放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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015話

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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

目を覚ました俺は奇妙な光景を目にした。チカ達が机に向かい合って話をしていたのだ。

「--という事だけれど覚えたかしら?」
「問題ない。リズムも掴んだ」
「うん。あの感じなら出来るよ!あとは実践するだけ!」
「そう。ならあとは情報のみね。練習していきましょう」

…凄い真面目な会話をしているみたいだ。ローリィのあんな表情初めて見た。

ベッドから降りると、物音に気付いたナナがこちらを見た。

「おはようマスター」

「あら?もうそんな時間?…それじゃ、この話は宿題としておきましょうね」

「お、おう。おはよう皆!何か話し合っていたみたいだけど、問題とかあったのか?」

「えへへ、秘密ー!」

「特に問題は無い」

「そ、そうか…。なら詳しくは聞かないよ」

気になると言えば気になるけど、まぁ、秘密なら聞かないでおこう。

「アルス様も起きた事ですし、朝食を食べに行きましょうか」

素っ気ない態度の様な気もするが、チカ達と一緒に朝食を食べに下へ降りて行くのだった。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「今日は皆、何をしたい?散策してもいいし、何も無かったら依頼でも受けようかと思ってるんだけど」

味の無い朝食を食べながら、俺はチカ達に尋ねる。

「んー、特には無いかなぁ!」

「依頼を受けるよりも、住民に顔を売った方が良いと思います。散策ついでに、街の人達に話を聞いてみませんか?」

…おお、すげー具体的な話が出たな。コンラッドもそう言っていたし、そうするかな?

「そうだな。チカが言った通り、顔を売りに散策するか。ナナは他にしたい事あるか?」

「特に無い。けど、お願いがある」

…珍しいな。というより、お願い自体初めてな気がする。

「ん?何だ?」

「散策の時、街の人と話すのはボク達に任せて欲しい」

「別にそれはいいんだけど…。理由は?」

「……いつもマスターにばかり仕事をさせている。ボク達も役に立ちたい。あと話す練習もしたい」

うんうん、とローリィ達が頷いている。

そんな事気にしなくてもいいのに…。ま、自主性が芽生えているなら大事にしたいな。

「ナナ達がしたいならしていいよ。前も言ったけど、自分の判断で行動するんだ!」

満面の笑みで返事を返すと、チカ達は食事を続ける。
子供とか居なかったけど、親の気分でこんな感じなのかな?

妙な気持ちを抱きつつも、俺も食事に戻るのであった。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

朝食を終えた俺達はいつもの露店通りに居る。人も多いし、顔を売るにはもってこいの場所だ。

「さて…顔を売るって言っても、どうすりゃーいいんだ?」

見ず知らずの人に聞くとかハードル高いし、簡単に出来ないもんかなぁ…。

1人悩んでいると、顔を輝かせながらローリィが提案してくる。

「ご主人様ぁー!あたし良い事思いついちゃった!」

「んー?どんなのだ?」

「要は住民に顔を覚えて貰えば良いんだよね?ならさー、目立つ格好すれば良いんだよ!」

なるほど!!別に話しかけなくてもいいのか!確かに、目立つ格好で歩いていれば注目は浴びるわけだ!

「なるほどー!その手があったか!頭良いなー!」

「えへへー!あたし偉い?役に立ったー?」

「ああ、まさに名案だ!偉いぞー!」

頭を撫でると物凄く喜ぶローリィ。それに対して嫉妬心を燃やしたチカ達も話しかけてくる。

「わ、私もそれが良いと思ってました!」

「むぅ…。ボクの考え横取りされた」

「へっへーん!こういうのは言ったもん勝ちだよ!」

…いいねぇ。こういう光景って素敵だよね。美女達がわちゃわちゃしているのって最高だわ…。

「まぁまぁ、皆の考えはわかったから。…それで?目立つ格好ってどんなのにすんの?」

俺の意見に、チカ達は食い気味で提案してきた。

「私は『サンタ服』が良いと思います!」
「サンタ服はダメ。『巫女服』が良い」
「皆センス無いなー!目立つなら露出しなきゃ!『ビキニ』でしょっ!!」

チカ達がぎゃーぎゃー言っている間、俺はその意見を想像していた。

(『サンタ服』か…。確か『ミニスカートVer.』と『ズボンVer.』があったな。どれも皆には似合うと思うけど、サンタクロースってこの世界で通じるのか?…まぁ、色とかは目立つし良いかもしれない)

ミニスカート姿のチカ達を思い出し、少しにやけてしまう。

(『巫女服』も目立つっちゃー目立つな。だけど、変な宗教団体みたいな目線を浴びそう…。偏見持たれたら嫌だなぁ。…ナナには残念だけど、この案はボツ!……あとはローリィの『ビキニ』か。まぁ、暑いしから良いとは思うが、色んな意味で注目は浴びるな。……そう言えばフィンも『露出が過ぎる』って言ってたな。確かにローリィほぼ裸だからなぁ。スタイルが良い分、野郎共には眼福だろうが、女性からは反感くらいそうだ。……俺はビキニが良いけど、ボツだな)

「マスターはどれがいい?」
「ビキニが良いよね!?」
「サンタ服に決まってますわ!」

「あー……俺の意見でも良いか?」

「「「構いませんっ!!!」」」

3人とも俺の意見を聞こうとしているので、さっき考えていた事を伝えた。チカが嬉しそうにしている反面、ナナ達ががっくりと肩を落としていたので、ちゃんとフォローしておく事にした。

「今日はサンタ服にするけど、明日は巫女服、明後日はビキニにしとこうか。どれも目立つ為に考えたんだし、そうしないか?」

俺の言葉を聞いたナナ達が笑顔になったので、OKという事なのだろう。

サンタ服に着替える為、一度宿屋へ戻り、再び露店通りへと向かう。宿屋の受付にも驚かれたし、インパクトはあるだろうな。

「……でもさぁ、俺も着替える事は無かったんじゃない?しかもサンタじゃなくて、トナカイだし…」

住民の視線を浴びながらポソリと愚痴をこぼす。…男のコスプレって需要ないだろ。

「アルス様も顔を覚えて貰わないといけませんし、パーティですから!」
「マスター。似合ってる」
「可愛い!」

チカ達はミニスカートVer.を着ている。赤と白の配色が素晴らしく、顔も良いのでモデルの様な雰囲気を醸し出している。それに比べて、俺は真っ赤なお鼻のトナカイ姿だ。首輪には大きな鈴が付いており、本気で恥ずかしい。

俺は着替えないつもりだったのだが、俺も着ないとダメとチカ達が強引に着せてきたのだ。抵抗したのだが、上目遣いに負けた俺は渋々、サンタクロースの格好へ着替えた。しかし、白髭が似合わないと言われ、クリスマスコスチュームから何故かトナカイを選ばれ、今に至る。

何にせよ、ローリィの提案に乗った結果、住民からはジロジロと見られている。小さな子供達が、キラキラと目を輝かせながら見ているので、目立つって言う意味では正解だろう。

「はぁー…。まぁ、成功ではあるな。うん、オッケーだ」

自分自身を無理矢理納得させ、露店を回る事にした。
色んな意味で目立つこの格好は街の人達には好評らしく、よく声をかけられた。子供から声をかけられた時には付属の飴玉をプレゼントしたりと地味な事はやっていた。

「おう、旦那!今日の格好は一段と面白いな!」

「ははは…、俺は着たくなかったんだけどね」

「旦那もその動物の格好似合ってるぜ?…チカちゃん達はちょっと過激だがな」

「あれでも露出は少ない方だぜ?…とりあえず、4本ちょーだい」

顔馴染みとなった串の店でおっちゃんと話をしていると、慌てたローリィが近寄ってくる。

「ご、ご主人様ぁー!!大変ですぅー!!」

「ど、どうした?なんか問題起こしたのか?」

「お、起こしてなんかいないですよー!!ち、ちょっとこっち来てください!」

ローリィに連れられ、通りの中央部にある勇者をかたどった銅像前に着く。

「み、みんなー!ご主人様連れて着たよー!」
「ア、アルス様っ!」
「マスター。大変」

「ど、どうしたんだ一体?…ん?そこにいるお爺さんは?」

慌てふためくチカ達の近くに、初老に差し掛かったであろう御老人が地べたに座っていた。

「あぅぅ…。あたし達ここで街の人達とお話してたんだけど、大きな荷物を持ったこのお爺さんが歩いてて…」
「手伝おうと思って声かけようとした」
「その時、何かに躓いたらしく倒れてしまったんです!急いで回復はしたんですが…この後どうしたら良いかと思って…」

「あー………。なるほど、なんとなく察しはついたよ。チカ達は、お爺さんを手伝いたいんでしょ?」

「は、はい!そうなんです!!…でもアルス様に無断でしたらいけないと思って…」

「別にそんな事気にしなくて良いのに…。ま、次からは一々俺に聞かなくても、正しい事だと思ったら行動して良いからね?」

チカ達に優しく声を掛けると、俺は地べたに座っている御老人に声をかける。

「こんにちは。お怪我はありませんか?」

「おお、お嬢さん方のお陰ですっかり怪我は良くなったわぃ!本当にすまんかったなぁ…」

「いえいえ、助けたのはチカですから。…それとあの大荷物、1人では大変じゃありませんか?」

「なんのなんの!儂、これでもまだ現役じゃなからなっ!」

そう言って立ち上がろうとするが、御老人の足元はおぼつかない。腰をトントンと叩いているし、こりゃあ無理しているパターンだな。

「よろしければ、荷物を目的地まで運びますよ?見た感じ、腰も悪そうですし…」

「じ、じゃがのぅ…。流石にそこまで甘えるのはなぁ…」

「…俺達、駆け出しの冒険者なんです。街の人達に顔を覚えて貰う為に今日、街を散策しているんです。そのついでと言っては何ですが、お手伝いしますよ」

…まぁ、建前なんだけどね。俺も困っている人が居たら出来るだけ助けてあげたいし、何よりチカ達が初めてお手伝いしたいって言ったからな。ま、一石二鳥って事だな。

「…そうか。ならお言葉に甘えさせて頂こうかのぅ」

御老人の承諾を得た事だし、さっそく手伝う事にした。荷物はリヤカーに乗っていたので、そのまま俺が引く事にした。小さい荷物はナナとローリィに渡す。必要無いって言ったけど、俺だけが働くのはダメなのだろう。チカには御老人の手を取りながら歩いて貰う。側から見れば介護っぽいけど、チカが適任だろうからな。

リヤカーを引きながら、俺達は御老人の家へと向かう。道中、チカ達は御老人と楽しそうに話をしているので、朝言っていた話の練習も上手になってきたみたいだ。

街のはずれにある小さな家の前に差し掛かると、御老人が声をかける。

「儂の家はここじゃ。遠くまですまんかったの。…ほれ、少ないが礼じゃ」

そう言うと、御老人はポケットから小銭が入った袋を取り出す。

「いえ、お礼などは要りませんわ。私達はお手伝いしたかっただけですから」

「気にしなくていい。ボク達はそういう気持ちで手伝った訳では無い」

「そうそう!あたし達はただ、おじーさんのお手伝いをしたかっただけだよ!」

「…チカ達もこう言っている訳ですし、本当に気にしないでください」

「じゃ、じゃが、回復させて貰って荷物まで運んで貰ったんじゃ!少ないがこれを受け取ってはくれんか??」

無理矢理、俺に袋を渡そうとするが、それは受け取れない。

「本当に良いですよ。……なら、こうしましょう。俺達の顔と名前を覚えてください。先も言った通り、俺達は駆け出しですから」

「そ、それだけで良いのか?せめて、お茶ぐらい…」

「俺達にとってはそれが1番大事な事ですから。金とかよりも上なんですよ」

俺の言葉に同調するように、チカ達もウンウンと頷いている。それを見た御老人は、優しく微笑むと袋をポケットにしまった。

「………そうか。それならば、お言葉に甘えさせてもらおうとしよう。……お主達の名前を聞いても良いかの?」

「俺はアルス」
「私はチカです」
「ナナ」
「ローリィだよーっ!」

「そうかそうか、覚えておくぞ。儂の友人にもお主達の事を話しておこう」

御老人の家の中に荷物を置いた俺達はその場を後にする。家の前で御老人が大きく手を振っていたので、こちらも手を振り返して、露店通りへと戻っていくのであった。
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