大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ

文字の大きさ
上 下
119 / 177

119. カレン登場

しおりを挟む
 
「ヨナン待たせたわね! 私達も、カララムダンジョンを完全攻略して来たわよ!」

 カレンが、ヨナンに、ドヤ顔で言い放つ。

「おっ……おお……」

 取り敢えず、おお。としか言えない。
 だって、俺的に、カララムダンジョンの70階層より上の階層では、魔物1匹とも戦ってないのだ。
 心情的には、カララムダンジョンを完全攻略した感触が、全くないんだよね……

「これで私も、ヨナンの横に並び立ったわね!」

 カレンは、鼻高々。相当、カララムダンジョンを完全攻略出来たのが嬉しかったのだろう。
 まあ、それでも聖剣ムラサメを持つ俺の敵じゃないんだけど。

「スゲー!どうやってアン姉ちゃん達、空中に浮いてるんだ!」

 ここで、コナンが、今更ながら、カレンや、アン姉ちゃんや、カトリーヌが空中に浮いてる事について指摘する。

 まあ、聖剣ムラサメを持って、スローモーションの中で生きてる俺には、普通に分かってるんだけど。
 どうやら、まだまだ未熟のコナンには分からないようだ。

「フフフフフ。凄いでしょ!」

 なんか、コナンの羨望の眼差しで見られ、ますますカレンは調子に乗ってしまったようだ。

 種明かしをしたら、何て事ないんだけど。
 むしろ、俺的には、格好悪いと思うんだけど。

 そう。カレン達は、空中で高速貧乏揺すりをしてるのだ。

 空気を超高速で、思いっきり蹴ってるだけ。
 鳥とか、羽を広げて羽ばたいて飛ぶでしょ。
 それを、面積の少ない足の裏だけで、やってのけているのだ。

 これも、身体強化Lv.3による、有り得ない程の力強い蹴りと、その有り得ない猛スピードの貧乏揺すりに耐えれる、強靭な体の強さにより、為せる技。

 まあ、イーグル辺境伯の血筋の身体強化Lv.3を持ってる、カレンと、アン姉ちゃんと、カトリーヌにしか出来ない、ただの脳筋の力技なんだけどね。

 コナンの目には、あまりに高速過ぎて、普通に空中に立ってるように見えるかもしれないが、俺には、必死に空中で足踏みしてるように見えている。

 多分、今現在、相当必死に足踏みしてるんだろう。1歩、1歩、強靭な蹴りで空中を移動するより、その場に留まる方が、相当大変と思われる。普通に海でクロールで泳ぐより、立ち泳ぎの方が沈みやすいように。

 だって、徐々に高度が落ちてきてるもん。

 なんか、ドヤ顔でいるが、顔に疲れが見えて来てるし。

「スゲーぜ!カレン姉ちゃん!」

 コナンが、物凄く褒めるものだから、カレンは調子に乗って、長めに空に浮いてるのだろう。
 爺ちゃんのイーグル辺境伯と同じで、カレンは、褒められるのが大好きなのだ。

 だって、イーグル辺境伯のお城に、強そうな魔物の剥製が、たくさん飾られているのは、多分、訪れた客に、「凄いですね! これ、イーグル辺境伯様が、全て狩ったんですか?」と、褒めて欲しいから。

 爺ちゃん子のカレンは、それを真似して、やたらと自分が倒した魔物を、魔法の鞄に入れずに、見せびらかすように、いつも引きずって移動する。
 今回も、わざわざカララムダンジョンの上層で狩った魔物を、皆に褒めて欲しくて剣術祭の会場でばらまいたのだ。

「ねえねえ! カレン姉ちゃん、どうやって飛んでるの!」

 そんな、見栄っ張りのカレンに、コナンが、目をキラキラさせて質問する。

 多分、カレン的には、もう限界だというのに、コナンも罪な子供である。

『コナン君。アレは、ただ、空中で貧乏揺すりしてるだけの力技ですよ!』

 ここで見兼ねた鑑定スキルが、コナンに、種明かしをしてしまう。
 だって、カレン、尋常じゃない汗をかいてるし。

「ええ~貧乏揺すりするだけで、空って飛べるの!」

 コナンは、相当、驚いている。
 まあ、身体強化Lv.3を持ってる人だけが出来る力技なんだけど。

「ちょっと、やってみようかな?」

 そんな軽い感じで、コナンは、その場で超高速貧乏揺すりをする。
 すると、どうだろう。ホバリングを越えて、徐々に浮き始めた。

「やってみたら、簡単に出来た!」

 これには、カレンと、アン姉ちゃんと、カトリーヌも驚愕してる。
 だって、カレン達は、その場で留まるホバリングする事がやっとなのだ。

 流石に貧乏揺すりするだけでは、空中に浮き上がらない。

 カレン達が空中に居るのも、空気を1歩1歩強く蹴って、そこまで移動したのだ。

 それなのに、コナンときたら、貧乏揺すりだけで空中に浮いてしまった。

『どうやら、みじん切りスキルLv.3は、身体強化Lv.3の発展系スキルで間違い無いですね! 身体強化Lv.3のスピード特化型とでも言いましょうか。
 平民で、みじん切りスキルLv.1を持ってる人は、結構居ますが、みじん切りスキルLv.3は、この世に、コナン君ただ1人しか居ません!
 これは、みじん切りスキルLv.3のスピードに、誰も体が耐えれないから。身体強化Lv.3を持ってる事前提で、生えるスキルで間違いないですね!』

 鑑定スキルが興奮気味に、鑑定スキルっぽく解析する。
 というか、鑑定スキルの癖に、今まで分からなかったのか?

「あの? ご主人様、いつも言ってるように、僕のデータベースに入ってる情報しか、僕にも分かんないんです!
 今迄、コナン君以外に、みじん切りスキルLv.3を持ってた人が居なかった訳ですから、僕のデータベースに乗ってる訳ないでしょ!」

 鑑定スキルは、勝手に俺の頭の中を読んで怒ってくる。
 俺、言葉に出してないんだけど……。

「ヨナン兄ちゃん! 見て見て!」

 でもって、コナンは、猛スピードで空中を蹴って自由に走り回ってる。完全に、ことスピードに関しては、カレンより上を行ってしまっている。

 兎に角、俺の可愛い弟のコナンが、凄いという事だけは分かった。

 そして、逆に、カレンが悲しい顔をして、剣術祭の会場の1つに下りたったのは、見なかった事にした。
しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

処理中です...