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137. 勃起兄貴
しおりを挟むカララム王国学園に入学してから1年が過ぎて、今は春休み。
ヨナンは、初めて、元トップバリュー男爵領が、正式にグラスホッパー伯爵領に変わってから、足を踏み入れる事にしたのだ。
で、現在は、グラスホッパー伯爵領に向かうキャンピングキッチン荷馬車の中。
『ご主人様……ナナさんと会うの避けてますよね?
僕、てっきり、ナナさんもグラスホッパー伯爵領に連れてくと思ってたんですけど?』
窓の外を、ぼんやり眺めてると、鑑定スキルが、突拍子もなく聞いてくる。
多分、きっと気になってたのだろう。
「お前……俺が平気な顔して、ナナと会える訳ないだろ。
俺は、ナナが、トップバリュー男爵に犯されてる所を見せつけられたりしてたんだぞ!
そして、その時、助ける事も出来ずに、ただ見てるだけしか出来なかった俺が、どんな顔して、ナナに顔向け出来るって言うんだよ!」
そう、俺は怖いのだ。ナナを目の前にすると、あの時の事を思い出してしまうのだ。
そして、癪罪の気持ちで耐えられなくなってしまうのである。
『あの……ご主人様……そんなこと気にしてたんですか……そもそも、今回のナナさんは、トップバリュー男爵の性〇隷になってませんから、ご主人様が癪罪しなくてもいいと思うんですが……』
鑑定スキルが、最もな事を言ってくる。
「だとしても、俺は、ナナを見ると、トップバリュー男爵に犯されてる所を思い出してしまって、どうしても会う事が出来ないんだよ!本当に、自分が不甲斐なさ過ぎて、情けな過ぎて……そして……変態過ぎて……」
ヨナンは、少しナナの事を考えただけで、ナナがトップバリュー男爵に犯されてた場面を思い出してしまい、思わず勃起してしまう自分自身にも、心底幻滅してしまっていたりするのだ。
『これ、完全にトラウマになってしまってますね……』
鑑定スキルが、勝手に分析する。
俺だって、ナナに再び会うまで、こんな風に自分がなるとは考えてなかったのだ。
変に意識すれば、するほど、何故かレイプシーンが頭によぎってしまうのである。
「だから、無理なんだって! ナナと面と向かって会う事なんか!
俺は、変態兄貴なんかになりたくないんだよ!」
そう。ヨナンは変態兄貴になりたくないのだ。できれば、カッコ良いお兄ちゃんになりたいし。
『確かに、妹さんに会う度に勃起するお兄ちゃんとか、考えるだけでキモイですからね!』
鑑定スキルが、酷い事を言ってくる。
俺は、真剣に悩んでいるというのに。
「キモイ言うな! 俺は真剣に悩んでるんだぞ!」
鑑定スキルは、無神経過ぎる。
俺だって好きで勃起してしまう訳ではないのだ。
でも、何故か、ナナを見ると緊張し、顔が真っ赤になってしまうし、股間のテントまで張ってしまうし。
そもそも、股間がテント張ってる状態で、最愛の妹に会えるかよ!
『だから、ナナさんに、自分が本当のお兄ちゃんだと告白しなかったんですね!
エリザベスさんとかにも、絶対に言わないでと、口止めしてましたし!』
「言える訳ねーだろ!妹見て、勃起する兄ちゃんなんて!
俺は、ナナを見ても勃起しなくなって、初めて、俺が実の兄ちゃんだって、ナナに告白するつもりなんだよ!
それまでは、極力近づかないようにするの!」
『なるほど。だから必死に、ナナさんを1年生に入学させるよう画策したんですね!
ココノエさんの護衛目的という建前なら、同じ2年生に編入させるのが筋ですもん!
だけど、同じクラスになってしまうと、勃起してるの、ナナさんに見られちゃうから!』
「ああ! そうだよ! その通りだよ!俺は、いつまでも、尊敬されるお兄ちゃんでありたいんだよ!」
もう、俺は開き直る。
妹を見て勃起して、何が悪い!
別にナナに欲情してる訳ではないのだ。
ただ、ナナに会うと、ナナがトップバリュー男爵に犯されてる場面が、フラッシュバックして、思わず勃起してしまうのであって、その場面を思い出すたびに、トップバリュー男爵を殺してやりたいと思うし。
というか、ナナと再会したら、益々、トップバリューをぶち殺したくなってきてたりする。
『多分、トップバリュー男爵にリベンジザマーするまで、勃起は治らないんじゃないですか?』
「ああ。サラス帝国が、もしカララム帝国にちょっかい出してきたら、陛下に命令されなくても、トップバリュー男爵を見つけ出しボコボコにして、チ○コを切り落としてやる!」
『何もなくても、普通に、サラス帝国に乗りこんで、トップバリュー男爵を捕まえて、ボコボコにしちゃえばいいんじゃないですか?』
「何をするにも、大義名分が必要なんだよ!今回の時間軸では、別に、ナナは、トップバリュー男爵に性〇隷にされた訳じゃないんだからな!
逆に、俺とグラスホッパー商会が、一方的に、アスカとトップバリュー男爵に、嫌がらせしてるだけだし!」
『言われてみれば、確かにそうですね……まあ、一度、殺し屋を差し向けられた事はありましたが、それ以降は、こっちが一方的にボコボコにしてますからね……』
「そうなんだよ。それで困ってんだよ。なんか嫌がらせでもされて、やり返すなら世間の人も納得するかもしれんけど、俺達って、アスカを退学に追い込んで、しかもAV女優に仕立てあげたんだぞ。
しかも、トップバリュー領を奪った形になっちゃってるし……」
『う~ん……これは、ご主人様が、勃起を克服する未来は遠いですね……トップバリューのチ○コを切り落とさないと、ご主人様の勃起は治らない訳ですし……』
鑑定スキルは、真面目に考えてくれている。
というか、本当に、トップバリュー男爵のチ○コを切れば勃起が治るか謎だけど。
まあ、思い込む事も大事なのである。
「遠くてもいいんだよ! 変態と思われるくらいなら!
ナナを、目の届く所に置いてるから、何も問題無いし!
毎日、監視カメラで見張ってるし!」
『それって、ただのストーカーじゃないですか?』
鑑定スキルが、とても酷い事を言ってきた。
自分も、学園中に設置してある監視カメラの映像を見てる癖に。スーザンのオ○ニーシーンも毎日監視してるのに。しかも、データーベースに保存してるし。
「お前も覗き見してるだろうがよ! それから、ストーカーじゃなくて、見守ってるって言え! ただ見守ってる訳で、襲うわけでもなんでもないんだからな!」
俺は、しっかりと訂正する。
妹を、ただ見守ってるだけなのに、ストーカーとか言われたら、心外なのである。
『確かに、ご主人様のナナさんの溺愛ぶりは凄いですもんね……いつでもナナさんの服を1000着用意しろ!って、あれなんですか?1年365日って、分かってます?
しかも、春からカララム王国学園に入学するから、そもそも普段着なんか、滅多に着なくなるのに』
「それでもいいんだよ! ナナは今まで苦労して来たんだから、これからは、思う存分楽させて、贅沢させてやるんだからな!」
『あの……ココノエさんがやってた孤児院は、結構、設備が整ってたみたいですよ?
そりゃあ、ご主人様の御屋敷みたいに居たせり尽くせりじゃありませんけど、それなりな生活も出来て、楽しく生きてたみたいですし?』
「うっせーやい! 俺が知ってるナナは、トップバリュー男爵にいつも犯されてたナナなんだ! 俺の思い出を勝手に汚すな!」
『ご主人様の思い出の方が、物凄く汚れてるように思うんですが……』
鑑定スキルが、最もな事を言った。
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