放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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012話

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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「……ったく。いつまで待たせるんだっつーの」

コンラッドの部屋から出て2時間が経とうとしている。いつ呼び出されるかわからないから、ずーっと酒場で待機している。チカ達も待つのに飽きたのか、寝始めるし…。こういう時なんか娯楽があればいいのになー。

それから30分程、俺はアイテムリストに目を通していた。ちょうどいい暇潰しになるし、何より、知っていた方が後々楽だからだ。初期の頃に配布されていたアイテムを見ながら懐かしく思っていると、俺を呼ぶ声がした。

「おぉーい!アルス!待たせたな。ちょっと執務室に来てくれ!」

「ふぁーい。今行きまーす」

眠っているチカ達を起こし、再度執務室へ向かう。…またさっきみたいな事になったら、さっさと出て行こう。

ドアが開いていたので、ノックせずに部屋へと入る。礼儀など、もうどうでもいい。

「話終わったんですか?」

「うむ…。遅くなってすまない。とりあえず、座ってくれ」

…別にここでいいんだけどなぁ。

しぶしぶとソファーに座る。チカ達もさっきと同じ所に座った。

「えー…色々と伝えたい事があるのだが、まずはお前のランクについてだ」

は?なんでランクの話が出てくるんだ?

「そ、それはどういう事ですか?」

「ああ、オアシスを住処にしている魔物が討伐されたのを確認出来次第、D+とする。正直、Cランクに上げたいんだが、まだまだ住民に知られてないからな」

はぁ?だからどういう事なの??

「そういう事じゃなくて、なんでいきなりランクアップするんですか?」

「はぁ?そこなのか?……お前が倒した魔物達はな、ポーロ殿が出していた依頼なのだよ。本来なら受注出来ないのだが、本当に討伐していたのなら『討伐』ポイントが付与されるんだ。暫定ではあるが、お前らはDランクになり、ギルマス特権使ってD+にあげようと思う」

「はぁ…なんだかよくわかんないですけど、ありがとうございます」

どうやら、あの魔物を討伐したからランクアップするみたいだ。薬草ついでだったから、いいんだけどなぁ。

「近いうちに、低ランクの冒険者パーティに確認させにいく。結果が分かり次第、また呼び出すと思う。なので、出来るだけ依頼を受けずに街にいて欲しい」

「別にそれはいいですけど…。わかりました、とりあえず1週間ぐらいは街を散策しておきます」

勝手に話が進んでてついていけなかったが、良い感じに俺の評価が上がってるみたいだ。それなら、そのままありがたく受け取っておこう。

「他にもあるのだが、それは後々に回すとしよう。……アルス、ポーロ殿からも話があるそうだ」

コンラッドがポーロに声をかけると、俺の方を振り向き話し始める。

「まずはアルス殿、お礼を言わせていただきます。貴方のお陰で商人組合は助かりました」

「まだわかんないですよ?全部倒したかわからないですし…」

「いえいえ、きっと根城にしていた魔物達は討伐されていると思います。……ま、商人の勘ですがね?」

ぶふふふ、と鼻に引っかかったような笑いをあげると目つきが変わる。

「…さて、本題に入りましょう。アルス殿の強さを見込んで護衛の依頼を頼みたいのです」

……うん、話についていけない。

「ご、護衛…ですか?急展開過ぎて話についていけないんですけど…」

ただでさえ、ランクアップがどーのこーの言われてんのに更に依頼だと?…わけわかんねー。

「ぶふふ、確かに急過ぎましたね。まぁ、護衛の方も今すぐにでは無いのでご安心ください。王都の方へ仕入れに行かなければならない時が来た時に、お願いをしておきたいのです」

「は、はぁ…。別にそれなら構わないと思いますけど。……俺達でいいんですか?」

まだ魔物を討伐したと確定してないし、俺達はまだ顔も知られてない。ポーロさんは重鎮みたいだし、他が納得しないんじゃない??

「ええ。アルス殿達が良いのです!私の勘がそう言ってますから」

ドヤ顔で俺を見つめる。人当たりの良い恰幅してるのに、目は本当に鋭い。

「……わかりました。その時は依頼を受けようと思います。それまでは、ゆっくり街を散策したいんですけど良いですかね?」

「構いません。王都に戻るのはまだまだ先ですので…。では、先に『名指し』をしておきますね。コンラッドさん、依頼の方よろしくお願いします」

「わかりました。後ほど、依頼書に記入をしておいてください。……アルスよ、お前には早急にして貰うことが出来た」

「ええ……?もう、お腹いっぱいなんですけど…」

心底嫌そうに言っているのに、コンラッドは耳を貸さない。…俺、そういうの好きじゃないんだけど!!

「我儘言うな!『名指し』が来た以上、住民に顔を売らなければならないのだ。ひとまず、明後日から住民の依頼を受けるように」

話は以上と言わんばかりに、コンラッドが自分の椅子に座る。ポーロもこれ以上話す事は無さそうだし、帰っても良さそうだ。

「それじゃ、俺達帰りますね。宿も探さなきゃですし…。皆、帰るぞ」

チカ達と一緒に部屋から出る。急展開過ぎて、理解が追いついていない。とりあえず、宿見つけて改めて整理しとこう。

深々と溜息を吐きながら、俺達はギルドを出て行くのであった。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

--翌日。チカ達の意見により前泊まった宿で一晩を明かした。

宿で宴会を開き、労をねぎらった。金にモノを言わせて大量の酒と豪華な飯を頼むと、チカ達は物凄い勢いで飲み食いをしていた。俺も酒を飲んだのだが、やっぱり味はしなかった。食べ物の見た目で味を想像しながら宴会を終え、部屋へと戻るとすぐ眠りについた。ギルドでの出来事に疲れていたのだろう、チカ達もすぐ眠りについたみたいだった。

そして、朝起きると宿屋の受付に1週間泊まることを告げ、街へ散策に出かける。あんなに飲み食いをしていたのに、チカ達には二日酔いなどは無いのだろうか?まぁ、俺にもその症状は出なかったので効かなかったんだろうな。

「さて、今日は一日街を散策するぞー!買いたい物とかあったら教えてね」

「「「はいっ!!!」」」

とりあえず、露店通りを目指して進む。まだ午前中ではあるが、活気が物凄い。

「ご主人様ぁー!食べ歩きしながら散策しよー?」

「賛成。あのタレが美味しいの食べたい」

「私もアレ食べたいわ」

……昨日あんなに食べたのに、まだ食べるの?

「よーし、それじゃあの店に行くかー!」

店の前に着くと、おっちゃんが忙しそうに焼いている。列も少し出来ているし、人気店なのだろう。

「皆、何本ずつ食べるの?」

「あたし3本!」

「2本」

「…私4本でもいいですか?」

「いいよいいよ。皆、気に入ってるみたいだし好きなだけ食べな」

会計を済まし、露店を回る。その時、ちょうどフィンと出会った。

「おはようございます、アルスさん。今日は依頼を受けないんですか?」

「おはよー。今日はこの街を散策しようと思ってね。だから今日はお休み」

「そうなんですかー。…なら一緒にお昼食べませんか?僕、今日は午前で終わりなのでどうです?」

クイッとお酒を飲む仕草をフィンが見せる。…見た目幼いのにお酒飲めるんだ。

「おおー、いいね!んじゃさ、その後、この街を案内してくれないか?」

「いいですよ。なら、お昼の鐘が鳴ったらギルド前に集合で」

「おっけー!それまでぶらぶらしとくよ!」

フィンと昼食を食べる約束をし、俺達は時間潰しに露店を回る。辺境の地とだけあって、食べ物が多い。チカ達が食べたがるので、少しずつ買って行く。お昼も食べるのに大丈夫なんだろうか?

結局、そこそこの金を使う事となった。別に金はあるからいいんだけど、本当によく食べる。けれど、チカ達のお陰で、露店の人達には顔を覚えられたと思う。…まぁ、美女3人組が美味しい美味しい言いながら食べてれば顔は覚えるよな。通行人もチラチラこっちを見てるし。………男ばっかだけど。

食べるのに満足したのか、チカ達はご機嫌だ。俺の手を取り、あっちこっち連れ回す。いつの間にかおねだりを覚えたらしく、甘ったるい声でねだる姿は男なら財布の紐が緩むだろう。………俺もですけどね!!!

露店のネックレスを購入した時、鐘の音が聞こえる。フィンとの約束を思い出した俺は、急いでギルドへと走って行くのであった。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「悪りぃ!遅くなった!」

ギルドへ着くと、入り口にフィンが待っていた。もう1人いるみたいだけど、友達かな?

「いえ、僕達も今着いたところですから!」

…本当にお前はモテる才能を持っているよね。そんな笑顔で言われると惚れちゃうよ。

「あっ…。アルスさん、先輩も一緒にご飯を食べたいって言ってるんですけど……いいですか?」

「ああ、別にいいけど?」

「良かった…。ドーンさん、行きましょう!」

…なんだかドギマギしている男が出てきたなぁ。って、アレ?こいつ何処かで見た覚えが…。

「…アルス殿!まずは謝罪させて欲しい。門では誠に失礼をした!!」

深々と頭を下げる兵士。…門?何の話だ?

「あっ!!この人、ご主人様に剣を向けようとした奴だ!」

「敵?--『魔葬
「待て待て待て!!ナナ!魔法ぶっ放すな!!」

うおおおお!危ねえええ!本当に心臓に悪いな!……お陰で思い出した。コイツ、あの時の門番か!

「…頭をあげてください。あの時はこちらが悪いんです。俺達こそ申し訳ありませんでした」

一触即発--主にチカ達だが--の空気になったが、俺が頭を下げたことによりその空気は霧散した。…設定また弄らなきゃダメなのか?

「アルス殿こそ頭をあげてください!…訓練に出ていた兵士団を救ってくれたと後から聞きました。兵士団の命の恩人に失礼な真似をしました。どうか謝罪を受け入れて欲しい!」

…うーん、このままじゃ押し問答になりそうだなぁ。ぶっちゃけ、こっちが全面的に悪いんだけど、どーしたものかな。

何と返せばいいのかを迷っていると、フィンが折衷案を出してくれた。

「…ならこうしませんか?昼食代はドーンさんが出すって事で手打ちにしましょうよ」

「あ、それいいね。今回はドーンさんにお願いします。今度は俺奢りますんで」

「う…む…、わかった。フィンの意見に従おう。……ではオレ…いや、私の行きつけの店でいいでしょうか?」

「はい!俺達はまだ街に何があるか分からないので、助かります!……あと、敬語は要らないですよ。自然体で話しましょうよ」

「わかりま…わかった。お言葉に甘えるとしよう。では、店に行こうか!」

俺は新しくドーンという兵士と知り合うことが出来た。わだかまり…は、あったみたいだけど、気にしないようにしよう。

行きつけのお店に行くまでに、俺とドーンは仲良くなった。まだチカ達を怖がっては居たが、店に着く頃にはある程度の会話をするようにはなっていた。……ローリィと話す時は顔が赤くなってたけど。

ドーンに連れられお店に入ると、お昼時とあってそこはまさに戦場であった。
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