7 / 135
006話
しおりを挟む
「すみませーん、これをギルドマスターへお願いします」
フィンに連れられギルドの中に入ると、ゲームのような世界が広がっていた。大きな部屋の中に、沢山の丸机と椅子。それと酒場が併設してあり、昼間から飲んでいる人もいる。…あー酒旨そうだなぁ。飲みたいなぁー。……味覚無いけどね。
おっさんから渡された書状をフィンが受付に渡してくれた。道中、話を聞いたがギルドマスターとおっさんは幼馴染らしく、仲が良いそうだ。
しばらくお待ちくださいと言われたので、とりあえず椅子に座る。しかし、ゲームのような光景に俺は興奮を抑えきれずフィンを連れてギルド内をウロウロと徘徊する。チカ達は喉が渇いたらしく、机で飲み物を飲んでいる。お金はフィンがいつのまにか出していたみたいで、お礼を言っておいた。
「なーなー。この絵に書かれてるのなんだ?」
「これですか?これは『勇者 アルマ』の肖像画です。かなり大昔、魔王と戦い世界を救った英雄なんですよ」
「へぇー。勇者ねぇ…」
(まんまRPGじゃねーか!!しかもこの紋章、見たことあるぞ!)
カセットのパッケージに描かれているような姿を見ながら一人ツッコミを入れていた。その動きを不審な目で見られたが、気にしない事にした。
室内を充分に探索した俺はチカ達の所へ戻った。椅子に座るなり、ウェイトレスさんが飲み物を俺とフィンに渡してくれる。……フィン、お前は絶対モテるヤツだな。
フィンに奢って貰った味のしない飲み物を飲んでいると、受付から声をかけられる。
「フィンさーん!ギルドマスターがお呼びです。お連れの方を連れて執務室へ向かってください」
「よーやくだな。結構待たされたな」
「忙しい方ですからね。…それじゃ、執務室へ行きましょうか」
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「失礼します」
ドアをノックしたフィンの後に続き、俺達も部屋へと入る。豪勢な部屋かと思ったが、意外と質素な部屋だった。しかし、色合い的に質素という意味であり、調度品の数々は絶対に高いヤツだなと普通にわかる。…絶対、このギルドマスターはセンスいいな。
「やぁ、フィン。元気にしてるかい?」
「ええ、コンラッドさんもお元気そうで」
「はは、元気では無いんだけどね。……それで?後ろの方々が書状に書いてある人たちかい?」
「はい。僕たちを救ってくれたアルスさん達です」
「そうかそうか。それでは皆様方、こちらにお座りください」
ギルドマスター、コンラッドが俺達をソファーへ案内すると単刀直入に聞いてきた。
「いきなりで申し訳ないんだが…。本当に皆様方は砂漠大蜘蛛複数体を相手に勝利したのですか?」
(でざーとすぱいだー???…ああ、あの気色悪い大蜘蛛の事か!)
「は、はい。何匹いたのかはわかんないですけど、とりあえず全部倒したと思います」
「あたし2匹倒したよ!」
「ボクは3匹」
「私は2匹ですわね」
「だそうです」
「………信じられん。砂漠大蜘蛛ですよ?それを5匹以上、倒したのですか…」
「チカさん達のは見ていないですけど、アルスさんは一撃で倒してました!頭と胴体がスパーンって切断されてました!」
「何だと!?一撃でだと!?……いやいや、本当に信じられんぞ…」
「え…?そんなにあの大蜘蛛強いんですか?」
コンラッドとフィンが異常者を見るような目付きで俺を見ている。…そんな目で見ないでおくれ。
フィンにあの大蜘蛛について詳しく聞いてみた。すると、あの蜘蛛、砂漠大蜘蛛はBランクの魔物であり、同ランクの冒険者5人パーティで1体を倒せるかどうかとの話だった。
…なるほどな。そんな魔物を俺達が4人で5匹以上倒したって事はそりゃ信じられないわ。しかも、俺以外女の子だしね。
「でも、コンラッドさん。僕以外にも証人はいますよ?呼んできましょうか?」
「いや、大丈夫だよ。一応ギルマスだからね。君の目が嘘をついてないって事ぐらいわかるよ…。そうかぁ…そういう事かぁー…」
コンラッドさんがため息と共に頭を抱えている。一体どうしたんだ??
「あのー。どうかしました?」
「ああ、すまない。ちょっとカーバインの書状で悩んでいてね…」
「カーバイン??誰ですかそれ?」
「……アルスさん。カーバインは僕の叔父です」
「ああっ!あのおっさんカーバインって言うのか!名前聞いてなかったからわかんなかったよ…」
「…しっかり覚えてくださいね?この街の兵士団総長なんですから」
フィンの呆れ声に俺は、てへへと舌を出しながら頭をかく。だって!名前聞くタイミングなかったから仕方ないじゃん!
「カーバイン…カーバイン…。よし、覚えた!…それで、カーバインさんからの書状がどうかしたんですか?」
「ああ、アイツの書状には『アルス殿達は兵士団に勧誘するから横取りするな』と書かれていてね…。それならば何で私に紹介したのだろうかって思ってね…。まぁ、嫌味なんだろうけど」
コンラッドが苦笑いするが、俺には全く意味がわからなかった。とりあえず、俺はギルド証さえ貰えれば良いんだけど。
「…ちょっと考える時間をくれるかい?」
「ええ。別に良いですけど…」
コンラッドが頭を抱えながら、ブツブツと独り言を言っている。…少しだけだが怖い。
あまりコンラッドを見ないように待っていると、結論が出たのかコンラッドが顔を上げる。
「…アルス殿、あなたは『冒険者』と『兵士団』どちらを選びますか?どちらかを選んでください」
「は?へっ?いきなりなんですか?」
「カーバインのヤツはどうしてもあなた達を兵士団に入れたいようだ。もちろん、魔物との戦闘の話は聞いているでしょう…。しかし、私も戦力増強と言う意味では、あなたに冒険者になって貰いたい。私たちはお互いにアルス殿を求めているのです!…………急な話ではあるが、今どちらかを決めて頂きたい」
…全然話についていけないんですけどー!!!え?なになに?どっちか選べって事?急に言われても決めれる訳ねーだろ!!
「……ちょっと時間貰ってもいいですか?」
「ええ、もちろんですとも。ゆっくり考えて下さい」
席を立った俺はチカ達を連れ廊下へ出る。結局の所、俺だけの問題じゃないんだよね。…こうなったら、多数決だ!
「…なぁ、チカ達は『冒険者』と『兵士団』どっちがいい?」
「どちらでも構いません。アルス様に従いますわ」
「どちらでも。マスターについていく」
「ご主人様が一緒ならどっちでもー!」
……ああ、お前らのその気持ちはめちゃくちゃ嬉しいよ。めちゃくちゃ嬉しいけどな?今はそうじゃねーんだよ!お前らの意見聞きたいんだよ!!…まぁ、無理か。そんな設定無いし、俺優先だもんな…。
冒険者と兵士団のメリット、デメリットを考えていると意外な一言が飛び出てきた。
「ご主人様ぁー。選べないなら、どっちもすればいいんじゃない?」
ローリィの言葉に俺は衝撃を受けた。選べないならどっちもすればいいじゃん!2人とも俺を欲しがってるみたいだし、そうなれば丸く収まるだろ!
「それだっ!!ローリィありがとな!」
ローリィの頭を撫でると物凄く嬉しそうな表情になる。…やっぱ可愛いなぁ。
「…ずるい。ボクもマスターの役に立ってナデナデして貰う」
「私もよ。アルス様にナデナデして貰いたいわ」
コソコソとチカ達が話していたようだが、聞き取れなかった。ローリィを撫でるのをやめ、俺はコンラッドの部屋へと戻った。
「お待たせしてすいません。話し合いの結果が出ました」
「…もうですか?…もう少し話し合ってもいいんですよ?」
「いえ、大丈夫です。全員同じ気持ちですから」
「…わかりました。では…お聞かせください」
「はい、僕たちが選んだのは--」
ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
「--兵士団
コンラッドの表情が失望へと変わる。
「と冒険者、両方を選びます!」
俺の答えにコンラッドは大きく口を開ける。…なんだよ。そんなに面白かったか?まぁ、俺お笑いのセンスは有--
「両方ですか!?そんなの無理に決まってます!!」
なんだよ。最後まで言わせろよ。……まぁ、そう言うと思ってたけど。
「フィンから来る途中、色々と話を聞きましたけど、どちらともこの街の住民を守る為にあるんですよね?」
「そ、それはそうですが…。しかし…」
「だって、2人とも俺達が欲しいんですよね?正直、どちらか選べと言われても角が立つんですよ。それなら、両方を選んだ方が丸く収まるかなーって」
「うむむ…。それは確かにそうですが…」
「ならこうしましょう。俺達の事はカーバインさん達の秘密にしておいて、まず冒険者登録します。それで、依頼や討伐をこなして、ランクアップしていきます。俺達の名前が周囲に知れ渡った時、兵士団とギルドの両方に所属するってのはどうでしょう?」
「…………………………………」
コンラッドは目を閉じ、俺の意見を検討している。我ながら良い案だと思うんだけどなぁ。それでもダメって言うなら、ギルド証だけ作ってこの街から出て行こう。
しばらくの間、部屋には静寂が漂っていたが、深い溜息と共に静寂は霧散していった。
「……わかりました。こちらとしても有難いですので、その案に乗りましょう」
「ふぅ…よかった」
「カーバインには私から説明しておきます。……さて、堅苦しい口調は辞めてもいいですか?」
「ええ、普通に喋ってください。あと呼び捨てで構いません」
「それじゃ、アルス。君達には今から冒険者登録をして貰う。…正直言えば、Cランクからでも良いとは思うがギルドの決まりだからな。……まずはEランクから始めてもらおうか」
「わかりました。コンラッドさん、これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそだよ。…あと特別に普通の口調で話して良いよ。勿論、誰も居ない時に限るがね?」
「え?いいの?それじゃ、そうします」
こうして、俺達は色々な出来事に巻き込まれながらも一息つける場所を手に入れた。
俺にとって、初めての世界、初めての街、初めての冒険者登録。初めて尽くしであったが、落ち着くという意味では非常に助かる。まだ分からない事も多すぎるし、色々と考えを整理しないといけない。けれども、少しだけ高揚している自分もいる。とりあえず寝て、明日から考えよーっと!
かくして、俺にとって非常に長い長い1日が終わるのであった。
フィンに連れられギルドの中に入ると、ゲームのような世界が広がっていた。大きな部屋の中に、沢山の丸机と椅子。それと酒場が併設してあり、昼間から飲んでいる人もいる。…あー酒旨そうだなぁ。飲みたいなぁー。……味覚無いけどね。
おっさんから渡された書状をフィンが受付に渡してくれた。道中、話を聞いたがギルドマスターとおっさんは幼馴染らしく、仲が良いそうだ。
しばらくお待ちくださいと言われたので、とりあえず椅子に座る。しかし、ゲームのような光景に俺は興奮を抑えきれずフィンを連れてギルド内をウロウロと徘徊する。チカ達は喉が渇いたらしく、机で飲み物を飲んでいる。お金はフィンがいつのまにか出していたみたいで、お礼を言っておいた。
「なーなー。この絵に書かれてるのなんだ?」
「これですか?これは『勇者 アルマ』の肖像画です。かなり大昔、魔王と戦い世界を救った英雄なんですよ」
「へぇー。勇者ねぇ…」
(まんまRPGじゃねーか!!しかもこの紋章、見たことあるぞ!)
カセットのパッケージに描かれているような姿を見ながら一人ツッコミを入れていた。その動きを不審な目で見られたが、気にしない事にした。
室内を充分に探索した俺はチカ達の所へ戻った。椅子に座るなり、ウェイトレスさんが飲み物を俺とフィンに渡してくれる。……フィン、お前は絶対モテるヤツだな。
フィンに奢って貰った味のしない飲み物を飲んでいると、受付から声をかけられる。
「フィンさーん!ギルドマスターがお呼びです。お連れの方を連れて執務室へ向かってください」
「よーやくだな。結構待たされたな」
「忙しい方ですからね。…それじゃ、執務室へ行きましょうか」
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「失礼します」
ドアをノックしたフィンの後に続き、俺達も部屋へと入る。豪勢な部屋かと思ったが、意外と質素な部屋だった。しかし、色合い的に質素という意味であり、調度品の数々は絶対に高いヤツだなと普通にわかる。…絶対、このギルドマスターはセンスいいな。
「やぁ、フィン。元気にしてるかい?」
「ええ、コンラッドさんもお元気そうで」
「はは、元気では無いんだけどね。……それで?後ろの方々が書状に書いてある人たちかい?」
「はい。僕たちを救ってくれたアルスさん達です」
「そうかそうか。それでは皆様方、こちらにお座りください」
ギルドマスター、コンラッドが俺達をソファーへ案内すると単刀直入に聞いてきた。
「いきなりで申し訳ないんだが…。本当に皆様方は砂漠大蜘蛛複数体を相手に勝利したのですか?」
(でざーとすぱいだー???…ああ、あの気色悪い大蜘蛛の事か!)
「は、はい。何匹いたのかはわかんないですけど、とりあえず全部倒したと思います」
「あたし2匹倒したよ!」
「ボクは3匹」
「私は2匹ですわね」
「だそうです」
「………信じられん。砂漠大蜘蛛ですよ?それを5匹以上、倒したのですか…」
「チカさん達のは見ていないですけど、アルスさんは一撃で倒してました!頭と胴体がスパーンって切断されてました!」
「何だと!?一撃でだと!?……いやいや、本当に信じられんぞ…」
「え…?そんなにあの大蜘蛛強いんですか?」
コンラッドとフィンが異常者を見るような目付きで俺を見ている。…そんな目で見ないでおくれ。
フィンにあの大蜘蛛について詳しく聞いてみた。すると、あの蜘蛛、砂漠大蜘蛛はBランクの魔物であり、同ランクの冒険者5人パーティで1体を倒せるかどうかとの話だった。
…なるほどな。そんな魔物を俺達が4人で5匹以上倒したって事はそりゃ信じられないわ。しかも、俺以外女の子だしね。
「でも、コンラッドさん。僕以外にも証人はいますよ?呼んできましょうか?」
「いや、大丈夫だよ。一応ギルマスだからね。君の目が嘘をついてないって事ぐらいわかるよ…。そうかぁ…そういう事かぁー…」
コンラッドさんがため息と共に頭を抱えている。一体どうしたんだ??
「あのー。どうかしました?」
「ああ、すまない。ちょっとカーバインの書状で悩んでいてね…」
「カーバイン??誰ですかそれ?」
「……アルスさん。カーバインは僕の叔父です」
「ああっ!あのおっさんカーバインって言うのか!名前聞いてなかったからわかんなかったよ…」
「…しっかり覚えてくださいね?この街の兵士団総長なんですから」
フィンの呆れ声に俺は、てへへと舌を出しながら頭をかく。だって!名前聞くタイミングなかったから仕方ないじゃん!
「カーバイン…カーバイン…。よし、覚えた!…それで、カーバインさんからの書状がどうかしたんですか?」
「ああ、アイツの書状には『アルス殿達は兵士団に勧誘するから横取りするな』と書かれていてね…。それならば何で私に紹介したのだろうかって思ってね…。まぁ、嫌味なんだろうけど」
コンラッドが苦笑いするが、俺には全く意味がわからなかった。とりあえず、俺はギルド証さえ貰えれば良いんだけど。
「…ちょっと考える時間をくれるかい?」
「ええ。別に良いですけど…」
コンラッドが頭を抱えながら、ブツブツと独り言を言っている。…少しだけだが怖い。
あまりコンラッドを見ないように待っていると、結論が出たのかコンラッドが顔を上げる。
「…アルス殿、あなたは『冒険者』と『兵士団』どちらを選びますか?どちらかを選んでください」
「は?へっ?いきなりなんですか?」
「カーバインのヤツはどうしてもあなた達を兵士団に入れたいようだ。もちろん、魔物との戦闘の話は聞いているでしょう…。しかし、私も戦力増強と言う意味では、あなたに冒険者になって貰いたい。私たちはお互いにアルス殿を求めているのです!…………急な話ではあるが、今どちらかを決めて頂きたい」
…全然話についていけないんですけどー!!!え?なになに?どっちか選べって事?急に言われても決めれる訳ねーだろ!!
「……ちょっと時間貰ってもいいですか?」
「ええ、もちろんですとも。ゆっくり考えて下さい」
席を立った俺はチカ達を連れ廊下へ出る。結局の所、俺だけの問題じゃないんだよね。…こうなったら、多数決だ!
「…なぁ、チカ達は『冒険者』と『兵士団』どっちがいい?」
「どちらでも構いません。アルス様に従いますわ」
「どちらでも。マスターについていく」
「ご主人様が一緒ならどっちでもー!」
……ああ、お前らのその気持ちはめちゃくちゃ嬉しいよ。めちゃくちゃ嬉しいけどな?今はそうじゃねーんだよ!お前らの意見聞きたいんだよ!!…まぁ、無理か。そんな設定無いし、俺優先だもんな…。
冒険者と兵士団のメリット、デメリットを考えていると意外な一言が飛び出てきた。
「ご主人様ぁー。選べないなら、どっちもすればいいんじゃない?」
ローリィの言葉に俺は衝撃を受けた。選べないならどっちもすればいいじゃん!2人とも俺を欲しがってるみたいだし、そうなれば丸く収まるだろ!
「それだっ!!ローリィありがとな!」
ローリィの頭を撫でると物凄く嬉しそうな表情になる。…やっぱ可愛いなぁ。
「…ずるい。ボクもマスターの役に立ってナデナデして貰う」
「私もよ。アルス様にナデナデして貰いたいわ」
コソコソとチカ達が話していたようだが、聞き取れなかった。ローリィを撫でるのをやめ、俺はコンラッドの部屋へと戻った。
「お待たせしてすいません。話し合いの結果が出ました」
「…もうですか?…もう少し話し合ってもいいんですよ?」
「いえ、大丈夫です。全員同じ気持ちですから」
「…わかりました。では…お聞かせください」
「はい、僕たちが選んだのは--」
ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
「--兵士団
コンラッドの表情が失望へと変わる。
「と冒険者、両方を選びます!」
俺の答えにコンラッドは大きく口を開ける。…なんだよ。そんなに面白かったか?まぁ、俺お笑いのセンスは有--
「両方ですか!?そんなの無理に決まってます!!」
なんだよ。最後まで言わせろよ。……まぁ、そう言うと思ってたけど。
「フィンから来る途中、色々と話を聞きましたけど、どちらともこの街の住民を守る為にあるんですよね?」
「そ、それはそうですが…。しかし…」
「だって、2人とも俺達が欲しいんですよね?正直、どちらか選べと言われても角が立つんですよ。それなら、両方を選んだ方が丸く収まるかなーって」
「うむむ…。それは確かにそうですが…」
「ならこうしましょう。俺達の事はカーバインさん達の秘密にしておいて、まず冒険者登録します。それで、依頼や討伐をこなして、ランクアップしていきます。俺達の名前が周囲に知れ渡った時、兵士団とギルドの両方に所属するってのはどうでしょう?」
「…………………………………」
コンラッドは目を閉じ、俺の意見を検討している。我ながら良い案だと思うんだけどなぁ。それでもダメって言うなら、ギルド証だけ作ってこの街から出て行こう。
しばらくの間、部屋には静寂が漂っていたが、深い溜息と共に静寂は霧散していった。
「……わかりました。こちらとしても有難いですので、その案に乗りましょう」
「ふぅ…よかった」
「カーバインには私から説明しておきます。……さて、堅苦しい口調は辞めてもいいですか?」
「ええ、普通に喋ってください。あと呼び捨てで構いません」
「それじゃ、アルス。君達には今から冒険者登録をして貰う。…正直言えば、Cランクからでも良いとは思うがギルドの決まりだからな。……まずはEランクから始めてもらおうか」
「わかりました。コンラッドさん、これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそだよ。…あと特別に普通の口調で話して良いよ。勿論、誰も居ない時に限るがね?」
「え?いいの?それじゃ、そうします」
こうして、俺達は色々な出来事に巻き込まれながらも一息つける場所を手に入れた。
俺にとって、初めての世界、初めての街、初めての冒険者登録。初めて尽くしであったが、落ち着くという意味では非常に助かる。まだ分からない事も多すぎるし、色々と考えを整理しないといけない。けれども、少しだけ高揚している自分もいる。とりあえず寝て、明日から考えよーっと!
かくして、俺にとって非常に長い長い1日が終わるのであった。
0
お気に入りに追加
1,356
あなたにおすすめの小説
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。

学年揃って異世界召喚?執行猶予30年貰っても良いですか?
ばふぉりん
ファンタジー
とある卒業式当日の中学生達。それぞれの教室でワイワイ騒いでると突然床が光だし・・・これはまさか!?
そして壇上に綺麗な女性が現れて「これからみなさんには同じスキルをひとつだけ持って、異世界に行ってもらいます。拒否はできません。ただし、一つだけ願いを叶えましょう」と、若干頓珍漢な事を言い、前から順番にクラスメイトの願いを叶えたり却下したりと、ドンドン光に変えていき、遂に僕の番になったので、こう言ってみた。
「30年待ってもらえませんか?」と・・・
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
初めて文章を書くので、色々教えていただければ幸いです!
また、メンタルは絹豆腐並みに柔らかいので、やさしくしてください。
更新はランダムで、別にプロットとかも無いので、その日その場で書いて更新するとおもうのであ、生暖かく見守ってください。


ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる