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021話
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「…ん?コンラッドさんは呼んだ覚えねーぞ?」
「フィンから聞いたぞ!こんな飲み会に俺を呼ばないとか失礼だろーが!」
少し顔を赤くしたコンラッドが俺を責める。…ああ、疎外感を味わってたって事ね。
「すまんすまん。すっかり忘れてたわ。…それじゃ、俺の横に座る?」
「いや!せっかくだから、ローリィの横に座らせてもらおう!酒の場は女の横で無くてはな!!!」
ガハハと笑いながら、ローリィの横へ腰を下ろすコンラッド。……コイツ、平然とセクハラしていやがる。
「あれー?コンラッドさんだ!何か食べるー?」
ローリィは横に座ったコンラッドに気を遣い、お酒と食べ物を準備している。嫌そうな顔したら、遠ざけようと思ったけど、大丈夫みたいだな。
「おお、すまんな!…なら、ローリィのオススメを貰おうか」
…おっさんだなぁ。俺も歳を重ねたらあんな感じになってたんだろうか?
「っとっとっと…。よし、それじゃ乾杯とするか!ほれ、アルス!音頭を取らんか!」
「へーへー。それじゃ……良き夜にっ!」
「「「「かんぱーいっ!!」」」」
コンラッドが加入した事により、さらにうるさくなった。意外にも、下ネタを言わないコンラッドはチカ達と仲良く喋っていた。……セクハラジジイって思っててゴメンね。
「おい、アルス。料理が少なくなってきたぞ?注文しに行ってやるから、金を寄越せ」
…訂正。クソジジイだった。
「2000G有れば充分か?」
「はぁ!?今からフィン達も来るんだろう?全然足りんわ!」
待て待て待て。お前が言うのか!?
「チッ…。5000G渡しとくよ」
「気前が良いな!よし、それじゃ注文しに行くぞ!」
コンラッドがチカ達を連れて露店へと消えていく。1人寂しく酒を飲んでいると更なる来訪者が訪れた。
「おう!アルスさん!来てやったぜ!」
「こんばんはアルスさん。これ足りるか分からないですけど、料理を買ってきました」
「…本当にフィンは良い奴だなぁ。コンラッドにも見習って欲しいくらいだ」
「ははは…。すいません、コンラッドさんに話しちゃって。…迷惑かけてないですか?」
「んー、まぁそこまでは無いな。今はチカ達と追加注文しに行ってるよ」
「…すみません」
「いいよいいよ。迷惑とは思ってないから。……ところで、ドーンの隣にいる女性が嫁さんか?」
ドーンの横には、黒髪ショートカットで人懐っこい笑顔を浮かべた女性がいた。
「おう!俺の嫁の『ヘレナ』だ!」
「初めましてアルスさん。ヘレナと言います。前に夫が迷惑をかけたそうで…」
「気にしないでいいですよ。こちらが悪かったんですから…。怪我さしちゃってすんません」
席を立ち、頭を下げるとクスクスと笑い声が聞こえた。
「話通り良い人ですね、アルスさんは。ドーンったら毎日アルスさんの話をしているんですよ?」
「ばっ!ま、毎日はしてねーよ!!」
…うん、すげー仲良いって事は伝わるな。つか、そんな話を毎日してんのかお前?
「そうですか…悪口じゃなければいいんですが…。とりあえず、座りましょ」
座るように促すと、俺の横にフィン、ヘレナ、ドーンと座った。挟む感じに座ってるけど良いのかな?
「追加してきたぞ!…おっ!?フィン達も来たのか!」
「こんばんはコンラッドさん。僕達も今着いた所です」
「むむむ…だとしたら量が足りんかもしれんな。アルス!追加し---
「あー!!めんどくせぇ!後払いするから勝手に頼んで来い!」
コンラッドにそう告げると、ニヤリと笑みを浮かべフィンを連れ、また露店へと戻って行く。ローリィ達は着いていかず、席へと戻った。
「ア、アルスさん…。良いのか、放っておいて?あれ絶対に沢山頼んでくるぞ?」
「…別に金は気にすんな。さっきも5000G渡したばっかりだし…」
「ごっ!?……どんだけ金持ちなんだよ」
ドーンが何か言いたそうだったが、ヘレナの言葉の方が早かった。
「安心して?そんな事じゃ私の気持ちは揺るがないから」
「ちょっ、おま!!…そう言う事じゃなくてだな」
へーへー。ご馳走様!そういうのは家でやれ!家で!
「あのぅ……アルス様?その綺麗なお方は…?」
ヘレナの姿を見たチカが、おずおずと尋ねてきた。
「ああ、こちらはドーンの奥さんでヘレナさんだ。ヘレナさん、紹介しますね。この金髪の娘がチカ」
「初めましてヘレナさん」
「んで、この青髪の娘がナナ」
「ナナ。よろしく」
「最後の黒髪ツインテールがローリィです」
「ローリィだよっ!よろしくねっ!」
「うふふふ。お噂通り、全員綺麗で可愛い娘ですね。…初めまして皆さん、ドーンの妻のヘレナです」
何の噂かを聞きたかったが、チカがそれよりも早く話しかけていた。
「ヘレナさん!色々聞きたいことがあるんです!ぜひ、こちらでお話しませんか?」
「あらあら、一体何かしら?…アナタ、向こうに行ってくるわね」
コンラッドの座っていた席にチカが座り、ヘレナはナナとチカの間に座った。気付けば、俺達の周りにも飲んでいる人達が増え、会話が上手く聞こえない。
「…アルスさん、隣に座っても良いか?」
「別に良いよ。空けてんのもアレだし、こっち来いよ」
自分の飲み物を持ったドーンが俺の横に座る。
「誘ってくれた手前だけどよ、連れてきて良かったのか?」
「ん?…ああ、ヘレナさんの事か?まー、今度ご飯食べに招待して貰ってるし、その前に顔通ししてた方が楽しい食事になるだろ?」
焼き鳥を頬張りながら、自論を展開する。初めての食事ってお互いが気を使うから、あんまり好きじゃ無いんだよな。
「…確かにそうだな。アルスさんも意外と考えてるんだなぁ」
「意外って何だよ!俺はね、基本的に楽したいんだよ。人間関係なんかも含めてね」
クサイ話をしそうになったが、ガラじゃねーしな。それに今まで出会った人は全員良い人達ばかりだし、仲良くしたいって思ってる。
「…そうかい。ま、何にせよ誘ってくれた事に感謝するぜ!」
それからドーンと2人で色々な話をした。お酒も入っていたからか、普段よりも饒舌になったドーンは恋話もしてくれる。ヘレナさんは子供が2人欲しいらしく、計画的に配分を考えているとか生々しい話も聞かされた。
「戻ったぞアルスよ!」
ドーンの顔色が真っ赤に染まる頃、ご機嫌なコンラッドと疲れた表情のフィンが戻ってきた。
「お、お帰り。コンラッドの席はヘレナさんが座ってるぞ」
「なにっ!?……仕方ない。お前らの横で飲むとするか」
渋々とドーンの横に座るコンラッド。傍目から見れば合コンみたいな座りだな。
「フィン、何か飲むか?……どうした?そんな疲れたような顔して?」
勝手に酒を飲んでるコンラッドは放っておいて、フィンに尋ねる。…コイツいつも疲れた表情するよな?
「いや…ははは。コンラッドさんと買い物してきたんですけど、物凄い量頼んでたので金額が心配で…」
「あー…まぁ、そんなのは気にすんな。とりあえず、飲めよ!」
…フィンは真面目なんだなぁ。ストレスでハゲそうなタイプだ。
「いただきます…。……はぁ、骨身に染みるなぁ…」
「おっさんくせーなぁ。まだそんなに老けてねーだろ?」
「まだ若いですよ!…けど、気持ち的にぼやきたくなるんですよ」
「自分の上に知り合いがいると大変だもんなぁ…。まぁ、今日は飲んで忘れろ!」
フィンのグラスに並々と酒を注ぎ、どんどん飲ませる。フィンの性格上、酒の場でも気を遣ってそうだし今回くらいは心ゆくまで飲ませてあげたい。
「だ、旦那…。追加の料理持ってきたけど、なんだい、この人数は?」
これまた大量の焼き鳥を持ったおっちゃんが、俺達を見て驚いていた。
「ははは。ささやかなつもりだったんだが、宴会になっちまってさ」
「それにこの料理の数…。相当金使ったんじゃねーか?」
「…わからん。けど、かなり使ってるのは間違いないな」
「旦那の稼ぎは知らねーけどよ、大丈夫なのか?」
料理を置きながら、おっちゃんが心配そうに話しかけてくれる。
「大丈夫さ。俺地味に貯金あるし」
ゲームの世界では金持ちで、現実世界では貧乏ってあるあるだよな。何度、ゲームの世界に行きたいと思った事か…。……まぁ、今はゲームの世界にいるけどさ。
「そうかい?なら口出しする必要はねーな。……そうそう、俺の店はこの分で売り切れだ。旦那達のお陰で、1ヶ月分の売り上げさ!」
…すげー売り上げ叩き出したんだな。っていうか、かなり買ったみたいだな。
「そりゃあ良かったよ。なら、明日は休むのか?」
「流石に疲れたからな…。2日ぐらいは休むよ」
「お?じゃあ、おっちゃんも一緒に飲まないか?」
俺の申し出が意外だったのか、おっちゃんは目をパチクリさせている。
「ええ?それは嬉しいんだけどよ……。良いのかい?」
「今更増えたところで変わんねーし、一緒に飲もーぜ?」
「それじゃ、旦那のお言葉に甘えるよ。……店仕舞いしてくるわ!」
嬉々とした足取りでおっちゃんは店へと戻る。知らない人でも無いし、大賑わいは嫌いじゃないからね。
酒も入り、俺を含めた全員が良い感じに酔っ払っている。おっちゃんを誘っているのを見たコンラッドが、他にも勝手に知り合いを呼び、広場は大いに盛り上がった。
終いには近くの飲んでいる人達にも絡み酒をして、祭りかと思うくらいの人数での宴会になった。俺達のお陰?で露店の料理が品切れとなり、店を閉めた人達も混ざり、宴会はさらに熱を帯びた。
この機会に顔を売っておこうと思った俺は、フィンを連れて色んな人に話しかける。フィンのお陰で、色々な人達と仲良くなり、色々な情報や噂を聞かせてもらった。案の定、俺はヒモだと思われていたらしく、火消しに勤しんだ。
最終的には、露店通りの人達全員を巻き込み大宴会となった。チカ達と仲良くなりたいという連中も居たが、他の女性の目が厳しかったのか、すごすごと戻ってきた。しかし、そいつらはめげることなく、俺にチカ達との関係を色々と聞いてきた。趣味から好物、挙げ句の果てには俺との関係もだ。途中、コンラッドとフィンも混ざり収集が付かなくなってきたので、その話は一旦終わらせて置いた。
かくして、大宴会となってしまったが俺達は街の人達と仲良くなる事が出来た。これで、大体の人達には覚えられた事だろう。ポーロさんの依頼も受けれるだろうし、良い事尽くめだったな。
1人そう思っていると、後ろから誰かに頭を叩かれる。
「おいっ!何をボーッと黄昏ているんだ!お前が居ないと盛り上がらんだろうが!!」
「だからって叩く事はねーだろーよ!」
「ふんっ…。格好付けてる奴が居たからな。少しだけムカついたのだ」
そんな事は良いから早く行くぞ!と、コンラッドに連れられ大宴会の中へと戻って行く。
こうして、俺達は長くも楽しい夜を過ごしていくのだった。
「フィンから聞いたぞ!こんな飲み会に俺を呼ばないとか失礼だろーが!」
少し顔を赤くしたコンラッドが俺を責める。…ああ、疎外感を味わってたって事ね。
「すまんすまん。すっかり忘れてたわ。…それじゃ、俺の横に座る?」
「いや!せっかくだから、ローリィの横に座らせてもらおう!酒の場は女の横で無くてはな!!!」
ガハハと笑いながら、ローリィの横へ腰を下ろすコンラッド。……コイツ、平然とセクハラしていやがる。
「あれー?コンラッドさんだ!何か食べるー?」
ローリィは横に座ったコンラッドに気を遣い、お酒と食べ物を準備している。嫌そうな顔したら、遠ざけようと思ったけど、大丈夫みたいだな。
「おお、すまんな!…なら、ローリィのオススメを貰おうか」
…おっさんだなぁ。俺も歳を重ねたらあんな感じになってたんだろうか?
「っとっとっと…。よし、それじゃ乾杯とするか!ほれ、アルス!音頭を取らんか!」
「へーへー。それじゃ……良き夜にっ!」
「「「「かんぱーいっ!!」」」」
コンラッドが加入した事により、さらにうるさくなった。意外にも、下ネタを言わないコンラッドはチカ達と仲良く喋っていた。……セクハラジジイって思っててゴメンね。
「おい、アルス。料理が少なくなってきたぞ?注文しに行ってやるから、金を寄越せ」
…訂正。クソジジイだった。
「2000G有れば充分か?」
「はぁ!?今からフィン達も来るんだろう?全然足りんわ!」
待て待て待て。お前が言うのか!?
「チッ…。5000G渡しとくよ」
「気前が良いな!よし、それじゃ注文しに行くぞ!」
コンラッドがチカ達を連れて露店へと消えていく。1人寂しく酒を飲んでいると更なる来訪者が訪れた。
「おう!アルスさん!来てやったぜ!」
「こんばんはアルスさん。これ足りるか分からないですけど、料理を買ってきました」
「…本当にフィンは良い奴だなぁ。コンラッドにも見習って欲しいくらいだ」
「ははは…。すいません、コンラッドさんに話しちゃって。…迷惑かけてないですか?」
「んー、まぁそこまでは無いな。今はチカ達と追加注文しに行ってるよ」
「…すみません」
「いいよいいよ。迷惑とは思ってないから。……ところで、ドーンの隣にいる女性が嫁さんか?」
ドーンの横には、黒髪ショートカットで人懐っこい笑顔を浮かべた女性がいた。
「おう!俺の嫁の『ヘレナ』だ!」
「初めましてアルスさん。ヘレナと言います。前に夫が迷惑をかけたそうで…」
「気にしないでいいですよ。こちらが悪かったんですから…。怪我さしちゃってすんません」
席を立ち、頭を下げるとクスクスと笑い声が聞こえた。
「話通り良い人ですね、アルスさんは。ドーンったら毎日アルスさんの話をしているんですよ?」
「ばっ!ま、毎日はしてねーよ!!」
…うん、すげー仲良いって事は伝わるな。つか、そんな話を毎日してんのかお前?
「そうですか…悪口じゃなければいいんですが…。とりあえず、座りましょ」
座るように促すと、俺の横にフィン、ヘレナ、ドーンと座った。挟む感じに座ってるけど良いのかな?
「追加してきたぞ!…おっ!?フィン達も来たのか!」
「こんばんはコンラッドさん。僕達も今着いた所です」
「むむむ…だとしたら量が足りんかもしれんな。アルス!追加し---
「あー!!めんどくせぇ!後払いするから勝手に頼んで来い!」
コンラッドにそう告げると、ニヤリと笑みを浮かべフィンを連れ、また露店へと戻って行く。ローリィ達は着いていかず、席へと戻った。
「ア、アルスさん…。良いのか、放っておいて?あれ絶対に沢山頼んでくるぞ?」
「…別に金は気にすんな。さっきも5000G渡したばっかりだし…」
「ごっ!?……どんだけ金持ちなんだよ」
ドーンが何か言いたそうだったが、ヘレナの言葉の方が早かった。
「安心して?そんな事じゃ私の気持ちは揺るがないから」
「ちょっ、おま!!…そう言う事じゃなくてだな」
へーへー。ご馳走様!そういうのは家でやれ!家で!
「あのぅ……アルス様?その綺麗なお方は…?」
ヘレナの姿を見たチカが、おずおずと尋ねてきた。
「ああ、こちらはドーンの奥さんでヘレナさんだ。ヘレナさん、紹介しますね。この金髪の娘がチカ」
「初めましてヘレナさん」
「んで、この青髪の娘がナナ」
「ナナ。よろしく」
「最後の黒髪ツインテールがローリィです」
「ローリィだよっ!よろしくねっ!」
「うふふふ。お噂通り、全員綺麗で可愛い娘ですね。…初めまして皆さん、ドーンの妻のヘレナです」
何の噂かを聞きたかったが、チカがそれよりも早く話しかけていた。
「ヘレナさん!色々聞きたいことがあるんです!ぜひ、こちらでお話しませんか?」
「あらあら、一体何かしら?…アナタ、向こうに行ってくるわね」
コンラッドの座っていた席にチカが座り、ヘレナはナナとチカの間に座った。気付けば、俺達の周りにも飲んでいる人達が増え、会話が上手く聞こえない。
「…アルスさん、隣に座っても良いか?」
「別に良いよ。空けてんのもアレだし、こっち来いよ」
自分の飲み物を持ったドーンが俺の横に座る。
「誘ってくれた手前だけどよ、連れてきて良かったのか?」
「ん?…ああ、ヘレナさんの事か?まー、今度ご飯食べに招待して貰ってるし、その前に顔通ししてた方が楽しい食事になるだろ?」
焼き鳥を頬張りながら、自論を展開する。初めての食事ってお互いが気を使うから、あんまり好きじゃ無いんだよな。
「…確かにそうだな。アルスさんも意外と考えてるんだなぁ」
「意外って何だよ!俺はね、基本的に楽したいんだよ。人間関係なんかも含めてね」
クサイ話をしそうになったが、ガラじゃねーしな。それに今まで出会った人は全員良い人達ばかりだし、仲良くしたいって思ってる。
「…そうかい。ま、何にせよ誘ってくれた事に感謝するぜ!」
それからドーンと2人で色々な話をした。お酒も入っていたからか、普段よりも饒舌になったドーンは恋話もしてくれる。ヘレナさんは子供が2人欲しいらしく、計画的に配分を考えているとか生々しい話も聞かされた。
「戻ったぞアルスよ!」
ドーンの顔色が真っ赤に染まる頃、ご機嫌なコンラッドと疲れた表情のフィンが戻ってきた。
「お、お帰り。コンラッドの席はヘレナさんが座ってるぞ」
「なにっ!?……仕方ない。お前らの横で飲むとするか」
渋々とドーンの横に座るコンラッド。傍目から見れば合コンみたいな座りだな。
「フィン、何か飲むか?……どうした?そんな疲れたような顔して?」
勝手に酒を飲んでるコンラッドは放っておいて、フィンに尋ねる。…コイツいつも疲れた表情するよな?
「いや…ははは。コンラッドさんと買い物してきたんですけど、物凄い量頼んでたので金額が心配で…」
「あー…まぁ、そんなのは気にすんな。とりあえず、飲めよ!」
…フィンは真面目なんだなぁ。ストレスでハゲそうなタイプだ。
「いただきます…。……はぁ、骨身に染みるなぁ…」
「おっさんくせーなぁ。まだそんなに老けてねーだろ?」
「まだ若いですよ!…けど、気持ち的にぼやきたくなるんですよ」
「自分の上に知り合いがいると大変だもんなぁ…。まぁ、今日は飲んで忘れろ!」
フィンのグラスに並々と酒を注ぎ、どんどん飲ませる。フィンの性格上、酒の場でも気を遣ってそうだし今回くらいは心ゆくまで飲ませてあげたい。
「だ、旦那…。追加の料理持ってきたけど、なんだい、この人数は?」
これまた大量の焼き鳥を持ったおっちゃんが、俺達を見て驚いていた。
「ははは。ささやかなつもりだったんだが、宴会になっちまってさ」
「それにこの料理の数…。相当金使ったんじゃねーか?」
「…わからん。けど、かなり使ってるのは間違いないな」
「旦那の稼ぎは知らねーけどよ、大丈夫なのか?」
料理を置きながら、おっちゃんが心配そうに話しかけてくれる。
「大丈夫さ。俺地味に貯金あるし」
ゲームの世界では金持ちで、現実世界では貧乏ってあるあるだよな。何度、ゲームの世界に行きたいと思った事か…。……まぁ、今はゲームの世界にいるけどさ。
「そうかい?なら口出しする必要はねーな。……そうそう、俺の店はこの分で売り切れだ。旦那達のお陰で、1ヶ月分の売り上げさ!」
…すげー売り上げ叩き出したんだな。っていうか、かなり買ったみたいだな。
「そりゃあ良かったよ。なら、明日は休むのか?」
「流石に疲れたからな…。2日ぐらいは休むよ」
「お?じゃあ、おっちゃんも一緒に飲まないか?」
俺の申し出が意外だったのか、おっちゃんは目をパチクリさせている。
「ええ?それは嬉しいんだけどよ……。良いのかい?」
「今更増えたところで変わんねーし、一緒に飲もーぜ?」
「それじゃ、旦那のお言葉に甘えるよ。……店仕舞いしてくるわ!」
嬉々とした足取りでおっちゃんは店へと戻る。知らない人でも無いし、大賑わいは嫌いじゃないからね。
酒も入り、俺を含めた全員が良い感じに酔っ払っている。おっちゃんを誘っているのを見たコンラッドが、他にも勝手に知り合いを呼び、広場は大いに盛り上がった。
終いには近くの飲んでいる人達にも絡み酒をして、祭りかと思うくらいの人数での宴会になった。俺達のお陰?で露店の料理が品切れとなり、店を閉めた人達も混ざり、宴会はさらに熱を帯びた。
この機会に顔を売っておこうと思った俺は、フィンを連れて色んな人に話しかける。フィンのお陰で、色々な人達と仲良くなり、色々な情報や噂を聞かせてもらった。案の定、俺はヒモだと思われていたらしく、火消しに勤しんだ。
最終的には、露店通りの人達全員を巻き込み大宴会となった。チカ達と仲良くなりたいという連中も居たが、他の女性の目が厳しかったのか、すごすごと戻ってきた。しかし、そいつらはめげることなく、俺にチカ達との関係を色々と聞いてきた。趣味から好物、挙げ句の果てには俺との関係もだ。途中、コンラッドとフィンも混ざり収集が付かなくなってきたので、その話は一旦終わらせて置いた。
かくして、大宴会となってしまったが俺達は街の人達と仲良くなる事が出来た。これで、大体の人達には覚えられた事だろう。ポーロさんの依頼も受けれるだろうし、良い事尽くめだったな。
1人そう思っていると、後ろから誰かに頭を叩かれる。
「おいっ!何をボーッと黄昏ているんだ!お前が居ないと盛り上がらんだろうが!!」
「だからって叩く事はねーだろーよ!」
「ふんっ…。格好付けてる奴が居たからな。少しだけムカついたのだ」
そんな事は良いから早く行くぞ!と、コンラッドに連れられ大宴会の中へと戻って行く。
こうして、俺達は長くも楽しい夜を過ごしていくのだった。
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