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016話
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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
露店通りへと戻った俺達は、引き続き広報活動に勤しんでいた。チカ達も御老人と話をしてから、積極的に街の人達に話しかけていた。…練習したいって言ってたけど覚えるの早過ぎない?
最初は不審な目で見ていた街の人達も、段々と警戒を解き、話しかけてくれるようになった。性格は3人とも違うが、裏表一切無い態度で話しかけるので、女性からも反感は買って無さそうだ。
そんな光景を眺めながら、俺は1人串物を食べている。
「……旦那。チカちゃん達ばっかり働かせて良いのかい?」
「いーんだよ。俺が働こうとすると拒否られるからな。大人しく留守番しとけって」
「…そりゃ本当かい?にわかには信じられねぇぞ?」
「まぁ、そんな直接的な言葉じゃ無いけどね。……あいつらが他の人と話す練習がしたいって言ってたし、それを尊重しているだけだよ」
「ふーん…。今の旦那を見ていたら、世の中の奥さん達から反感買いそうだけどな?…ダメ亭主!!ってな感じで」
「おいおい…。俺はまだ独身だぜ?」
「へぇー?そりゃ知らなかったぜ。……はいよ、『手羽先』2本と酒な」
串物の店のおっちゃんと話をしながら、チカ達を遠目に見ている。確かに、今の俺ってヒモみたいな感じがプンプンするよな?女に働かせて、昼間から酒飲んでるし…。
あれっ!?結構ヤバいヤツに思われてる??
「な、なぁ…。俺ってやっぱり変な目で見られたりしてる?」
「ああん?そりゃ、そんな格好してたら変な目で見られるだろうよ」
「ちげーよ!…その、なんだ?世間の目的な意味でだよ!」
「んまぁー…良くは思われてないだろうな。多分だがな?」
…不味い!!非常に不味いぞ!俺のせいで悪評価が広がったりしたら、チカ達に顔向けできねぇ!
「ごっそうさんっ!!俺、向こうに行くわ!金ここに置いて行くからな!」
「ちょ、旦那!釣り--ってもういねぇ…」
串物の店を後にした俺は急いでチカ達の所へ行く。トナカイ姿で走る様はさぞ滑稽だっただろう。
俺が来た事に驚いていたチカ達だったが、さっき聞いた話をして、俺も広報活動に精を出した。必死に広報活動をする俺を見て、街の人達も話しかけてくれた。
その甲斐あってか、俺達はその日、街1番の有名人となった。そりゃ、美女達のミニスカ姿と変な動物の格好をしている奴がいれば、目に付くもんな。
こうして、俺達は無事?に街の住民に顔と名前を覚えてもらえる事になったのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
翌日、着替え---今日は巫女服だ---を済ませた俺達は、露店通りを歩いてから外へと出て行く。コンラッドの使いが来て、オアシスに一緒に向かってくれとの連絡だった。
正門に居る兵士に会釈をし外へ出ると、コンラッドとフィン、その他2名が待っていた。
「あ、おはようございますアルスさん。今日は--
「アルス、おはよう。急に呼び出して悪か--
挨拶をしてきた2人が言葉途中で固まった。どうしたんだ?
「あ、おはようございます。…どうしたんですか?」
俺の言葉がスイッチだったかのように、動きを取り戻す2人。心なしか少し顔が赤い。
「い、いやな…その…チカ達の格好がな…」
「え、ええ…。いつもは派手なんですが、今日はおとなし目というか…」
「ああ、これ?これはな巫女服って言うんだ。なかなか良いだろ?……いつもの格好の方が良かった?」
「い、いえ!!僕はこっちの方が好きです!!!」
…お、おう。そんな食い気味に来るなよ。びっくりするじゃんか。
「--ごほんっ!フィンよ、落ち着け。その気持ちはひじょーーに分かるが、後にしろ」
「す、すいません…」
フィンが落ち着きを取り戻した頃に、コンラッドが話し始める。
「アルス、まずは呼び出して悪かったな。今からオアシスに魔物の出現確認に行こうと思ってな」
「はぁ、別に予定無かったから良いですけど…。また新たに魔物が出たんですか?」
「いや、この前お前達が倒したのかという確認だ。泊りがけになるが、良いか?」
「あー、そういう事ですか。…でもこの戦力で大丈夫なんですか?」
「あ、だからアルスさん達を呼んだんです。皆さんのお力は知っていますので…。流石に、この戦力だけでは外で歩けませんよ」
…はいはい。なるほどね。倒したって言ったけど、どこに出たまでは言ってないからな。俺達を案内役として呼べば、往復の戦力としても数えられるって訳か。腹黒いなコイツら。
「…なるほどねぇ。ま、良いですよ。確認出来たら、ランクも上がりますし」
「頭が回る奴だな…。それではよろしく頼むぞ?」
コンラッドと合流した俺達はオアシスに向けて旅立つ。
1つ気付いた事がある。チカ達と行った時はサクサクと進んだのだが、コンラッド達は休憩をこまめにとっていた。普通の旅なら、こうするのが当たり前なのだろう。だが、俺達はゲームのキャラ。精神的な疲労は抜きにしても、体力的にはそこまで疲れないのだ。コンラッド達に『凄い体力があるんだな…』と言われてから、その事に気が付いた。
その気になれば、一日中走れるだろうけどそんな下手な事はしない。仮にも見た目は人間なのだ。そこら辺には気をつけようと俺は心に誓ったのだった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「や、やっと着きましたね…。凄く疲れました…」
フィン達が倒れる様にオアシス周辺の草地に膝をつく。
「う、うむ…。だが、日暮れ前には着くことが出来たぞ…」
時間にして8時間程だろうか。そりゃ、そんだけ炎天下の中歩いてれば疲れるよな。……俺達は平気だけど。
「チカー、全体回復かけてくれー。バッドステータスも消せるやつ」
「わかりましたっ!」
チカが魔法を唱えるとコンラッド達にエフェクトがかかる。……思ったけど、こんな風に見えるのは俺だけかな?
「…えっ??疲れが…抜けた!?」
「お前もか!?…俺もそんな感じがするんだよ…」
兵士達は驚いた表情で会話している。コンラッド達も驚くかと思ったが、意外と平然としていた。
「おや?フィン達は驚かないの?」
「僕は初めて会った時、回復受けてますから…」
「俺は報告で聞いていたからな…。まぁ、多少は驚いてはいるがな」
ちぇっ、面白くねーな。ちょっとだけドヤ顔してたのが馬鹿みたいじゃねーか。
「ちっ。ところで、俺ら野営の準備するけど、コンラッドさん達どーすんの?」
「一応準備はしてるぞ。あとは広げる場所だな…。お前達はどこにテントを張るんだ?」
「んー?特に決まってないぞ。場所さえあればいーし」
「なら水辺の近くにしませんか?水を汲むのが楽になりますから」
「いいよー。んじゃ、先に行っとくわ」
チカ達を引き連れて水辺に向かう。日が暮れた事もあり、少しずつ冷んやりしている。
「先に焚き火の準備しとくか。お前達に任せてもいーか?」
「「「はいっ!」」」
適当に穴を掘り、枯れ木を集める。皆で囲むから、少し大きめに作っておこう。
「流石だな…。手慣れている動きだ」
「見様見真似だけどな。そっちはどーだ?」
「いまテントを張っているところだ。俺はギルマスだから、そういうのはしないんだ」
「へーへー。要は面倒な事はやらないって事だろ?」
「人聞きの悪い事を言うな。適材適所という言葉があってな…」
「はいはい」
「お前達はどうするのだ?テントは張ってないようだが?」
「ああ、すぐ出来るし後からで良いかなーって」
「そうか…。手伝いはしないぞ?」
「要らねーよ。…ところで、飯どーするんだ?持ってきてるのか?」
「ああ。フィンの収納袋に入れてある」
「えー?あれの中入れてたら冷めるじゃん」
「仕方ないだろう。料理などをここで作る訳にもいかないし、元より、美味く作れる奴などおらん」
「……しゃーねーなぁ。俺が作ってやるよ」
コンラッドと会話をしていると、焚き火の準備が出来たみたいだ。いつのまにか水も汲んできたみたいだし、本当にチカ達は優秀だなぁ。
「アルス様ー!準備終わりましたわ!」
「ご飯??ねぇねぇ、ご飯??」
「ローリィ、落ち着いて。まだ火をつけてない」
「おーい!フィーン!!テント張り終わったかー?」
こっちの準備は終わったので、テントを張っているだろうフィンに声をかける。
「もう少しで終わりまーす!」
「なら、食事の準備しとくか。……俺が作ろうと思うけどチカ達がやるか?」
「ご主人様の手料理がいい!!」
「アルス様が作るのを食べたいですわ!」
「遠慮する。マスターの手料理を食べる」
「ふふっ、本当に慕われているんだな。昨日聞いた噂話とは違うようだ」
「え゛っ!?何の噂だ??」
思い当たる節があるが、確認の為聞いてみる。
「なに、赤と白の服を着た美女達を無理矢理働かせている駄目男という噂だ」
ああああああああ!!やっぱり噂なってるううううう!!……誤解だ、誤解なんだよぉ!!
「そ、それにはな、深ぁーい訳があってだな…」
「働かせていたのは事実だろう?」
「そ、そうだけど……。ちゃんと俺も働いたんだぜ?」
「…顔を売れとは言ったが、悪い方向で売れとは言ってないぞ?」
「……はい。ごめん…なさい……」
はぁ……。人の噂ってのは早いんだな。今しみじみと感じているよ。
俺がショックを受けている姿に、コンラッドはさっきのお返しと言わんばかりに満面の笑みを浮かべていた。
けど、俺達がどんな関係かをある程度知っているコンラッドは、それ以上苦言は言わなかった。俺は心を改め、ちゃんとしようと決意したのだった。………いや、本当だよ?
「お、終わりましたぁ……。コンラッドさん、少し休憩してから、食事の準備しますね」
ヘトヘトな表情で、フィンが俺達の所へとやって来た。後ろにいる兵士達も同じ表情だ。
「お疲れー!フィン、飯の準備は俺がするからお前ら休んどきな!」
「えっ…?いいんですか?」
「いいよいいよ!疲れてんのに、不味い飯じゃ元気出ないだろ?それに、チカ達の分作るんだ。人数増えても大丈夫だよ」
「それじゃあ…お言葉に甘えますね。アルスさん、店屋物ですけど、これ使ってください」
フィンから収納袋を受け取り、中を見てみる。………うん、露店のヤツだな。
リストから調理器具と机を出し、早速料理を開始する。さぁ!俺のジョブをとくとご覧あれ!!
露店通りへと戻った俺達は、引き続き広報活動に勤しんでいた。チカ達も御老人と話をしてから、積極的に街の人達に話しかけていた。…練習したいって言ってたけど覚えるの早過ぎない?
最初は不審な目で見ていた街の人達も、段々と警戒を解き、話しかけてくれるようになった。性格は3人とも違うが、裏表一切無い態度で話しかけるので、女性からも反感は買って無さそうだ。
そんな光景を眺めながら、俺は1人串物を食べている。
「……旦那。チカちゃん達ばっかり働かせて良いのかい?」
「いーんだよ。俺が働こうとすると拒否られるからな。大人しく留守番しとけって」
「…そりゃ本当かい?にわかには信じられねぇぞ?」
「まぁ、そんな直接的な言葉じゃ無いけどね。……あいつらが他の人と話す練習がしたいって言ってたし、それを尊重しているだけだよ」
「ふーん…。今の旦那を見ていたら、世の中の奥さん達から反感買いそうだけどな?…ダメ亭主!!ってな感じで」
「おいおい…。俺はまだ独身だぜ?」
「へぇー?そりゃ知らなかったぜ。……はいよ、『手羽先』2本と酒な」
串物の店のおっちゃんと話をしながら、チカ達を遠目に見ている。確かに、今の俺ってヒモみたいな感じがプンプンするよな?女に働かせて、昼間から酒飲んでるし…。
あれっ!?結構ヤバいヤツに思われてる??
「な、なぁ…。俺ってやっぱり変な目で見られたりしてる?」
「ああん?そりゃ、そんな格好してたら変な目で見られるだろうよ」
「ちげーよ!…その、なんだ?世間の目的な意味でだよ!」
「んまぁー…良くは思われてないだろうな。多分だがな?」
…不味い!!非常に不味いぞ!俺のせいで悪評価が広がったりしたら、チカ達に顔向けできねぇ!
「ごっそうさんっ!!俺、向こうに行くわ!金ここに置いて行くからな!」
「ちょ、旦那!釣り--ってもういねぇ…」
串物の店を後にした俺は急いでチカ達の所へ行く。トナカイ姿で走る様はさぞ滑稽だっただろう。
俺が来た事に驚いていたチカ達だったが、さっき聞いた話をして、俺も広報活動に精を出した。必死に広報活動をする俺を見て、街の人達も話しかけてくれた。
その甲斐あってか、俺達はその日、街1番の有名人となった。そりゃ、美女達のミニスカ姿と変な動物の格好をしている奴がいれば、目に付くもんな。
こうして、俺達は無事?に街の住民に顔と名前を覚えてもらえる事になったのであった。
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正門に居る兵士に会釈をし外へ出ると、コンラッドとフィン、その他2名が待っていた。
「あ、おはようございますアルスさん。今日は--
「アルス、おはよう。急に呼び出して悪か--
挨拶をしてきた2人が言葉途中で固まった。どうしたんだ?
「あ、おはようございます。…どうしたんですか?」
俺の言葉がスイッチだったかのように、動きを取り戻す2人。心なしか少し顔が赤い。
「い、いやな…その…チカ達の格好がな…」
「え、ええ…。いつもは派手なんですが、今日はおとなし目というか…」
「ああ、これ?これはな巫女服って言うんだ。なかなか良いだろ?……いつもの格好の方が良かった?」
「い、いえ!!僕はこっちの方が好きです!!!」
…お、おう。そんな食い気味に来るなよ。びっくりするじゃんか。
「--ごほんっ!フィンよ、落ち着け。その気持ちはひじょーーに分かるが、後にしろ」
「す、すいません…」
フィンが落ち着きを取り戻した頃に、コンラッドが話し始める。
「アルス、まずは呼び出して悪かったな。今からオアシスに魔物の出現確認に行こうと思ってな」
「はぁ、別に予定無かったから良いですけど…。また新たに魔物が出たんですか?」
「いや、この前お前達が倒したのかという確認だ。泊りがけになるが、良いか?」
「あー、そういう事ですか。…でもこの戦力で大丈夫なんですか?」
「あ、だからアルスさん達を呼んだんです。皆さんのお力は知っていますので…。流石に、この戦力だけでは外で歩けませんよ」
…はいはい。なるほどね。倒したって言ったけど、どこに出たまでは言ってないからな。俺達を案内役として呼べば、往復の戦力としても数えられるって訳か。腹黒いなコイツら。
「…なるほどねぇ。ま、良いですよ。確認出来たら、ランクも上がりますし」
「頭が回る奴だな…。それではよろしく頼むぞ?」
コンラッドと合流した俺達はオアシスに向けて旅立つ。
1つ気付いた事がある。チカ達と行った時はサクサクと進んだのだが、コンラッド達は休憩をこまめにとっていた。普通の旅なら、こうするのが当たり前なのだろう。だが、俺達はゲームのキャラ。精神的な疲労は抜きにしても、体力的にはそこまで疲れないのだ。コンラッド達に『凄い体力があるんだな…』と言われてから、その事に気が付いた。
その気になれば、一日中走れるだろうけどそんな下手な事はしない。仮にも見た目は人間なのだ。そこら辺には気をつけようと俺は心に誓ったのだった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「や、やっと着きましたね…。凄く疲れました…」
フィン達が倒れる様にオアシス周辺の草地に膝をつく。
「う、うむ…。だが、日暮れ前には着くことが出来たぞ…」
時間にして8時間程だろうか。そりゃ、そんだけ炎天下の中歩いてれば疲れるよな。……俺達は平気だけど。
「チカー、全体回復かけてくれー。バッドステータスも消せるやつ」
「わかりましたっ!」
チカが魔法を唱えるとコンラッド達にエフェクトがかかる。……思ったけど、こんな風に見えるのは俺だけかな?
「…えっ??疲れが…抜けた!?」
「お前もか!?…俺もそんな感じがするんだよ…」
兵士達は驚いた表情で会話している。コンラッド達も驚くかと思ったが、意外と平然としていた。
「おや?フィン達は驚かないの?」
「僕は初めて会った時、回復受けてますから…」
「俺は報告で聞いていたからな…。まぁ、多少は驚いてはいるがな」
ちぇっ、面白くねーな。ちょっとだけドヤ顔してたのが馬鹿みたいじゃねーか。
「ちっ。ところで、俺ら野営の準備するけど、コンラッドさん達どーすんの?」
「一応準備はしてるぞ。あとは広げる場所だな…。お前達はどこにテントを張るんだ?」
「んー?特に決まってないぞ。場所さえあればいーし」
「なら水辺の近くにしませんか?水を汲むのが楽になりますから」
「いいよー。んじゃ、先に行っとくわ」
チカ達を引き連れて水辺に向かう。日が暮れた事もあり、少しずつ冷んやりしている。
「先に焚き火の準備しとくか。お前達に任せてもいーか?」
「「「はいっ!」」」
適当に穴を掘り、枯れ木を集める。皆で囲むから、少し大きめに作っておこう。
「流石だな…。手慣れている動きだ」
「見様見真似だけどな。そっちはどーだ?」
「いまテントを張っているところだ。俺はギルマスだから、そういうのはしないんだ」
「へーへー。要は面倒な事はやらないって事だろ?」
「人聞きの悪い事を言うな。適材適所という言葉があってな…」
「はいはい」
「お前達はどうするのだ?テントは張ってないようだが?」
「ああ、すぐ出来るし後からで良いかなーって」
「そうか…。手伝いはしないぞ?」
「要らねーよ。…ところで、飯どーするんだ?持ってきてるのか?」
「ああ。フィンの収納袋に入れてある」
「えー?あれの中入れてたら冷めるじゃん」
「仕方ないだろう。料理などをここで作る訳にもいかないし、元より、美味く作れる奴などおらん」
「……しゃーねーなぁ。俺が作ってやるよ」
コンラッドと会話をしていると、焚き火の準備が出来たみたいだ。いつのまにか水も汲んできたみたいだし、本当にチカ達は優秀だなぁ。
「アルス様ー!準備終わりましたわ!」
「ご飯??ねぇねぇ、ご飯??」
「ローリィ、落ち着いて。まだ火をつけてない」
「おーい!フィーン!!テント張り終わったかー?」
こっちの準備は終わったので、テントを張っているだろうフィンに声をかける。
「もう少しで終わりまーす!」
「なら、食事の準備しとくか。……俺が作ろうと思うけどチカ達がやるか?」
「ご主人様の手料理がいい!!」
「アルス様が作るのを食べたいですわ!」
「遠慮する。マスターの手料理を食べる」
「ふふっ、本当に慕われているんだな。昨日聞いた噂話とは違うようだ」
「え゛っ!?何の噂だ??」
思い当たる節があるが、確認の為聞いてみる。
「なに、赤と白の服を着た美女達を無理矢理働かせている駄目男という噂だ」
ああああああああ!!やっぱり噂なってるううううう!!……誤解だ、誤解なんだよぉ!!
「そ、それにはな、深ぁーい訳があってだな…」
「働かせていたのは事実だろう?」
「そ、そうだけど……。ちゃんと俺も働いたんだぜ?」
「…顔を売れとは言ったが、悪い方向で売れとは言ってないぞ?」
「……はい。ごめん…なさい……」
はぁ……。人の噂ってのは早いんだな。今しみじみと感じているよ。
俺がショックを受けている姿に、コンラッドはさっきのお返しと言わんばかりに満面の笑みを浮かべていた。
けど、俺達がどんな関係かをある程度知っているコンラッドは、それ以上苦言は言わなかった。俺は心を改め、ちゃんとしようと決意したのだった。………いや、本当だよ?
「お、終わりましたぁ……。コンラッドさん、少し休憩してから、食事の準備しますね」
ヘトヘトな表情で、フィンが俺達の所へとやって来た。後ろにいる兵士達も同じ表情だ。
「お疲れー!フィン、飯の準備は俺がするからお前ら休んどきな!」
「えっ…?いいんですか?」
「いいよいいよ!疲れてんのに、不味い飯じゃ元気出ないだろ?それに、チカ達の分作るんだ。人数増えても大丈夫だよ」
「それじゃあ…お言葉に甘えますね。アルスさん、店屋物ですけど、これ使ってください」
フィンから収納袋を受け取り、中を見てみる。………うん、露店のヤツだな。
リストから調理器具と机を出し、早速料理を開始する。さぁ!俺のジョブをとくとご覧あれ!!
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