上 下
126 / 177

126. 剣鬼VS剣姫

しおりを挟む
 
「それでは、剣鬼カレン・イーグルVS剣姫アン・グラスホッパーとの決勝戦を開始する!」

 グロリア先生の号令により、カララム王国学園剣術祭の決勝戦が始まった。

 2人とも、闘気を漲らせ、一歩も動かずに睨み合っている。

 いつも一緒に行動してる2人なので、お互い手の内を知り尽くしてるのだ。

 2人の剣先は、ピクリとも動かない。

「2人とも、中々やるな」

 観客席で見守る、大戦の英雄エドソンが感心してる。
 2人の実力は、どうやら、エドソンが認めるレベルまで上がってるようだ。

「アン姉ちゃん……暫く見ない間に、物凄く強くなったよね。ここに来る前は、もう、アン姉ちゃんを越えたかなと思ってたけど、まだまだだったみたい」

 コナンも、凄くなったアン姉ちゃんに驚いている。
 というか、コナンは、既にアン姉ちゃんを抜いた気になってたのか。

 まあ、俺も、夏休みに、エドソンと剣の練習をしてたコナンを見て、そろそろアン姉ちゃんを越えるかなと思ってたけど、アン姉ちゃんは、カララムダンジョン完全攻略を経て、有り得ないほどパワーアップしていたのである。

 そう。普通の生活をしてるだけで、耐性がない子供や老人を失神させてしまう程に。
 何処ぞの、世紀末覇王や、覇王色が使える、少年漫画の主人公なみの強さを、現実に手に入れてしまってたのである。

『なんか、凄いですね! 空気がピリピリしてますね!』

 俺は、カレン達の真似をして、上空から試合を眺めている。
 聖剣ムラサメさえ持ってたら、空を飛ぶことなど簡単なのだ。
 だって、俺の貧乏揺すり、みじん切りスキルLv.3を持つコナンより速いのだから。

「ああ。防護強化ガラスの内側にいなければ、感じられない緊張感だよな!」

『アッ! カレンさんが動きましたよ!』

「まあまあの速さだな」

 ヨナン的には、スローモーションの世界なのだが、
 一般観客にとっては、神速のレベル。

 カレンとアン姉ちゃんは、5回ほど斬りあったのだが、早過ぎて誰も気付いてない。
 何故か分からないが、2人とも斬り合いが終わると、元の位置に戻って、ピクリと動かないから。

 ただ1人盛り上がってるのは、その動きを完璧に目で追えてたコナンただ1人。
 勿論、エドソンやエリザベスも見えてると思うが、大人なので、コナンみたいにはしゃいでいない。

「すげえーぜ!アン姉ちゃんと、カレン姉ちゃん!」

 とか言う、コナンは、カレンやアン姉ちゃんより、速く動く事が出来るんだけど。
 コナンは、多分、今現在、聖剣ムラサメを持った俺の次に、速い人類だと断言出来るし。

 俺の弟は、凄いんです!

『見た感じ、スピードはカレンさん。パワーはアンさんの方が上に見えますね!』

 鑑定スキルが、カレンとアン姉ちゃんの動きを見て解説する。

「だな。カレンは、素早さLv.1を持ってるからな!素早さLv.1を持ってる分速いんじゃないのか?
 そして、アン姉ちゃんは、攻撃力Lv.2を持ってるから、半端ない力持ちという事か……」

『ですね。センスとスピードは、完全にカレンさんが上回ってますが、それを補う余りあるパワーで、アンさんは、カレンさんと同等の実力まで押し上げてます!』

 確かに、アン姉ちゃんは、カレン程の剣技は無い。アン姉ちゃんが持ってるのは、剣術スキルLv.1なのに対して、カレンは、剣術スキルLv.2を要してるのだ。

 カレンの剣は華麗だが、アン姉ちゃんの剣は愚直。
 カレンが天才なら、アン姉ちゃんは、努力の人。
 単純で愚鈍な所が、きっとエドソンに似たのだろう。

 エドソンって、とても要領悪いし、そもそも貴族社会に対応出来てないし。
 エリザベスが表舞台に出て対応してなかったら、今回の人生も、前回の人生同様、きっと、落ちぶれてしまってたと思うし。

 そんな、誰よりもエドソンに似たアン姉ちゃんの剣は、誰よりも重いのだ。
 元々のスキルの力だけじゃない。愚鈍に修行を続けて、何倍にも、威力を増している。

『アッ! 今度は、アンさんから攻撃を仕掛けましたよ!』

 アン姉ちゃんによる、カレンへの連撃。
 その重過ぎる攻撃に、カレンが受止めきれなくて、途中から、身をかわして避け始める。

 ズドン! ズドン!

 床は、アダマンタイトミスリル合金で作った、頑丈な床だというのに、ボコボコに陥没してしまっている。

『ご主人様! アンさんの木刀、どうなってるんですか! 何で、木刀で、アダマンタイトミスリル合金の床を破壊出来るんですか!』

「まあ、アン姉ちゃんだからな……」

 俺は、アン姉ちゃんだからとしか言えない。
 だって、アン姉ちゃんは、普通に剣の握り方を教えるだけで、弟の指の骨を折ってしまう女なのだ。

 元々が、規格外。でもって、誰よりも不器用なのでタチが悪い。

 同じ、身体強化Lv.3を持ってる、ビクトリア婆ちゃんや、エリザベスや、カレンや、カトリーヌは、みんなどちらかと言うと器用なのだ。
 だというのに、アン姉ちゃんは、エドソンに似て不器用なのである。

 まあ、エドソンは不器用と言っても、生き方が不器用なだけで、こと、剣術に関しては器用な方なんだけど、何故か知らないが、アン姉ちゃんだけは、生き方も、剣術の腕も全て不器用だったりする。

 まあ、それを真面目過ぎる性格で、全て補ってしまうのが凄い所なんだけど。

『どっちが勝つんでしょう?』

 鑑定スキルが、聞いてくる。

「分からん!」

 スピードと剣技なら、カレン。パワーならアン姉ちゃん。しかし、どちらが勝つかと言われても、全く想像がつかない。

『どっちに勝って欲しいですか?』

 なんか、鑑定スキルが、いつにも増してグイグイ聞いてくる。

「そんなの、どっちもだよ!カレンもアン姉ちゃんも、俺はどっちも好きなの!」

『ご主人様、欲張りですね』

 鑑定スキルの奴、俺から何を聞き出したいんだ?だがしかし、鑑定スキルは勘違いしてる。

「アホか、カレンは兎も角、アン姉ちゃんは、俺の姉貴だ!」

 そう。アン姉ちゃんは、俺の姉ちゃんで、アン姉ちゃんも、俺の事を弟として接しているのである。

『だけれども、シスちゃんとは、既に婚約してるでしょ? アンさんとも婚約しちゃえばいいじゃないですか?
 きっと、エリザベスさんもOKしてくれると思いますよ!
 イーグル辺境伯の血筋の人達は、旦那が強くて甲斐性さえあれば、重婚も全然、許してくれますから!』

「アン姉ちゃんの気持ちもあるだろ! アン姉ちゃんは、俺の事を弟としか、思ってねーよ!」

『だけど、アンさんの事も、好きなんですよね?』

「しょうがねーだろ! そもそも好みの顔なんだから!」

『大変ですよね。ご主人様も。好みの顔の人がたくさん居て、それにしても、何でイーグル辺境伯の血筋って、女の人に色濃くでるんでしょうか?』

「まあ、やっぱり、男受けする顔になる血筋なんじゃないのか?
 先祖代々、強くて甲斐性がある男の血を引き入れて来たんだから。
 男受けする女じゃなかったら、そんなに都合良く、強くて甲斐性がある男と結婚出来ないだろ?」

『成程……だから、学園でも、カレンさんとアンさんって、あんなに人気があるんですね!』

 なんか知らんが、鑑定スキルは、物凄く納得したようだった。
しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ
ファンタジー
幕末最強の人斬りが、異世界転移。 令和日本人なら、誰しも知ってる異世界お約束を何も知らなくて、毎度、悪戦苦闘。 しかし、並々ならぬ人斬りスキルで、逆境を力技で捩じ伏せちゃう物語。 『骨から始まる異世界転生』の続き。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...