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149. 個別面談サクラ・ラクーンの場合(2)
しおりを挟む「やあ。サクラさんだよね! ハツカと仲良くしてくれてるようで。
聞いたよ!ハツカにクッキーの作り方教えてくれたんだよね!
本当に、ハツカと友達になってくれてありがとう!」
なんの前触れもなく、突然、貧乏食堂で、国の大英雄ヨナン・グラスホッパーに喋り掛けられて、サクラ・ラグーンは、持ってたスプーンを、思わず落としてしまうくらい驚いてしまう。
「えっ! あの……私の方こそ、ハツカちゃんに、良くして貰ってます!」
サクラ・ラグーンは、思わず立ち上がり、直立不動で、ヨナン・グラスホッパーに返す。
「まあまあ、座ってよ!サクラさんが立ち上がっちゃうと、なんか、みんなの注目が集まっちゃうし」
ヨナン・グラスホッパーは、温和な顔をして優しく席に座るように進める。
「ハイ! それでは、座らさせてもらいます!」
サクラ・ラグーンは、注目されてるのに気付き、急いで席に座る。
だって、結構な人数の、ヨナン・グラスホッパーを狙う女子達に睨まれてるのに気付いたから。
そう。このカララム王国学園で、カララム国王アレキサンダー・カララムを除いて、ヨナン・グラスホッパー伯爵を越える優良物件など居ないのだから。
ヨナン・グラスホッパーは、この国有数の金持ちで、身分とかも全く気にせず、誰にでも優しく接する紳士で、しかもレッドドラゴンを単騎で倒してしまう程の国の大英雄。
誰もが、ヨナン・グラスホッパーの第2夫人、第3夫人、第4夫人を狙ってるのである。
「で、本題なんだけど、サクラさんは、今回の野営訓練でハツカと一緒の班になったんだよね?」
「ハイ! ハツカちゃんに、同じ班に誘ってもらいました!」
「それでなんだけど、野営訓練を優位に進める為に、ちょっと、サクラさんの能力が気になって、会いに来てしまったんだ。
ズバリ言うと、サクラさん。君のユニークスキルは、狸寝入りLv.1という特殊なユニークスキルを持ってるんだ!」
ヨナン・グラスホッパーは、真剣な顔をして、サクラ・ラグーンのユニークスキルを看破する。
「えっ? 狸寝入り……それって、なんの役に立つんですか……」
まさかの狸寝入りスキル。ユニークスキルが、レアな攻撃魔法とかだったら良いなと思ってたサクラは、ちょっとガッカリする。
「えっと……死んだフリが出来るスキルかな……」
「死んだふり……」
サクラは困惑する。
噂には、ヨナン・グラスホッパーは、人のユニークスキルを見抜く能力があるとは聞いていたが、それで、見抜かれた自分のユニークスキルが、死んだフリ?全く持って役に立たないスキルである。
しかし、ヨナン・グラスホッパーは、まるでサクラ・ラグーンの心を読んでるかのように、話を続ける。
「そう。Lv.1のままなら、ハッキリ言うと、クマに襲われた時ぐらいにしか使えない。
だけれども、Lv.2まで狸寝入りのレベルを上げると、なんと狸寝入りしてる間、幽体離脱出来るようになるんだ!
そして、Lv.3までレベルを上げると、8時間も連続して幽体離脱出来てしまう優れもの!」
ヨナン・グラスホッパーが自信満々に言い切る。
「そ……そうなんですか……」
いきなり、幽体離脱出来ると言われても、一体何がなんだか分からないので、そうなんですかとしか言えない。
「それじゃあ、幽体離脱の利点を説明しようか。まず、第1に、幽体なので人の目には見えない。第2に、幽体なので壁をすり抜けられる。第3は、幽体なので空も飛べちゃう!」
なんかよく分からないが、ヨナン・グラスホッパーの話を聞いてたら、思わず、鼻血が出てきてしまった。
「あの……大丈夫?」
紳士で優しいヨナン・グラスホッパーが、すかさず清潔なハンカチをサクラに手渡す。
「へへへへへ……だ……大丈夫です」
なんか知らないが、ニヘラ笑いが止まらない。
恥ずかしいので、止めたいのだが、幽体離脱をする自分を想像してしまうと、思わず口が緩んで笑いが止まらなくなってしまうのだ。
「で、サクラさん。狸寝入りスキルを、Lv.3まで上げて、幽体離脱を身に付けたいよね?」
「ハイ! 是非、身につけたいです!」
「男同士のチチクリあい、サクラさん好きだもんね!」
「ハイ!大好きです! じゃ……ないですから!」
思わず、興奮し過ぎて返事をしてしまったが、決して違う。
「ゴメンね。一応、ハツカの友達の事は、一通り調べちゃってるから。サクラさんの趣味とか、全て調査済なんだよね……
僕は、BLも有りだと思うし、人の趣味にケチ付ける男じゃないから、サクラさんが、自分の趣味に幽体離脱を使う事は、全然悪い事じゃないと思うんだ。だって、主神でである女神ナルナー様が、サクラさんに授けたスキルなのだから、好きに使うのは当然の権利だし、それが悪というなら、女神ナルナー様が悪だという事になっちゃうしね!」
ヨナン・グラスホッパーが、サクラの気持ちを肯定してくれ、幽体離脱を、趣味に使う事を後押ししてくれる。
「そうですよね。主神であるナルナー様が授けて下さったスキルですから、私が好きに使っちゃっていいんですよね!」
「うん。僕はそうだと思うよ。それでなんだけど、実は、狸寝入りスキルをLv.3まで上げるのには、相当な努力がいるんだよ。
一応、ハツカの班は、うちの屋敷に集まって特訓するという話だったから、うちの家のスペシャリストに頼んで、特別に、サクラさんが、狸寝入りスキルLv.3に至る為に、特別メニューを考えておいたから、後は、サクラさんの頑張り次第。
それと、コレ!カララム王国学園の男同士で付き合ってる人のリスト!」
「あ……ありがとうございます!」
サクラは、ヨナン・グラスホッパーの手から、急いで、BLリストを奪い取る。
「それじゃあ、頑張ってね!僕は、サクラさんの事を応援してるから!」
ヨナン・グラスホッパーは、そう言うと、爽やかにニコリと笑って、席を立ったのだった。
本当に、ヨナン・グラスホッパーは、何と良い人なのだろう。
ハツカちゃんも、凄く良い子だが、ヨナン・グラスホッパーは、それ以上。
多分、自分が腐女子でなければ、絶対に惚れてたと思う。
まあ、取り敢えず、メモを拡げて、空いてる欄に、ヨナン・グラスホッパーの名前と、アレキサンダー・カララムの名前を書き加えた。
男同士のチチクリ愛は、尊いんです!
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