63 / 177
63. 傍若無人
しおりを挟む騒動の次の日、アンの元に、今まで嫌がらせをして来ていた貴族令嬢達が謝りに来た。
どうやら、昨日、カレン・イーグルにシメられたらしい。
『私の義姉ちゃんイジメたら殺す』と、言われて慌てて謝りに来たそうだ。
カレン・イーグルは先輩だが、アンは婚約者ヨナンの姉だから、カレンにとって、アンは、お姉ちゃんになるらしい。
そして貴族令嬢達は、アンにも、『私達を殺さないでね!』と嘆願してきた。
きっと、学園最強のカレンに一歩も引かずに戦ってたアンに恐れおののいたのだろう。
それから、歩いていたら、兄のセントと楽しそうに喋ってた、この学園の生徒会長でグリズリー公爵家の御曹司であるフィリップに声を掛けられた。
話によると、母のエリザベスは、グリズリー公爵の娘で、フィリップとアンは従兄妹に当たるらしい。
そして、また歩いてると今度は、同じイーグル辺境伯家の寄子だという騎士爵家の娘が来て、21億マーブルも援助してくれてありがとうと、頭を下げられた。
どうやら、弟のヨナンがやってるというグラスホッパー商会主催のパーティーで、ヨナンが、ドラゴンの肉を振舞ったらしい。そのドラゴン肉の価値が21億マーブルで、昔のグラスホッパー騎士爵家のように貧窮してた家が、そのお金で持ち直す事が出来たとの事であった。
それから、次々に、イーグル辺境伯家の寄子会議に参加してたという貴族の子息達が、アンに挨拶してくる。
今現在のグラスホッパー男爵家は、この国で、最も力と経済力もある有力貴族なのだとか。
昨日までは、カララム王国学園のヒエラルキー最底辺貴族だったのが、本当に嘘のようだ。
もう、本当に、アンは意味が分からない。
全ては、グラスホッパー家四男のヨナンの力らしい。
本当に、本当に、本当に、ヨナンは一体、どうなってしまったのだろう。
あの虚弱体質で、アンが守ってあげなくちゃならなかったヨナンが、僅か半年足らずで、ここまで凄くなるなんて、アンには全く想像つかないのだ。
そして、また歩いてると、
「アン! 私とパーティー、勿論、組んでくれるわよね!
私とアンタが、冒険者パーティーを組めば、必ず最強のパーティーになれるんだから!」
剣鬼カレン・イーグルが、再びアンの前に現れて、尊大な態度で右手を差し伸べてきている。
本当に、尊大で、傍若無人。
しかし、傍若無人な態度ならアンも負けてはいない。
「ええ。いいですよ先輩! 勿論、その冒険者パーティーの団長は、私ですよね!」
アンは、剣鬼カレン・イーグルの右手を、力いっぱい握り締める。
「私の方が年上なんだから、私が団長に決まってるじゃない!」
同じ、イーグル辺境伯家の固有スキル、身体強化Lv.3を持つ者同士、手の握り合い勝負は、結局、ドローに終わった。
ーーー
話は戻り、ヨナンとエリザベスとエリスは、カララム王国学園に到着する。
そして、適当な生徒を捕まえて、グラスホッパー家の子供達の行方を聞く。
「エッ! 氷の微笑エリス様!」
というか、なんか、超有名S級冒険者のエリスは、カララム王国学園で相当人気なのか、あっという間に生徒達がワラワラと集まってきてしまった。
そこへ、
「あ! 母さん!」
たまたま通り掛かかった、長男セントがやって来る。
「あっ! セント! 他の子供達知らない!」
エリザベスが、生徒達に囲まれて身動き取れない中、セントに話し掛ける。
「ん? アンは、カレンさんと最近、ダンジョンに籠りっぱなしだから、もう、この時間だとダンジョンに行ってると思うけど?
他の二人は、まだ学園に居ると思うよ」
「なら、アンは私達が探して来るから、他の二人に今日、グリズリー家の別館で、一緒に夕食会だから、集まるようにと言っといて頂戴!」
エリザベスは、エリス人気で身動きできない状態なので、セントに要件だけ伝える。
「ああ! 分かったよ!」
そして、やっとこさ、カララム王国学園を抜け出し、アンを探す為に、カララム冒険者ギルドに向かう。
「ここも久しぶりね!」
エリザベスが、エリスに話し掛ける。
「『熊の鉄槌』以来、久しぶりにエリザベスと一緒に来た」
エリスが、いつものクールビューティーの表情を崩さず、エリザベスに返事をする。
「ここから、私達の冒険が始まったのよね!」
「そう。エリザベスは、カララム冒険者ギルドの扉を開けるなり、イキナリ、『ここで一番強い奴、私と勝負しなさい!』と、言い放った!」
なんか少しテンション上がってるのか、エリスは、いつものクールビューティーな表情なのに、声が抑揚している
「また、久しぶりだからやってみる? なんかここまで来たら、当時を思い出して、また、やってみたくなって来ちゃった!」
「やってもいいけど、今のカララム冒険者ギルドの最強は私だから、エリザベスは私と勝負しなくてはならなくなる」
「う~ん。それはちょっと変な感じになるから、冒険者ギルドに、今いる人と戦った方がいいんじゃないかしら?
私が『ここで一番強い奴、私と勝負しなさい!』と、勢いよく言って、私と一緒に来た、エリスと勝負してたら、なんかおかしな空気が流れると思うし」
「なら、ギルド長と勝負すればいい。マッコイは、私の次に多分強い。まあ、元『熊の鉄槌』のメンバー達を除いてだけど」
「ふ~ん。今、マッコイが、カララム王都のギルド長してるんだ? だったら面白いわね!
絶対、当時と変わらない姿の私を見たら、ビックリして腰を抜かすわよ!」
なんか、エリザベスがニヤついている。
多分、これが若い時のギラギラしてた時のエリザベスなのだろう。
傍若無人な所が、姪っ子のカレンとソックリだしね。
61
お気に入りに追加
3,049
あなたにおすすめの小説

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる