上 下
100 / 177

100. 残念女神様

しおりを挟む
 
『女神ナルナー様のやしろが、やっと完成しましたね。ナルナー様は、とても社を欲しがってましたし、これはきっと、女神ナルナー様は褒めてくれますよ! 最近、この世界で、女神ナルナー様を祀る人達が少なくなってきてると嘆いてましたから!』

 やっとこさ完成した、世界樹を守る城塞の中に作った、ナルナー神殿の前で、なんか、鑑定スキルが語り出す。

「社を欲しがってた? そんな話、言ってたか?」

 全く聞き覚えがない、女神ナルナーとの会話内容に、ヨナンは首を傾げる。

『アッ! この部分の記憶は、僕が勝手に取捨選択して省いてました!
 ご主人様の地球の記憶は膨大過ぎて、やはり全ての記憶を脳ミソにダウンロードしちゃうと、ご主人様の脳ミソが焼き切れる恐れがありましたので!』

 鑑定スキルは、平然と当たり前のように言ってのける。

「女神ナルナーとの約束って、とても重要な事だろうがよ!」

『何、言ってるんですか! 僕はいつでもご主人様ファーストなんです!
 女神ナルナー様なんか、二の次ですよ!』

 鑑定スキルが、とても罰当たりの事を言っている。
 まあ、鑑定スキルはスキルなので、神とか関係無いかもしれないけど。

 俺的に、鑑定スキルは、人口知能のようなAI的なものに思えるし。よく、自分のデータベースに入ってないとか、ダウンロードするとか言うしね。

 とか、なんとなく作った女神ナルナーの為の祭壇のような場所で、鑑定スキルと話してると、突然、天空から清らかな風と光が祭壇に差し込み、女神ナルナー様が、化現なされたのであった。

「遅い! 遅過ぎる! あれほど私を祀る祭壇を作ってと、念を押してたのに、一体、私の祭壇を作るのに何年掛かってるのよ!」

 突然、エリスと同じ顔をした残念女神ナルナーが、祭壇の上に登場した。

「ていうか、お前、何で地上に降り立ってるんだよ!
 普通、女神様は、地上になんか降り立たないもんだろうが!」

 ヨナンは、売り言葉に買い言葉で、女神ナルナーに言い返す。

「それは、貴方が物凄すぎる神殿を作っちゃったせいじゃない!
 この有り得ない程、物凄すぎる神殿のせいで、なんか知らないけど、弱ってた私の偉大な力が復活というか、全盛期以上の力を得てしまって、この世に具現化できちゃったのよ!」

「俺のお陰かよ!」

「そうよ! 貴方のお陰よ! ありがとね!」

 残念女神ナルナーは、言葉も軽い。というか神の癖に、人に感謝の気持ちを簡単に述べていいのだろうか?全く、威厳を感じないし。

「で?女神ナルナーは、これからどうするんだ?」

「それは、折角、この世界に具現化出来たんだから、ここでしか食べれない美味しいもの食べたいわよ!
 取り敢えず、公爵芋の焼き芋食べさせて!」

「なんで、公爵芋知ってるんだ?」

「それは、貴方をずっと覗き見してたに決まってるでしょ!」

 まさかの、覗き見。女神の癖にゲスい。

「覗いてたのに、助けなかったのかよ!
 俺が、死に戻り前、酷い目にあってたの見てたんだろ!」

 ヨナンは、ゲスい女神に文句を言う。

「それは、女神の権限じゃどうする事も出来なかったのよ!」

「今みたいに地上に降りて、助けてくれれば良かっただろ!」

「それは、そんな力が無かったからと言ってんでしょ!貴方が早く私を祀る社を作ってたら、貴方の死に戻り前に、この世に化現出来たかもしれないけどね!」

「じゃあ、鑑定スキルのせいか?」

「そうね! 鑑定スキルのせいね! 私の言葉をしっかりと伝えなかったんだから!」

 残念女神は、全ての責任を鑑定スキルになすり付ける。

『僕のせいじゃないですよ! そもそも僕が鑑定スキルLv.3に進化して、ご主人様の前世の記憶がゼータベースに追加されたのって、ご主人様が死に戻る僅か1週間前ですよ!
 その時には、ご主人様ボロボロで、アスカに囚われてたじゃないですか!
 そんな時に、女神ナルナー様の社とか、そもそも作れない状況だったんですからね!』

 鑑定スキルは反論する。確かにあの時、女神ナルナーの社を作れと言われても、とてもじゃないけど作れる状況じゃなかった。
 出来る事と言えば、やはり自死する事だけ。

「じゃあ、誰のせいだよ!」

『それは、回りくどいスキルを、女神ナルナー様にねだったご主人様のせいじゃないですか?
 ご主人様の計画って、死に戻り前提で、絶対に失敗しない俺TUEEE目指してたんでしょ?』

「俺のせいかよ!」

「そうそう! 失敗してもいいように、死に戻りスキル欲しがったんだから、むしろ失敗して計画通りだったじゃない!流石は私のお気に入り!計画通りグッジョブね!」

 残念女神ナルナーに褒められると、なんかムカつく。というか、成功など全くしてないし。

『まあ、絶対に失敗する事を読めてたご主人様は、やはり優秀ですよ!
 考え方によると、自分をよく分かってたという事になりますし』

 なんやかんや俺に甘々な鑑定スキルが、フォローしてくれる。というか、女神ナルナーの姿が透明がかってるように感じる。

「おい、お前、なんか薄くなってないか?」

「だから、さっきからお腹がペコペコなのよ! 早く公爵芋の焼き芋を、魔法の鞄の中から取り出しなさい!
 私、貴方の鞄の中に、いつでも公爵芋の焼き芋がストックされてるって、知ってるんだからね!」

「だから、薄いって、体が痩せてとかじゃなくて、透明がかってるんだけど……」

「えっ! 何ですって! これは信仰が足りてないのよ! 早く私に祈りを捧げて! そして公爵芋の焼き芋を私にお供えするのよ!」

「信仰心が足りないと化現出来ないのか?」

 ヨナンは、冷静に残念女神に質問する。

「そもそも、普通、化現なんか出来ないから!この有り得ない神殿で、たまたま化現出来ただけだから!
 兎に角、お供え物と、女神ナルナー教の信者を増やすのよ!
 そしたら、また、この世界に化現出来る筈だから……早く、公爵芋の石焼き芋を……!」

 なんか、「公爵芋の石焼き芋を!」と、最後に叫んで、女神ナルナーは消えてしまった。
 どんだけ公爵芋の石焼き芋を食べたかったのだろう。
 取り敢えずヨナンは、少し悪いと思ったので、女神ナルナーの祭壇に、公爵芋の石焼き芋をお供えしたのは、言うまでもない話だった。

 ーーー

 なんとか100話達成! 
 そんな作者を称えて、次世代ファンタジーカップ投票してね! 作者の凄い励みになります。
しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

処理中です...