放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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009話

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正門に着き、フィンからの届け物を門番に渡すと凄く嬉しそうにしていた。…あの中身が非常に気になったので後からフィンに聞いておこう。それから門番にオアシスの場所を再確認し、俺達はオアシス目指して進む事にした。

「しっかし、本当にこの辺りは砂漠しか無いな。そりゃ、水が貴重なわけだ」

ボレーヌという街までの道は整備されているらしいが、オアシスまでは砂漠を延々と歩かないと行けないらしい。

そして、サガンでは水が貴重な物らしくオアシスに水汲みに行く人や、ボレーヌから輸入していると門番から聞いた。……遠回しに持ってこいって事か?

「そういえば水は購入したんですか?」

「いや?俺のリストにあったから買ってないよ?」

「ご主人様ぁー、あたし喉乾いたぁ」

「ボクも」

「それじゃー、あの植物の影で休憩するか」

サボテンみたいな大きな植物の影に着き休憩を取る。チカ達に水を渡すと勢いよく飲んでいた。

(しまった…。体調確認するようにしないとな。脱水症状で倒れたりするかも知れないし)

「はい。コレは予備の水だ。渡しておくからこまめに水分補給しとけよ?」

チカ達に3本ずつ水を渡し、俺も水を含む。味覚は無いが、美味しいと感じる。チカ達は水を飲みながら仲良く話をしている。

「おーい、ここで軽く食事にするか?それとも、オアシス着いてから食べるか?」

「ここで食べたーい!」

「あのタレが美味しい物を食べる」

「私もあれ気に入ったわ」

収納袋から露店で買った焼き鳥もどきを取り出す。残念ながら、出来立てでは無くなっていたが。

「あちゃー……もう冷えちゃってるなぁ。これ保存とかには向いてないな」

収納袋を見ながら食品は入れないようにしようと学んだ。冷えた食べ物をチカ達に渡すと残念な表情を浮かべていた。

「帰ったら出来立てをいっぱい食べような!お酒もあるみたいだし、宴会しようぜ!」

俺の言葉に大喜びするチカ達。俺、ほんとコイツらに甘い気がするけど、まぁいいか。

休憩を終えると、オアシス目指して進む。道中、魔物と遭遇したが、俺が出る間も無くチカ達が殲滅してくれた。出てくるのが昆虫ばっかりで気持ち悪かった。…小さいなら許すけど大きすぎるのは生理的に無理だな。

こまめに水分補給をさせ、魔物を殲滅しながら進むのであった。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

サガンの街北東に位置する『オアシス』。砂漠が広がる中、ここだけ草木が繁り水が湧き出てくる。水を求めに魔物など出没するがここには人が住んでない為問題はない。行商や遊牧民の休憩所として利用されるちょっとした道の駅のような場所だ。

だが最近、問題が起きていた。オアシスの水が減ってきているらしい。そして、大型の魔物がオアシス周辺に縄張りを形成しているとのこと。行商組合がギルドへ討伐依頼を出しているが未だ返事は無い。

そんな事は全く知らないアルス達は無事にオアシスへとたどり着いたのであった。

♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

「やっと着いたなー。ここがオアシスか!」

目の前に広がる草木や湖を見ながら俺は興奮した。オアシスというものを始めて体験しているからだ。

「街とかあるかと思っていたけど、行商人とかぐらいしか今はいないな」

オアシス全体を見渡すと、ちらほら人影が見える。

「それじゃー、採取を始めるか」

「アルス様、受付の人から聞いたのですが、稀少な薬草は朝方しか生えないらしいです。今日はここで野営しませんか?」

「え?そうなの?……じゃあ、野営の準備だな!」

確かリストに『テント』があったはず。ゲームじゃ体力回復だけの仕様だったけど、ここではどうなんだろ?

リストからテントを取り出すと目の前にテントが組み立てた状態で出てきた。そう、ドーン!って感じに。

「おお…。がっつりテントだな…。組み立て方知らないし助かった」

中を覗いてみると、見た目よりも広くランタンと毛布が5枚入ってるだけの状態だった。テントってこんな感じなのかな?

「あたしの寝る所ここー!」

「マスターはどこに寝るのか?」

「え?俺?俺は…隅っこでいいかな」

「ダメです!アルス様は真ん中です!」

「ならボクはその隣」

「私もアルス様の横に寝るわ」

「ず、ずるい!!あたしもご主人様の横がいい!」

「ローリィは先に決めたでしょ?」

「隣はもう埋まった。残念」

「ヤダヤダヤダヤダ!!!」

チカ達が俺の隣を巡ってバトルしている。普通ならモテ期だと思うはずだけど、『忠誠心』ってのがあるからなー。微妙な気持ちだ。

「はいはい、喧嘩すんなー。準備出来たし周辺を散策しに行こうか」

俺の言葉で喧嘩が終わり、チカ達を連れ周辺を散策する。少し散策していると荷馬車で休んでる人がいた。

「おや?君達は冒険者かね?」

俺達の姿を見た小太りのおっちゃんが、先に声をかけてきた。

「ええ、依頼でここの薬草を取りに来ました」

「…そうか、薬草か。…という事は君達は初心者なんだね?」

「ええ、Eランクですけど…。それが何か?」

「ああ、ちょっと期待してしまってね。…最近オアシスに魔物が住み着いていてね。ギルドの方に依頼を出しているんだけど、遂に受理されたのかなって思ってさ」

「…ああ、そういう事ですか。…ところで魔物って?」

「『砂の大蠍サンド スコーピオン』て言うんだけど、知らないかい?」

「…すみません。聞いたことないです」

「単体ならそこまで強くないんだけどね、あいつらは群れで行動するんだ。しかも尻尾に毒を持っていて、あれに刺されたらすぐ死んじゃうんだよ」

「はぇー。そんな魔物がいるんですね」

「あいつらは夜行性でね。昼間は巣穴に潜ってるんだ。ワシ達もここで野営をしたいんだけど、あいつらのせいで出来ないんだよ。キミ達も野営する時は気をつけるんだよ?……おおーい、そろそろ出発するぞー」

話し終えたおっちゃんは従者に声をかけオアシスから出て行った。

砂の大蠍サンド スコーピオン…か。後でチカ達にも話しとこう」

おっちゃんの話を整理しながら、散策へと戻った。おっちゃん以外の人や魔物と遭遇する事なく、テントへ戻った俺達は食事の準備を始める。日も暮れてきたし、丁度いい時間だろう。

収納袋から昼間買った物を取り出し皆に渡していく。完全に冷え切ってて美味しくは無さそう。それを見たナナがジョブ変更して、調理し始めた。良い匂いが充満し、食欲をそそる。

「出来た。ボク特製の『ナナスペシャル』」

………ネーミングセンス無いなぁ。しかもただ切って炒めただけだよね?

「わーい!ご飯だご飯!!」

「お腹ぺこぺこ。ありがとね、ナナ」

誰もツッコまない…。俺が変なのか?

「ありがと。さて、食べるか!」

「マスター。ボク頑張った」

「……はい?」

「ボク、料理、頑張った」

…なんだ?なんで近づいてくるんだ??……ダメだ。チカ達は料理に夢中だ。助けは来ない。

「マスター。褒めて」

ああ!なるほどね!褒めて欲しかったのね。

「ああ、ありがとな。偉いぞー」

ナナの頭を撫でると満面の笑みになった。ちっちゃくガッツポーズしてるし、これが正解だったみたい。

ナナスペシャルを食べ終わると、行商人のおっちゃんから聞いた話をチカ達にも伝えた。

「……って事らしいんだけど、見張りどうしよっか?俺がずっと見張り番しててもいいけど」

「「「ダメ(です)!!!」

「じゃー、交代交代しようか」

「「「ダメ(です)!!!」

「えぇー………。なんでダメなの?」

「マスターは寝てて。ボク達で見張りをする」

「ナナの言う通り!ご主人様は休んでて!」

「いや、流石に俺が何もしないってのは…」

ローリィ達と見張りについて言い合っていると、ふふんと鼻を鳴らしながらチカが混ざってきた。

「えっへん!ここは私の出番ですね!『探知』と『警報』、それに『妨害』の魔法を展開しておきますわ」

少しドヤ顔をしていたが、チカの発言に俺は感心していた。

「なるほど。その手があったか!」

「はい!これは私の得意な魔法ですから!それじゃ、展開してきますね!」

「あ、範囲はオアシス全体にしといてー」

「お任せください!」

俺達から少し離れた所でチカが魔法を発動する。風が吹いた様な感覚を3度ほど受けるとチカが戻ってきた。

「終わりました!20mくらい距離を空けて展開してます!」

「そうか。これで見張りは必要無くなったな。ありがとな!」

「いえいえ!……………」

…え?何?なんでそんな残念そうな顔してるの?距離も近いし…。……ああ、そうか!

「ありがとなチカ。すげー助かったよ」

チカの頭を撫でると、口元が緩み、耳がヒクヒクと動いている。ナナと同じ様にガッツポーズしてるし、正解だな。

「えへへっ…」

「だらしない笑顔だね」
「うん。要求するとかみっともない」

「うん?なんか言ったか?」

「「いいえ!何にもっ!!」」

食事を終えた俺達はテントへと入り、寝る事にした。ローリィがチカ達に場所を交代する様迫っていたが、軽くあしらわれていた。泣く泣くチカの隣へと戻ったローリィは俺の頭上へと毛布を持ってきて、そこで寝始めたのだった。

結局、俺はチカ達に囲まれながら寝る事になったのだが、緊張して寝れない。若干だがいい匂いするし、全員顔をこっちに向けて寝てるし!!

羊を1000匹以上数えた頃、俺はようやく眠りに落ちるのであった。
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