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64. カララム冒険者ギルド
しおりを挟む「ここで一番強い奴、私と勝負しなさい!」
作戦通り、エリザベスは、カララム冒険者ギルドの扉を開けると、よく通るデッカい声で言い放つ。
「またかよ」
なんか、よくある事なのか、みんな動じない。
「何! その態度は! この私が、『熊の鉄槌』団長と知っててその態度をとってるんじゃないわよね!」
なんか、想像と違う展開で頭に来たのか、自分でいきなり正体を明かしてしまう。
多分、エリザベスの昔の知り合いが居ても、若返った姿に誰も気付かない筈なので、作戦では、もうちょっと引っ張ってから正体を明かす予定だったのだ。
「ん?『熊の鉄槌』?最近、カレンがやたらとキャンキャン言ってる?」
「あの大戦の英雄エドソン・グラスホッパーも所属してたという?」
「というか、あの女、カレンとアンちゃんととても瓜二つだぞ!」
「というか、『熊の鉄槌』って、20年前にあった冒険者パーティーだろ?
その団長があんなに若い訳ないだろ?
どうせ、また、カレンやアンちゃんの親戚とか、姉ちゃんとかだろ!」
なんか、冒険者ギルドに居る者達が、勝手に推測し始める。
「ていうか、本当に、アレって、ゴリラパンチのエリザベスじゃねーか?
カレンや、アンちゃんの姉ちゃんかもしれんが、あの顔は、エリザベスに似すぎだろ」
「そうよね……偉そうな所とか確かに似てる」
なんか、当時のエリザベスを知ってる者達が騒ぎだす。
「ん? 氷の微笑エリス?」
「あの嬢ちゃん、絶対に誰ともつるまないエリスを、従えてるぞ!」
「というか、『熊の鉄槌』が解散してから、誰ともパーティーを組まなった氷の微笑のエリスが、他人と一緒に行動するとは、最早、事件だぞ!」
なんか、エリザベスとヨナンは、エリスと一緒に行動してる事に驚かれる。
というか、どんだけエリスは人を避けて生活してるんだ?
「じゃあ、やっぱり、アレは本物のエリザベスじゃねーか?
初めて、エリザベスがこのカララム冒険者ギルドにやって来た時も、エリスを従えてやって来たし……」
当時の様子を知る者達が、ブルブル震えだす。
その当時、エリザベスは何をやらかしたのだろう。
「やっと分かったようね! だから私は『熊の鉄槌』の団長エリザベスと言ってんでしょ!
早く、このギルドで、一番強い奴を連れてらっしゃい!」
エリザベスが、カレンばりの睨みで、冒険者達に啖呵を切る。
すると、
「オイオイオイ、嘘だろ……何でエリザベスが若くなっていやがるんだ?
最近、やたらと俺に勝負を挑んで来る嬢ちゃんが増えたと思ったら、今度は、本家本元が来やがったか!」
「ギルド長!」
「ついに、マッコイギルド長が出て来たぞ!」
なんか、よく分からんが、カララム冒険者ギルドが盛り上がる。
「何言ってるのかしら?挑むって?アンタは、初めてカララム冒険者ギルドに訪れた14歳だった私に負けた、自称元カララム冒険者若手No.1だったでしょ?
本当に、私に挑むなんておこがましいわ!
また、あの時みたいに、泣きべそかかしてやるわよ!」
エリスは、カララム冒険者ギルド長マッコイを挑発する。
「ふん。何言ってやがんだ? 俺はあの時の俺じゃないぜ! 実力で、カララム冒険者ギルド長にまで登り詰め、最近でも、お前と同じように、ギルド登録そうそう、イキナリ喧嘩を売ってきたカレンと、それから3日前にも、アンを返り討ちにしてやったんだぜ!」
なんかよく分からんが、血筋なのか、カレンもアン姉ちゃんも、このマッコイとかいうギルド長に挑んでたみたいだ。
「馬鹿じゃないの? 子供相手に本気になって?
というか、私に若い時負けた腹いせ?」
「断じて、違う! カララム冒険者ギルド最強と勝負させろと言ってきたんで、ただ勝負を受けただけだ!」
マッコイギルド長が、必死に言い訳してる。
「だったら、また、掛かってきなさい?
アナタが、カララム冒険者ギルド最強なんでしょ? 本当のカララム冒険者ギルド最強がお相手して上げるわ!」
エリザベスは、まるでクンフー映画のブル○ス・リーのように、指でクイクイして挑発する。
「くそっ! 舐めやがって! 吠え面かくなよ!」
「アナタも、泣きべそかかないでよ。50過ぎのオッサンに泣かれても自慢できないから!」
「ちょっと、待っとけよ!」
なんか、マッコイギルド長は、本気だ。
わざわざ戻って、鎧兜を着込んでやって来た。
「さあ、用意は出来たぜ! いつでも掛かって来い!」
なんか、凄く格好悪い。丸腰の女性に対して、完全防備の鎧兜。
しかし、エリザベスは涼しい顔。
「じゃあいくわよ!」
「ああ!」
カララム冒険者ギルド長マッコイは、剣を構える。
「それじゃあ!」
ズダダダダダダダダタダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!
エリザベスの重い高速パンチで、みるみるマッコイギルド長の鎧兜はボコボコになる。
「うりゃ!」
そして、最後にエリザベスの回し蹴りで、マッコイギルド長は、壁に突き刺さってしまった。
「相変わらず、口ほどにもない」
エリザベスは、余裕綽々で鼻をさする。
ヤバい。ヤバ過ぎる。エリザベスは強いだろうとは思ってたのだが、次元が違った。
カララム冒険者ギルド長を、一蹴。
ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーー!!
カララム冒険者ギルドにいた冒険者達が、一斉に盛り上がる。
「ゴリラパンチのエリザベス、まだまだ現役バリバリじゃねーか!」
「しかし、エリザベスが歳をとってないのには驚いた」
「あれが、伝説の冒険者パーティー『熊の鉄槌』の団長の実力かよ……」
元々、エリザベスを知ってた者達は納得し、初めて目の当たりに見た者は、その圧倒的な強さに目を奪われる。
そして、そんな喧騒の中、カララム冒険者ギルドの扉が開く。
「ん? 何、この騒ぎ?ん?エリス様! てっ!エリザベス叔母様とヨナンも居る!」
わざわざ魔法の鞄に仕舞わずに、今日倒した獲物を見せびらかすように肩に担いできたカレンと、若くなったエリザベスを見て、ギョとした顔をしたアンが、カララム冒険者ギルドに戻ってきた。
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