俺を縛り付けたいんだよ」

「……でもよぉ、もし、もしだぞ?お前が裏切ったって事になったらどうするんだ??」

「うーん…推測だけど『誓いの儀式』とかをさせられるんじゃねーか?そこんとこどうなの?ジルさん」

レインと楽しそうに話しているジルさんに尋ねると、満面の笑みで振り返る。

「ん?そんなんワシ知らんよ?ただ、ワシはアルスがどういう人物なのかを知りたかっただけじゃよ?」

「はぁ??じゃあ、組み込むって話は???」

「ワシ言っておらんよ??アルスが言い出した話じゃなかったかのぅ?」

……チッ!!嵌められた!!別にそう言わなくても良かったのか!!くそおおおおお!変に考え過ぎてしまった!!!!

「…まぁ、アルスを兵士団に組み込むとは言わんが、ギルドの防衛団には所属させようとは思っておるがの?」

「へーへー。どーぞご自由に」

「つれないのぅ…。まぁ、アルスが魔族では無いと信用はしようかの」

そう言うとジルさんは再びレインとお喋りをし始めた。含みのある会話にどっと疲れた為、目の前にある紅茶にたっぷりと砂糖とミルクを足す。

「……ん?ところでよ、結局の所嬢ちゃん達と依頼は受けていいのか?」

「良いぞ。ネルもアルスから武器を借りたのじゃろう?お主達は格上のお嬢さん方から技を盗むのが良かろうて」

「……それは誰に聞いたんです?」

「カッカッカッ。あっちをちょこちょこ、こっちもちょこちょこじゃよ。…さて、紅茶のお代わりは如何かな?」

♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

ジルさんとの会合を終え、俺達は外に出る。胸一杯に外の空気を吸い込むと、疲労感が押し寄せて来た。

「あー……すげー疲れたなぁ」

「あたしもご主人様達の会話を聞いてたら、頭がとっても疲れたよー」

「そうね。あんな会話は私達には出来ませんでしょうね…」

「大人は小狡い。ボクの様に直球で話すべき」

「ナナも大人でしょうに…。さて、アルス様?もう宿にそのまま帰りますか?」

「そのままベッドにダイブしたい気分だけど…チカ達お腹空いただろ?」

「うん!お腹ペコペコだよぉー!!」

「なら、どこかで飯食ってから宿に帰ろうか。出来れば宿の近くがいいなぁ」

「ならよ、オレ達と一緒に食べねぇか?ネルも嬢ちゃん達にこれからについて色々話をしたいと思うしよ」

「…あんまり遅くならない程度にしてね?」

こうして、長い長い依頼を終えオレ達はゴードンと共に夕食を食べ、また長い夜を過ごすのであった。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「おはようございますアルス様!」

「おはよ……。あれ?いつもと格好が違うね?」

「はい。今日はゴードンさん達と依頼を受けるんですけど、私達の通常装備している防具だとダメージを受けないので、ランクをかなり落としたのを装備してます」

「ああ…そういうことね。確かにいつもの格好は強すぎるもんな…」

「でも、これでもゴードンさん達が装備しているヤツよりも強いんですよね…」

「あー……N・Rランクは全部売っちゃったからなぁ。……コスチューム着てけば?アレそこまで高く無いだろ?」

「!  そうですね!その手がありました!」

チカ達はどのコスチュームを着るかを仲良く相談していた。俺もたまには違う服を着るかなぁ。

ベッドから降り、リストを一覧する。残念ながら、男物のコスチュームは少ないので、防具を変えるだけだが。

「アルスお兄ちゃん、何してるの?」

「ん?今日はどんな鎧にしようかなって思ってさ」

「…お兄ちゃん、お洋服持ってないの?」

「……そういえばそんなに持ってないな。この前買った正装ぐらいだわ」

「チカお姉ちゃん達は今日イライ?ってのを受けるみたいだし、お兄ちゃんのお洋服買いに行こうよ!」

「そうだなぁ…。よし、なら今日は服を買いに行こうか」

「ず、ズルい!!!」

レインと今日の予定を話していると、話が聞こえていたのかローリィが割り込んできた。

「レインちゃんズルい!!あたしもご主人様の服を一緒に買いに行きたい!!!!」

「なんですって!?レイン!アナタ、アルス様と買い物に行くの!?」

「そういうの良くない。ボクも連れて行くべき」

ローリィの声が大きかったのか、ナナ達まで割り込んできた。一同揃って俺とレインに迫る。

「えー?だってお前ら今日依頼受けるんだろ?その間、俺とレインは暇だし別に良くないか?」

「お姉ちゃん達忙しいもんね」

「ぐぬぬ…。あたしだってご主人様とお洋服買いに行きたいの!!」

「わ、私だってアルス様と行きたいわ!!」

「…ボクとチカはまだデートしてない。新参者のレインが先にデートするなど言語道断」

「…デートって。そんなもんじゃ無いだろ?なぁレイン?」

「? デートってなに??」

「レイン…ちょっとこっちに来なさい」

チカに連れられレインは部屋の隅っこに行く。その間、俺はローリィとナナからギャイギャイと責められている。

話が終わったのか、何故か顔を赤くしたレインとチカが戻ってきた。チカも何か決心したような顔をしている。

「…アルスお兄ちゃん、服を買いに行くのはやめよう。お兄ちゃんの服とか、よく考えたら分からないし…」

「えぇ?別にお洒落なヤツを買うわけじゃ無いし、ただ買い物に行くだけだよ?」

「……チカお姉ちゃん達と一緒の方がいい。その方が僕も楽しいから」

「……チカ、レインに何言ったの??」

「ねぇ、みんな。今日はアルス様の買い物に行かない?ゴードンさんには今日の依頼はお休みをくださいって伝えにいこうと思ってるの」

「ちょ、チカ。俺の質問に--

「さんせー!!」
「異議なし」

「それじゃ、ゴードンさんに伝えて来ますわ。ちょっと待っててね」

そう言い残すとチカは颯爽と部屋から出て行った。残ったローリィ達はコスチュームを選びなおしていた。

「……はぁー。あとでゴードンに謝っておこう…。なぁ、レイン。チカに何言われたの?」

「言えない…。これは『女の秘密』だから」

「なんだよそれ…」

「ご主人様ー!これあたしに似合ってるかなー??」

結局、チカが帰って来るまで俺はローリィ達のファッションショーに付き合わされていた。これ程までに、コスチュームを大量に買っていた事を恨んだのは初めてだ。程なくして、チカも帰ってきてローリィ達が俺に服を着てもらった事に腹を立て、俺に服を選ばせた。

それから、俺の服を買いに行くのは3時間ほど経ってからであった。

♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「……そうそう。アルス様、ゴードンさんから伝言がありました。『依頼を受けるのは明後日からで良いか?ネルがどうしても弓の使い方に慣れてからが良いって言ってるもんだから、しばらく時間をくれ。ネルが満足したらお前んとこに顔を出しに行くからよ!』…って事ですわ」

「あ、そうなの?そりゃあ、都合良かったわ。んじゃ、それまでに野暮用を済ませとくかね」

「野暮用…ですか?何かありました?」

「ほら、俺達の馬に馬具を作らないといけないだろ?ブランさんがガンテツさんに作ってもらった方が良いって言ってたからさ、明日にでもサガンに戻って頼んでおこうと思ってね」

「あー、そう言えばそんな話をしてましたね。転移で戻るんですか?」

「うん。それに、孤児院にもレインの事を話しておこうと思ってね。いきなりじゃ大変だろうしね」

「それじゃ、明日は皆でサガンに戻る感じですか?」

「あー…そうだな。チカ達の馬具は俺分かんねーし、そうした方が良さそうだね。…となるとお土産も買って行くか」

「お土産?……ああ、フィンさん達にですか?」

「それと孤児院にもね。んー、そうなると結構な量になりそうだなぁ…。『収納袋』を後で買いに行くか」

商店通りを歩きながらチカとお喋りをしていると、前方からこちらに手を振りながら近づいて来る2人組が居た。

「……ん?なんだ??」

人違いかと思い後ろを振り向くが、誰も手を返している人はいない。そのままじっと2人組を見ていると、こちらへと走ってくる。

「…あれー?ドーンさんじゃない??」

「え?ドーン??じゃあ、隣にいるのは?」

「…フィンさんのようですね。なぜ王都にいるのでしょうか?」

その場で待っていると、息を切らせながらドーンとフィンが到着した。

「ぜぇ…ぜぇ…。久しぶりだなアルスさん」

「手を振り返してくれなかったから、僕達の事を忘れたのかと思いましたよ…」

「忘れてなんかいねーよ。ただ、遠くに居たから誰かなー?って思ってただけだよ」

「本当かぁ?オレ達は一発で分かったけどな?」

「ええ。遠くからでも目立ってましたからね…」

そんな事を言うコイツらの視線の先にはチカ達がいた。

「え?そんなに目立ってる?」

「アルスさんも目立ってますけど…それ以上にロ、ローリィさん達の格好がですね…」

「……今日はどんな嗜好なんだい?」

「嗜好って…。まぁ、否定はしないけど」

チカ達の格好は、『学生服』で統一している。決して選ぶのが面倒だったからではない。チカとナナは紺のハイソックス、ローリィはルーズソックスを履いている。ローリィはスカートが少し短めで、ぱっと見の印象では田舎のギャルっぽい感じだ。

逆にチカとナナは真面目路線だ。スタイルが良いから、真面目な中にも少しエロさを感じる。……ま、この気持ちはドーン達には分からないだろうなぁ…。

ただ、全員学生カバンは持っていない。ローリィは籠手を装備しているし、ナナは杖、チカは背中に矢筒と弓をからっている。前世にあった爆乳アニメみたいな状況だ。

「あのよぉ…前から思ってたんだけど、悪目立ちし過ぎじゃねぇか??」

「……こうなったのには理由があるんだよ…」

「ぼ、僕は素敵だと思いますけどね!」

フィンの目はローリィにしか注がれていない。ローリィも視線を感じているのか、少し照れているみたいだ。

「…まぁ、これは置いといて。2人は何しに王都に来たんだ?」

「ああ、オレ達はコンラッドさんのお使いで、ジルさんに書状を届けに行く途中なんだ。それと、アルスさん達に渡す物もあるんだけどよ…。おい!フィン!アルスさんにアレ渡してくれ」

「え…あ、はいっ!!えーっと……コレです!」

フィンが袋から取り出したのは手の平ぐらいの水晶であった。

「…ん?なんだこれ??ただの水晶にしか見えないけど…」

「コレはですね、持っている人同士で連絡が取れる魔道具です。魔力を通してから、連絡を取りたい人の名前を言うと通じるんですよ」

「あー、なんか前に聞いたことあるような気がするなぁ…。でもなんで俺に?」

「最近、サガン周辺によく魔物が出現しててよ、その為に応援しにこいって事じゃねーかな?今のところは、オレ達だけで何とか対処出来てるけどよ、強い魔物とか出たら無理だからなー」
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