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61. 王都
しおりを挟む俺とエリザベスとエリスは、グラスホッパー商会グリズリー支店の立ち上げが、思いの外早く終わり、折角、王都の隣のグリズリーまで来たので、グラスホッパー商会王都店用の土地探しに向かう事となった。
「それにしても、ビクトリア婆ちゃんと、グリズリー公爵家の執事とメイド達、物凄かったな」
そう、ビクトリア婆ちゃんは、エリザベスの上位版。グリズリー公爵家の執事とメイドは、グラスホッパー商会の従業員教育係であるセバスチャンさんの教え子達。
ハッキリ言うと、グリズリー公爵家の執事メイド教育を、グラスホッパー商会に移植したと言ってもいいので、そもそも、グリズリー支店は、従業員教育自体をする必要がなかったのである。
「そうね。お母さんに任せとけば、何も問題ないわ。私よりヤリ手だから。
それより楽しみだわ!久しぶりに子供達に会いにいけるし!」
なんか、エリザベスはウキウキである。
俺的には、長男のセントや三男のトロワは別にいいのだけど、次男のジミーや長女のアンは苦手なのだ。
だって、二人がカララム王国学園の寮に行くまで悲惨だったし。
いつも、修行とかいって、ボコボコにされてたし。
やっと二人が家を出ていってくれて、グラスホッパー家でのヨナンの平穏が訪れたという過去がある。
てな感じで、俺とエリザベスとエリスで、カララム王都に向かっている。
グリズリー領領都から、荷馬車で1時間と近い。
まあ、隣なので当然なのだけど。
王都は巨大な城壁で囲まれた城塞都市。
イーグル辺境伯領、領都イグノーブルと比べると、20倍以上の広さである。
中央に城があり、カララム王国学園は中央北側。それ以外は城を囲むように、色んな役所やら、図書館などがあり、中央に近い場所から貴族街、平民街、貧民街となっていく。
そして、城を中心にするように、十時に大通りがあり、その大通り周辺には、貴族街貧民街関係なく、宿屋や、食べ物屋、商店とかが立ち並んでいる。
でもって、ヨナン達は、グラスホッパー商会が所有するキャンピングキッチントレーラーを馬に引かしてるのだが、王都でも目立つ目立つ。
そもそも、この世界には、木材に漆塗りをする技術がないから、黒光りする超高級感を漂わす馬車が、珍しいのだ。
もう、大通りを走ってるだけで、どこぞの貴族の馬車だ?と、滅茶苦茶注目を浴びる始末。
まあ、取り敢えず、エリザベスの実家のグリズリー公爵家、カララム王都別館に向かう。
「よく来たね! エリザベス! ヨナン君!」
エリザベスの兄のグリズリー次期当主が迎えてくれる。
「イーグル辺境領ぶりね!」
エリザベスが返す。
「エリザベスに言われた通り、色々、王都の土地を探してるんだけど、やっぱり、1000坪とか大きい土地は空いてないね。
まあ、一応、500坪ほどの土地だったら、もう確保してるんだけど?」
「それでいいわ! その土地を抑えておいて!
お母様と相談して、王都の方では温泉スパを作らない事にしたから、温泉の方は、ロードグラスホッパーホテル・グリズリー和旅館の方に誘導するという話になったから、取り敢えず、グラスホッパー商会王都店と、ロードグリズリーホテル王都店さえ建てれればいいわ!」
エリザベスは、兄に命令する。
どうやら、グリズリー公爵家は、女が強い家柄であるようだ。
「500坪で足りるのかい?一応、400坪の土地も探してあるんだけど?」
「そしたら、一度、どちらも見てみるわ!
最悪、商会とホテルを離して建ててもいいし、兎に角、お金に糸目を付けず、より、好立地な場所をお願い!」
「なるほど、お金に糸目をつけないのなら、もっと好立地の場所があるかもしれないから、探しておくよ!」
そんな感じで打ち合わせは終わり、俺達は、カララム王国学園に向かう。
「ヨナン君も、来年入学するから、学園の様子とかを見ておいた方がいいわよ!」
「ん?」
何か、エリザベスがおかしな事を言っている。
「アナタは、来年、カララム王国学園に通うのよ!」
エリザベスが、カララム王国学園を強調する。
「俺が、カララム王国学園に通うのか?
別に今更、通わなくてもいいような?
俺には、グラスホッパー商会の運営の仕事があるし?」
そう。エリザベスとエドソンが、カララム王国学園に、ヨナンを入学させるような話はしていたが、ヨナン的には入学する必要性を全く感じていなかったのである。
もう、自立して稼いでるし、今更感満載なのである。
「何、言ってるのよ?今ままでだったらグラスホッパー騎士爵家の四男で、爵位を継げる可能性が低かったから、カララム王国学園に通う必要も無かったけど、今のヨナン君は、今の段階で既に、グラスホッパー準男爵。貴族として、絶対にカララム王国学園に入学する義務があるわ!」
「え? そうなの?昔、コナンやシスも入学させれないとか言ってたじゃん?」
「それは、五男や二女は、絶対に爵位を継げないのが分かってたから! もう、アンを入学させた時点で、グラスホッパー家の財政は破綻してたからよ!」
「破綻って、そんなに酷かったのか?」
「酷いなんてもんじゃないわよ! 本来なら、1人でもカララム王国学園に入れるのが辛かったのに、4人も入れたのよ!
冒険者時代に貯めたお金も、全部使ってたし、一家心中も考えてたわ!」
「そんなに?」
「じゃなければ、アナタにあんなに強く当たらなかったし、あの時は、本当に必死だったの!
グラスホッパー家と関係ないアナタが、私達と一緒に一家心中する必要ないし、エドソンを救った恩人の息子を巻き添えにしたくなかったから。
アナタが変な恩を感じて、変な気起こさせないように、キツく当たって、嫌な思いさせて、自分から家を出てくように仕向けてたの!」
「え? そんな理由で、俺に強く当たってたのか?」
ヨナンは、ただ単に、口減らししたくて、エリザベスはヨナンにキツく当たってたと思ってたので、ビックリする。
「ええそうよ。アナタも、私達が嫌いなら、家を出た後、私達家族が一家心中してても、ザマーと思うでしょ!」
「それは難しいな……グラスホッパー家には、エドソンが居るから、最終的には悲しむと思うし」
「そうね。それは分かってるわ。アナタの過去の記憶を見て、エドソンと私の息子達が死んで悲しんで、葛藤して、石床におかしな事、叫んでるところ見たしね!」
「あの……そこの部分は忘れて欲しいんだけど? 完全に、プライバシーの侵害だし……」
「兎に角、私達家族は、何があってもアナタを裏切らない。
それに、シスと結婚して貰って、本当の家族になってもらうんだからね!」
エリザベスは、優しい顔をして微笑んだ。
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