大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ

文字の大きさ
上 下
57 / 177

57. グラスホッパー準男爵

しおりを挟む
 
「ガッハッハッハッハッ! 流石婿殿だ!
 みんな、ドラゴンステーキを握り締め、ホクホク顔で帰っていきおった!」

 10歳、若返ったイーグル辺境伯は、御満悦。

「凄いぞ! 我が娘、エリザベスよ! これでグラスホッパー騎士爵の格が上がる。多分、グラスホッパー騎士爵は、準男爵ぐらいには爵位が上がる筈だぞ!」

 グリズリー公爵も、何だが嬉しそうだ。

「でも、他の敵対勢力が妨害工作をしてくるんじゃないかしら?」

 エリザベスが心配する。

「そんなもの、少しドラゴン肉を王家に分けてやれば大丈夫じゃろうて!」

 イーグル辺境伯は、強気である。
 まあ、ドラゴンの尻尾は10メートルもあったのだ。今回の大盤振る舞いでも、在庫に余裕が有ったりする。

「そしたら、レッドドラゴンの血50ミリリットルと、ドラゴンの鱗を1枚ぐらいなら、王家に献上してもいいぞ?」

 ヨナンは、軽い気持ちで口走る。

「な……なんと……レッドドラゴンの血まで採取しておったか!」

 イーグル辺境伯が、驚愕してる。

 確か、鑑定スキルの話によると、レッドドラゴンの血を10ミリリットル飲むと、寿命が10年。20ミリリットル飲むと20年。飲む量により、寿命が延びるらしい。
 それを、ヨナンは350ミリリットル採取する事に成功している。

「ヨナン君。そんな貴重な物を、本当に献上しちゃっていいの?」

 エリザベスが、恐る恐る聞いてくる。

「だって、俺は、返しきれないほどエドソンには世話になってるからな。
 グラスホッパー家の爵位が上がるというなら、幾らでも協力する事は、やぶさかじゃないんだけど?」

 ヨナンは、当たり前のように述べる。

「ヨナン……お前ってやつは、なんて孝行息子なんだよぉ……」

 エドソンが感動したのか、鼻水を垂らして泣いている。

「カレンの婿殿は、なんと立派な男なんじゃ……ワシも、物凄く感動したぞ!
 というか、ドラゴンの血まで献上するんじゃったら、準男爵じゃなくて、男爵は確実じゃ!」

 イーグル辺境伯が、太鼓判を押す。

 てな訳で、明日、ワイン好きなカララム王も、イーグル辺境伯領に来て、ワイン品評会に参加する予定らしいので、品評会の前に、お目通りして、ヨナンが、カララム王に、レッドドラゴンの肉1キロと、レッドドラゴンの鱗1枚、それからレッドドラゴンの血50ミリリットルを献上する流れを、ワイン品評会の主催者であるイーグル辺境伯が、取り付ける流れとなった。

 ーーー

「お前、本当に凄いな……」

 全ての打ち合わせが一通り終わり、イーグル辺境伯も城に帰って行くと、長男のセントが話し掛けてくる。

「一応言っとくけど、別に、俺自身は何も変わってないからな!
 何も道具を持ってなかったら、ただの凡人だしね」

 ヨナンは、謙遜する。

「いや! 凄いって! 俺なんかとっくの昔に人生諦めてたもん。
 こんなに貧乏になるんだったら、昔のように平民のまんまが良かったと……その方が、幸せに暮らせたんじゃないかと、本気で思ってた。
 もう、兎に角、家を出たくて、出たくて、必死に剣の腕を磨いて、カララム王国騎士団に入団する事だけを考えてた。
 それなのに、今じゃ、グラスホッパー騎士爵を継ごうと思ってるし、何故か知らないが、次は男爵になっちゃうんだろ?
 展開が早過ぎて、もうついてけないよ!
 まあ、何が言いたいかと言うと、本当にありがとな!
 グラスホッパー家の子供になってくれて!」

 正直、あまり面と向かってセントと喋ったこと無かったので、セントの告白に思わず麺を食らってしまう。

 まあ、セントとは、ジミーと違って、何も確執など無かったのだけど、多分、自分の事が精一杯で、ヨナンなんかと構う時間もない程、自分自身を追い詰めていたのだろう。
 セントの記憶と言えば、エドソンとの激しい剣の稽古をしてるところしか、見た事なかったし……。

「まあ、兎に角、良かったじゃん!これからグラスホッパー男爵になるみたいだし!
 長男のセントは、メッチャ、ホクホクだよね!」

 ヨナンは、セントの言葉を真剣に返すのが恥ずかしかったので、茶化して返す。

「ああ。本当に、ホクホクだな!」

 セントも、気恥しさを隠すように、ヨナンの頭をクチャクチャにして、誤魔化したのだった。

 ーーー

 次の日、予定通り、ワイン品評会の前に、カララム王とお目通りして、レッドドラゴン肉1キロ、ドラゴンの鱗1枚、レッドドラゴンの血50ミリリットルを献上した。

 そして、予想通り、その場でグラスホッパー家に新しい爵位が与えられ、グラスホッパー騎士爵家は、新たにグラスホッパー男爵家となり、
 ヨナンも、レッドドラゴンを討伐した個人的な功績として、準男爵の称号が与えられたのだった。

 エドソンなどは、緊張のあまり、なんか色々やらかしてた気がするが、一緒に出席してた元公爵令嬢のエリザベスなどは、普通に王様と雑談までしてたし、イーグル辺境伯と、グリズリー公爵は、必ずグラスホッパー家を男爵にしろよ。という王様への圧が物凄かった。

 そして、爵位授与の簡易な式典も終わり、一息ついた所で、鑑定スキルに話し掛ける。

「なあ、何でグラスホッパー騎士爵は、グラスホッパー男爵に格上げされたのに、俺だけ、地位が1つ低い準男爵にされちゃったんだ?
 これって、やっぱり、俺がグラスホッパー家の本当の息子じゃないからなのか?」

 ヨナンは、気になってた事を、鑑定スキルに確認する。

『違いますよ! それはご主人様の功績が認められた為の処置ですから!
 簡単に説明すると、エドソンが領主のグラスホッパー男爵家と、ご主人様のグラスホッパー準男爵家は、もう、完全に別の家です!
 これは、ご主人様自身が、一人の貴族として、国に認められたという事ですよ!』

「ん? 貴族って、俺も一応、貴族の息子だろ?」

『正確に言うと違います! ご主人様は、貴族の爵位を持つエドソンの息子であって、本当の貴族じゃありません。単なる、貴族の爵位を持つ、エドソンの子息の一人という事になります。
 それも、絶対にグラスホッパー男爵家の爵位を継げない四男のね!
 それを回避する為に、カララム王は、新たな準男爵家を作って、ご主人様に与えたんですよ!
 なので、今のご主人様は、グラスホッパー男爵家の長男のセントさんより、地位は上です!
 例え、セントさんが、グラスホッパー男爵家の長男で、家を必ず継ぐとしても、まだ、グラスホッパー男爵家の爵位を持つエドソンの子息という域からは、全く出て居ない訳になりますからね!』

「なんで、わざわざそんな事を?」

 ヨナンは、鑑定スキルに更に聞く。

『それは、カララム王国の観点から言えば、莫大な利益を国に還元できるご主人様を、爵位で縛り、カララム王国から逃がさない為にするのが一つ。
 それから、エリザベスさんと、イーグル辺境伯の事前工作が大きかったと思います』

「国は何となく分かるが、エリザベスも?」

『はい。多分、今後起こるであろう、セントさんと、ジミーさんとのグラスホッパー男爵家の相続問題から、ご主人様を守る為ですね!
 ジミーさんの性格を考えれば、揉める事必至ですから。
 ご主人様がグラスホッパー男爵とは関係ない、グラスホッパー準男爵家の人間なら、ジミーさんは何も言えなくなりますし、そもそも、爵位を既に持ってるご主人様は、ただの貴族の子息の戯言など、無視するだけでいいですからね!』

「スゲーな……エリザベスは、そこまで考えてたのかよ……」

『エリザベスさんは、曲がりなりにも、元公爵令嬢ですから、貴族がやる様な事は、大体分かってるんじゃないですか?』

「だな……」

『そして、イーグル辺境伯の思惑は、ご主人様を、カレンさんの旦那としての格を上げる事、この1つのみです!
 あの人、完全に孫バカですから!
 一番、ヤンチャで自分に似てるカレンさんを滅茶苦茶可愛がってるだけですね』

「だな……」

 ヨナンは、鑑定スキルの解説を聞いて、全て納得した。
 自分が、グラスホッパー家を金持ちにしてしまって、兄弟で骨肉の争いまで発展してしまう事は悲しい事だけど、それより貧乏よりはマシだろう。

 まあ、グラスホッパー準男爵となった今となっては、もう、関係無い家の話なので、どうでもいいかも?とも思う、ヨナンであった。
しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...