大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ

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166. 予選(1)

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 本戦予選は、前回同様、勝ち抜き戦で8会場で行われる。

 勿論、実力者のエドソン、カレン、アン姉ちゃん、カトリーヌ、コナン、イーグル辺境伯は、分かれるように配置した。

 そして、シスとか、エリザベスとか、リサリサとか、ゴンザレスとか、セバスチャンさんとか、強いのは分かってるけど、戦った所を見た事ない人達も、適当に配置。

 そして、アレキサンダー君が、満を持して、決勝戦が行われる予定のメイン会場の前にある壇上に上がる。

「それでは、予選開始じゃ!!」

 大会実行委員長のアレキサンダー君の、良く通る気合いが入った声と共に、予選がスタートする。
 今回、アレキサンダー君が出場しないのは、絶対に優勝出来ないと分かってるから。

 アレキサンダーくんは、絶対に負けると分かる戦いはしない主義らしい。
 サラス帝国とかの戦争とか、絶対に勝てる戦いには、しゃしゃり出てくるんだけどね。

 でもって、まず、最初に動きがあったのは、アン姉ちゃんが居る会場。
 人間凶器のアン姉ちゃんが、闘気を解放すると、弱い参加者が、次々に泡を吹いて失神。

 俺は、倒れた奴らを、大急ぎで会場外に運び出すのに大わらわ。

 それを見ていた隣の会場のカレンも、真似をして闘気を解放する。

 本当に、此奴らアホなのか?

 俺は、1人で頑張ってるというのに、2つ会場で、失神者が続出したら、大変だっちゅーの!

「ガッハッハッハッハッ! 流石は、我が孫やりおるわい!」

 またまた、アホなイーグル辺境伯まで、闘気を発しちゃうから、3会場で失神者が続出。

「なるほど!」

 でもって、何も考えてないエドソンまで真似するもんだから、俺はてんてこ舞いで、目が回るような忙しさ。
 なんか泡吹いて、泡が喉に詰まった生徒とかの治療とかも、全部1人でやってるというのに。

 見かねた、俺の騎士9人が棄権して、治療を手伝ってくれているし。

 本当に自己中は、止めて欲しい。

 まだ、エリザベスと、カトリーヌと、シスが可愛く見える。
 エリザベスとシスは、グーパンで、カトリーヌは、最早、棍棒とかしてる魔法使い用の杖で相手選手をタコ殴り。

 多分、この3人は、ストレス発散に、人間を殴りたいだけかもしれんけど。

 でもって、あれよあれよという内にモブ選手が、会場外に運ばれて、10分もしないうちに、有力選手だけが残った。

 というか、エドソンの会場と、アン姉ちゃんの会場と、イーグル辺境伯の会場は、この3人以外、誰も立っていないので勝ち抜き決定してしまってる。

 そして以外というか、カレンの会場に、カレンの他に、ただ1人だけ立ってる黒髪に金色の鋭い目をした少年が1人。

 そう、アイ・ホークの弟、カイ・ホークが立っていたのである。

「よく、私の闘気に当てられてたのに、立っていられたわね!」

 カレンが、上から目線で感心してる。

「僕も、野営訓練の為に、血のにじむような特訓しましたから」

 そう、カイ・ホークは、俺の屋敷の地下にある、野営訓練用の秘密特訓所で、頭のおかしな特訓をしてたのである。

「フン! 血のにじむような特訓? そしたら、私に、その特訓の成果を見せてみなさい!」

 カレンは、どこまでも上から目線。
 実は、2人は、子供の頃からの顔馴染み。
 まあ、ホーク男爵家が、イーグル辺境伯家の分家だからなんだけど。

 それで、まあまあ、剣術の才能があったカイに、カレンが稽古をつけてやった事が、何度かあったから。
 その時も、圧倒的に、カレンの方が実力が上だったのである。

 それで今回も、カイに稽古でもつけてやる軽い気持ちで、カレンは木刀を構える。

 カイも、カレンに向けて木刀を握る。

 そして、カレンは、余裕綽々で、カイの初撃を待つ構えだ。
 あくまで、カイに稽古を付けてやるという姿勢を崩さない。

 だが、

 ガキン!

 木刀同士がぶつかったと思えない金属音が、会場に響く。

「クッ! 何っ!」

 驚いたのは、カレンの方。
 カイが打ってくる直前、直感でヤバイと気付いたカレンは、自分の木刀に、ありったけな魔力を注ぎ込み、木刀を強化させたのだ。

 それなのに、カイの一撃を受けたカレンは、カイの一撃を支えきれずに、片膝を着いてしまう。

「その木刀、ただの木刀じゃないわね!」

 勘のいいカレンは、すぐにカイが持ってる木刀が、ただの木刀でない事に気付く。

「はい。コレはヨナン様に頂いた、特別製の木刀ですから!」

 カイは、嬉しそうに答える。

「なるほど、そういう事ね! アンタが急に強くなった訳じゃないのね」

「それは、どうでしょう」

 ガン! ガン! ガン! ガン!

 カイは、膝を付いてるカレンに、お構い無しに連撃を加える。
 カレンは、それを見切り、全ての剣戟を受け止める。

 そして、カイの連撃が一息つくと、すぐさま立ち上がり、カイから十分な距離をとる。

「流石、ヨナンが作った木刀ね!
 だけど、やっぱり、アンタは大した事ないわ!」

 カレンは、そう言うと、一気にギアを上げる。

 カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン!

「クッ!」

 今度は、カレンの速すぎる連撃に、カイは防戦一方。
 そう、カレンは素早さLv.1を持ってるのだ。
 コナン程ではないが、カレンも、また、スピードスターなのである。それに剣術Lv.2まで加わると、本当に美しく華麗。
 戦う姿は、まるでダンスしてるように見えるのだが、そこに身体強化Lv.3まで加わってるので、実際の剣撃はメチャクチャ重い。

 そして、気合いが入り出すと、勝手に火魔法Lv.2が発動して、剣に炎まで纏わり出すから、本当に厄介。

「やっぱり、アンタは、まだまだよ!
 もう一度、修行し直してらっしゃい!」

 バキッ!

 カレンの強烈な胴打ちが入り、カイ・ホークは、そのまま突っ伏してその場に沈む。

「勝者! 剣鬼カレン・イーグル!」

 カレンも順当に、決勝トーナメント進出を決めた。
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