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94. 建築ラッシュ

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 実家に帰って来てもやる事がない。
 ただ、グラスホッパー商会の慰安施設である温泉スパでノンビリするだけ。

『ご主人様、ちょっと、だらけ過ぎじゃないですか?』

 鑑定スキルが、奥さんでもないのに小言を言ってくる。

「別にいいだろ、もう、俺が働かなくでも皆が働いてくれるんだし!
 俺は、子供の頃、必死に働いて今の地位を手に入れたんだよ!」

 まあ、子供と言っても、つい最近なんだけど。

『ですけど、働かざる者食うべからずですよ!僕はダラダラしてるご主人様より、格好良く働いてるご主人様の方が好きなんです!』

「だけど、本当にやる事ねーだろうがよ!」

 そうなのだ。本当にやる事がないのだ。
 ヨナンが居なくても、商品開発部が優秀なので、勝手に新商品はどんどん出来てくし、経営もエリザベスが全てやってくれてるし。

 とかやってると、

「お兄ちゃん! 手伝って!」

 いつの間にか少し大人び、可愛くなったシスが、ヨナンを訪ねて温泉スパにやって来た。

『ご主人様! 仕事の依頼が来ましたよ!』

「そのようだな。で、俺は何をすればいい?」

 ヨナンは、すぐさまグーダラ気分から切り替えて、シスに尋ねる。
 そう。ヨナンは、いつでも格好良いお兄ちゃんでありたいのだ。

「お兄ちゃんには、元トップバリュー商会跡地に、グラスホッパー商会を建てて欲しいの」

 可愛いシスが、俺を頼ってくれて嬉しい。

『ご主人様、どうやら土地の買収が終わったようですよ!』

 鑑定スキルも、暇を持て余してた俺に仕事の依頼が来て嬉しそうだ。
 まあ、想像してた通りの仕事なんだけどね。

「ああ! やってやるぜ! 俺の凄さをみせてやる! 俺はやればできる子なんだよ!」

『そんな事は知ってますよ! ご主人様の場合は手を抜いてやって下さい!
 ご主人様が本気を出しちゃうと、とんでもないものが出来上がっちゃいますから!』

 鑑定スキルが、慌てながらヨナンに釘を刺す。

「今回は、まあまあ本気を出していいよ! 多分、ここだけの話、元トップバリュー領は、お兄ちゃんの領地になる予定らしいから」

 シスが、トンデモ情報を披露する。

「そうなのか?」

「お母さんが、王室から打診を受けたらしいの。将来的には、お兄ちゃんの領地になる事は確実らしいよ!」

 シスはニッコリと笑う。
 まあ、俺の嫁になる気満々だから、俺が領地を貰うのが嬉しいのだろう。

『ご主人様! やりましたね! アスカにやられた事を、やり返せましたよ!
 アスカも、グラスホッパー領を奪って、トップバリュー男爵家領に併合しましたから、それと同じ事をやり返せちゃいましたよ!』

「なるほど、目には目を歯には歯をだな。じゃあ、前は大森林にトップバリュー領の領都を建てられちゃったから、今度は、元トップバリュー領に、グラスホッパー準男爵家の領都を建てれば、完璧な意趣返しが出来ちゃうな!」

 なんか、ヨナンは燃えてくる。
 前に、大森林にトップバリュー領都を建てた時は、アスカに命令されて、滅茶苦茶豪華な領都を建てたのだ。
 絶対に、それを超える領都を建ててみせる。
 それこそが、大どんでん返しのリベンジザマーなのだ!

「じゃあ、ちょっと」

 ヨナンは、未開の大森林まで走り、ひとっ掘りする。
 昔建てた元トップバリュー領都より豪華にするのだ。今持ってるだけの素材だけじゃ全然足りない。

 そして、素材を掘り終わると、すぐに元トップバリュー領に向かった。

『ご主人様、久しぶりですね』

「ああ。死に戻り以来だな」

 ヨナンは、死に戻りしてから、元トップバリュー領を避けてきた。
 ここに来ると、嫌な思い出が蘇るし、死に戻って間もなく頃は、元トップバリュー領やアスカに近付くのは危険だと思ってたからだ。

「じゃあ、早速やるか!」

『ええ! トップバリュー商会をぶっ壊しましょう!』

 ヨナンは、エドソンにプレゼントとされた大事な大工道具を取り出し、猛スピードでトップバリュー商会をぶっ壊す。

「ウッヒョー、気持ちいいぜ!」

『ご主人様! 今迄で、一番良い顔してますよ!』

「人が大事にしてる物を、ぶっ壊すのって、快感だよな! 道義には反してるかもしれんけど!」

『トップバリュー商会は、人を踏み台にして成り上がった悪徳商会ですから、ぶっ壊しちゃった方が、世のため人のためですよ!
 実際、死に戻り前に、ご主人様は、トップバリュー商会に全てを奪われてるんですから!
 これは、ご主人様にだけに与えられた正当な権利です!
 存分に、ヒャッハーして、ぶっ壊して下さい!』

 鑑定スキルが、珍しく煽りに煽る。
 相当、鑑定スキルも、トップバリュー男爵とアスカが、嫌いなのであろう。

「キャッキャッキャッキャッキャッ楽しいぜ!!」

 この日、元トップバリュー領に、不気味な男の高笑いと共に、トップバリュー商会本店が無惨にも破壊されたのだった。

 その様子を見てた、なんらかの形で、トップバリュー商会に関係してた者達は、恐れおののき、恐怖で失禁してしまった者まで居たのは、言うまでもない話だったのである。

 ーーー

 トップバリュー商会破壊後、引き続き、グラスホッパー商会本店になる予定の建物の建設に入る。

 因みに、新本店の店長を任されるのはシスであるらしい。
 なので、シスの意見も大量に入れて、グラスホッパー商会新本店の建築を進める。

「お兄ちゃん。やっぱり本店だから、本店にふさわしい殿様バッタの銅像が欲しいの!」

「三越のライオンみたいのか?」

「三越が何だか分からないけど、多分、お兄ちゃんの想像通りだと思う」

 そう。俺は喋りながら、既に殿様バッタの銅像を二体製作していたのである。

「でも、やっぱり金で作った方が良かったかな?」

「こんな感じか?」

 ヨナンは、また言われた傍から、黄金バッタを作っている。

「そうそう! そんな感じだよ!」

 こんな感じで、シスの意見を聞きつつ、1週間も掛けて、グラスホッパー新本店予定店舗を完成させたのだった。

 勿論、ロードグラスホッパーホテルと温泉スパ施設も忘れてない。
 それからついでに、元トップバリュー男爵領の宿屋や飲み屋なども、無償で建て替えてやり、大変商売人から喜ばれた。

 それでも飽き足らず、家を新たに建て替えたい人も、募集してみたら、殆どの家の住民が建て替えたいと申し出たので、全てアップグレードして建て替えてやった。
 ついでに、道の整備やら上下水道の整備も一緒にやってね!

 まあ、本当は、新たな上下水道設備を作りたかったので、工事の時に、地上の建物が邪魔だったというのが本当の話だけど。

 そんなこんなで、俺に対する、元トップバリュー男爵領の住民の人気も鰻登り。

 元トップバリュー商会をぶっ壊した時点で、全く歓迎されてなかったのに、今では手を合わせて拝まれる始末。

 気分は悪くない。
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