上 下
1 / 1

始まりと本と化物と

しおりを挟む
本好きな私こと、大川瑠璃おおかわるり(中学三年生)は本屋に入り浸っていた。

「あっ!あのシリーズ新作出てる。でもこの新作も気になるしな…」

ただひたすら本と向き合い、ぶつぶつと何かをつぶやく様子を他の人の目にはどのように写っているのか心配しながらも、もんもんと、どちらの本を買うか悩んでいた。

悩むこと数十分。結局、悩みに悩んだ末、とあるシリーズの新刊を買うことにした。
どちらの本も買おうかと一瞬思ったが、1000円のお小遣いでやりくりしないといけないので、諦めるしかなかったけど…


鼻歌まじりにレジに並び、買った本を抱えて帰る姿を後ろから生温かい目で見られたような気がするが、気のせいであると思いたい。
気にしたところでどうしよもないので、悩んだもう一つの本に別れを告げ、本屋を後にした。


帰路につき、買った本に思いをはせていると、背後から女性の悲鳴が聞こえた。
普通ならここで、悲鳴をあげた人を心配するべきかもしれないが、私の頭には本のことしかなかったので、不機嫌になりながらも後ろを向いた。

「は?」

後ろを向くとそこには化物がいた。揶揄やゆとかではなく、ガチのがいた。多分、ナマハゲとかそっち系の奴だ。
おどろいた時、少女のような可愛い悲鳴が出なかったのは、読者の方に対し申し訳ないと思うが、ここは現代東京。
異世界もの、小説のような魔物が、出てくるはずがない。勝手に変なやつがナマハゲの衣?みたいなやつ来てるだけだろと決めつけた私が、気にせず帰ろうとした。

しかし、世の中そんなに甘くはなかった。

にわかには信じられないし、自分でも信じたくないが、シュッと風を切る音が隣から聞こえてくる。
通り過ぎた車の音とは明らかに違うそれに、一瞬慄く。
しかし、それを無視する勇気は私には無かった。

おそるおそる隣を見ると、そこにはナマハゲもどきがいた。さっき、変質者かと思ってスルーしたあいつが。


何となく、そんな気はしていた。まさか当たるとは思っていなかったが。
冷静に働く頭とは裏腹に、私の手は冷や汗で濡れていた。まさか、化物のような見た目をしたナマハゲもどきが、身体能力まで化物だとは思っていなかった。

ちっちゃな少年少女ならば、まだ私でも何とかなるだろう。
しかしこちとら、ただのふつーの中学生。
どう考えても、かなう相手じゃあない。


あれ?詰んでないか?

詰んだことを確信した私は、どうかしていたのだろう。気づけば、ナマハゲもどきに話しかけていた。

「あの~、こっちは危害を加える気はないので、どっかにいってもらっても良いですかね~?動いてもらえないとちょっとこっちも何とかしないといけなくなるんですよ~」

自分でも口を動かしながらどこの警官だっとツッコミたくなったが、命を狙われている以上、どうすることもできない。

ナマハゲもどきは私の話を聞いてのか、少し固まった。

しかーし、5秒後には、私に向かって爪を振り下ろしていた。

最期は本を読んでいる時に迎えたかった。

解せぬ。

なんて思っていたのはちょっと前。

ナマハゲもどきが、固まっていた。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
世間で高い評価を集め、未来を担っていく次世代のパーティーとして名高いAランクパーティーである【月光】に所属していたゲイルは、突如として理不尽な理由でパーティーを追放されてしまった。 これ以上何を言っても無駄だと察したゲイルはパーティーリーダーであるマクロスを見返そうと、死を覚悟してダンジョンに篭り続けることにした。 それから月日が経ち、数年後。 ゲイルは危険なダンジョン内で生と死の境界線を幾度となく彷徨うことで、この世の全てを掌握できるであろう力を手に入れることに成功した。 そしてゲイルは心に秘めた復讐心に従うがままに、数年前まで活動拠点として構えていた国へ帰還すると、そこで衝撃の事実を知ることになる。 なんとゲイルは既に死んだ扱いになっており、【月光】はガラッとメンバーを変えて世界最強のパーティーと呼ばれるまで上り詰めていたのだ。 そこでゲイルはあることを思いついた。 「あいつを後悔させてやろう」 ゲイルは冒険者として最低のランクから再び冒険を始め、マクロスへの復讐を目論むのだった。

妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。

ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」  そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。  長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。  アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。  しかしアリーチェが18歳の時。  アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。  それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。  父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。  そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。  そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。  ──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──  アリーチェは行動を起こした。  もうあなたたちに情はない。   ───── ◇これは『ざまぁ』の話です。 ◇テンプレ [妹贔屓母] ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!

気づいたら隠しルートのバッドエンドだった

かぜかおる
ファンタジー
前世でハマった乙女ゲームのヒロインに転生したので、 お気に入りのサポートキャラを攻略します! ザマァされないように気をつけて気をつけて、両思いっぽくなったし ライバル令嬢かつ悪役である異母姉を断罪しようとしたけれど・・・ 本編完結済順次投稿します。 1話ごとは短め あと、番外編も投稿予定なのでまだ連載中のままにします。 ざまあはあるけど好き嫌いある結末だと思います。 タグなどもしオススメあったら教えて欲しいです_|\○_オネガイシヤァァァァァス!! 感想もくれるとうれしいな・・・|ョ・ω・`)チロッ・・・ R15保険(ちょっと汚い言葉遣い有りです)

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

 女を肉便器にするのに飽きた男、若返って生意気な女達を落とす悦びを求める【R18】

m t
ファンタジー
どんなに良い女でも肉便器にするとオナホと変わらない。 その真実に気付いた俺は若返って、生意気な女達を食い散らす事にする

処理中です...