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003話
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チカ達のお喋りの内容に俺は引っかかるものがあった。チカとナナは初期から育てているが、ローリィは前々回の大型アップデート後から加入している。けど、魔法のカードのお陰でローリィは全てカンストしているはずだ。
(なんでだ?死ぬ前にローリィは2日程放置してたし、修得してるはずなんだけど…)
俺が1人で悶々としていると横から声をかけられた。
「マスター、今が食べ頃」
「あ、ありがとう。………とりあえず、あとで考えればいいか」
満遍なく焼き目が付いた肉を口へと持っていくが、見た目の迫力に唾を飲み込む。
(ええー…。やっぱ食べないといけない感じ?不安すぎるんだけど)
ナナ達は自分達の肉には口をつけず、俺が食べるのを待っているみたいだ。
(視線がツラい…。ええいっ、ままよ!)
ガブリと肉に食らいつき、俺は衝撃を受けた。
(味がしない……だと!?)
食べている肉をマジマジと見つめる。確かに歯型ついてるし、食べている事には間違い無さそうだ。
(……うぇっ。無駄に弾力がある…。まるで味の無い大量のガムを食べてるみたいだ)
咀嚼を続けるが、やっぱり味はしない。吐き出そうと思ったがチカ達が見ている事を思い出す。
「…めっちゃ美味いなこれ!肉汁が溢れ出て最高だ!」
俺の言葉にチカ達は安心したようで、そのまま食事を始めた。表情が変わってるし、きっと美味しいものなんだろう。
(あぶねー、吐き出すとこだったよ。そんなことしたらナナが悲しむかもしれない!これからは気をつけよう)
それから俺は、味のしないガムの固まりをひたすら演技しながら食べた。ナナ達が色々なところを一口ずつくれるのだが、正直言うと拷問だった。だって、味しねーもん!!
そんなこんなで、俺だけが満たされない昼食が終わってくれた。味がしないものでも腹はふくれるみたいだ。昼食の後片付けはチカ達がやってくれたから、俺はただぼーっとしてただけ。ホント、出来た子たちだよ。
「アルス様!出発の準備できました!」
「はーい!今行くよー!」
腰を上げ、チカ達の元へと急いで向かったのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「ところで、あたしたちどこに向かってるの?」
魔物と遭遇する事なく、森の中をひたすらに歩いているとローリィがチカに質問した。
「さあ?ただ、アルス様について行ってるだけだから私にもわからないわ」
「ボクも。どこに向かっているのかはわからない」
チカ達の意見に1番焦ったのはだーれだ?……俺だよっ!!
「えっ!?俺は適当に歩いてるだけなんだけど…」
気まずい雰囲気の中、チカが助け船を出してくれる。
「えーっと……とりあえず森から出て、それから街とかを探しましょう!」
「さ、さすがチカ!頼りになるなー!」
チカの助け船に乗った俺は、誤魔化すように歩く速度を上げる。みんな、何事も無かったのかのようについてくるけど、逆にそれが無言のプレッシャーを浴びてるようで怖かった。……仕方ないよね!俺生まれ変わって間もないし!
(…てか、本当にどうなってんだ?1回じっくり考える時間が欲しい…)
森の中を歩く事20分、俺たちはやっと森から出れた。薄暗かった森から出るとそこには……延々と広がる砂漠があった。
(……なにこれ。街の姿なんて全然見えねーじゃん。見えるのは砂と太陽と、なんかの骨だけ…)
目の前の光景にフリーズしていたら、ローリィが大声で何かを指差している。
「ご主人様ぁー!!めっちゃ遠いけど、あっちに何か見える!」
ローリィが指差す方向に目を向けてみるけど、何にも見えない。けれど、チカ達は違ったようだ。
「本当ね。……ぼんやりだけど何か見えるわ」
「小さいけど何か見える。あれは……壁?」
「えっ!?チカ達見えるの?」
「見える。けど、何かがあるってことだけしかわからない」
俺はかなり目を細めるが、何かがあるって事すらもわからない。そんな時、俺の脳裏に閃くものがあった。
(あ!!そういう時はアレ使えばいーじゃん!…えーっと、なんて名前だったっけ?)
アイテムリストを表示し、スクロールしていく。ブツブツと呟きながら目的の物を見つけ出した。
「あった!これだ!」
アイテムリストをタップし出現させ、そのまま目に当て指差した方向を見てみる。……そう、探していたものとは『双眼鏡』だった。
「えーっと…………あ、あれか!めっちゃ小さいな」
双眼鏡で見てみてもゴマ粒みたいなのがあるって事ぐらいしかわからない。
「とりあえず、あそこを目的地にしよう」
双眼鏡で見ても小さいって事は距離が物凄くあるって事だ。……転移の魔法使いたいけど、行ったことある場所じゃなきゃ行けないからなぁ。
「えぇー?この砂漠を歩くのー?肌焼けちゃうー!」
「大丈夫。熱無効の魔法をかけるから焼けはしない」
「お肌の天敵よね。日焼け止めのアイテム持っておけばよかったわ」
……女子って感じだ。てか、日焼け止めのアイテムとか初知りなんだけど!
「よ、よし!そろそろ出発するか!ナナ、魔法よろしく!」
「わかった。それじゃ、ジョブ切り替えの許可を出して欲しい」
「…ああ、そうか。許可必要なのか。…というより自分の判断で切り替えしていいよ。ローリィ達もね」
一瞬の静寂があったが、きっとジョブ変更したんだろう。一々許可出すの面倒だし、自己判断で変更してもらうようにしよう。
ナナに熱無効の魔法をかけてもらい、俺達は砂漠へと足を踏み入れた。森から少し離れると、辺り一面砂だらけ。平坦な道だったら良かったんだけど、砂丘がちらほら見えるし気を付けて進もう。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
どれくらい歩いただろうか。時折休憩を挟みながら進んでいくと、ちょうど大きな砂丘の頂上に着いた。乾燥した風が吹き、砂埃が舞うが涼しく感じる。とりあえず、ここで休憩にしようと思ったらチカの表情が険しくなっていた。
「ど、どうしたチカ?ここじゃ休憩ダメか?」
「い、いえ!そんな事ないです!……ただ、どこからか交戦している音が聞こえます」
チカが俺の横に立つと周辺を見渡している。俺も双眼鏡を取り出すが、俺より先に見つけたみたいだ。
「っ!あそこです!……魔物と人間が交戦しています!」
「なんだって!?」
慌てて双眼鏡を覗き込むと確かに戦っているのが見える。…身なりからして兵士っぽいな。
「…形勢が悪すぎるねー。どうするの?」
「マスター、どうするのか?」
ナナ達は俺の決断を待っているみたいだ。じっと見つめられる中、考える。
(うーん……正直言えば、怪我とかしたくないから無視したい。けど、自分の強さを確かめてみたいって気持ちもあるなぁ)
俺が決断しきれないでいると、チカが急かすように話しかけてくる。
「アルス様!助けに行きましょう!知らんぷりなんて出来ません!」
チカの強い眼差しに後押しされるように決断した。
「…ああ!そうだな!みんな、助けに向かうぞ!」
ナナに速度上昇の魔法をかけてもらい、俺達は急いで救援に向かった。怪我?そんなの知るか!女に言われるなんて情けねーぜ!
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「全員逃げろー!!!」
隊長がそう言うのが聞こえた。けれども、誰も逃げる事は出来ない。目の前の砂漠大蜘蛛達に畏怖してしまって、足が動かない。誰かが魔法を使って攻撃してるけど無駄だと思う。強靭な外皮に鋭利な爪。…ほら、簡単に弾かれちゃった。1人、また1人と爪の餌食になっていく。
…ああ、僕はここで死ぬんだな。訓練中の遭遇とはいえ、自分の運の無さに絶望しちゃうね…。周りを見てみると、立っているのは僕しかいない。その時、魔物と目があった気がした。
…ああ、次は僕の番だね。短い人生だった…。爪が僕の方に伸びて来るのが見えた。僕は目をつぶって死を受け入れるのであった。
金属がぶつかり合う音が聞こえた。痛いと思ったが、どうやら音の発生源は僕からでは無いみたいだ。おそるおそる目を開けると、漆黒の鎧を纏った戦士が爪の攻撃を防いでいた。
「大丈夫か!?」
漆黒の戦士が声をかけてくれるが、答えられなかった。その代わりに頷くと漆黒の戦士は安心した表情を浮かべた。
「怪我とかは無さそうだな。…ま、安心しろ」
漆黒の戦士が剣を振るうと、地面にポトリと爪が落ちた。そのまま何か呟くと目の前から消え、次の瞬間、砂漠大蜘蛛の悲鳴が聞こえた。魔物の方に目を向けると、頭と胴体が分断されており、静かに地面に落ちていく光景が見えた。最後に大きな炎が上がり、肉の焼ける臭いが漂い始めた。
「案外楽勝だったな。…いや、これが雑魚ってこともありうるな」
漆黒の戦士が腕を組みながらこっちへ向かってくる。何かを考えているようで表情は険しい。
「しっかし、殆どやられてんなー。チカー、全体回復をかけてやってくれ」
漆黒の戦士が誰かに命令すると僕達は緑の光に包まれた。暖かい光に包まれながら疲労が抜けた気がする。慌てて周囲を見回すと、怪我を負っていた兵士達が起き上がり不思議な顔をしている。
「…誰も死んではないみたいだな。いやー、よかったよかった」
漆黒の戦士が安堵するように胸を撫で下ろしていた。一体何が起きたかわからないけど、どうやら僕達はこの人に助けてもらったみたいだ。お礼を言おうと思ったら、漆黒の戦士に3人の女性が近寄ってきた。
…物凄い美女達だ。1人は凄い露出が激しくて目のやり場に困る…。その3人の美女達は漆黒の戦士と親しく話をしているので、どうやら仲間みたいだ。兵士達も立ち上がってこちらを見ている。状況がわからないみたいだけど、僕もわからないんだ。だから、僕はお礼と共に漆黒の戦士達に聞くことにした。
「た、助けていただいてありがとうございます。…それで、あなた達は一体…?」
(なんでだ?死ぬ前にローリィは2日程放置してたし、修得してるはずなんだけど…)
俺が1人で悶々としていると横から声をかけられた。
「マスター、今が食べ頃」
「あ、ありがとう。………とりあえず、あとで考えればいいか」
満遍なく焼き目が付いた肉を口へと持っていくが、見た目の迫力に唾を飲み込む。
(ええー…。やっぱ食べないといけない感じ?不安すぎるんだけど)
ナナ達は自分達の肉には口をつけず、俺が食べるのを待っているみたいだ。
(視線がツラい…。ええいっ、ままよ!)
ガブリと肉に食らいつき、俺は衝撃を受けた。
(味がしない……だと!?)
食べている肉をマジマジと見つめる。確かに歯型ついてるし、食べている事には間違い無さそうだ。
(……うぇっ。無駄に弾力がある…。まるで味の無い大量のガムを食べてるみたいだ)
咀嚼を続けるが、やっぱり味はしない。吐き出そうと思ったがチカ達が見ている事を思い出す。
「…めっちゃ美味いなこれ!肉汁が溢れ出て最高だ!」
俺の言葉にチカ達は安心したようで、そのまま食事を始めた。表情が変わってるし、きっと美味しいものなんだろう。
(あぶねー、吐き出すとこだったよ。そんなことしたらナナが悲しむかもしれない!これからは気をつけよう)
それから俺は、味のしないガムの固まりをひたすら演技しながら食べた。ナナ達が色々なところを一口ずつくれるのだが、正直言うと拷問だった。だって、味しねーもん!!
そんなこんなで、俺だけが満たされない昼食が終わってくれた。味がしないものでも腹はふくれるみたいだ。昼食の後片付けはチカ達がやってくれたから、俺はただぼーっとしてただけ。ホント、出来た子たちだよ。
「アルス様!出発の準備できました!」
「はーい!今行くよー!」
腰を上げ、チカ達の元へと急いで向かったのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「ところで、あたしたちどこに向かってるの?」
魔物と遭遇する事なく、森の中をひたすらに歩いているとローリィがチカに質問した。
「さあ?ただ、アルス様について行ってるだけだから私にもわからないわ」
「ボクも。どこに向かっているのかはわからない」
チカ達の意見に1番焦ったのはだーれだ?……俺だよっ!!
「えっ!?俺は適当に歩いてるだけなんだけど…」
気まずい雰囲気の中、チカが助け船を出してくれる。
「えーっと……とりあえず森から出て、それから街とかを探しましょう!」
「さ、さすがチカ!頼りになるなー!」
チカの助け船に乗った俺は、誤魔化すように歩く速度を上げる。みんな、何事も無かったのかのようについてくるけど、逆にそれが無言のプレッシャーを浴びてるようで怖かった。……仕方ないよね!俺生まれ変わって間もないし!
(…てか、本当にどうなってんだ?1回じっくり考える時間が欲しい…)
森の中を歩く事20分、俺たちはやっと森から出れた。薄暗かった森から出るとそこには……延々と広がる砂漠があった。
(……なにこれ。街の姿なんて全然見えねーじゃん。見えるのは砂と太陽と、なんかの骨だけ…)
目の前の光景にフリーズしていたら、ローリィが大声で何かを指差している。
「ご主人様ぁー!!めっちゃ遠いけど、あっちに何か見える!」
ローリィが指差す方向に目を向けてみるけど、何にも見えない。けれど、チカ達は違ったようだ。
「本当ね。……ぼんやりだけど何か見えるわ」
「小さいけど何か見える。あれは……壁?」
「えっ!?チカ達見えるの?」
「見える。けど、何かがあるってことだけしかわからない」
俺はかなり目を細めるが、何かがあるって事すらもわからない。そんな時、俺の脳裏に閃くものがあった。
(あ!!そういう時はアレ使えばいーじゃん!…えーっと、なんて名前だったっけ?)
アイテムリストを表示し、スクロールしていく。ブツブツと呟きながら目的の物を見つけ出した。
「あった!これだ!」
アイテムリストをタップし出現させ、そのまま目に当て指差した方向を見てみる。……そう、探していたものとは『双眼鏡』だった。
「えーっと…………あ、あれか!めっちゃ小さいな」
双眼鏡で見てみてもゴマ粒みたいなのがあるって事ぐらいしかわからない。
「とりあえず、あそこを目的地にしよう」
双眼鏡で見ても小さいって事は距離が物凄くあるって事だ。……転移の魔法使いたいけど、行ったことある場所じゃなきゃ行けないからなぁ。
「えぇー?この砂漠を歩くのー?肌焼けちゃうー!」
「大丈夫。熱無効の魔法をかけるから焼けはしない」
「お肌の天敵よね。日焼け止めのアイテム持っておけばよかったわ」
……女子って感じだ。てか、日焼け止めのアイテムとか初知りなんだけど!
「よ、よし!そろそろ出発するか!ナナ、魔法よろしく!」
「わかった。それじゃ、ジョブ切り替えの許可を出して欲しい」
「…ああ、そうか。許可必要なのか。…というより自分の判断で切り替えしていいよ。ローリィ達もね」
一瞬の静寂があったが、きっとジョブ変更したんだろう。一々許可出すの面倒だし、自己判断で変更してもらうようにしよう。
ナナに熱無効の魔法をかけてもらい、俺達は砂漠へと足を踏み入れた。森から少し離れると、辺り一面砂だらけ。平坦な道だったら良かったんだけど、砂丘がちらほら見えるし気を付けて進もう。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
どれくらい歩いただろうか。時折休憩を挟みながら進んでいくと、ちょうど大きな砂丘の頂上に着いた。乾燥した風が吹き、砂埃が舞うが涼しく感じる。とりあえず、ここで休憩にしようと思ったらチカの表情が険しくなっていた。
「ど、どうしたチカ?ここじゃ休憩ダメか?」
「い、いえ!そんな事ないです!……ただ、どこからか交戦している音が聞こえます」
チカが俺の横に立つと周辺を見渡している。俺も双眼鏡を取り出すが、俺より先に見つけたみたいだ。
「っ!あそこです!……魔物と人間が交戦しています!」
「なんだって!?」
慌てて双眼鏡を覗き込むと確かに戦っているのが見える。…身なりからして兵士っぽいな。
「…形勢が悪すぎるねー。どうするの?」
「マスター、どうするのか?」
ナナ達は俺の決断を待っているみたいだ。じっと見つめられる中、考える。
(うーん……正直言えば、怪我とかしたくないから無視したい。けど、自分の強さを確かめてみたいって気持ちもあるなぁ)
俺が決断しきれないでいると、チカが急かすように話しかけてくる。
「アルス様!助けに行きましょう!知らんぷりなんて出来ません!」
チカの強い眼差しに後押しされるように決断した。
「…ああ!そうだな!みんな、助けに向かうぞ!」
ナナに速度上昇の魔法をかけてもらい、俺達は急いで救援に向かった。怪我?そんなの知るか!女に言われるなんて情けねーぜ!
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「全員逃げろー!!!」
隊長がそう言うのが聞こえた。けれども、誰も逃げる事は出来ない。目の前の砂漠大蜘蛛達に畏怖してしまって、足が動かない。誰かが魔法を使って攻撃してるけど無駄だと思う。強靭な外皮に鋭利な爪。…ほら、簡単に弾かれちゃった。1人、また1人と爪の餌食になっていく。
…ああ、僕はここで死ぬんだな。訓練中の遭遇とはいえ、自分の運の無さに絶望しちゃうね…。周りを見てみると、立っているのは僕しかいない。その時、魔物と目があった気がした。
…ああ、次は僕の番だね。短い人生だった…。爪が僕の方に伸びて来るのが見えた。僕は目をつぶって死を受け入れるのであった。
金属がぶつかり合う音が聞こえた。痛いと思ったが、どうやら音の発生源は僕からでは無いみたいだ。おそるおそる目を開けると、漆黒の鎧を纏った戦士が爪の攻撃を防いでいた。
「大丈夫か!?」
漆黒の戦士が声をかけてくれるが、答えられなかった。その代わりに頷くと漆黒の戦士は安心した表情を浮かべた。
「怪我とかは無さそうだな。…ま、安心しろ」
漆黒の戦士が剣を振るうと、地面にポトリと爪が落ちた。そのまま何か呟くと目の前から消え、次の瞬間、砂漠大蜘蛛の悲鳴が聞こえた。魔物の方に目を向けると、頭と胴体が分断されており、静かに地面に落ちていく光景が見えた。最後に大きな炎が上がり、肉の焼ける臭いが漂い始めた。
「案外楽勝だったな。…いや、これが雑魚ってこともありうるな」
漆黒の戦士が腕を組みながらこっちへ向かってくる。何かを考えているようで表情は険しい。
「しっかし、殆どやられてんなー。チカー、全体回復をかけてやってくれ」
漆黒の戦士が誰かに命令すると僕達は緑の光に包まれた。暖かい光に包まれながら疲労が抜けた気がする。慌てて周囲を見回すと、怪我を負っていた兵士達が起き上がり不思議な顔をしている。
「…誰も死んではないみたいだな。いやー、よかったよかった」
漆黒の戦士が安堵するように胸を撫で下ろしていた。一体何が起きたかわからないけど、どうやら僕達はこの人に助けてもらったみたいだ。お礼を言おうと思ったら、漆黒の戦士に3人の女性が近寄ってきた。
…物凄い美女達だ。1人は凄い露出が激しくて目のやり場に困る…。その3人の美女達は漆黒の戦士と親しく話をしているので、どうやら仲間みたいだ。兵士達も立ち上がってこちらを見ている。状況がわからないみたいだけど、僕もわからないんだ。だから、僕はお礼と共に漆黒の戦士達に聞くことにした。
「た、助けていただいてありがとうございます。…それで、あなた達は一体…?」
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