大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ

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63. 傍若無人

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 騒動の次の日、アンの元に、今まで嫌がらせをして来ていた貴族令嬢達が謝りに来た。

 どうやら、昨日、カレン・イーグルにシメられたらしい。

『私の義姉ちゃんイジメたら殺す』と、言われて慌てて謝りに来たそうだ。

 カレン・イーグルは先輩だが、アンは婚約者ヨナンの姉だから、カレンにとって、アンは、お姉ちゃんになるらしい。

 そして貴族令嬢達は、アンにも、『私達を殺さないでね!』と嘆願してきた。
 きっと、学園最強のカレンに一歩も引かずに戦ってたアンに恐れおののいたのだろう。

 それから、歩いていたら、兄のセントと楽しそうに喋ってた、この学園の生徒会長でグリズリー公爵家の御曹司であるフィリップに声を掛けられた。

 話によると、母のエリザベスは、グリズリー公爵の娘で、フィリップとアンは従兄妹に当たるらしい。

 そして、また歩いてると今度は、同じイーグル辺境伯家の寄子だという騎士爵家の娘が来て、21億マーブルも援助してくれてありがとうと、頭を下げられた。
 どうやら、弟のヨナンがやってるというグラスホッパー商会主催のパーティーで、ヨナンが、ドラゴンの肉を振舞ったらしい。そのドラゴン肉の価値が21億マーブルで、昔のグラスホッパー騎士爵家のように貧窮してた家が、そのお金で持ち直す事が出来たとの事であった。

 それから、次々に、イーグル辺境伯家の寄子会議に参加してたという貴族の子息達が、アンに挨拶してくる。
 今現在のグラスホッパー男爵家は、この国で、最も力と経済力もある有力貴族なのだとか。
 昨日までは、カララム王国学園のヒエラルキー最底辺貴族だったのが、本当に嘘のようだ。

 もう、本当に、アンは意味が分からない。
 全ては、グラスホッパー家四男のヨナンの力らしい。
 本当に、本当に、本当に、ヨナンは一体、どうなってしまったのだろう。
 あの虚弱体質で、アンが守ってあげなくちゃならなかったヨナンが、僅か半年足らずで、ここまで凄くなるなんて、アンには全く想像つかないのだ。

 そして、また歩いてると、

「アン! 私とパーティー、勿論、組んでくれるわよね!
 私とアンタが、冒険者パーティーを組めば、必ず最強のパーティーになれるんだから!」

 剣鬼カレン・イーグルが、再びアンの前に現れて、尊大な態度で右手を差し伸べてきている。

 本当に、尊大で、傍若無人。
 しかし、傍若無人な態度ならアンも負けてはいない。

「ええ。いいですよ先輩! 勿論、その冒険者パーティーの団長は、私ですよね!」

 アンは、剣鬼カレン・イーグルの右手を、力いっぱい握り締める。

「私の方が年上なんだから、私が団長に決まってるじゃない!」

 同じ、イーグル辺境伯家の固有スキル、身体強化Lv.3を持つ者同士、手の握り合い勝負は、結局、ドローに終わった。

 ーーー

 話は戻り、ヨナンとエリザベスとエリスは、カララム王国学園に到着する。

 そして、適当な生徒を捕まえて、グラスホッパー家の子供達の行方を聞く。

「エッ! 氷の微笑エリス様!」

 というか、なんか、超有名S級冒険者のエリスは、カララム王国学園で相当人気なのか、あっという間に生徒達がワラワラと集まってきてしまった。

 そこへ、

「あ! 母さん!」

 たまたま通り掛かかった、長男セントがやって来る。

「あっ! セント! 他の子供達知らない!」

 エリザベスが、生徒達に囲まれて身動き取れない中、セントに話し掛ける。

「ん? アンは、カレンさんと最近、ダンジョンに籠りっぱなしだから、もう、この時間だとダンジョンに行ってると思うけど?
 他の二人は、まだ学園に居ると思うよ」

「なら、アンは私達が探して来るから、他の二人に今日、グリズリー家の別館で、一緒に夕食会だから、集まるようにと言っといて頂戴!」

 エリザベスは、エリス人気で身動きできない状態なので、セントに要件だけ伝える。

「ああ! 分かったよ!」

 そして、やっとこさ、カララム王国学園を抜け出し、アンを探す為に、カララム冒険者ギルドに向かう。

「ここも久しぶりね!」

 エリザベスが、エリスに話し掛ける。

「『熊の鉄槌』以来、久しぶりにエリザベスと一緒に来た」

 エリスが、いつものクールビューティーの表情を崩さず、エリザベスに返事をする。

「ここから、私達の冒険が始まったのよね!」

「そう。エリザベスは、カララム冒険者ギルドの扉を開けるなり、イキナリ、『ここで一番強い奴、私と勝負しなさい!』と、言い放った!」

 なんか少しテンション上がってるのか、エリスは、いつものクールビューティーな表情なのに、声が抑揚している

「また、久しぶりだからやってみる? なんかここまで来たら、当時を思い出して、また、やってみたくなって来ちゃった!」

「やってもいいけど、今のカララム冒険者ギルドの最強は私だから、エリザベスは私と勝負しなくてはならなくなる」

「う~ん。それはちょっと変な感じになるから、冒険者ギルドに、今いる人と戦った方がいいんじゃないかしら?
 私が『ここで一番強い奴、私と勝負しなさい!』と、勢いよく言って、私と一緒に来た、エリスと勝負してたら、なんかおかしな空気が流れると思うし」

「なら、ギルド長と勝負すればいい。マッコイは、私の次に多分強い。まあ、元『熊の鉄槌』のメンバー達を除いてだけど」

「ふ~ん。今、マッコイが、カララム王都のギルド長してるんだ? だったら面白いわね!
 絶対、当時と変わらない姿の私を見たら、ビックリして腰を抜かすわよ!」

 なんか、エリザベスがニヤついている。
 多分、これが若い時のギラギラしてた時のエリザベスなのだろう。

 傍若無人な所が、姪っ子のカレンとソックリだしね。
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